アイアンコンドルの勝率設計:レンジ相場で確率優位を作る実践フレーム

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この記事で扱うこと(前提)

アイアンコンドルは「上も下も一定範囲に収まれば利益が出る」構造のオプション戦略です。だからこそ初心者が最初に誤解しがちなのは、勝率(当たりやすさ)を上げれば安全になるという発想です。実際は、勝率を上げるほど(より遠いアウト・オブ・ザ・マネーに売るほど)受け取れるプレミアムが薄くなり、1回の負けで複数回の勝ちを消し飛ばす形になりやすいです。

本稿は「勝率を上げる」ではなく、勝率・期待値・最大損失・資金効率・メンタル耐性を同時に成立させる設計を、具体例を交えて解説します。指数オプション(例:S&P500系)でも、個別株オプションでも、考え方は同じです。

アイアンコンドルの基本構造を1分で理解する

アイアンコンドルは、コール側のクレジットスプレッド(コールを売って、さらに外側のコールを買う)と、プット側のクレジットスプレッド(プットを売って、さらに外側のプットを買う)を同時に組み合わせたものです。両側からプレミアムを受け取るので「クレジット戦略」と呼ばれます。

典型的には、以下の4本で構成されます。

  • プット買い(保険):下落が大きい時の損失を限定する。
  • プット売り(収益源):下方向のレンジ内ならプレミアムが利益になる。
  • コール売り(収益源):上方向のレンジ内ならプレミアムが利益になる。
  • コール買い(保険):上昇が大きい時の損失を限定する。

最大利益は受け取ったプレミアム(クレジット)で上限が決まり、最大損失はスプレッド幅から受け取ったプレミアムを引いた値で上限が決まります。つまり、小さく勝って、大きく負けうる性質が最初から内蔵されています。ここを設計で抑えます。

勝率設計の結論:3つの設計レバー

勝率(満期で利益になる確率)を動かすレバーは、基本的に3つしかありません。

  • 売りストライクの距離(デルタ):遠くに売るほど勝率は上がるが、クレジットは減る。
  • 期限(DTE):短いほど時間価値減衰が早く勝ちやすいが、ガンマが跳ねやすい。
  • スプレッド幅:幅を広げるほど最大損失は増えるが、受け取れるクレジット比率が上がりやすい(同じデルタ条件なら)。

初心者がやりがちなのは、売りストライクを遠くにして勝率だけ上げ、スプレッド幅を狭めて「安全そう」に見せることです。しかし、受け取るクレジットが薄くなり、損益分岐に対して余裕がない設計になりがちです。結果として、小さな揺れで建玉が含み損になり、損切りばかりになるケースが多発します。

勝率と期待値は別物:数式ではなく感覚で押さえる

勝率が高くても期待値が低い(またはマイナス)の戦略は普通に存在します。極端な例として、コイン投げで「表が出たら+1円、裏が出たら-100円」という賭けは、勝率50%でも期待値は大幅マイナスです。アイアンコンドルも構造的に「勝率は作りやすいが、負けの質が悪い」方向に傾きやすいので、期待値設計が必須です。

期待値を良くするための直感は次の通りです。

  • 受け取るクレジットが薄すぎると、勝っても積み上がらない。
  • 損失が膨らむ局面(トレンド・急変・ボラ急騰)で、損失を限定できないと統計的に破綻する。
  • よって、「負けを軽くする設計」と「勝ちを積み上げる設計」の両方が必要。

実践的な目安①:売りストライクは“デルタ”で決める

オプションのデルタは雑に言えば「そのオプションがイン・ザ・マネーで終わる確率の目安」に近い使い方ができます(厳密ではありませんが実務上のラフな指標として有効です)。

勝率設計のベースとして、次のようなレンジが扱いやすいです。

  • 攻め(クレジット重視):売りデルタ 0.20〜0.25
  • 標準(バランス):売りデルタ 0.10〜0.16
  • 守り(勝率重視):売りデルタ 0.05〜0.10

