IPO後のロックアップ解除を「需給イベント」として攻略する:大株主の換金売りと株価の歪みを読む

株式投資

IPO銘柄は「成長ストーリー」だけで動いているように見えますが、短中期の株価はそれ以上に需給で歪みます。その代表格がロックアップ解除です。ロックアップは上場直後に既存株主(創業者、VC、事業会社など)が一定期間売れないようにする契約で、解除日が近づくと「売りが降ってくる」ことが意識され、解除後は実際の売りで価格形成が変わります。

このテーマは初心者でも再現性を持って学べます。なぜなら、ロックアップは日付・条件・対象株数が事前に公開されることが多く、感情論ではなく「供給量」を数字で扱えるからです。一方で、解除イベントは単純な「売り=下落」では終わりません。解除前の思惑売り→解除当日の不発→踏み上げのような逆回転も頻発します。この記事では、ロックアップ解除をイベントドリブンの需給トレードとして捉え、チェック項目、シナリオ分岐、具体的なエントリー/エグジット設計まで体系化します。

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  1. ロックアップ解除とは何か:株価に効くのは「売れるようになる株数」
  2. まずここを見る:解除条件は2種類ある(期間型・価格型)
  3. 解除イベントを「需給」で定量化する:供給量を3段階で見積もる
  4. ステップ1:解除対象の株数(最大供給)を把握する
  5. ステップ2:本当に売りやすい主体か(売り手の動機)を分類する
  6. ステップ3:売りの「出口」が用意されているか(ブロックトレード/売出しの可能性)
  7. 典型的な値動きパターン:解除は「前・当日・後」で顔が変わる
  8. パターンA:解除前にダラ下げ→解除後も売り継続(王道の需給悪化)
  9. パターンB:解除前の思惑売りが行き過ぎ→解除当日の売りが少なく反発(出尽くし)
  10. パターンC:価格条件で前倒し解除→急騰中に天井形成(熱狂の終点)
  11. トレード設計:初心者でも再現しやすい「3つの作戦」
  12. 作戦1:解除前の戻り売り(ヘッジ型)
  13. 作戦2:解除当日〜数日後の「出尽くし」狙い(逆張りだが根拠は需給)
  14. 作戦3:解除後の“売り終わり”を待って順張り(中級者向けだが一番安全)
  15. 具体例で理解する:数字で見る「供給ショック」の大きさ
  16. 情報の取り方:初心者が迷わないチェックリスト
  17. チェック1:解除日(または解除条件)
  18. チェック2:解除対象株数と株主構成
  19. チェック3:流通株式と出来高(吸収力)
  20. チェック4:空売りの積み上がり(踏み上げリスク)
  21. チェック5:借株コストと制度(実務上の制約)
  22. よくある失敗:ロックアップ解除で負ける人の共通点
  23. 実戦の「型」:ロックアップ解除を扱うためのシナリオ分岐
  24. シナリオ1:供給大 × 出来高薄 × VC比率高
  25. シナリオ2:供給中 × 出来高厚 × 戦略株主中心
  26. シナリオ3:価格型解除の条件が近い(急騰局面)
  27. リスク管理:このイベントは「想定外」が起きるからこそ守る
  28. まとめ:ロックアップ解除は「数字で読める需給イベント」

ロックアップ解除とは何か:株価に効くのは「売れるようになる株数」

ロックアップ解除の本質は、「これまで市場に出てこなかった株式が、売却可能になることで供給が増える」点です。IPO直後の流通株式は少なく、出来高も限定されやすいので、追加供給は株価に直接効きます。

重要なのは、ロックアップ解除=即売りではなく、売れる自由が発生するという事実です。売り手(創業者・VCなど)は、資金需要・ファンドの償還・リバランス・税金支払い等の事情で売却したい動機を持つことが多い一方で、価格が悪ければ売らない、あるいは分割で売ることもあります。つまり、解除は「供給ショックの可能性」を高めるイベントであり、トレードではその確率と規模を見積もる作業が核心になります。

まずここを見る:解除条件は2種類ある(期間型・価格型)

ロックアップは大きく以下に分かれます。

1)期間型(例:上場日から90日、180日)
解除日がカレンダーで確定します。市場はこのタイプを最も織り込みやすく、解除日の数週間前から「上値が重い」状態になりがちです。

2)価格型(例:公開価格の1.5倍を○日間上回ったら解除)
株価が一定条件を満たすと前倒し解除されます。上場直後に急騰しやすい銘柄ほど、この条件が付くことがあり、急騰の途中で解除リスクが点火します。初心者が一番やられやすいのがこのタイプです。「強いから買ったのに、強すぎて解除が早まり、売りで崩れる」という逆説が起きます。

