長期金利とREIT価格の関係を「利回り・物件価値・資金調達」から分解する

REIT

REIT(不動産投資信託)は「金利が上がると弱い」と言われがちです。たしかに長期金利(10年国債利回りなど)が上昇する局面で、REIT指数が株式より先に売られる場面は多くあります。

ただし、ここでありがちな誤解があります。「長期金利が上がったらREITは必ず下がる」「長期金利が下がればREITは必ず上がる」という単純な図式です。実務的には、長期金利はREIT価格を動かす重要変数のひとつでしかなく、同じ金利上昇でも値動きが真逆になる局面があります。

この記事では、長期金利とREIT価格の関係を、(1)分配金利回り(ディスカウント率)、(2)物件価値(キャップレート)、(3)資金調達コスト(借入金利・LTV)という3つの経路に分解し、最後に「この局面では何を見て、どう判断するか」まで落とし込みます。単なる用語解説ではなく、あなたが実際に売買や積立の判断をするためのフレームにします。

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【DMM FX】入金
  1. まず結論:REIT価格は「利回りの競争」で決まるが、利回りは3つの要因で動く
  2. 基礎:長期金利とは何か。なぜREITは短期金利より長期金利を意識されるのか
  3. 経路1:分配金利回り(ディスカウント率)のメカニズム
  4. 経路2:物件価値(キャップレート)を通じた影響
  5. 経路3:資金調達コスト(借入金利・LTV・満期構成)を通じた影響
    1. (1)固定金利比率と借入の平均残存期間
    2. (2)LTV(Loan to Value:借入比率)
    3. (3)増資・物件売買のやり方(資本政策)
  6. よくある誤解:REITの「高利回り」は買いサインではない
  7. 局面別の見方:同じ金利上昇でも結果が違う4つのシナリオ
    1. シナリオA:景気が強く、インフレで金利が上がる(リスクオン型)
    2. シナリオB:景気が弱いのに金利が上がる(スタグフレーション型)
    3. シナリオC:金利は下がるが、信用不安でスプレッドが拡大する(リスクオフ型)
    4. シナリオD:金利が下がり、景気も悪くない(ゴルディロックス型)
  8. 実戦:あなたがチェックすべき指標と読み方(銘柄選定にもETFにも効く)
    1. (1)分配金利回りと長期金利の差(スプレッド)
    2. (2)NAV倍率(P/NAV)
    3. (3)借入の固定比率、平均残存期間、借換え集中
    4. (4)LTVと含み損への耐性
    5. (5)賃料の改定余地と契約の短さ
  9. 具体例:金利が上がった時に「買ってよいREIT」と「避けたいREIT」の違い
  10. ETFでREITに投資する場合の落とし穴と対策
  11. 売買・積立の実務:金利を理由に慌てないためのルール設計
  12. まとめ:長期金利を「敵」ではなく「価格を歪める装置」として使う

まず結論:REIT価格は「利回りの競争」で決まるが、利回りは3つの要因で動く

REITの価格は、ざっくり言えば「分配金÷利回り」で決まります。分配金が同じでも、投資家が要求する利回り(要求リターン)が上がれば価格は下がり、要求利回りが下がれば価格は上がります。

ここで長期金利が効くのは、要求利回りの構成要素に「無リスク金利」が含まれるからです。つまり、長期金利が上昇すると「最低限これくらいの利回りが欲しい」という基準が上がり、REITは価格を下げて利回りを上げる方向に調整されやすい。これが一般に言われる逆相関の正体です。

しかし、要求利回りは長期金利だけでは決まりません。主に次の3つが同時に動きます。

①長期金利(無リスク金利)…基準点。
②リスクプレミアム…景気不安、信用不安、需給、ボラティリティで変動。
③分配金見通し…賃料、稼働率、物件売買益、コスト、金利負担で変動。

同じ「長期金利+0.5%」でも、リスクプレミアムが縮む局面(景気が強い、リスクオン)ならREITは下がらないことがあります。逆に長期金利が横ばいでも、信用不安が出ればリスクプレミアムが跳ねてREITが急落します。

基礎:長期金利とは何か。なぜREITは短期金利より長期金利を意識されるのか

長期金利は、一般に10年国債利回りなど「長い期間の金利水準」を指します。REITが長期金利とセットで語られやすい理由はシンプルで、REITの価値が「将来の分配金(キャッシュフロー)」の現在価値で決まるからです。割引率(ディスカウント率)が上がると現在価値が下がる、という仕組みが最もストレートに効きます。

