REITのNAV割安戦略:不動産を「安く買う」ための実践ガイド

REIT

REIT(リート)は、オフィス・物流施設・住宅・商業施設などの不動産から得られる賃料収入を投資家に分配する仕組みです。株式と同じように市場で売買できる一方、裏側には「不動産(実物資産)」があり、価格の見方が株とは少し違います。

その代表がNAV(Net Asset Value:純資産価値)です。ざっくり言えば「REITが保有する不動産を時価で評価し、借入などの負債を差し引いた“資産の正味”」です。株でいうPBRに近い概念ですが、REITではNAVがより“材料として効く”局面があります。

本記事では、NAVに対して割安(ディスカウント)になったREITを狙うという、いわば「不動産を安く買う」発想の投資手順を、初心者でも再現できるように具体例込みで解説します。ポイントは、NAV割安=自動的に儲かる、ではないこと。割安に見える理由と、割安が解消する「きっかけ(カタリスト)」まで設計できるかが勝負です。

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  1. そもそもNAVとは何か:REITの“時価純資産”を理解する
  2. NAV割安(ディスカウント)とは:数字で掴む
  3. なぜNAV割安が生まれるのか:理由を分類すると判断が楽になる
    1. 1)市場全体のリスクオフで一律に売られている
    2. 2)セクター固有の逆風(オフィス不況、商業施設不振など)
    3. 3)個別銘柄の問題(増資、物件トラブル、ガバナンス不安)
  4. 初心者がまず見るべき3指標:分配金利回りより先に確認する
    1. LTV(借入比率):高すぎると金利ショックに弱い
    2. 含み益(鑑定評価の余裕):NAVの“クッション”
    3. 分配金の“質”:一時要因か、賃料収入の積み上げか
  5. NAV割安戦略のコア:ディスカウント解消の「きっかけ」を設計する
    1. きっかけ1:金利低下(または金利上昇の停止)
    2. きっかけ2:増資リスクの後退(増資を上手くやった/当面やらない)
    3. きっかけ3:資産売却・自己投資口取得(自社株買いに近い)
    4. きっかけ4:物件の稼働率改善・賃料改定が見える
    5. きっかけ5:指数リバランス・需給改善
  6. 具体例:J-REITでのNAV割安チェック手順(数字の見方を固定化する)
    1. ステップ1:P/NAVを確認し、割安度を数値化する
    2. ステップ2:LTV・金利感応度をざっくり把握する
    3. ステップ3:鑑定評価の余裕(含み益)と、鑑定の更新タイミングを意識する
    4. ステップ4:分配金が“守れる構造”かを見る
  7. “割安に見える罠”を避ける:NAV割安戦略で負ける典型パターン
    1. 罠1:NAVが下方修正されて、割安が“消えない”
    2. 罠2:高LTV×借換え集中で、増資が避けられない
    3. 罠3:利回りだけで飛びつく
  8. ポートフォリオの作り方:初心者向けの“失敗しにくい”組み立て
    1. コア:広く分散したREIT ETF(または分散銘柄)
    2. サテライト:深いディスカウントの個別REITを少額で
    3. リバランス:ディスカウントが縮んだら利益確定を“仕組み化”
  9. 売買タイミングの現実解:初心者は“底当て”より“環境変化”を拾う
    1. パターンA:市場全体が急落し、P/NAVが一段下に抜けたときに分割で入る
    2. パターンB:長期金利がピークアウトし、REIT指数が底固めした後に入る
  10. チェックリスト:購入前にこれだけは文章で確認する
  11. まとめ:NAV割安戦略は“割安の理由”と“解消のきっかけ”で勝負が決まる

そもそもNAVとは何か:REITの“時価純資産”を理解する

NAVは概念としては簡単です。

NAV=(保有不動産の時価+その他資産)-(負債)

REITは決算資料で保有物件の鑑定評価額や、NOI(純営業収益)、LTV(借入比率)などを開示します。そこから「1口あたりNAV(NAV per unit)」や「P/NAV(価格÷NAV)」が計算されます。

