「窓埋め(ギャップフィル)」は、テクニカルの中でも“再現性が作りやすい”部類です。理由は単純で、窓は出来高・ニュース・注文の偏りが一気に表面化した痕跡であり、その後に起きるのは「過剰反応の是正」か「新しい価格帯への定着」のどちらかに収束しやすいからです。
ただし、世間で語られがちな「窓は必ず埋まる」は誤りです。埋まる窓を拾って、埋まらない窓は触らない。ここを分けるだけで成績は別物になります。本記事は、株・FX・暗号資産のどれにも適用できるように、窓の“質”を定量化し、エントリーから損切り・利確、ロット管理、検証方法まで一気通貫で整理します。
- 窓(ギャップ)とは何か:値動きの「空白」に意味がある
- まず分類する:埋まる窓・埋まらない窓の見分け方
- 窓の“質”を数値化する:初心者が迷わないための簡易スコア
- 窓埋めの基本パターン:2つしかない
- エントリーの具体ルール(株・FX・暗号資産に共通)
- 損切りと撤退:窓埋めは“損切りが先”
- ロット管理:1トレードの最大損失を“固定”する
- 時間帯と銘柄選び:同じ「窓」でも期待値が違う
- “埋まりやすい窓”の具体条件:ここだけ覚えれば事故が減る
- “埋まらない窓”を触らない:典型例と理由
- 具体例:株式での窓埋め(Bパターン)シナリオ
- 具体例:FXの“擬似窓”での逆張り(Aパターン)
- バックテストのやり方:初心者でもできる検証手順
- 失敗パターン集:ここを避ければ生存率が上がる
- 実戦チェックリスト:エントリー前に10秒で確認
- まとめ:窓埋めは「触る窓を選ぶ」ゲーム
窓(ギャップ)とは何か:値動きの「空白」に意味がある
窓とは、チャート上で前日の高値(または終値)と当日の安値(または始値)の間に連続した取引が存在しない価格帯ができる現象です。株式は取引時間が区切られているため典型的に発生します。FXや暗号資産は24時間に近いですが、週末明け、流動性が薄い時間帯、急なニュースで近い現象(擬似ギャップ)が起きます。
窓は「価格が飛んだ」のではなく、その価格帯に置かれていた指値・逆指値が“瞬時に消化された”という事実の記録です。つまり、窓ができた時点で既に、需給のバランスが壊れています。窓埋めとは、その壊れたバランスが“元に戻る”局面を狙うトレードです。
まず分類する:埋まる窓・埋まらない窓の見分け方
窓には性格があります。分類せずに「窓が空いたら逆張り」は、勝ったり負けたりで終わります。以下の4分類を基本形にしてください。
1. コモン・ギャップ(雑音の窓)
出来高が少なく、材料も弱い、レンジ相場中にポツンと出る窓。埋まりやすいですが、そもそも取れる幅が小さいことが多いです。
2. ブレイクアウェイ・ギャップ(レンジ脱出の窓)
長い持ち合いを抜ける窓。埋まりにくい代表です。埋めに行くどころか、窓を起点にトレンドが発生します。逆張り禁止の典型。
3. ランナウェイ(コンティニュエーション)・ギャップ(加速の窓)
既にトレンドが発生している途中で出る窓。窓を埋めずに走ることが多く、押し目として機能します。狙うなら「窓埋め」ではなく窓手前〜窓の半分までの押し目買い(戻り売り)の発想が合います。
4. エグゾースション・ギャップ(尽きた窓)
トレンド末期、過熱した状態で出る窓。窓を埋めて反転しやすいですが、見極めが難しい。過熱指標(出来高急増・ボラ急拡大・ニュースの“最後の一押し”)とセットで考えます。
窓の“質”を数値化する:初心者が迷わないための簡易スコア
感覚で「埋まりそう」と言っても再現性は出ません。ここでは、紙とペンでも運用できる簡易スコアを提示します。
ギャップ質スコア(0〜10):高いほど「埋まらない(トレンド継続)」寄り。
- 材料の強さ:決算・TOB・規制・サプライズ級マクロ(0〜3)
- 出来高:直近20日平均比で2倍超なら加点(0〜3)
- 位置:長期レンジ上抜け/下抜けなら加点(0〜2)
- 市場環境:指数全体がリスクオンで同方向なら加点(0〜2)
運用ルールはシンプルです。
スコア0〜3:埋まりやすい → 窓埋め逆張り候補
スコア4〜6:中間 → 小さく試すか見送り
スコア7〜10:埋まりにくい → 逆張り禁止、順張りの押し目候補
スコアを付けることで「触らない窓」を明確にし、トレード回数を“減らして”収益性を上げます。
