「Web3銘柄(暗号資産・トークン・Web3関連プロジェクト)」と「株式」は、どちらも“将来の価値に賭ける”という点では似ています。しかし、実務としての勝ち筋はかなり違います。株式の常識をそのままWeb3に持ち込むと、期待したリターンどころか、思考の前提がズレて損をしやすい。逆も同じです。
この記事では、初心者でも腹落ちするように「何が決定的に違うのか」「どう評価し、どうリスク管理すべきか」を具体例つきで徹底整理します。Web3は夢も大きい一方、バグ・規制・希薄化(トークン供給増)・マーケット構造の癖が強い。ここを理解すると、無駄な損失が減り、狙うべき局面が見えるようになります。
- 結論:Web3は“事業”より“市場設計”に賭ける比重が大きい
- 資産の「権利」が根本的に違う:株主=残余財産請求権、トークン=設計次第
- バリュエーションの“物差し”が違う:PERの代わりに「供給増と需要構造」を見る
- 「希薄化」が日常:株式の増資より頻度が高く、しかも見落としやすい
- 「財務諸表」がない・弱い:監査文化と会計の蓄積が薄い
- 規制リスクの質が違う:株式は枠内で戦うが、Web3は“枠が動く”
- 市場参加者が違う:株は機関比率が高く、Web3は“流動性の正体”を疑う
- 情報優位の作り方が違う:IRよりも「設計図」と「実装」を読む
- 評価軸を“株の型”から“Web3の型”に置き換える:簡易フレーム
- 具体例:同じ「Web3関連」でも投資対象が変わると論点が変わる
- 個人投資家向け:Web3で損を減らすための売買設計(超実用)
- 心理的な落とし穴:株の成功体験がWeb3では毒になる瞬間
- 最後に:Web3を「株式の代替」ではなく「別のアセット」として扱う
結論:Web3は“事業”より“市場設計”に賭ける比重が大きい
株式投資は、最終的に「企業が稼ぐキャッシュフロー」に回帰します。売上、利益、投下資本、配当、自社株買い。遠回りでも、価値の根っこは“稼ぐ力”です。一方、Web3銘柄は「市場設計(トークノミクス、供給スケジュール、需要の作り方、分配ルール)」が、リターンに直結します。プロダクトが良いだけでは足りず、トークンの設計が悪いと価格は上がりません。逆に、プロダクトが未成熟でも、市場設計と流動性が上手いと短期で跳ねることもあります。
つまり、Web3では“企業分析”に近いことをしつつ、同時に“マーケットマイクロストラクチャ(流動性・需給・参加者構造)”の比重が上がる、と理解してください。
資産の「権利」が根本的に違う:株主=残余財産請求権、トークン=設計次第
株式は会社法などの枠組みがあり、株主の権利が比較的明確です。配当を出す義務はありませんが、株主総会、議決権、残余財産請求権など、制度設計が硬い。企業が利益を積み上げれば、理屈の上では株主価値が高まりやすい。
一方でトークンは「そのトークンが何の権利を表すか」が案件ごとにバラバラです。単なるガバナンス投票券、手数料割引券、サービス利用権、将来の分配の可能性…など、設計次第。株式と違い、“儲かるプロジェクト=トークン価格が上がる”とは限りません。価値がプロトコル利用者や開発者に流れ、トークンに捕捉されない設計が普通に存在します。
具体例を挙げます。ある分散型取引所(DEX)が利用者増で手数料収入を伸ばしても、その手数料がトークン買い戻しやバーン(焼却)に回らない設計なら、トークン価格は需給次第で伸びません。株なら利益成長が株価の論拠になりやすいのに、Web3では「価値の捕捉ルート」が別途必要です。
バリュエーションの“物差し”が違う:PERの代わりに「供給増と需要構造」を見る
株式はPER、PBR、EV/EBITDA、配当利回りなど“定番の物差し”があります。完璧ではないにせよ、比較可能性が高い。Web3は、似た指標があっても信頼性が揺らぎます。なぜなら、トークン供給が増える(ロック解除、報酬発行)影響が大きく、短中期の価格は需給に引っ張られるからです。
Web3でまず見るべきは、次の3点です。
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供給サイド:総供給(Max supply)、流通供給(Circulating)、発行スケジュール、ロック解除(Unlock)イベント、ステーキング報酬のインフレ率
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需要サイド:トークンが必要になる利用行動(ガス代、担保、手数料支払い、ガバナンス参加、インセンティブ獲得)と、その需要が“自然需要”か“補助金需要”か
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価値捕捉:バーン、買い戻し、手数料分配、担保需要によるロック、プロトコル収益とトークン価格の接続