初心者に勧めるのは「標準(0.10〜0.16)」です。理由は、守り(0.05〜0.10)は一見安全ですが、クレジットが薄く、手数料・スリッページ・微妙な相場揺れに勝てず、体感的に“勝っているのに増えない”状態になりやすいからです。

実践的な目安②:期限(DTE)は“ガンマの跳ね”で選ぶ

期限が短いほどセータ(時間価値の減少)で有利に見えますが、満期が近づくにつれガンマが大きくなります。ガンマが大きいというのは、価格が少し動いただけでデルタが急変し、損益が跳ねるということです。0DTEや1〜3DTEでのアイアンコンドルは、設計を間違えると一撃で最大損失に到達します。

初心者向けの現実的な落とし所は、21〜45DTEで建てて、利益が出たら早めに降りるです。満期まで持つ設計は理論上分かりやすいですが、実務ではイベント(CPI、雇用統計、FOMC、決算など)を跨ぐだけでIVが変形し、評価損益が大きく振れるため、メンタルと資金繰りに悪影響が出ます。

実践的な目安③:スプレッド幅は“受取クレジット比率”で決める

スプレッド幅をいくらにするかは、商品・価格帯・流動性で変わります。ここでは一般化したルールとして、受け取るクレジットがスプレッド幅の20〜35%に入るように設計すると、勝率と期待値のバランスが取りやすいです。

たとえば、片側のスプレッド幅が5(幅5のスプレッド)なら、両側合計で受け取るクレジットが1.0〜1.75程度になるイメージです。これより薄い(例:0.5未満)と、負け1回の回復に時間がかかり、損切り頻度が上がると厳しくなります。逆に厚すぎる(例:2.5以上)と勝率が落ち、連敗耐性がなくなります。

具体例:バランス型アイアンコンドルを「数字」で設計する

ここでは例として、現在価格が100の指数/ETFを想定し、30DTEで組むケースを考えます(値はイメージです)。

まず、売りデルタを0.12前後に設定します。市場のIV水準にもよりますが、だいたい現在価格から上下に5〜8%程度離れたところが候補になりやすいです。仮に、プット売りを92、コール売りを108に設定します。

次に、保険として外側を買います。幅を5にするなら、プット買いは87、コール買いは113です。これでスプレッド幅は5、受取クレジットが1.2だとすると、最大利益は+1.2、最大損失は-(5-1.2)= -3.8になります。

この設計の狙いは、レンジを広めに確保しつつ、負けても損失が限定され、かつ勝った時の積み上げが可能なところです。もちろん損益比は良く見えませんが、重要なのは「負けの頻度」と「負けの質」を、相場環境に合わせてコントロールできる点です。

「勝率が高いのに負ける」典型パターン:IVの上昇

アイアンコンドルで初心者が最初にぶつかる壁は、価格がレンジ内なのに含み損になる現象です。原因は主にIV(インプライド・ボラティリティ)の上昇です。

クレジット戦略はオプションを売っているため、IVが上がるとオプション価格が上がり、買い戻しコストが増えて含み損になりやすいです。特に、イベント前に建ててイベントでIVが跳ねると、価格が動かなくても評価損が膨らみます。

対策は単純で、IVが相対的に高い局面で売る(つまり“高く売る”)こと、そしてイベントを跨ぐならサイズを落とすことです。IVが低い時にアイアンコンドルを建てるのは、保険料が安い時に保険を売るのと同じで、報酬が薄い割に尾っぽのリスクを背負いやすいです。

相場環境の判定:レンジ相場をどう見抜くか

「レンジ相場ならアイアンコンドルが有利」とはよく言われますが、問題は“レンジ相場かどうか”を事前に確定できないことです。そこで、確率的にレンジ寄りかを判断するための実務的なチェックを用意します。

ポイントは3つです。

  • トレンドの強さ:移動平均の傾きが強い、または高値/安値更新が続くなら避ける。
  • 実現ボラとIVの関係:IVが実現ボラより高いなら、売りに統計的な余地が出やすい。
  • イベント密度:重要指標・決算が近いほどギャップリスクが増える。

