カバードコール戦略の最適市場:個人投資家が“取り過ぎない”プレミアム運用で資産を増やす方法

投資戦略

カバードコール戦略は、株式(またはETF)を保有しながら、その上にコールオプションを売ってプレミアム収入を得るインカム型の運用です。言い換えると「上昇の一部を放棄する代わりに、現金(プレミアム)を先にもらう」取引です。

ただし、ネット上の解説にあるような「毎月コールを売れば分配金みたいに増える」といった単純化は危険です。カバードコールの成績を左右するのは、銘柄ではなく“市場(局面)”です。プレミアムが割に合う市場でだけ売り、割に合わない市場では売らない(もしくは売る量を減らす)。これが本質です。

この記事では、初心者が陥りがちな「取り過ぎて詰む」パターンを避けつつ、カバードコールが機能しやすい最適市場を見極める具体的な手順と、再現性の高い運用ルールを、数値例とシナリオで徹底解説します。

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カバードコールの損益構造を“数字”で理解する(最初にここだけは押さえる)

カバードコールの損益は、次の3要素で決まります。

(1)保有している株(現物)の値動き
(2)売ったコールのプレミアム(受取)
(3)権利行使(コールがイン・ザ・マネーになった場合の売却=上値の上限)

例えば、あなたがETFを100口(1枚)持っていて、価格が100ドルだとします。ここで、権利行使価格105ドル、満期まで30日のコールを1枚売って、プレミアムを2ドル受け取ったとします(受取200ドル)。

満期時の損益は以下のように整理できます。

・価格が100→95(下落): 現物 -5ドル、プレミアム +2ドル、合計 -3ドル(-300ドル)
・価格が100→100(横ばい): 現物 0、プレミアム +2ドル、合計 +2ドル(+200ドル)
・価格が100→104(上昇): 現物 +4、プレミアム +2、合計 +6(+600ドル)
・価格が100→110(大幅上昇): 現物は本来 +10だが、105で売却されるので +5、プレミアム +2、合計 +7(+700ドル)

重要なのは、上昇の上限ができる一方で、下落は普通に食らうという点です。つまり、カバードコールは「下落耐性の魔法」ではなく、“横ばい〜緩やかな上昇”を現金化しやすい戦略です。逆に、急騰相場では取り逃がしが目立ち、急落相場ではプレミアムが焼け石に水になります。

「最適市場」の結論:IVが高いのに“方向感が出にくい”局面が一番うまい

カバードコールが最も機能しやすい市場を一言で言うと、「恐怖でIVが上がっているのに、価格が一方向に走りにくい局面」です。

ここでいうIV(インプライド・ボラティリティ)は、オプションの“保険料の高さ”のようなものです。IVが上がるとプレミアムが高くなり、コール売りの収益源が太くなります。

しかし、IVが高い局面には2種類あります。

・タイプA:下落の恐怖でIVが高い(乱高下、しかし大崩れしない/戻りやすい)
・タイプB:上昇の熱狂でIVが高い(踏み上げ、連続上昇、強いトレンド)

カバードコールに向くのはタイプAです。タイプBは「上値を塞ぐ」ことが致命傷になります。

初心者でも判定できる“市場スコア”の作り方(3指標だけ)

難しい計量モデルは不要です。次の3つだけで十分に戦える判定ができます。

指標1:IVランク(またはIVパーセンタイル)
・過去1年の中でIVがどの位置にあるか。
・ざっくりでよいので、IVが「高め(上位30%)」なら売り候補。

指標2:トレンド強度(移動平均の傾き)
・例えば20日移動平均と60日移動平均の関係を見る。
・強い上昇トレンド(20日が急角度で上、60日も上向き)なら、カバードコールは“売り過ぎ注意”。

指標3:イベント密度(決算・CPI・FOMCなど)
・イベント前はIVが膨らみやすい。
・ただし、イベント後にIVが急低下(IVクラッシュ)するため、「イベント前に売ってイベント後に買い戻す」のが基本。