株のように「利益が増える→PERが見直される」という一本道になりにくいので、供給増に対して需要が勝てる構造か、を先に見ます。
「希薄化」が日常:株式の増資より頻度が高く、しかも見落としやすい
株式の希薄化(増資、新株予約権、ストックオプション)はイベントとして目立ちます。IRも出ます。Web3では、希薄化に相当する現象が“仕様”として組み込まれていることが多い。例として、ステーキング報酬の発行、流動性マイニング、開発者基金への継続発行、ロック解除スケジュールなどです。
初心者がよくやる失敗は「時価総額(Market cap)が低い=伸びしろ」とだけ判断してしまうこと。流通供給が少ないだけで、半年後にロック解除で供給が2倍、3倍になる案件は普通にあります。株式で言えば“将来の増資が確定している”状態に近い。ここを見ないと、上がったところで供給が降ってきて上値が重くなる、というパターンにハマります。
対策は単純で、Fully Diluted Valuation(FDV)と、今後のアンロック量(出来高に対する比率)を必ず確認し、需給の重しを定量的に見積もることです。
「財務諸表」がない・弱い:監査文化と会計の蓄積が薄い
株式は財務諸表があり、監査もあり、会計基準の積み上げがあります。粉飾はありますが、少なくとも“嘘をつくコスト”は高い。Web3は、オンチェーンデータで透明な部分もある一方、法人の財務が見えない、収益が分散している、トレジャリー管理が不透明、というケースがまだ多い。
「オンチェーンで見えるから安心」と言い切るのも危険です。見えるのはチェーン上の資金移動で、開発チームの法人口座やオフチェーン契約は見えません。さらに、スマートコントラクトのバグやハッキングで“財務が一瞬で蒸発”することもある。株式で言えば、金庫に穴が空いている状態です。
このためWeb3の分析では、財務諸表の代わりに、次の確認が重要になります。
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監査(スマートコントラクト監査)の実施有無、監査レポートの質、過去のインシデント
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トレジャリー(プロジェクト資金)の保管先、マルチシグ、引き出し権限の分散
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収益(手数料など)のオンチェーン可視性、データダッシュボードの整備度
規制リスクの質が違う:株式は枠内で戦うが、Web3は“枠が動く”
株式市場は規制の枠組みが比較的安定しています。ルール変更はあっても頻繁ではなく、移行措置もある。Web3は国ごとに扱いが割れ、突然の規制強化で取引所から上場廃止、流動性が消える、サービス提供地域が制限される、ということが起こり得ます。
投資判断として重要なのは、プロジェクトの中核機能が「規制と衝突しやすいか」です。たとえば、匿名性が高いミキサー、無許可の証券性が疑われやすい設計、特定国の当局に睨まれやすい領域は、技術が優れていても市場アクセスを失う可能性があります。株式なら“事業リスク”として織り込むだけですが、Web3では“市場そのものが閉じる”形になりやすい点が違います。
市場参加者が違う:株は機関比率が高く、Web3は“流動性の正体”を疑う
株式は長期資金(年金、投信、保険)や機関投資家が厚く、指数連動資金もあります。Web3は短期の裁定、資金循環、ポイント狙い、エアドロ狙いなど、動機が短期寄りになりやすい。出来高が多くても、その多くが“補助金(インセンティブ)”で作られていることがある。
具体的には、流動性マイニングで高利回りを撒くと、TVL(預かり資産)が増えます。しかし利回りが落ちた瞬間に資金が抜け、価格も崩れやすい。株式で言えば、優待目当ての短期資金が殺到しているようなものです。数字の見かけに騙されず、その需要が“補助金がなくても残るか”を問い続けてください。
情報優位の作り方が違う:IRよりも「設計図」と「実装」を読む
株式はIR資料、決算説明、業界統計、競合比較などが中心です。Web3では、ホワイトペーパーや設計ドキュメント、トークン配布、コード、ガバナンス提案、監査レポート、オンチェーン指標が重要になります。初心者がいきなりコードを読むのは大変ですが、最低限“何が価格の需要を生むのか”を文章で説明できる案件を選ぶべきです。
ここで使える実践的な質問を置きます。
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このトークンを持つ理由は「将来上がるから」以外にあるか?(利用・担保・手数料・分配など)
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供給が増える理由は何か?それは価値創造に対して妥当か?