ここで重要なのは、NAVは“会計上の簿価”ではなく、不動産鑑定などをベースにした“時価推定”という点です。株式のBPSよりも、現実の価値に近い(ことが多い)一方で、評価は完全に客観的でも即時でもありません。たとえば急激に金利が上がった直後は、不動産取引市場の利回りが変化しても鑑定評価が追随するまでタイムラグが出ます。そのズレがチャンスにも罠にもなります。

NAV割安(ディスカウント)とは:数字で掴む

「NAV割安」は、REITの市場価格がNAVを下回っている状態です。簡単な例で考えます。

例:あるREITの1口あたりNAVが12万円、市場価格が10万円だとします。

このときP/NAVは 10万円 ÷ 12万円=0.83倍。つまりNAVに対して17%割安です。

直感的には「12万円相当の不動産の持分を、10万円で買えている」ように見えます。ただし実際は、REITは運用会社が物件を売買し、借入を増減し、将来の賃料や空室率も変わります。したがって、“割安に見える”だけで買うと痛い目を見ることがある。ここからが実務(=実際の手順)です。

なぜNAV割安が生まれるのか:理由を分類すると判断が楽になる

NAV割安が生まれる理由は多いですが、初心者が最初に押さえるべきは「割安の種類」を分けることです。ざっくり3つあります。

1)市場全体のリスクオフで一律に売られている

金利急騰、信用不安、株式急落などで、REITがまとめて売られる局面です。このときは、個別の物件や運用の良し悪しより、需給で価格が崩れます。“一律に安くなっている”可能性が高いため、NAV割安戦略が機能しやすい場面です。

2)セクター固有の逆風(オフィス不況、商業施設不振など)

例えばオフィスの空室率上昇が続く局面では、オフィス特化REITがNAV割安になりやすいです。この場合、割安は「正当化」されているかもしれません。NAVそのものが将来下がる(鑑定評価が切り下がる)リスクがあるため、買うなら“改善の兆し”が必要です。

3)個別銘柄の問題(増資、物件トラブル、ガバナンス不安)

REITは資金調達のために増資(公募増資)を行うことがあります。増資は成長投資にもなりますが、タイミングと条件次第では既存投資家の価値を希薄化させます。市場はこれを嫌い、増資懸念がある銘柄はディスカウントされがちです。割安でも“構造的に割安のまま”になり得るので要注意です。

初心者がまず見るべき3指標:分配金利回りより先に確認する

初心者は「分配金利回りが高い=お得」と考えがちですが、REITは高利回りほど危ないケースも珍しくありません。NAV割安戦略で最初に見るべきは次の3つです。

LTV(借入比率):高すぎると金利ショックに弱い

LTVは負債÷資産のような指標で、借入の大きさを表します。一般にLTVが高いほど、金利上昇局面で支払利息が増え、分配金が圧迫されます。さらに借換えが難しくなると増資や資産売却に追い込まれ、NAVも下がります。

目安としては銘柄・市場によりますが、初心者はまず極端に高いLTVの銘柄を避けるだけでも事故率が下がります。資料で「平均借入金利」「平均残存年数」「固定金利比率」も一緒に見られるとなお良いです。

含み益(鑑定評価の余裕):NAVの“クッション”

鑑定評価が取得価格を大きく上回っている、つまり含み益が厚いREITは、多少の市況悪化があってもNAVが急崩れしにくい傾向があります。逆に含み益が薄い、あるいは含み損が出ている場合、鑑定評価が下方修正されるとNAVも直撃します。

分配金の“質”:一時要因か、賃料収入の積み上げか

分配金の原資が、賃料収入(安定)なのか、物件売却益(変動)なのかを区別します。売却益が多いREITは、相場が良いときは強いですが、悪いときに“稼げるネタ”がなくなります。NAV割安で買うなら、基本は賃料収入の安定度が高いタイプが無難です。

NAV割安戦略のコア:ディスカウント解消の「きっかけ」を設計する

ここが一番重要です。NAV割安そのものは、ただの状態です。儲けは、その状態が解消するプロセスで生まれます。典型的な「きっかけ」を5つ挙げます。

きっかけ1:金利低下(または金利上昇の停止)