この3指標から、あなたの中で次のような簡易ルールを作ります。

・IVが高い:売る(ただし上昇トレンドが強いなら“控えめ”)
・IVが低い:売らない(値上がり局面の取り逃がしだけ増える)
・イベント前でIVが上がっている:短期で売る(期間を短く)

“最適市場”の具体例:同じ銘柄でも、売る月と売らない月がある

具体例として、米国株インデックスETFをイメージします(個別銘柄でも考え方は同じです)。

ケース1:急落後のレンジ(恐怖IV、戻り待ち)
・指数が急落してニュースが荒れている。
・しかし、下げ止まって日々上下しながら戻る。
この局面は、プレミアムが高い割に価格が一直線に上がりにくいので、カバードコールが機能しやすいです。上値を少し差し出しても、プレミアムが厚く、下落バッファにもなります。

ケース2:静かな上昇(低IV、じわ上げ)
・指数がゆっくり上がっている。
・ニュースは平穏でIVが低い。
この局面でコールを売ると、得られるプレミアムが薄いのに、上昇の上限だけが早く来ます。結果として「指数に勝てない」運用になりやすい。ここは“売らない”が正解になりがちです。

ケース3:熱狂上昇(高IVだが上昇トレンドが強い)
・急騰やテーマ相場で連続陽線。
・IVは高いが、踏み上げが起きやすい。
この局面で売るなら、(a)かなり外側の権利行使価格にするか、(b)売る数量を減らす、または(c)そもそも売らないの三択です。初心者は(c)が安全です。

初心者向けの“安全設計”:最初は「全部売らない」から始める

カバードコールで一番多い失敗は、保有分を100%カバーしてしまうことです。つまり、現物100口に対してコールを1枚売る(フルカバー)です。

フルカバーは、収益が安定しそうに見えますが、上昇局面での機会損失が大きく、心理的にも「置いていかれた感」が強くなり、ルール崩壊を招きやすいです。

そこで、初心者は次のように“部分カバー”を推奨します。

・最初の半年:保有量の30〜50%だけ売る
例:ETFを200口持っているなら、コールは1枚だけ売る(半分カバー)。

これなら、上昇相場では半分は伸びを取りに行けます。下落局面では、受取プレミアムでクッションが少し増える。心理面でも継続しやすいです。

満期とデルタの選び方:初心者は「短期・低デルタ」で事故を減らす

どのコールを売るかは、満期と権利行使価格(=デルタの大きさ)で決まります。

満期(DTE)
・初心者は7〜21日程度の短期が扱いやすいです。
理由は、時間価値の減りが早く、イベント回避(ロール)がしやすいからです。30〜45日も悪くありませんが、相場が反転したときに逃げづらくなります。

デルタ
・デルタ0.15〜0.30程度が基本帯です。
デルタが高い(0.4〜0.6)とプレミアムは増えますが、権利行使されやすく、上値をほぼ封印することになります。初心者は「プレミアムを取り過ぎない」方が長続きします。

ロール(乗り換え)の現実的ルール:機械的にやる

カバードコールの運用を“投資”として成立させるには、ロールのルールを機械化します。初心者向けの現実的ルールは以下です。

ルール1:プレミアムの50〜70%を取れたら早期買い戻し
例:2ドルで売ったコールが0.8ドルになったら買い戻す。
時間を味方にする戦略なので、粘りすぎない方がリスクが減ります。

ルール2:権利行使価格に近づいたら“同じ週のまま”外へ逃がす
価格が上がって権利行使価格に近づいた場合、満期を伸ばさずに、同じ満期で上のストライクにロール(アップ)する方法があります。これは「上値を少し取り戻す」操作です。初心者は、値動きが速い時にやると混乱しやすいので、まずはルール3を優先します。