初心者向けの実装としては、「直近20日レンジ(高値-安値)が、現在価格の例えば6〜10%程度に収まっている」「かつ大イベント直前ではない」程度の雑な判定でも、無策で突撃するより遥かにマシです。

ポジション管理が勝率を決める:満期より“途中の撤退ルール”

アイアンコンドルの勝率を実務で底上げするのは、ストライクの選び方よりも撤退ルールです。理由は、最大損失は限定されていても、満期まで放置すると「大きく負ける局面」を避けにくいからです。

現実的なルールの例を示します。

  • 利確:受取クレジットの50〜70%を回収したらクローズする(例:1.2で建てたら0.6〜0.36まで買い戻せたら利益確定)。
  • 損切り:建値の2倍の損失、または最大損失の50〜60%に到達したらクローズする。
  • 時間撤退:DTEが残り7〜10日になったら、利益が小さくても一度整理する(ガンマリスク回避)。

この3つを守るだけで、同じストライクでも結果は別物になります。特に「時間撤退」は軽視されがちですが、満期間際は小さな値動きで損益が跳ねるので、勝っているはずのポジションが一瞬で崩れます。

調整(アジャスト)の基本:やりすぎるほど損をする

含み損になると「調整して助けよう」としたくなります。しかし、頻繁な調整は手数料とスリッページを積み上げ、さらに建玉を複雑化させてミスを誘発します。初心者ほど、調整はシンプルにすべきです。

現実的な調整は次の2つに限定すると運用が安定します。

  • 片側のクローズ:上方向に寄ったらプット側だけ先に利益確定し、残りはコールスプレッドとして管理する(逆も同様)。
  • ロール:どうしても維持するなら、期限を後ろへずらしてガンマを下げ、ストライクを調整する。ただし「損失の先送り」になっていないか必ず確認する。

「中心を合わせるために両側を何度も動かす」「売りを追加して取り返す」は、負け方が一気に悪化します。調整は勝率を上げる道具ではなく、損失を管理する最後の手段と位置付ける方が良いです。

資金管理:1回の最大損失を“口座の何%”にするか

勝率設計を語るうえで、資金管理を外すのは無意味です。なぜなら、同じ戦略でもサイズが大きすぎれば、たった数回の連敗で退場するからです。

初心者に現実的な基準は、1ポジションの最大損失を口座資金の1〜2%以内に抑えることです。アイアンコンドルは「普段は勝つ」性質があるため、ついサイズを上げたくなります。しかし、ボラ急騰やギャップが起きた時に、負けが集中します。負けが集中する戦略ほど、サイズ制御が生命線です。

よくある失敗と、具体的な回避策

最後に、現場でよく見る失敗を、原因と対策までセットで整理します。

失敗1:勝率だけを追ってクレジットが薄い
原因は、デルタを低くしすぎ、スプレッド幅も狭くしていることです。対策は、売りデルタを0.10〜0.16に戻し、受取クレジット比率が20〜35%に入るよう幅を調整することです。取引回数を増やしても薄利では積み上がりません。

失敗2:イベント跨ぎでIV上昇に殴られる
原因は、IVが低い局面で売っているか、イベントの重要度に対してサイズが大きいことです。対策は、IVが相対的に高い時だけ売る、イベント週は建てない、またはサイズを半分以下に落とすことです。

失敗3:満期まで放置してガンマで破壊される
原因は、時間撤退ルールがないことです。対策は、残り7〜10日で撤退、利確は50〜70%で固定することです。満期まで粘るほど、最後の数日のリスクだけが残り、リターンは小さくなります。

まとめ:勝率は“設計”で作り、“管理”で守る

アイアンコンドルは、勝率が高く見える一方で、設計と管理を間違えると破壊力のある負けを持ちます。勝率を作るレバー(デルタ・期限・幅)を理解し、IVとイベントを意識して建て、途中撤退ルールでリスクの尖りを削る。これができれば、レンジ相場の局面で確率優位を取りにいけます。

最初の目標は「派手に勝つ」ではなく、最大損失を小さく保ったまま、勝ちを積み上げられる形を作ることです。勝率はその結果として付いてきます。

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