REITは金利に敏感です。金利が下がると、割引率が下がって不動産の価値が上がりやすく、借入コストも軽くなるため、P/NAVは戻りやすいです。逆に金利が上がり続ける局面では、ディスカウントが長引きます。

初心者ができる実務としては、「政策金利がどちらに向かっているか」よりも、長期金利(10年国債利回り)が“高値更新を止めたか”に注目する方がシンプルで機能します。ピークアウトの兆しが出ると、REIT市場は先回りして反応しやすいからです。

きっかけ2:増資リスクの後退(増資を上手くやった/当面やらない)

増資で嫌われてディスカウントしていた銘柄が、増資を完了し、その資金で収益性の高い物件を取得し、分配金が増える見通しを示すと、P/NAVが戻ることがあります。逆に増資が下手だと、ディスカウントが固定化します。

初心者が見るべき具体例は、「増資後にDPU(1口あたり分配金)が本当に増える設計か」「取得する物件のNOI利回りが借入コストや既存ポートフォリオと比べて妥当か」です。決算説明資料にシナリオが載っていることが多いので、難しいモデルは要りません。

きっかけ3:資産売却・自己投資口取得(自社株買いに近い)

REITでも自己投資口取得を行う場合があります(制度や市場によって扱いは異なります)。市場価格がNAVより大幅に安いときに自己投資口取得をすると、残った投資家の価値が増えやすく、ディスカウント解消の強い材料になります。

きっかけ4:物件の稼働率改善・賃料改定が見える

セクター不安で売られていたREITが、稼働率改善や賃料上昇を示し始めると、将来キャッシュフローの見通しが改善し、P/NAVが戻ることがあります。ここは“数字の変化”が出るまで待つのが初心者向きです。噂や期待だけで買うと、待ち時間が長くなりがちです。

きっかけ5:指数リバランス・需給改善

機関投資家やETFの売買で需給が急に変わり、ディスカウントが縮むことがあります。これは予測が難しいため、初心者は「狙い撃ち」より、“割安ポジションを持って待つ”方が現実的です。

具体例:J-REITでのNAV割安チェック手順(数字の見方を固定化する)

ここからは、初心者が実際に同じ手順を繰り返せるように、チェックの流れをテンプレ化します。個別銘柄名は変動要素が多いので、考え方と計算の型に集中します。

ステップ1:P/NAVを確認し、割安度を数値化する

まずP/NAV(またはNAV倍率)を確認します。例として、P/NAVが0.80〜0.90の銘柄を「候補」とします。ここで大切なのは、割安度は相対評価という点です。市場全体が0.90倍なら0.90は割安ではありません。セクター平均、過去レンジ(例えば直近5年)と比較します。

ステップ2:LTV・金利感応度をざっくり把握する

LTVが高すぎないか、固定金利比率が十分か、借換えが集中していないかを見ます。初心者は「細かい最適化」より、危険な形を避けることが最優先です。金利上昇局面では、このフィルターだけで候補がかなり絞れます。

ステップ3:鑑定評価の余裕(含み益)と、鑑定の更新タイミングを意識する

NAVは鑑定評価に依存するため、鑑定の更新タイミングが集中していると、下方修正が一気に出ることがあります。逆に、市況が改善しているのに評価がまだ追いついていない場合、将来のNAV上方修正が追い風になります。

ステップ4:分配金が“守れる構造”かを見る

分配金が高い銘柄ほど、減配のダメージも大きいです。賃料収入の安定度、テナント分散、契約の残存期間などを確認し、「次の景気後退で崩れやすい形」を避けます。初心者は、オフィス単一・巨大テナント依存など、説明が難しいリスクは最初から取らない方が勝率が上がります。

“割安に見える罠”を避ける:NAV割安戦略で負ける典型パターン

罠1:NAVが下方修正されて、割安が“消えない”

本当は不動産価値が下がっているのに、鑑定評価が追随していないだけ、というケースです。市場は先に織り込み、価格が下がります。その結果、P/NAVは割安に見える。しかし後から鑑定評価が下がってNAVが下がると、P/NAVは「割安ではなかった」ことになります。これが最も多い負け方です。

対策はシンプルで、不動産利回り(キャップレート)の上昇局面では、割安判定を厳しくすること。つまり、0.90倍程度では買わず、0.80倍台など、より深いディスカウントを要求する。これだけでリスクは下がります。

