REITは金利上昇にどこまで耐えられるか:価格下落のメカニズムと“耐えるREIT”の見分け方

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  1. 結論:REITが金利上昇に弱いのは「利回り比較」だけではない
  2. まず押さえる:金利上昇がREIT価格を押し下げる3つの経路
  3. 1)利回り比較:国債利回りが上がると“同じ分配利回り”では買われにくい
  4. 2)借入コスト:金利上昇は“すぐに”効かないが“必ず”効く
  5. 3)不動産価格:キャップレート上昇で評価額が下がる
  6. “金利”といっても2種類ある:短期金利と長期金利で影響が違う
  7. 金利上昇でも耐えるREITの“条件”を分解する
  8. 条件1:借入の耐性(固定化・長期化・分散)
  9. 条件2:賃料の強さ(インフレ連動・需給・テナントの質)
  10. 条件3:B/Sの余力(LTV・含み益・流動性)
  11. 条件4:分配の質(FFO/AFFOと一時要因の切り分け)
  12. 要注意:金利上昇局面で“見た目”に騙される典型パターン
  13. パターン1:分配利回りが急に上がった=割安、ではない
  14. パターン2:増資で買い増し=成長、が希薄化で終わる
  15. パターン3:セクターで一括判断して、強い個体を取り逃がす
  16. 実務で使える:金利上昇耐性を点数化するチェックリスト
  17. ケーススタディ:同じ金利上昇でも結果が分かれるシナリオ
  18. 投資判断の組み立て:初心者がやるべき“順番”
  19. ポートフォリオ視点:REITは“債券の代替”ではなく“インフレと景気の中間資産”
  20. まとめ:金利上昇でも“全部がダメ”ではない。見るべきは構造

結論:REITが金利上昇に弱いのは「利回り比較」だけではない

金利が上がるとREIT(不動産投資信託)が下がる、と一括りに語られがちですが、実態はもっと分岐します。金利上昇がREITに効く経路は大きく3つあります。

①株式・債券との利回り比較(バリュエーション)②借入コスト増による利益・分配余力の圧迫(ファンダメンタルズ)③不動産価格の再評価(キャップレート上昇)です。これらの感応度は銘柄(投資法人)によって大きく違い、金利上昇でも耐えるREITは存在します。

まず押さえる:金利上昇がREIT価格を押し下げる3つの経路

1)利回り比較:国債利回りが上がると“同じ分配利回り”では買われにくい

投資家はREITを「分配金が出る資産」として見ます。ここで比較対象になるのが、国債や社債などの金利(利回り)です。仮にREITの分配利回りが4%で、10年国債が0.5%→1.5%に上がると、相対的な魅力度は低下します。結果として、REITの価格が下がって分配利回りが上がり、比較が釣り合う水準に調整されやすくなります。

ただし、この調整は「全銘柄が同じだけ下がる」わけではありません。理由は、次の2つ(借入と不動産価格)が銘柄ごとに違うからです。

2)借入コスト:金利上昇は“すぐに”効かないが“必ず”効く

REITは不動産を借入(ローン)でレバレッジして運用します。金利が上がると支払利息が増え、分配原資が減ります。ただし重要なのは、金利上昇が即座に全借入に反映されるわけではない点です。

借入は固定金利・変動金利に分かれ、満期も分散されています。したがって、「変動比率が高い」「満期が近い借入が多い」「借換えの度にスプレッドが拡大する」ようなREITほど影響が早い。一方で、固定金利中心で長期化されていれば、影響は遅く、緩やかになります。

3)不動産価格:キャップレート上昇で評価額が下がる

不動産の価格はざっくり言うと「NOI(賃料収益−運営費)÷キャップレート(期待利回り)」で決まります。金利が上がると投資家の要求利回りが上がり、キャップレートが上昇しやすい。すると、同じNOIでも価格(評価額)が下がります。

これはREITのB/S(資産価値)に効きます。資産価値が下がるとLTV(有利子負債比率)が上がり、格付けや借入条件が悪化し、さらに資金調達が苦しくなる——という悪循環が起こり得ます。逆に、資産価値が下がっても耐えるだけの余力(低LTV、含み益、分散)があるREITは粘ります。