一方、短期金利(政策金利)は資金調達コストに直結します。REITは借入が多いので短期金利も重要です。ただ、金融市場では「将来の政策金利の期待」を長期金利が先に織り込むことが多く、また投資家が他資産(国債など)と比較するのも長期金利なので、株価チャート上は長期金利との連動が目立ちやすい、という事情があります。

経路1:分配金利回り(ディスカウント率)のメカニズム

ここが一番わかりやすい部分です。例えば、あるREITの年間分配金が100円だとします。

投資家が「このREITなら利回り4%は欲しい」と思うなら、価格は100円÷0.04=2,500円です。
長期金利上昇などで「利回り5%は欲しい」に変われば、価格は100円÷0.05=2,000円まで下がります。

このとき分配金が変わっていないのに、要求利回りが上がっただけで価格は20%下がります。これが「金利に弱い」と言われる最大の理由です。

ただし実際は、要求利回りの上昇と同時に分配金見通しも動きます。景気が強く賃料が上がる局面なら、分配金が100円→110円に増えるかもしれません。そうなると、利回り5%でも価格は110円÷0.05=2,200円で、下落幅は小さくなります。

つまり、「金利上昇=REIT下落」を鵜呑みにするのではなく、分配金が増える局面かどうか(賃料・稼働率・費用)をセットで評価するのが実戦的です。

経路2:物件価値(キャップレート)を通じた影響

REITが保有する不動産の評価額は、ざっくり言えば「NOI(純営業収益)÷キャップレート」で決まります。キャップレートは不動産の利回りのようなものです。

例えば、あるビルのNOIが1億円で、キャップレート4%なら、評価額は1億円÷0.04=25億円です。キャップレートが5%に上がれば、評価額は1億円÷0.05=20億円。これだけで20%下がります。

キャップレートは長期金利に影響されます。長期金利が上がれば、投資家は不動産にもより高い利回りを求めるため、キャップレートが上がりやすい。結果として、保有不動産の評価額が下がり、NAV(純資産価値)が低下します。NAVの低下はREIT価格の下押し要因になります。

ただし、キャップレートは金利だけで決まるわけではありません。物件の希少性、立地、テナントの強さ、需給、投資家のリスク許容度で動きます。例えば都心一等地の優良物件は、多少金利が上がってもキャップレートが上がりにくい(=価値が崩れにくい)ことがあります。逆に、供給過多や空室リスクが意識されるセクター(例:一部のオフィス、ホテルの局面)では、金利が小動きでもキャップレートが跳ね上がります。

経路3:資金調達コスト(借入金利・LTV・満期構成)を通じた影響

REITは物件を買うために借入を活用します。ここで重要なのは「金利が上がると借入コストが増え、分配金が減る」という経路です。

ただ、どの程度効くかはREITごとにまったく違います。チェックすべきは次の3点です。

(1)固定金利比率と借入の平均残存期間

固定金利比率が高く、借入の平均残存期間(デュレーション)が長いREITは、短期的には金利上昇の影響が出にくいです。なぜなら、既存の借入金利がロックされているからです。逆に変動金利が多い、借換えが近いREITは、金利上昇が分配金に直撃します。

具体例で見ましょう。借入残高が1,000億円のREITがあり、平均金利が0.8%だとします。金利が1.3%に上がる(+0.5%)と、年間の利息は(1,000億×0.5%)=5億円増えます。分配金原資が年間50億円なら、利息増だけで10%分が削られます。これは価格に効きます。

ただし固定化されていればこの増加は「将来」まで持ち越される。したがって、金利上昇局面でも、固定比率や残存期間が強いREITは相対的に耐性がある、という見方ができます。

(2)LTV(Loan to Value:借入比率)

LTVが高いほど、金利上昇の影響は大きくなります。なぜなら、同じ金利上昇でも利息が乗る元本が大きいからです。さらに、物件価値(評価額)が下がるとLTVは自動的に上がります。LTVが上がりすぎると、格付けや借入条件が悪化し、二重に苦しくなります。

(3)増資・物件売買のやり方(資本政策)

