オプション満期日(トリプルウィッチング)で起きる「価格固定」と出来高急増を味方にする売買戦略

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結論:満期日は「材料」ではなく「強制フロー」を読む日です

トリプルウィッチング(米国の四半期同時満期)や、日本の先物・オプションの満期(SQ)では、ニュースや決算のような「材料」よりも、契約の満了に伴う強制的な売買(ロール、解消、ヘッジ調整)が相場を動かします。出来高が異様に増え、値動きが荒くなる一方で、終盤にかけて特定の価格帯へ吸い寄せられる「価格固定(ピンニング)」が起きることがあります。ここを理解すると、満期日が“怖い日”ではなく、ルールで再現できるイベントになります。

まず押さえる基礎:トリプルウィッチングとSQは何が「同時」に起きるのか

米国で一般に言うトリプルウィッチングは、株式オプション・株価指数オプション・株価指数先物が同日に満期を迎える現象で、四半期ごと(3月・6月・9月・12月の第3金曜)に起きます。満期が重なるため、手仕舞い・ロール・ヘッジ再構築が集中し、取引量が増えるとされます。

一方、日本では日経225先物/オプション等の最終清算値がSQ(Special Quotation)で決まり、四半期(3・6・9・12月)の「メジャーSQ」は特に注目されます。SQは構成銘柄の寄り付き等から算出されるため、寄り付き前後にフローが集中しやすい点が特徴です。

なぜ「価格固定」が起きるのか:ディーラーのデルタヘッジとガンマが主役

満期日を理解する鍵は、オプションの売り手(主にマーケットメイカー/ディーラー)が行うデルタヘッジです。オプションを売る側は、損益が相場方向に偏りすぎないように、現物や先物を売買して中立化します。このとき、価格がある水準に近づくほどヘッジ売買が増えやすい条件が揃うと、相場がその水準に「吸い付く」ように動きます。

もう一つ重要なのがガンマです。ガンマはデルタの変化の速さで、満期が近い・ATM(権利行使価格付近)ほど大きくなりやすい傾向があります。満期直前にガンマが大きいと、ディーラーは価格の小さな変化にも反応してヘッジを頻繁に入れます。結果として、レンジ内では往復売買が増え、上にも下にも突き抜けにくい局面が生まれます(ピンニングが起きやすい環境)。

満期日に起きやすい典型パターン(日本株・米株共通)

ここからは、観測されやすいパターンを「どう売買に落とすか」という観点で整理します。前提として、満期日は出来高が増えますが、出来高増=大トレンドではありません。むしろ、一時的な歪み→修正が狙い目です。

パターン1:午前(寄り付き)に乱高下→昼に収束→引け前に再度荒れる

日本のSQ絡みでは寄り付き近辺でフローがぶつかり、板が薄い銘柄や指数寄与度の高い銘柄で急変が起きます。その後、裁定取引やヘッジが落ち着くと、いったん値幅が縮みます。引け前は、当日中に整える必要のあるヘッジの最終調整で再度出来高が膨らみやすくなります。米国でも「最終1時間」が話題になるのは同じ構造です。

パターン2:指数が“キリの良い水準”に張り付く(ピンニング)

日経225やS&P500のような指数は、ストライクが一定刻みで並びます。建玉が集中しているストライク(例:日経36000、SPX 5000など)付近で、指数が引き寄せられるように動くことがあります。これは「誰かが操縦している」より、ヘッジの自動売買が結果的にその動きを作ると捉えるほうが実務的です。

パターン3:一瞬だけ突き抜ける(ストップ狩り)→すぐ戻る

出来高が多い日は、流動性が厚いように見えて、瞬間的には注文が偏ります。特に、前日高値/安値やラウンドナンバーの少し外側にはストップ注文が溜まりやすいので、そこを一瞬抜いてから戻る「ヒゲ」が出やすい。満期日はこれが増幅されます。狙いは「抜けた瞬間に追う」ではなく、抜けた後に戻り始めたタイミングで、逆方向に短期で取る発想です。

初心者でも実行できる“満期日フロー”の具体的な取り方(3つの戦術)

戦術A:指数の「価格固定」を前提に、レンジ回帰を取りに行く

狙い:満期日特有のピンニングが出る日だけ、逆張りの成功率を上げる。

やること:指数連動(TOPIX先物、日経225先物、米国なら指数ETF)を監視し、当日最も意識されるストライク近辺でレンジ回帰を狙います。ポイントは「何円(何ポイント)で固定されそうか」を当てに行くより、“固定されやすい環境かどうか”を判定することです。

判定の目安:

・前日までに大きなトレンドがなく、当日も重要指標や大型決算が少ない(材料が弱い日ほどフローが支配的になりやすい)

・朝に乱高下しても、昼にかけて値幅が縮む(ヘッジの往復売買が優位)

・ラウンドナンバー付近で板が厚く、反発が繰り返される

エントリー例:日経225先物が36000近辺で上下に振れ、36000を挟んで何度も戻される。上に飛んでもすぐ36000へ戻るなら、36020〜36040の戻りでショート、35960〜35980の押しでロングのように、“固定点からの乖離”が出たら戻りを取る。損切りは固定点から一定距離(例:60〜100円)で機械的に切る。勝ちパターンは小さく何回も取れることです。

戦術B:満期日の「ヒゲ」を取りに行く(ストップ狩り→反転)