窓埋めの基本パターン:2つしかない
窓埋めトレードは突き詰めると次の2系統に整理できます。
パターンA:窓を開けた直後の“行き過ぎ”を逆張りで取る
朝イチ(またはニュース直後)の加熱で一方向に走った後、いったん落ち着いて窓方向に戻る動きです。難点は、逆張りが早いと焼かれること。よって「反転を確認してから入る」ことが必須です。
パターンB:いったん窓を埋めた後の“再トレンド”を取る
窓を埋めに行ったところで反発し、元の方向に戻る動きです。こちらは勝率が高くなりやすい反面、利幅が小さくなりがちです。初心者はBから入る方が事故が少ないです。
エントリーの具体ルール(株・FX・暗号資産に共通)
「ローソク足1本の形」より重要なのは、窓に向かう速度が落ちたことと反転のサインが出たことです。以下の条件を組み合わせます。
条件1:窓方向への戻りが“減速”したサイン
たとえば、5分足なら高値更新が止まり、上ヒゲが増え、出来高が減る。FX/暗号資産なら急騰後に板が薄くなり、約定が飛び始める。こうした「勢いの失速」が出るまで逆張りしません。
条件2:反転を示すトリガーを1つ決める
迷いを消すために、トリガーを固定します。例として次のいずれか。
- 直近スイング高値/安値のブレイク(小さなトレンド転換)
- VWAP(出来高加重平均)を終値で回復/割れ
- 短期移動平均(例:20EMA)を明確に回復/割れ
初心者は「VWAP終値回復(または割れ)」が実務的です。株の寄り付き〜前場ではVWAPが効きやすいからです。
条件3:窓の“どこまで”を狙うかを固定する
窓埋めは「全埋め」だけが正解ではありません。むしろ半分埋めや窓手前で利確した方が期待値が上がる局面が多いです。
- 保守的:窓の50%(ミッドギャップ)で利確
- 標準:窓の80〜100%で利確
- 攻め:全埋め+さらに反対側へ(ただし上級者向け)
最初は「50%で半分利確、残りを全埋めまで伸ばす」の二段階が扱いやすいです。
損切りと撤退:窓埋めは“損切りが先”
窓埋め逆張りの致命傷は、損切りが遅れてトレンドに飲まれることです。損切りは価格ベースで機械的に決めます。
損切りの置き方(推奨)
- 逆張りなら:窓方向に走った直近高値/安値の外側(少しだけ外)
- Bパターン(埋めた後の反発)なら:埋めた水準を明確に割れたら撤退
重要なのは「窓が埋まるかどうか」ではなく、自分の前提(失速→反転)が崩れたかで切ることです。
ロット管理:1トレードの最大損失を“固定”する
初心者が一気に壊れる原因は、ロットが感情で増減することです。窓埋めは勝率がブレるので、損失の上限を固定してください。
目安として、口座残高の0.5%〜1.0%を1トレードの最大損失にします。損切り幅(円・pips・%)が決まれば、ロットは自動的に算出できます。
時間帯と銘柄選び:同じ「窓」でも期待値が違う
窓埋めは、どこでやるかで成績が変わります。
株式:寄り付き〜前場は“窓の情報”が濃い
寄り付き直後は成行が集中し、価格が飛びやすい。その後、指値が並び直され、機関投資家の平均コスト執行(VWAP執行)が入り、窓方向へ戻りやすい局面があります。よって、株は寄り付き後30〜90分が主戦場になりやすいです。
FX:ロンドン・NYの流動性で“擬似窓”が戻る
週末ギャップは別として、平日はニュースで急騰急落した後に、流動性が戻る時間帯(ロンドン入り・NY入り)で巻き戻りが起きやすい。窓埋めというより“過剰反応の是正”として捉えます。
暗号資産:週末と薄商い時間のギャップは要注意
暗号資産は板の薄い時間帯に一瞬で価格帯を飛びます。こういうギャップは「埋まりやすい」より「もう一段飛ぶ」ことも多い。出来高が伴っていない窓は特に危険なので、流動性が戻るまで待つが基本です。
“埋まりやすい窓”の具体条件:ここだけ覚えれば事故が減る
埋まりやすい窓には共通点があります。以下に当てはまるほど、逆張りの期待値が上がります。
- 材料が弱い(SNSの噂、軽いニュース、指数先物の一時的なブレ)
- 出来高が増えていない(機関の本気が見えない)
- 長期レンジの中で発生(ブレイクアウェイではない)
- 窓の幅が異常に大きくない(大きすぎる窓は継続しやすい)
- 市場全体(指数)が逆方向に戻っている(個別だけが飛んでいる)
“埋まらない窓”を触らない:典型例と理由