金利上昇局面では、借入でレバレッジを効かせて物件を増やす戦略が取りづらくなります。増資も、株価が下がっていると希薄化(1口あたり価値の低下)を嫌気されやすい。結果として成長が鈍り、将来の分配金成長期待が落ちることがあります。

逆に、金利が高い局面でも「高稼働・高賃料の物件に入替え」「スポンサー力で優良案件を取れる」「賃料連動でインフレ転嫁できる」タイプは、分配金を守りやすい。ここが銘柄差になります。

よくある誤解:REITの「高利回り」は買いサインではない

金利上昇局面でREITが売られると、分配金利回りが上がります。ここで初心者がやりがちな失敗が「利回りが高くなったからお得」と飛びつくことです。

高利回りは、(1)価格が下がっただけ、(2)分配金が将来下がる見込み、(3)信用不安でリスクプレミアムが上がった、のいずれかです。(1)ならチャンスになり得ますが、(2)(3)なら“高利回りの罠”です。

見分けるには、分配金のカバー状況(賃料・稼働率のトレンド、金利負担の増え方)と、バランスシートの余裕(LTV、手元流動性、借換えの壁)を必ずセットで見てください。

局面別の見方:同じ金利上昇でも結果が違う4つのシナリオ

シナリオA:景気が強く、インフレで金利が上がる(リスクオン型)

この局面では、賃料が上がる、稼働率が良い、ホテルや商業が回復するなど、分配金が増える方向の力も働きます。長期金利は上がっているが、リスクプレミアムは縮みやすい。結果としてREITは「下がりにくい」か、セクター選別で強弱が出ます。

ここで注目すべきは、インフレ転嫁のしやすさです。契約が短く賃料改定が早い(ホテル、住宅の一部、物流の一部)や、テナント需要が強いエリアは有利です。一方、賃料改定が遅い・空室が出やすいタイプは苦しい。

シナリオB:景気が弱いのに金利が上がる(スタグフレーション型)

最悪に近い局面です。金利上昇で割引率が上がるのに、景気が弱く分配金は増えない。むしろ空室や賃料下落で分配金が減るリスクが高い。リスクプレミアムも上がりやすく、REITは二重に売られます。

この局面では「分配金の減少に耐える財務」と「スポンサー・資金繰り」が勝負です。LTVが低く、借入の固定化が進み、手元資金に余裕があるREITが相対的に強くなります。

シナリオC:金利は下がるが、信用不安でスプレッドが拡大する(リスクオフ型)

長期金利が下がれば本来REITには追い風ですが、信用不安が強いとリスクプレミアムが一気に上がり、REITは下がることがあります。「国債利回りは下がっているのにREITが弱い」場面は、ここです。

このときは金利よりも「クレジット(信用)」「流動性」「需給」を優先して見ます。投資家が現金化を急ぐと、REITは売られやすい。逆に信用不安が落ち着くと、長期金利低下の恩恵が効いてリバウンドします。

シナリオD:金利が下がり、景気も悪くない(ゴルディロックス型)

REITにとって最も素直に追い風です。割引率が下がり、資金調達も楽になり、分配金成長も期待できる。ここでは「利回りが下がっても持ち続ける」ことが合理的になりやすいです。ただし、上がり過ぎるとバリュエーション(過熱)が問題になります。

実戦:あなたがチェックすべき指標と読み方(銘柄選定にもETFにも効く)

ここからが投資の作業に直結します。J-REITでも米国REITでも、個別でもETFでも、チェックすべき軸は共通です。

(1)分配金利回りと長期金利の差(スプレッド)

REIT利回り-10年国債利回り、という差を見ます。差が極端に縮むと、投資家にとって「国債よりちょっと上」しかもらえない状態になり、REITは割高になりやすい。差が広がると割安に見えます。

ただし、差が広い理由が「分配金が危ない」なら割安ではありません。差だけで飛びつくのは危険です。差はあくまで“入口のセンサー”で、次の項目で確かめるのが正しい順番です。

(2)NAV倍率(P/NAV)

REITは保有不動産の評価額から純資産(NAV)が概算できます。市場価格がNAVに対してどれくらいか(P/NAV)を見ると、割安・割高の目安になります。

金利上昇局面では、キャップレート上昇でNAV自体が下がる可能性があります。つまり、今見えているNAVが将来維持できるか、という視点が必要です。「P/NAVが低い=安全」ではありません。NAVが下方修正されると、低く見えていた倍率が普通に戻るだけ、ということが起きます。