狙い:満期日に増えがちな“瞬間の歪み”を、反転確認後に拾う。

やること:前日高値/安値、直近の重要サポレジ、ラウンドナンバーの外側(例:+0.2%)にアラートを置きます。抜けた瞬間は見送り、抜けてから戻る動き(リジェクト)が出たら逆張りします。

エントリー例:日経が前日高値を一瞬更新→すぐ下に戻って5分足が陰線で確定。ここでショート。利確は「抜け前のレンジ上限」か、VWAP付近。損切りはヒゲ高値更新。満期日は速度が出るので、逆指値は必須です。

戦術C:満期翌日の「解放」を取る(反動・戻り)

狙い:満期日当日の“押さえ込み”が外れた翌日に、値動きが素直になる局面を取る。

満期日当日はヘッジで動きが潰されることがありますが、満期が過ぎるとその制約が消えます。特に、満期日にレンジが極端に縮んだ場合、翌日にトレンドが出やすいことがあります。これは「翌日に必ず動く」ではなく、“動きが出ても不思議ではない”状態というだけですが、取引ルールとしては優位性を作れます。

手順:満期日に「日中値幅が過去20日平均との差の下位20%」など、統計的に“縮み”を定義し、該当した翌日にブレイクアウト戦略(高値/安値抜け)を適用します。満期日をフィルターにすることで、無駄なトレードを減らせます。

個別株での応用:オプションがなくても満期フローの影響は受ける

日本株の多くは米国ほど個別株オプションが活発ではありませんが、指数の満期フローは指数寄与度の高い大型株に波及します。特に、指数裁定や先物のヘッジは、寄与度の高い銘柄(値がさ株)に集中しやすい。つまり、満期日には「個別材料がないのに動く」銘柄が出ます。これは初心者にとってチャンスです。材料がない=読み筋がフローに寄るからです。

具体例:日経225寄与度が高い値がさ銘柄が、指数の節目で同時に反転する。個別チャートだけ見ると理由が分からない動きですが、「指数の固定点」を見ていると説明がつきます。個別株で入るなら、指数との連動が強い時間帯(寄り・後場寄り・引け前)だけに絞り、薄い時間帯は触らないのが無難です。

「儲けるためのヒント」:満期日を“カレンダー取引”にする

満期日トレードの本質は、未来予測ではなくスケジュール化です。やることを固定すると、初心者でも再現性が出ます。おすすめは次の運用です。

1)四半期満期(3・6・9・12月)だけを対象にする(回数を絞って検証)

2)満期当日は「レンジ回帰(戦術A)」「ヒゲ取り(戦術B)」だけを許可し、トレンドフォローは禁止

3)満期翌日は「縮みフィルターが点灯した日だけ」ブレイクアウト(戦術C)を許可

4)損失上限を日次で固定(例:口座の0.5%)し、満期日は過熱しやすいので強制終了ルールを入れる

データで確認する:初心者でもできる簡易バックテストの考え方

満期日戦略は、検証がしやすい部類です。理由は「日付が確定している」からです。最低限、次の2点を数字で見てください。

(1)満期日と通常日の出来高・値幅の差
指数(先物やETF)の日中値幅、出来高を集計し、満期日がどの程度外れるかを確認します。外れていない市場では無理にやる必要がありません。

(2)レンジ回帰の成功率が上がる条件
満期日でもトレンドが強い日はあります。例えば大きな指標発表や地政学イベントが重なれば、フローより材料が勝ちます。その条件を除外するために、前日までのトレンド(移動平均の傾き、ADXなど)でフィルタリングし、「フローが支配的になりやすい日」を抽出します。

リスクと落とし穴:満期日は「勝ちやすい日」ではなく「事故りやすい日」でもある

満期日はスプレッドが急に広がったり、約定が滑ったりします。特に、指標と重なると動きが桁違いになります。次のNGを守るだけで生存率が上がります。

・抜けた瞬間に飛び乗らない(ヒゲが出やすい)

・ロットを増やさない(出来高が多い=安全ではない)

・「今日は絶対ピンニングする」と決め打ちしない(材料が出たら前提が崩れる)

・満期日は短期戦に徹し、持ち越しはルール化した場合のみ

実戦チェックリスト:当日の朝に5分で判断する

最後に、当日の意思決定を単純化します。

チェック1:今日は四半期の満期(米国なら3/6/9/12の第3金曜、日本ならメジャーSQ月)か

チェック2:同日に重要指標・大事件があるか(あるなら満期フローは負けやすい)

チェック3:寄りで暴れても、30〜90分で値幅が縮むか(縮むなら戦術Aが有利)

チェック4:前日高値/安値やラウンドナンバーにヒゲが出たか(出たら戦術B)

チェック5:当日の日中値幅が異常に小さいか(小さいなら翌日の戦術Cを準備)

まとめ:満期日は「需給の実験日」。勝ち方は“前もって決める”こと

トリプルウィッチングやSQは、参加者の意図よりも契約の仕組みが市場を動かす日です。だからこそ、予想よりもルール化が効きます。満期日を怖がって避けるのではなく、回数を絞って検証し、勝てる型(レンジ回帰・ヒゲ取り・翌日解放)だけをやる。これが、初心者が最短で「イベントドリブン」を自分の武器にする現実的な道筋です。

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