DeFi利回りの持続性評価:高利回りに釣られないための収益源分解とリスク見積もり

暗号資産

DeFiの「年利◯◯%」は、銀行預金の金利とは性質がまったく違います。多くの利回りは市場の非効率リスクの引き受け、そしてトークンの希薄化(インフレ)から生まれます。つまり、利回りの高さそのものが「持続しない理由」になり得ます。

本記事では、DeFi利回りを「仕組みの分解 → 継続性の判定 → 失敗しない運用ルール」に落とし込みます。専門用語は都度かみ砕き、初心者でも判断できる形にします。結論から言うと、持続性の評価は利回りの原資を分解できるかでほぼ決まります。

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DeFi利回りは「金利」ではなく「収益分配+リスクプレミアム」

DeFiの利回りは大きく5系統に分けられます。重要なのは、どの系統かで寿命・変動性・破綻パターンが違うことです。

① 実需手数料型:DEX(分散型取引所)のスワップ手数料、パーペチュアルの取引手数料、ブリッジ手数料など。利用が続く限り発生しますが、出来高が落ちると即座に利回りが低下します。

② 借り手支払い型:レンディング(貸借)の借り手が支払う利息が原資。需要がある資産(例:レバレッジ需要が強い場面のステーブルコイン借入)だと比較的筋が良い反面、相場環境で急変します。

③ 清算・裁定の副産物型:担保清算のペナルティ、金利差・価格差の裁定が回ることで発生する収益。市場の混乱期は増えますが、競争が激化すると薄れます。

④ インセンティブ(発行トークン)型:新規発行トークンを配ることで「見かけの利回り」を上げる類。最も短命になりやすく、価格下落で実質利回りが崩壊しがちです。

⑤ ポンジに近い資金循環型:新規参加者の資金や自前トークン価格維持に依存するもの。見分けるコツは「外部収益が説明できない」「利回りが市場環境に無関係に一定で高い」などです。

持続性評価の要点は、④⑤を極力避け、①②③でも「実際にどれだけの利用・借入があるか」を数字で確かめることです。

持続性を一撃で見抜く「原資チェック」:利回りの分解フレーム

利回りを見たら、まず次の問いに答えます。答えられない場合、その利回りは評価不能=投資対象外に寄せるのが合理的です。

Q1:誰が支払っているか?(トレーダー、借り手、プロトコルのトークン発行、他の投資家…)

Q2:何に対する対価か?(流動性提供、担保提供、リスク引受、オラクル/ブリッジ/運営リスク…)

Q3:支払いは「外部収益」か「内部発行」か? 外部収益(手数料・利息)は比較的持続しやすい。内部発行(インセンティブ)は希薄化と売り圧で崩れやすい。

Q4:利回りの源泉は「変動」するか? 出来高・借入・ボラ・相場環境で変動するのが自然。高利回りが不自然に安定している方が危険です。

Q5:最悪時にどんな損失が出るか? 「利回りがゼロ」ではなく、元本が毀損する形(ハッキング、デペッグ、清算、IL)を想定します。

初心者がハマりやすい誤解:APY表示は「実現利回り」ではない

DeFiのUIに出るAPYは、しばしば「直近の短い期間」を年率換算した数字です。出来高が一時的に跳ねた、インセンティブ配布が開始された直後、極端なボラで清算が増えた、といった局面でAPYは跳ねます。これをそのまま1年続く前提で考えるのは危険です。

もう一つの落とし穴は配布トークンの価格変動です。たとえば「年率50%」でも、報酬が自前トークンで、そのトークンが半年で-60%なら、実質利回りは簡単にマイナスに転びます。ここを避けるには、報酬トークンを受け取ったら機械的に売却して原資へ戻す、あるいはヘッジして価格変動を切る設計が必要です。