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需要は“自然発生”か、“報酬で買っている”か?
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競合に対する優位性は「技術」か「流動性」か「規模」か?そして再現困難か?
これに答えられない案件は、株式で言えば「ビジネスモデル不明の赤字企業」に近い。短期投機なら別ですが、投資としては難易度が上がります。
評価軸を“株の型”から“Web3の型”に置き換える:簡易フレーム
初心者向けに、Web3銘柄を評価するための“置き換え表現”を作っておきます。表は出しませんが、頭の中でこう変換してください。
株のチェック:売上・利益・成長率・参入障壁・ガバナンス・財務健全性・株主還元
Web3のチェック:プロトコル収益(または手数料)・利用者成長・ネットワーク効果・攻撃耐性・トークノミクス・権限設計・価値捕捉
特に“攻撃耐性”は株にはない概念です。ブリッジ、オラクル、スマートコントラクトは攻撃面積があり、1回の事故が致命傷になります。過去の事故歴、監査、バグバウンティ、設計の単純さ(複雑=リスク増)を見てください。
具体例:同じ「Web3関連」でも投資対象が変わると論点が変わる
Web3関連には大きく3種類あります。
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①トークン(プロトコル):オンチェーンの需要・供給・価値捕捉が中心。アンロックとインフレ率が効く。
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②株式(Web3企業):取引所運営会社、マイニング会社、インフラ企業など。最終的には企業収益とキャッシュフロー。
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③周辺銘柄(半導体、セキュリティ等):Web3ブームの波及を受けるが、事業の柱は別の場合も多い。
たとえば「取引所トークン」と「取引所の株」は、似て非なるものです。株は取引所の利益に回帰しやすいが、トークンは“割引やバーン設計が効くか”で価格挙動が変わる。Web3関連と一括りにせず、どのレイヤーに賭けているのか(プロトコル・企業・周辺)を明確にしてください。
個人投資家向け:Web3で損を減らすための売買設計(超実用)
Web3銘柄は値動きが荒いので、分析より先に“負け方”を設計するのが実用的です。以下は現実的に効きます。
①サイズを小さく固定
Web3はブラックスワン(規制、ハック、上場廃止)があるので、1銘柄への集中は危険です。株の成長株よりも小さく、まずは「失っても致命傷にならない比率」に固定します。リターンは分散で取りに行く発想の方が安定します。
②“アンロック前後”をカレンダー化
株の決算カレンダーのように、Web3はアンロック・大型エアドロ・報酬変更・ガバナンス提案の実施日が需給を揺らします。必ず日付ベースで管理します。材料が出てから慌てると遅いです。
③利回りに飛びつかない
高APYは、たいてい“トークン発行=希薄化”の裏返しです。株で言う高配当の裏に減配リスクがあるのと同じ。利回りの原資が手数料収益か、発行による補助金かを分けてください。後者は長続きしません。
④出口を分割しておく
急騰しやすい反面、急落も速い。利確・損切りの基準を分割(例:20%上昇で一部、50%で一部)すると、メンタルが安定しやすい。株よりも“機械的”が有利です。
心理的な落とし穴:株の成功体験がWeb3では毒になる瞬間
株でうまくいった人ほど、Web3でやりがちな失敗があります。
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「良いプロダクトなら勝つ」と思い込む:Web3はトークン設計が悪いと価格に反映されない。
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「割安」を信じすぎる:FDVやアンロックを見ない割安感は錯覚になりやすい。
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長期握力=正義と思う:株は事業が伸びれば報われるが、Web3は供給増・規制・競合で前提が壊れやすい。
反対に、Web3で勝っている人の思考は「前提が壊れたら撤退」「需給と設計を最優先」「情報はオンチェーンと実装を見る」が多い。株の長期投資の美徳を、Web3にそのまま輸入しない方がいいです。
最後に:Web3を「株式の代替」ではなく「別のアセット」として扱う
Web3銘柄と株式投資は、リスク源泉が違います。株は景気・金利・企業競争・会計。Web3はそれに加えて、プロトコル設計・供給スケジュール・技術リスク・規制の不確実性が乗ります。だからこそ、同じ尺度で比較しない。
もしあなたが株式投資の経験者なら、Web3は「分析の対象」ではなく「設計された市場に参加する行為」と捉えると判断がブレにくい。初心者ならなおさら、まずは小さく始め、アンロックと価値捕捉を理解し、補助金需要を見抜く。これだけで、負け方が改善し、勝てる局面が見えてきます。


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