罠2:高LTV×借換え集中で、増資が避けられない

金利上昇と借換えが重なると、分配金が減り、増資で薄まり、株価(投資口価格)がさらに下がる、という悪循環になります。割安に見えても、構造が悪いと戻りません。対策はLTVと借換えスケジュールの確認です。

罠3:利回りだけで飛びつく

高利回りは、価格下落の結果として“見かけ上”高いだけのことがよくあります。分配金が維持できないなら、利回りは幻です。NAV割安戦略では、利回りは「結果として付いてくる」もので、最初の判断材料にしない方が安全です。

ポートフォリオの作り方:初心者向けの“失敗しにくい”組み立て

初心者におすすめの考え方は、NAV割安戦略を「一点突破」ではなく「分散+ルール」で運用することです。

コア:広く分散したREIT ETF(または分散銘柄)

まずは市場全体の回復(ディスカウント縮小)を取りにいくため、分散された商品をコアに置きます。これで個別事故の影響を薄めます。ここは“ホームベース”です。

サテライト:深いディスカウントの個別REITを少額で

次に、P/NAVが深く、かつ財務が健全で、きっかけが見込める銘柄を少額で組み合わせます。比率の目安は、初心者ならコア7〜9:サテライト1〜3程度が無難です。サテライトは当たり外れが出るので、賭けすぎないことが大事です。

リバランス:ディスカウントが縮んだら利益確定を“仕組み化”

NAV割安戦略は、割安が解消したら「相場の旨味が減ります」。そのため、P/NAVが1.0倍近くまで戻ったら一部利確など、機械的なルールを置くと、感情で握り続けるミスが減ります。

売買タイミングの現実解:初心者は“底当て”より“環境変化”を拾う

初心者が一番やりがちなのが「一番安いところで買おう」とすることです。しかしREITは金利・信用環境・需給で動くため、底当ては難易度が高いです。現実的には次の2パターンが堅いです。

パターンA:市場全体が急落し、P/NAVが一段下に抜けたときに分割で入る

“深いディスカウント”が出たときに、3回程度に分けて買います。1回目は小さく、2回目・3回目は状況を見て、という形です。これで「買った直後にさらに下がる」を受け止めやすくなります。

パターンB:長期金利がピークアウトし、REIT指数が底固めした後に入る

少し高く買う代わりに、トレンド転換の確度を上げます。初心者にはこちらが向きます。NAV割安戦略は“安く買って高く売る”ですが、最安値を取る必要はありません。ディスカウントが縮む過程を取れれば十分です。

チェックリスト:購入前にこれだけは文章で確認する

最後に、買う前に「自分の言葉で説明できるか」をチェックします。難しい数式は不要で、次の問いに答えられればOKです。

  • なぜこのREITはNAVより安いのか(市場要因か、セクター要因か、個別要因か)
  • NAVが将来下がるリスクは何か(鑑定評価、空室、金利、借換え)
  • ディスカウントが縮む“きっかけ”は何か(いつ、何が起きると改善するか)
  • 最悪シナリオでも耐えられるか(減配・増資・長期停滞)
  • 解消したらどうするか(利確や乗り換えルール)

この5つが曖昧なまま買うと、たとえ割安でも「長く塩漬け」になりがちです。逆に、割安の理由と解消のきっかけが整理できれば、初心者でも再現性のある意思決定になります。

まとめ:NAV割安戦略は“割安の理由”と“解消のきっかけ”で勝負が決まる

NAV割安は、REIT投資を「不動産を安く買う」発想に戻してくれる強力な道具です。ただし、割安は“状態”であり、利益は“変化”から生まれます。市場のリスクオフで一律に売られているのか、構造問題で割安が固定化しているのかを見分け、金利・財務・分配金の質を押さえたうえで、ディスカウント解消のきっかけを設計してください。

最初は完璧にやろうとせず、「深いディスカウント」「無理のない財務」「分割で入る」「戻ったら利確」の4点を守るだけでも、失敗確率は大きく下がります。そこから少しずつ、セクター理解や物件理解を積み上げるのが、最短距離です。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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