ルール3:上昇トレンドが強い時はロールせず“手仕舞いして売らない期間を作る”
一番の防御は、無理に継続しないことです。カバードコールは常時稼働させる戦略ではありません。

“最適市場”をさらに絞る:個別株よりETFが向く理由

初心者がカバードコールを始めるなら、最初は個別株よりETFが無難です。理由はシンプルで、個別株のギャップ(急落・急騰)が大きく、イベントリスク(決算、訴訟、規制、買収)が読みにくいからです。

ETFは分散が効いており、オプション市場の流動性が高いものが多いので、スプレッド(売値と買値の差)も小さくなりやすい。初心者の実損は、こうしたスプレッドや約定の悪さでじわじわ増えます。まずは摩擦を減らすべきです。

チェックリスト:売る前に必ず確認する5項目(初心者の事故防止)

売る前に、次の5つを“必ず”確認してください。これだけで事故が減ります。

1)出来高と建玉が十分か(流動性が低いとコストが増える)
2)スプレッドが狭いか(目安:プレミアムの5%以内を狙う)
3)直近に大イベントがあるか(イベント前後で戦略が変わる)
4)あなたの現物は長期で持ちたい資産か(行使されても問題ないか)
5)フルカバーしていないか(30〜50%から)

初心者向けの運用テンプレ:月2回だけ判断する“半自動”ルール

毎日画面に張り付く必要はありません。初心者は「判断回数を減らす」ほど勝ちやすいです。以下は運用テンプレです。

ステップA:月初(または第1週)に市場判定
・IVが高めか?(上位30%目安)
・上昇トレンドが強すぎないか?
→ 条件が良い月だけ、保有の30〜50%でコールを売る。

ステップB:月中(2週目〜3週目)に1回だけ点検
・プレミアムが50〜70%減ったか?→買い戻し。
・価格がストライクに近いか?→無理に追わず、手仕舞いして休む。

ステップC:イベント月は短期化
FOMCやCPIなどが続く月は、7〜14日で売って早く閉じる。イベントで方向が出る可能性が高いので、長く持たない。

よくある誤解:カバードコールETFを買えば同じでは?

カバードコールを自分でやるのが面倒だから、カバードコールETFを買う、という選択肢はあります。ただし、初心者が誤解しやすいポイントがあります。

・分配金が多く見えても、上昇局面では指数に負けやすい(上値が常に削られる)
・分配の一部が元本取り崩しに見えるケースもある(税務上の扱いも含め複雑)
・あなたの最適市場の判断(売る月/売らない月)ができない

つまり、カバードコールETFは「常時稼働の平均的な戦略」です。この記事で強調しているのは「市場選別で優位性を作る」ことなので、思想が違います。初心者はまず小さく自分でルール運用し、感覚を掴んでから検討してください。

損失が出たときの対処:やってはいけない“ナンピン売り”

下落局面でやりがちなミスは、「下がったからプレミアムが高いはず」と考えて、より近いストライク(デルタ高め)を売ってしまうことです。これは“ナンピン売り”で、反発局面の上値をさらに潰し、戻りで取り返せなくなります。

下落局面でやるべきことは、次の順番です。

・まずポジションサイズを減らす(フルカバーを避ける)
・売るならストライクを遠くする(デルタを下げる)
・「売らない期間」を作る(休むのも戦略)

最終まとめ:カバードコールは“市場選別×控えめ運用”で勝つ

カバードコールは、やり方を間違えると「上昇を削って下落は食らう」だけになり、指数に勝てません。勝ち筋は明確で、次の3つです。

・IVが高いのに方向感が出にくい局面で売る(最適市場)
・初心者はフルカバーしない(30〜50%から)
・短期・低デルタ・機械的な買い戻しで事故を減らす

この3点を守るだけで、カバードコールは「難しいデリバティブ」ではなく、「リスクを限定しながら、相場の横揺れを現金化する運用手段」になります。最初は小さく、ルールを守れるサイズで始めてください。

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