債券ETFは本当に安全資産か:『値動きしない』という誤解を解く

債券・金利

債券は「株より安全」「値動きが小さい」と言われます。そこから一歩進んで、債券ETF=安全資産と短絡的に理解してしまう人が多いのが現実です。しかし、債券ETFはれっきとした市場商品であり、価格は日々変動します。場合によっては株ほどではないにせよ、数か月~1年単位で大きく下落することもあります。

本記事では、初心者でも腹落ちするように「債券ETFが安全と言い切れない理由」を構造から解説し、目的別に“安全度”を上げる選び方まで落とし込みます。結論を先に言うと、債券ETFは「安全資産」ではなく、安全資産っぽく使える条件がある金融商品です。その条件を満たせないと、むしろ“想定外の下落”が起きます。

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そもそも「安全資産」とは何か:価格が動かない資産はほぼ存在しない

投資でいう「安全資産」は、厳密には元本毀損しにくい、あるいは株式暴落時に下がりにくいという文脈で使われます。ただし、以下の3つを同時に満たす資産はほぼありません。

①価格変動が小さい(ボラティリティが低い)/②換金しやすい(流動性が高い)/③インフレに負けない(実質価値が守られる)

債券ETFは、①と②を“ある程度”満たしやすい一方で、金利上昇局面では①が崩れ、インフレ局面では③が崩れやすい、というクセがあります。だから「安全資産」としての使い方には条件があります。

債券ETFの中身:あなたが買っているのは“債券の束”

債券ETFは、国債・社債・MBS(住宅ローン担保証券)などを大量に保有して、指数に連動するように運用されます。ここで重要なのは、ETFは満期を迎えて償還されないことです。

個別債券は「満期まで保有すれば、途中で価格が下がっても償還まで待てる」という性質があります(発行体が破綻しない前提)。一方、債券ETFは保有銘柄が常に入れ替わり、満期が来た債券は売却され、新しい債券に置き換えられます。つまり、あなたが持っているのは「満期まで待てる債券」ではなく、常に市場価格で評価され続ける債券ポートフォリオです。

この違いが、「債券ETFは安全資産」と言い切れない最大の理由です。

債券ETFが下がる最大要因:金利上昇(デュレーションの罠)

債券価格と金利は基本的に逆方向に動きます。金利が上がると、既存債券の利回りは見劣りするため価格が下がります。ここで鍵になるのがデュレーションです。

デュレーションは「金利が1%動いたとき、価格が何%動きやすいか」の目安になります。直感的には、平均満期が長いほどデュレーションは大きくなり、金利上昇に弱くなります。

具体例で考えます。あなたが「分散のために債券も」と思って、長期国債ETFを買ったとします。デュレーションが約18のETFなら、金利が1%上がると価格は理論上おおむね約18%下落しやすい、ということになります(あくまで近似ですが、感覚として重要です)。株より小さいと思っていたのに、普通に大きい下落が起きます。

逆に、短期国債ETFでデュレーションが2前後なら、金利1%上昇で約2%程度の下落に収まりやすい。つまり「債券ETFが安全に見えるかどうか」は、デュレーションに依存します。

「利回りがあるから安心」は半分だけ正しい:クーポンは損失を相殺しないことがある

債券ETFは分配金(利息由来の収益)が出ることが多く、「金利が高いから持っていれば戻る」と考えがちです。しかし、金利上昇のスピードが速いと、受け取る利息以上に価格下落が大きくなります。

たとえば年利3%程度の分配があっても、金利上昇による価格下落が年10%規模で起きれば、トータルではマイナスです。ここで重要なのは「利回り」ではなく、保有期間と金利変動の大きさです。

この点を踏まえると、債券ETFを“安全資産扱い”するなら、短期~中期中心でデュレーションを抑える方が整合的です。

安全性を壊すもう一つの要因:信用リスク(国債と社債は別物)

債券と言っても、国債と社債ではリスクの源泉が違います。

国債(信用力が高い国):主な敵は金利上昇(デュレーション)とインフレ。
社債:金利上昇に加えて、景気悪化でクレジットスプレッドが拡大し、価格が下落します。

つまり、株が下がる局面では社債も同時に弱くなりやすい。これが「債券を持ったのに守ってくれない」現象を起こします。特にハイイールド債ETF(信用格付けが低い企業の債券)は、株と似た動きをすることが珍しくありません。安全資産というより、リスク資産に近い債券です。

インフレ局面の落とし穴:名目で守れても実質で削られる

債券は基本的に固定利息が中心です。インフレが進むと、将来受け取る利息と元本の購買力が低下します。そのため、インフレ局面では、債券は株に比べて相対的に弱くなりがちです。

「価格が下がらないならOK」と思っていても、インフレで生活コストが上がるなら、実質的には損をしている可能性があります。債券ETFを資産防衛に使うなら、インフレ連動債ETFや、短期債・変動金利債などの選択肢も理解しておく価値があります。

債券ETF特有の見落とし:為替リスク(日本の個人投資家の最大の盲点)

日本の個人投資家が米国債ETFなどを買う場合、債券リスクとは別に為替リスクが乗ります。円高になると、債券価格が上がっても円換算では目減りします。逆に円安なら利益が増えます。

ここでありがちな失敗は、「債券だから安全」と思って外貨建て債券ETFを買ったのに、円高で資産が減ってしまうケースです。これは債券が悪いのではなく、外貨建てという設計の問題です。