収益源別:持続性が高い順に見る「期待寿命の目安」

ここは一般論ではなく、運用の現場感に寄せて説明します。

(A)ステーブル同士の取引手数料:安定した需要があるDEX(ステーブルスワップ)では、相場が落ち着いても一定の取引が残りやすい。ただし、競合が増えると手数料率が下がり、利回りも低下します。持続性の評価では「取引がどのチェーン/DEXに集約しているか」「手数料の設計変更があり得るか」を見ます。

(B)レンディングの実需金利:借り手がいる限り成立します。鍵は「誰が借りるか」です。レバレッジや裁定のために借りるプレイヤーが多いと、相場環境で金利が急変します。ここは「金利が高いから良い」ではなく、金利が高い=借り手が必死=リスクが高いケースもあります。

(C)デルタニュートラル系の利回り:現物と先物のベーシス、資金調達率(ファンディング)の歪み、LPのヘッジなど。仕組みが理解できれば合理的ですが、混雑すると収益が削れます。さらに、極端な相場変動でヘッジが追随できないと損失が出ます。

(D)自前トークン報酬が主体:短命になりやすい。続くとしても「報酬トークンの売り圧を吸収できる買い需要(利用価値)」が必要です。利用価値が弱いと、報酬配布は実質的なダンピングになります。

実戦:3つの「数字」で継続性を判定する(初心者でもできる)

プロ向けの分析は多数ありますが、初心者が最低限押さえるべき数字は3つで足ります。難しい計算は不要で、「減っている/増えている」を追うだけでも効きます。

1)手数料(Fee)とTVLの関係

DEXやプロトコルの収益(Fee)が増えているのに、TVL(預け入れ総額)が増えすぎていない状態は、利回りが持続しやすいことがあります。逆に、TVLだけが急増して利回りが高い場合、報酬目当ての短期資金が流入している可能性が高いです。資金が抜けると利回りもセキュリティも不安定になります。

2)報酬の内訳:外部収益 vs トークン発行

「実際の手数料がどれで、トークン配布がどれか」を見ます。配布が大半なら、トークン価格の下落が利回りの崩壊を早めます。配布主体の案件に触る場合は、配布を即時売却して原資に戻す設計を前提にします。

3)利用の質:ユニーク利用者と出来高の偏り

出来高が一部アドレスに偏っている場合、いわゆる自己売買(ボリューム水増し)の疑いが出ます。細部まで追わなくても、「急に出来高だけ跳ねる」「手数料は増えたが利用者は増えていない」といった歪みはシグナルです。

具体例:同じ「20%」でも中身が違う(モデルケース)

ここでは架空の例で、判断の流れを示します。数字は例示であり、特定プロトコルの推奨ではありません。

ケース1:ステーブルAMMで年率20%
内訳:手数料12%+インセンティブ8%。出来高は横ばい〜微増、TVLは緩やかに増加。
評価:手数料部分は利用が続く限り見込みがある。一方、インセンティブ8%は将来縮む前提で期待値を置く。実務的には「手数料12%が維持されるか」を定点観測し、インセンティブが切れた後の利回りで継続可否を判断する。

ケース2:新興チェーンのLPで年率20%
内訳:手数料2%+インセンティブ18%。TVLは急増、出来高は横ばい、報酬トークンのロック解除が近い。
評価:持続性は低い。トークン配布が止まると利回りはほぼ消える可能性が高い。触るなら短期で、報酬は即時売却、撤退条件(利回り/TVL/価格/ロック解除日)を事前に固定する。

最大の見落とし:元本が減る「4大リスク」を利回りから控除する

DeFiでは「利回りが出ても、元本が減る」パターンが頻発します。利回りの持続性以前に、まず元本毀損の期待損失を見積もり、利回りから差し引いて考えます。

1)スマートコントラクト/運営リスク:バグ、権限者の悪用、アップグレード事故。監査済みでもゼロにはなりません。対策は分散(プロトコル分散・チェーン分散)と、権限設計(マルチシグ、Timelock)確認です。

2)ブリッジリスク:特にクロスチェーンで資産を移すと、攻撃面が増えます。利回りが高い場所ほど「そこに行くためのブリッジ」が弱点になりがちです。初心者はまずブリッジを減らす設計が堅いです。