解除イベントを「需給」で定量化する:供給量を3段階で見積もる

ロックアップ解除の分析は、次の3段階で進めるとブレません。

ステップ1:解除対象の株数(最大供給)を把握する

まず「解除によって売れるようになる株数」を確認します。目安として、解除対象株数 ÷ 直近の平均出来高を計算すると、供給インパクトが見えます。

例えば、解除対象が1,000万株、平均出来高が50万株/日なら、単純計算で20営業日分の供給です。もちろん全てが一気に出るわけではありませんが、市場参加者はこの「潜在的な上値キャップ」を意識します。ここが大きいほど、解除前は買い方が慎重になり、解除後は売りが出た瞬間に崩れやすくなります。

ステップ2:本当に売りやすい主体か(売り手の動機)を分類する

解除対象株主の性質で、売り圧力の確率が変わります。

・VC(ベンチャーキャピタル):ファンドの期限やIRRの都合で売却動機が強いことが多い。解除直後から段階的に売るケースが目立ちます。
・創業者・役員:一括で売るとネガティブに見られるため、売るとしても計画的・分割になりやすい。ただし、個人資産の集中リスクを減らす目的で売ることもあります。
・事業会社(戦略株主):基本は中長期の提携目的なので、解除=即売りになりにくい。
・従業員持株:規模は小さいが「生活イベント」や税金で売りが出ることがある。

ステップ3:売りの「出口」が用意されているか(ブロックトレード/売出しの可能性)

本格的な売却は、市場でチマチマ売るより、売出し(Secondary)やブロックトレードで行われることがあります。解除直後に大株主が売出しを仕掛けると、需給は一気に悪化します。逆に、売出しが出れば「悪材料出尽くし」として一旦底打ちすることもあるため、イベントを二段階(解除→売出し)で考えると読みが当たりやすくなります。

典型的な値動きパターン:解除は「前・当日・後」で顔が変わる

ロックアップ解除は、日付が分かるぶん、相場が先回りします。ありがちな3パターンを押さえてください。

パターンA:解除前にダラ下げ→解除後も売り継続(王道の需給悪化)

解除対象が大きい、VC比率が高い、出来高が薄い、株価が公開価格近辺または上回る水準にある、などの条件がそろうと起きやすい形です。解除前の戻りは売られ、解除後は実弾の売りで戻り売りが強化されます。初心者は「下がったから割安」と飛びつきやすいですが、需給悪化はバリュエーションでは止まりません。

パターンB:解除前の思惑売りが行き過ぎ→解除当日の売りが少なく反発(出尽くし)

市場が過剰に警戒して先に売りすぎると、解除当日に「思ったほど売りが出ない」だけで買い戻しが走ります。空売りが積み上がっていれば、踏み上げで急反発することもあります。解除イベントで勝ちやすいのは、実はこの「警戒過剰」局面です。ただし、見極めには条件があります(後述)。

パターンC:価格条件で前倒し解除→急騰中に天井形成(熱狂の終点)

一番危険な形です。材料で急騰し、公開価格の1.5倍などの条件を満たすと解除が早まり、そこから「利益確定+解除売り」が同時発生してピークアウトします。急騰銘柄のセカンダリーで「押し目買い」だけをやると、この罠に刺さります。上昇トレンドでも解除条件を踏むと、需給構造が変わってしまう点を理解してください。

トレード設計:初心者でも再現しやすい「3つの作戦」

作戦1:解除前の戻り売り(ヘッジ型)

解除日が近づくと、ロング勢は一度ポジションを軽くしがちです。そこで、テクニカル的な戻り(移動平均線への戻し、節目価格、直近高値の手前)を、需給の根拠で売り場にできます。

ポイントは「解除日までに下がるはず」と決め打ちしないことです。相場は先に下げきって反発することもあります。なので、戻り局面で小さく入って、逆行したらすぐ切る設計が必要です。需給イベントは“方向”より“リスク・リワード”で取ります。

作戦2:解除当日〜数日後の「出尽くし」狙い(逆張りだが根拠は需給)

解除当日に狙うのは、売りが大量に出てパニックになったところ…ではありません。初心者が入ると、そこからさらに売りが続くケースが多いからです。狙い目は次の条件がそろう場面です。

・解除前に十分下げている(警戒が価格に織り込まれている)
・解除当日の出来高が急増したのに、終値が大きく崩れていない(吸収されている)
・空売りが積み上がっている(買い戻し燃料がある)
・売り手がVC中心ではない、またはVCでも保有比率が想定より小さい

このときは、解除当日の引け、または翌日の押し目で、短期のリバウンドを取りにいく戦略が成立します。損切りは「解除当日の安値割れ」など、客観的なラインに置けます。

作戦3:解除後の“売り終わり”を待って順張り(中級者向けだが一番安全)

成長企業を中期で持ちたいなら、解除で崩れた直後に買うより、売りが止まったサインを待つ方が安全です。具体的には、下落トレンドの中で「下げの出来高が減り、反発の出来高が増える」「安値更新しなくなる」「決算や材料で上抜ける」といった局面です。

ロックアップ解除は「悪材料」ではなく「需給調整」です。調整が終われば、ファンダメンタルが強い銘柄は再評価されます。焦って落ちナイフを掴まないことが、長期の成績を守ります。