(3)借入の固定比率、平均残存期間、借換え集中

目論見書や決算資料で、固定金利比率と平均残存期間を確認します。さらに重要なのが「満期がいつ集中しているか」です。借換えが特定年度に集中していると、その年に金利ショックが来たときの影響が跳ねます。

(4)LTVと含み損への耐性

LTVは低いほど安全です。ただし低ければ良いというより、「どれだけ上がっても耐えられるか」を見ます。例えばLTV40%が上限の方針で、いま35%なら余裕があります。いま45%で上限50%なら、少しの評価額下落で危険域に入ります。

(5)賃料の改定余地と契約の短さ

インフレ局面では、賃料改定が早くできるかが重要です。契約が長く固定賃料だと、インフレで実質価値が削られます。逆に契約が短い、賃料が指数連動、稼働がタイトなエリアだとインフレ転嫁が効きます。

具体例:金利が上がった時に「買ってよいREIT」と「避けたいREIT」の違い

ここはイメージで掴んでください。個別銘柄名を出さなくても、判断軸は作れます。

買ってよい可能性が高いのは、①固定金利比率が高い、②借換えが分散、③LTVが低い、④スポンサーが強い、⑤賃料改定余地がある、というタイプです。金利上昇で一時的に売られて利回りが上がっているなら、長期で拾う価値が出ます。

避けたいのは、①変動金利が多い、②借換えが近い、③LTVが高い、④空室リスクが高いセクター、⑤増資依存が強い、というタイプです。金利上昇のたびに分配金が削られ、さらに評価額低下で財務が悪化する“負の循環”に入りやすいからです。

重要なのは、「このREITは金利上昇に対してどの経路が弱いのか」を特定することです。割引率の経路なのか、物件価値の経路なのか、借入コストの経路なのか。弱点がひとつで、他が強いなら対処できます。弱点が全部にあると厳しい。

ETFでREITに投資する場合の落とし穴と対策

個別が難しい場合、REIT ETFは便利です。ただしETFは「良いREITも悪いREITも丸ごと」になります。金利上昇局面では、弱いREITの比率が高い指数だと、全体が引っ張られることがあります。

対策は2つです。ひとつは「地域分散」です。日本だけ、米国だけに偏ると、金利局面の影響が偏ります。もうひとつは「セクター分散」です。物流、住宅、データセンター、ヘルスケア、商業など、金利に対する感応度が異なります。ETFの中身(上位構成銘柄やセクター比率)を確認し、金利上昇に弱いセクターが偏っていないかを見るだけでも、結果が変わります。

売買・積立の実務:金利を理由に慌てないためのルール設計

初心者が最もやりがちなのは、「金利が上がったニュースで売り、落ち着いたら買い戻す」という往復ビンタです。金利はニュースで見えてから動くのではなく、期待で先に動きます。したがって、ニュース反応で売買すると遅れやすい。

実務的なルールは次のように設計するとブレが減ります。

第一に、REIT比率をポートフォリオの“サテライト”として固定し、金利局面で一喜一憂しない枠を作る。例えば全資産の10%をREIT枠にする、と決めると、下落時は機械的にリバランスで買い増す発想になります。

第二に、買い増し条件を「利回り水準」や「スプレッド水準」で決める。ただし、利回りだけではなく、財務が悪化していないこと(LTV、借換え、分配金の維持可能性)を確認する“安全装置”を入れます。

第三に、金利上昇を恐れるのではなく、「どのタイプの金利上昇か」を分類する。景気が強いインフレなのか、信用不安のリスクオフなのか。分類ができれば、売買のスピードも量も適正になります。

まとめ:長期金利を「敵」ではなく「価格を歪める装置」として使う

長期金利は、REIT価格を動かす強いドライバーです。ただし、あなたがやるべきことは「金利を当てる」ことではありません。金利が動いたときに、REITの価格がどの経路で動いているのかを判定し、割安・割高の歪みを利用することです。

最後に、覚えるべき要点を文章で言い切ります。REITは、長期金利が上がれば要求利回りが上がり価格が下がりやすい。しかし、分配金が増える局面やリスクプレミアムが縮む局面では下がらないことがある。物件価値はキャップレートで決まり、金利だけでなく需給と質で動く。資金調達は固定比率と満期構成で差が出る。ここを見れば、同じ金利局面でも勝てる側に寄せられます。

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