“金利”といっても2種類ある:短期金利と長期金利で影響が違う

初心者が混同しやすいのがここです。短期金利は主に変動金利の借入コストに、長期金利は利回り比較とキャップレートに効きやすい。

例えば、短期金利だけが上がり長期金利があまり動かない局面では、変動借入が多いREITが痛みやすい。一方、長期金利が上がる局面では、バリュエーション調整と不動産価格調整が同時に起きやすく、セクター全体の逆風になりやすい。したがって「今どの金利が上がっているのか」を見ないと判断を誤ります。

金利上昇でも耐えるREITの“条件”を分解する

条件1:借入の耐性(固定化・長期化・分散)

金利上昇耐性は、まず借入の構造で決まります。チェックはシンプルです。

  • 固定金利比率が高い(変動が少ないほど影響が遅い)
  • 平均残存年数(デットのデュレーション)が長い(借換えが先送りされる)
  • 満期が分散している(特定年に集中していると“借換えショック”が起きる)
  • 金利スワップ等で実質固定化している(名目は変動でも実質固定のケース)

具体例として、借入1000億円のREITがあり、変動比率50%で平均残存2年だとします。短期金利が+1%上がれば、単純化すると変動部分500億円の利息が年+5億円増える可能性があります。分配原資が年間50億円の規模なら、1割を持っていかれる計算です。固定化と長期化がいかに効くかが直感的に分かるはずです。

条件2:賃料の強さ(インフレ連動・需給・テナントの質)

金利上昇は多くの場合、インフレや景気の強さとセットで起きます。ここで勝負を分けるのが賃料の伸びやすさです。賃料が上がればNOIが増え、借入コスト増やキャップレート上昇の一部を相殺できます。

賃料が伸びやすい典型は、需給がタイトで代替が効きにくい領域です。例えば、立地優位の都市型住宅、長期的な需要が見込める物流の一部、設備更新を通じて単価を上げられるデータセンター等。一方、供給過剰になりやすいオフィスや、景気に左右される商業などは局面によってブレが大きい。

ここで重要なのはセクター名ではなく、「賃料改定条項」「契約期間」「空室率の推移」「主要テナントへの依存度」「更新時の値上げ余地」です。IR資料で必ず確認できます。

条件3:B/Sの余力(LTV・含み益・流動性)

金利上昇で不動産評価が下がっても、B/Sに余力があれば耐えます。見るべき指標は以下です。

  • LTV(有利子負債比率):低いほど安全。上昇局面では“余白”が重要。
  • 含み益(鑑定評価−簿価)の厚み:評価が下がってもクッションになる。
  • 現金・コミットメントライン:市場が荒れても資金繰りが詰まらない。
  • 格付け・調達先の分散:銀行頼み一辺倒より、調達の多様性が強い。

金利上昇局面は“調達力ゲーム”になりがちです。B/Sが弱いと、増資で希薄化するか、物件売却で成長を止めるか、最悪は分配を削るか、という苦しい選択に追い込まれます。

条件4:分配の質(FFO/AFFOと一時要因の切り分け)

分配利回りが高いから安全、は危険です。分配が何から出ているかを見ないと、金利上昇に耐えられません。ここで役立つ概念がFFO(Funds From Operations)とAFFO(Adjusted FFO)です。

ざっくり言えば、FFOは本業キャッシュフロー、AFFOは維持更新費などを差し引いた“より実態に近い分配余力”です。分配が一時的な売却益や会計上の調整に依存していると、金利上昇で環境が悪化したときに続かない。IRで開示がない場合でも、物件売却益の比率、減価償却とCAPEXの関係、修繕計画を見ると推測できます。

要注意:金利上昇局面で“見た目”に騙される典型パターン

パターン1:分配利回りが急に上がった=割安、ではない

価格が急落して利回りが上がっているだけ、というケースが多いです。その背後に「借換えが近い」「空室が増えている」「評価が落ちてLTVが上がっている」といった構造要因があると、利回りは罠になります。まず“なぜ売られているのか”を定性で説明できないなら、飛びつかない方が合理的です。