為替を抑えたいなら為替ヘッジ型を検討するという考え方がありますが、ヘッジコスト(短期金利差に由来するコスト)が効いてくるため、万能ではありません。結局、為替を含めた「守りの設計」を先に決める必要があります。

「債券ETFは分散に効く」は条件付き:相関が崩れる局面がある

伝統的には「株が下がるとき国債は買われやすい(利回り低下=価格上昇)」という期待がありました。しかし、インフレが強い局面では、株も債券も同時に売られることがあります。理由は単純で、インフレに対処するために金利が上がると、株は割引率上昇で下がり、債券は金利上昇で下がるからです。

この局面では、国債さえ“万能のヘッジ”になりません。だから「債券ETFを持てばいつでも守られる」という理解は危険です。分散は大事ですが、分散の中身を局面別に再定義する必要があります。

初心者がやりがちな失敗パターン:安全資産のつもりで長期債を買う

典型例を一つ挙げます。

・株が怖い → 「国債なら安全」→ なんとなく長期国債ETFを購入
・その後、インフレが進む/政策金利が上がる → 長期金利が上昇
・ETF価格が想定以上に下落 → 「債券なのに減った」と混乱し、安値で損切り

これは、商品選定のミスというより、デュレーションを理解せずに買ったことが原因です。債券ETFは「安全かどうか」ではなく、どれだけ金利変動に敏感かでリスクが決まります。

安全度を上げる実践ガイド:目的を3つに分ける

債券ETFを「安全資産っぽく」使いたいなら、まず目的を3つに分けてください。目的が違うのに同じETFで済ませようとすると、どこかで破綻します。

目的①:生活防衛・近い将来の支出(元本のブレを極小化したい)

ここで優先すべきは「リターン」ではなく、短期で大きく減らないことです。候補は短期国債・超短期債・MMF相当の商品です。債券ETFなら、平均満期が短くデュレーションが小さいものが整合的です。

具体的には、「1~3年程度の短期債中心」「投資適格中心」など、デュレーションが小さく信用力が高いタイプを選びます。これなら金利変動の影響が限定され、現金の代替に近づきます。

目的②:株のクッション(暴落時に頼れる可能性を残したい)

株の下落に対する緩衝材としての債券は、伝統的には中期~長期の国債が役割を担いました。ただし、インフレ局面では同時下落も起こるため、過信は禁物です。

この目的なら、短期債だけではヘッジ効果が弱くなりがちなので、中期国債(デュレーション中程度)を軸に、状況に応じて比率を調整する考え方が現実的です。要は「安全」ではなく、相関が下がりやすい構成を狙うという発想です。

目的③:インカム(利回りを取りに行く)

利回り目的で社債やハイイールド債ETFを買う場合、それは“守り”というよりリスクを取る投資です。株式に近い値動きをする可能性を理解したうえで、ポートフォリオの中で「リスク枠」として管理する必要があります。

インカム狙いなら、以下を最低限確認してください。信用格付け分布(投資適格か)デュレーション分散度(発行体数)過去の最大下落。これらを見ずに分配利回りだけで買うと、下落局面で精神的に耐えられません。

ETF選びで必ず見るべき指標:初心者でもここだけは押さえる

債券ETFのページ(運用会社のファクトシート等)には専門用語が多いですが、最低限は次の5つだけ見ればOKです。

①デュレーション:金利1%変動への感度。これが大きいほど価格が動く。
②平均残存期間(平均満期):長いほど金利変動に弱い傾向。
③信用格付け:社債なら特に重要。投資適格中心か、低格付けが多いか。
④利回り(SEC利回り等):今の利回り水準の目安。ただし価格変動の補償ではない。
⑤経費率(信託報酬):長期ほど効く。守り枠のETFでも地味に差が出る。

債券ETFを“安全資産に近づける”ための現実的なルール

最後に、実務的に使えるルールを提示します。これは個別商品の推奨ではなく、意思決定の型です。

ルール1:目的が「守り」ならデュレーション上限を決める
たとえば生活防衛枠なら「デュレーション3以下」のように数値で縛る。これだけで大事故が減ります。

ルール2:外貨建てを守り枠に入れるなら“為替込み”で耐えられるか検証する
債券価格が±5%でも、円高で-10%になれば守りになりません。為替変動を想定して資金を置く。

ルール3:分配利回りで判断しない。最大下落と回復期間を先に見る
守り枠で重要なのは「いざという時にどれだけ減るか」です。利回りはその次です。

ルール4:株と債券の同時下落が起きる前提で、現金・短期債の比率を確保する
“最後の砦”として、価格変動が小さい資産(現金同等物)をポートフォリオに残す。

まとめ:債券ETFは「安全」ではなく「設計次第で守りに使える」

債券ETFが安全資産だと断言できない理由は、ETFが市場価格で常に評価される仕組みだからです。特にデュレーションが大きい商品は、金利上昇局面で大きく下落します。さらに社債比率が高いETFは信用リスクも抱え、株式と同時に弱くなることがあります。外貨建てなら為替リスクも上乗せです。

一方で、目的(生活防衛/株のクッション/インカム)を分け、デュレーション・信用格付け・為替を設計すれば、債券ETFは守りの道具として機能します。ポイントは「安全資産を買う」のではなく、安全度を自分で設計することです。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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