具体例で理解する:数字で見る「供給ショック」の大きさ

仮に次のようなIPO銘柄を想定します(架空の例です)。

・上場後株価:1,800円(公開価格1,500円)
・上場後の平均出来高:30万株/日
・90日ロックアップ解除:対象株数900万株
・対象株主:VCが600万株、創業者が300万株

最大供給900万株は平均出来高の30日分です。ここでVCが「解除後に半分売却したい」と考えるだけで、追加供給は300万株=10日分。市場は解除前から「上値が重くなる」と見ます。

一方、解除前に株価が1,800円→1,450円まで下がり、解除当日に出来高が150万株(通常の5倍)出たのに終値が1,460円で引けたとします。この場合、売り圧力は強いのに価格が崩れていない=買い手が吸収している可能性が高く、短期リバウンドの土俵に乗ります。逆に、出来高が増えないのにジリ下げが続くなら、裏で「分割売り」が続いているだけで、反発しにくい形です。

情報の取り方:初心者が迷わないチェックリスト

解除イベントの分析に必要な情報は、次の順番で集めると早いです。

チェック1:解除日(または解除条件)

上場時の目論見書、上場関連資料、会社のIR資料に記載されることが多いです。価格型条件がある場合は「公開価格×倍率」「連続日数」まで確認し、株価が条件を満たしていないかを常に監視します。

チェック2:解除対象株数と株主構成

大株主の保有比率、ベンチャーキャピタルの有無、株数を確認します。特に「○位株主がVCで、ファンド名が明確」なら売却確率は上がります。

チェック3:流通株式と出来高(吸収力)

供給ショックは「株数」単体ではなく、市場の吸収力との相対で効きます。平均出来高だけでなく、急落日にどれだけ出来高が出るかも見ます。需給が薄い銘柄は、少ない売りでも大きく動きます。

チェック4:空売りの積み上がり(踏み上げリスク)

解除イベントは「みんなが売りたい」局面になりやすく、空売りが混み合うと、解除当日に売りが出ないだけで急反発します。空売りは万能ではありません。逆回転の燃料になり得ます。

チェック5:借株コストと制度(実務上の制約)

短期で売りを狙う場合、借株コストが跳ねたり、そもそも売り建てしにくいケースがあります。取引の仕組み上、理屈が合っていても実行できないことがあるので、事前に条件を確認します。

よくある失敗:ロックアップ解除で負ける人の共通点

・解除日だけ見て、対象株数と出来高を見ない
解除対象が小さければ、イベントは材料になりません。逆に巨大なら、解除前から上がりにくい。

・「解除=必ず暴落」と決めつける
警戒が先に進み、解除当日は出尽くしになることがある。思惑が先行するイベントほど逆が起きます。

・下がった理由を需給ではなく“割安”で説明してしまう
需給要因は、ファンダメンタルに関係なく価格を押し下げます。割安という言葉で安心すると損切りが遅れます。

・熱狂相場で価格型解除を踏んでいるのに追いかけ買いする
上昇トレンドの途中で需給構造が変わったら、別のゲームになります。

実戦の「型」:ロックアップ解除を扱うためのシナリオ分岐

最後に、考え方をテンプレ化します。毎回この順で判断すれば、感情が入っても軸がぶれません。

シナリオ1:供給大 × 出来高薄 × VC比率高

基本は弱い。解除前の戻りは売られやすく、解除後も売りが続く可能性が高い。短期で逆張りするなら「売りが吸収された証拠」が出てから。

シナリオ2:供給中 × 出来高厚 × 戦略株主中心

解除は意識されるが、崩れにくい。解除を過度に恐れた下落があれば出尽くしリバウンドが狙える。中期投資は解除後の需給安定を待てば取りやすい。

シナリオ3:価格型解除の条件が近い(急騰局面)

上昇トレンドの“折れ”に注意。条件達成が近づくほど、買い手のリスクが増える。追いかけより、利益確定・ヘッジ優先。

リスク管理:このイベントは「想定外」が起きるからこそ守る

ロックアップ解除は、ニュースがなくても動きます。だからこそ、損切りラインを先に置くポジションを分割するイベント当日はサイズを落とすなど、守りが勝率を引き上げます。特にIPOは値幅が大きく、同じ金額でも損益変動が大きい。初心者ほど、まずは小さく試し、検証して型にしてください。

まとめ:ロックアップ解除は「数字で読める需給イベント」

ロックアップ解除は、成長ストーリーとは別軸で株価を動かす、典型的な需給イベントです。解除対象株数、株主の性質、出来高(吸収力)、価格型条件の有無、空売りの混雑度。これらを順番に確認し、解除前・当日・解除後でシナリオを分ければ、初心者でも“理由のある売買”ができます。

結局のところ、IPOの短中期は「買いたい人の数」より「売れる株の数」で決まる場面が多い。ロックアップ解除を理解するだけで、セカンダリーの事故率は大きく下がり、逆にイベントを利益機会に変えることもできます。焦らず、数字で、型で攻めてください。

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