3)ステーブルのデペッグ:ステーブル運用は「安定」という錯覚を生みますが、デペッグは実際に起こります。担保構造、準備資産、発行主体、回収メカニズムを最低限理解し、単一ステーブルに偏らないことが重要です。

4)インパーマネントロス(IL):2資産LPでは価格変動で保有数量が自動調整され、結果的に「ただ保有していた場合」に劣後することがあります。特にボラが高いペアで、手数料が薄いとILに負けます。初心者はステーブル同士や、片側がステーブルのペアから入るのが現実的です。

「持続する利回り」を取りに行く実践ルール(再現性重視)

ここからが本題です。利回りの持続性は、目利きだけでなく運用ルールで大きく改善します。

ルール1:利回りを「2階建て」で考える

利回りを「手数料・利息(コア)」と「インセンティブ(オプション)」に分けます。コアが薄く、オプションが厚い案件は短命前提で扱います。逆にコアが厚い案件は、相場環境が悪化しても残りやすい。

ルール2:報酬トークンは原則として定期売却

報酬トークンを握り続けると、実質的に「そのプロトコルの株式」を買っているのと同じです。価格変動リスクが増えるため、利回り目的なら定期売却で元本に戻す方がリスクが減ります。例外は、報酬トークンに明確な利用価値(手数料割引、ガバナンスでの収益分配、担保価値など)があり、かつ市場流動性が十分な場合です。

ルール3:撤退条件を「数値」と「日付」で固定

撤退条件が曖昧だと、利回りが落ちた後にズルズル残りがちです。最低限、次を事前に決めます。

・コア利回り(手数料/利息)が一定割合を下回ったら撤退
・TVL急増(競争激化)や出来高急減(実需低下)が見えたら撤退
・報酬トークンのロック解除(アンロック)日が近づいたら縮小/撤退

ルール4:分散は「銘柄」ではなく「故障モード」で行う

同じ故障モード(例:同一ブリッジ依存、同一ステーブル依存、同一オラクル依存)に偏ると、分散しているつもりでも一撃でやられます。初心者ほど「チェーンを増やしすぎない」「ブリッジを減らす」「ステーブルを分ける」という、故障モード分散が効きます。

オンチェーンで最低限見たい観測ポイント(無料で足りる範囲)

有料ツールがなくても、以下を追うだけで事故率は下がります。

(1)手数料推移:プロトコルの収益が落ちていないか。
(2)TVL推移:急増は短期資金の流入、急減は信用不安の可能性。
(3)報酬トークンの供給増加:インフレが加速していないか。
(4)主要コントラクトの権限:運営が強権で変更できる設計か。Timelockがあるか。

これらを週1でも見ておけば、「利回りが高いまま突然死」の確率は下がります。

初心者のための最初の一歩:やるならこの順番

最後に、手順を具体化します。いきなり高利回りに飛びつくより、順番が重要です。

ステップ1:ステーブル同士の低リスク領域で、入出金・ガス・UI・撤退の流れを体験する。
ステップ2:レンディングで「借り手需要がある資産」を小さく試す(利回りの変動を体感する)。
ステップ3:報酬トークンが絡む場合は、定期売却と撤退条件を必ずセットにする。
ステップ4:ブリッジを使う運用は最後。使うならルートを絞り、分散と上限額を決める。

まとめ:利回りの持続性は「説明できるか」で決まる

DeFi利回りで重要なのは、数字の大きさではなく「原資が説明できるか」「最悪時にどう壊れるか」を先に押さえることです。利回りを分解し、コア(手数料・利息)に重心を置き、インセンティブはオプション扱いにする。これだけで、再現性が上がり、致命傷を避けやすくなります。

高利回りは魅力的ですが、プロトコルの寿命は利回りの高さと反比例することが多い。だからこそ、最初から「撤退条件」と「定期売却」を設計に組み込み、利回りを“取りに行く”のではなく“回収する”運用に寄せるのが現実的です。

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