パターン2:増資で買い増し=成長、が希薄化で終わる

REITは物件を買い増して成長しますが、金利上昇局面では資金調達コストも上がります。新規取得の利回り(取得キャップ)と調達コスト(負債コスト+エクイティコスト)の差が縮むと、買い増しても1口あたり利益が増えない。むしろ増資で希薄化し、分配が伸びないことがあります。

ポイントは「外部成長が1口あたりでプラスか」です。取得物件のNOI利回り、想定稼働、借入条件、増資条件を組み合わせて、成長の質を見ます。

パターン3:セクターで一括判断して、強い個体を取り逃がす

「オフィスはダメ」「物流は強い」といったセクター論は便利ですが、外れます。なぜなら同じセクターでも、物件の立地・築年・競争環境・テナント・スポンサーの力が違うからです。金利上昇局面ほど“個体差”が出ます。セクターは入口で、最後は個別の財務と賃料の強さで決まります。

実務で使える:金利上昇耐性を点数化するチェックリスト

判断をブレさせないために、以下の観点を5点満点でざっくり採点すると良いです(合計20点)。

  • 借入構造:固定化・残存年数・満期分散・調達先
  • 賃料の強さ:空室率・賃料改定・需給・テナント集中
  • B/S余力:LTV・含み益・流動性・格付け
  • 分配の質:FFO/AFFO、売却益依存度、修繕負担

合計点が高いほど、金利上昇に対して“耐える確率”が上がります。もちろん点数は主観が入りますが、重要なのは自分の判断基準を固定し、場当たり的に利回りだけで動かないことです。

ケーススタディ:同じ金利上昇でも結果が分かれるシナリオ

ここでは極端化して理解します。

ケースA(弱い):変動比率が高く、満期が近い借入が多い。空室が増え、賃料が下がりやすい。LTVが高く含み益が薄い。分配は売却益に依存。——この場合、金利上昇が「利息増→分配減→価格下落→増資難→成長停止」と連鎖しやすい。

ケースB(強い):固定金利中心で借入が長期化。賃料改定の余地がありNOIが伸びる。LTVが低く含み益が厚い。分配は本業キャッシュフロー中心。——この場合、価格は調整されても、分配の下振れが限定的で、むしろ買収機会(割安な物件取得)を得る可能性があります。

投資判断の組み立て:初心者がやるべき“順番”

REITを検討するときは、次の順番が安全です。

  • ① まず金利環境(短期か長期か、上昇の背景はインフレか景気か)を把握する
  • ② 借入構造(固定/変動、残存、満期分散)を確認して“金利感応度”を掴む
  • ③ 賃料・稼働(空室率、賃料改定、テナント集中)で“NOIの粘り”を確認
  • ④ LTV・含み益・流動性で“最悪時の耐久力”を確認
  • ⑤ 分配の質(FFO/AFFO、売却益依存)で“利回りの正体”を見抜く

この順番で見れば、「利回りが高いから買う」「下がったからナンピンする」といった事故が減ります。

ポートフォリオ視点:REITは“債券の代替”ではなく“インフレと景気の中間資産”

REITを債券代わりに捉えると、金利上昇局面で痛い目を見がちです。REITは不動産(実物資産)に近く、賃料が伸びればインフレ耐性を持ちますが、同時に借入レバレッジがあるため金利に敏感でもあります。つまり、性格は「株と債券の中間」ではなく、「インフレ耐性と金利感応度が同居する資産」です。

したがって、REIT比率を上げるなら、金利上昇局面を想定して「耐性の高い個体を混ぜる」「分配利回りだけで偏らない」「買い下がりのルールを決める」といった運用設計が必要です。

まとめ:金利上昇でも“全部がダメ”ではない。見るべきは構造

金利上昇がREITに与える影響は、利回り比較・借入コスト・キャップレートの3経路で説明できます。そして耐性は、借入構造、賃料の強さ、B/S余力、分配の質でほぼ決まります。

結局のところ、REIT投資で勝ちやすいのは「金利の方向を当てる人」ではなく、金利が動いても壊れにくい構造を選び、買う理由・売る理由を言語化できる人です。ここまでのチェック項目を自分のテンプレにして、毎回同じ手順で評価してみてください。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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