次の窓は、初心者が触るほど損します。
- 決算・ガイダンスの大幅修正:企業価値の見直しが起きているため、適正価格帯が変わる
- TOB・M&A:裁定の下限・上限が意識され、窓は埋まらない
- 規制・訴訟・不祥事:不確実性が残り、売りのリスクプレミアムが乗る
- マクロの regime change:金利や為替の前提が変わると、価格帯が一段階ずれる
これらは「窓が埋まるか」ではなく「価値の再評価が進んでいるか」が本質です。テクニカルの土俵ではありません。
具体例:株式での窓埋め(Bパターン)シナリオ
想定:大型株、前日終値1000円。翌日寄り付きで材料薄の買いが入り、始値1040円(上窓)。前場で高値1060円を付けた後、勢いが落ち、VWAPを割り込み、1040円近辺まで押す。
ここでやりたいのは「1040円を割れたらショート」ではありません。Bパターンなら、いったん窓を埋めに行く(1000円方向)動きが出た後、1000円近辺で反発した瞬間を拾います。たとえば、1005円で下げ止まり、5分足でVWAPを回復、出来高が戻ってきた。ここでロング。
利確はミッドギャップ(1020円)で半分、残りを1040円〜1050円で。損切りは1000円を明確に割れたら。これなら「窓が埋まる/埋まらない」ではなく、押し目が機能するかに賭ける形になり、心理的にもブレにくいです。
具体例:FXの“擬似窓”での逆張り(Aパターン)
指標でドル円が一気に80pips上に飛んだとします。ここで即売りは危険です。狙うのは、急騰の後に短期の買いが尽き、1分足〜5分足で高値更新が止まったところ。トリガーは「直近安値割れ」や「VWAP割れ」。損切りは直近高値超え。利確は半値戻しを基本にし、残りは流動性が戻る時間帯まで引っ張る。
FXは“ニュースの解釈”が速く、市場が納得すると窓は埋まりません。よって、材料が強いと判断したら即撤退するのが正解です。
バックテストのやり方:初心者でもできる検証手順
窓埋めはルール化しやすい分、検証も簡単です。最低限、次の手順で「自分の市場・時間軸」で数字を出してください。
- 対象を絞る(例:TOPIX大型、米株指数、ドル円、BTC)
- 窓の定義を固定(例:前日終値比で0.8%以上)
- 窓の質スコアを付ける(材料・出来高・位置・環境)
- 利確ルールを固定(50%/100%など)
- 損切りルールを固定(直近高値/安値、埋め水準割れ等)
- 期間を十分に取る(最低200〜300サンプル)
検証で見るべきは勝率ではなく、期待値(平均損益)と最大ドローダウンです。勝率が高くても、負けが大きいと破綻します。
失敗パターン集:ここを避ければ生存率が上がる
失敗1:材料の強い窓を逆張りする
決算・TOB・規制の窓は、テクニカルで勝とうとすると負けます。最初から除外。
失敗2:反転確認なしで入る
「窓が空いたから」だけで入るのはナイフ拾いです。失速とトリガーを待つ。
失敗3:利確を欲張って全埋めに固執する
半分埋めで終わる相場は多いです。段階利確で取りこぼしと欲張りを両方減らします。
失敗4:損切りを“祈り”で伸ばす
逆張りで祈った時点で負けが大きくなります。損切りは価格で機械的に。
実戦チェックリスト:エントリー前に10秒で確認
- 材料は強いか弱いか(強ければ逆張りしない)
- 出来高は増えているか(増えていれば埋まりにくい)
- レンジ内の窓か、レンジ脱出の窓か
- 窓方向への勢いは失速したか
- トリガーは発動したか(VWAP回復/割れ等)
- 損切り価格は明確か(入る前に決めたか)
- 利確は50%/100%のどこか(段階利確か)
- 1回の最大損失は口座の0.5〜1%以内か
まとめ:窓埋めは「触る窓を選ぶ」ゲーム
窓埋めトレードは、派手なテクニックではなく、やらない窓を増やすことで勝ちやすくなる戦略です。材料が弱く、出来高が伴わず、レンジ内で発生した窓は埋まりやすい。一方で、材料が強く、出来高が増え、レンジ脱出の窓は埋まらない。まずこの二分法を徹底してください。
最後に、トレードは「当てること」ではなく「期待値を積み上げること」です。窓の質スコア、反転確認、損切り固定、段階利確。これらを守れば、初心者でも“勝ち方”が数字として見えてきます。


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