VIX平均回帰で狙う「総悲観の反転」―パニック相場のボトムフィッシング設計図

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VIXとは何か:まず「恐怖指数」を誤解しない

VIX(Volatility Index)は、S&P500指数(SPX)のオプションから算出される、今後30日程度の予想変動率(インプライド・ボラティリティ)の指標です。価格が上がるほど「市場が不安で、保険(プット)を買う人が増えている」状態を示しやすい一方で、VIXは株価そのものではなく、あくまでオプションの“保険料の高さ”に近い指標です。

ここを誤解すると、VIXを「株が下がったから上がるもの」と短絡してしまい、タイミングと商品選びで大きな損失を抱えます。VIXを使う戦略は、基本的に“恐怖が高値に張り付く期間のリスク”と、“商品固有の構造(先物の期限構造)”を理解した上で組み立てる必要があります。

平均回帰が起きやすい理由:ボラは「需要ショック」で跳ねる

暴落局面では、投資家は現物を売るだけでなく、下落に備える保険としてプットを急いで買います。保険需要が急増するとオプションの価格が跳ね、その結果としてVIXが急騰します。しかし恐怖は永遠に続きにくい。急落が一服したり、政策対応や需給整理が進むと、保険需要が剥落し、オプション価格が沈静化してVIXが下がります。

この「恐怖→保険買い→VIX急騰→沈静化→VIX低下」という循環が、平均回帰っぽい動きを作ります。ただし注意点があります。平均回帰は“必ず”起きるわけではなく、“起きやすいが、時間と痛みが読めない”という性質です。ここが勝ち筋と破綻筋の分岐点になります。

「ボトムフィッシング」を定義する:狙うのはVIXの天井ではなく“降りる局面”

VIX平均回帰で最も危険なのは、VIXが上がった瞬間に「もう天井だ」と決め打ちで逆張りすることです。パニックが続くとVIXはさらに上がり得ます。狙うべきは、天井当てではなく“高止まり後に降り始める局面”です。

具体的には、以下のような「恐怖がピークアウトしたサイン」を複数確認して、初めて“ボトムフィッシングの設計”に入ります。

エントリーの考え方:3つのチェックポイント

チェック1:VIXの上昇が鈍化している
例:VIXが急騰した翌日以降、日中の高値更新が止まり、終値が上ヒゲで終わる/連続陽線が途切れる、など。

チェック2:株価側で「売り切れ感」が出ている
例:S&P500やナスダックが大陰線のあと、翌日に下げ渋って長い下ヒゲを出す/出来高が増えて投げが出た形跡がある、など。VIXだけ見ず、現物側の需給も観察します。

チェック3:短期の恐怖が“行き過ぎ”に見える
例:ニュースの見出しが連日同じ悪材料で埋まり、SNSが静まり返る(売り手の燃料が尽きる)/市場が「何でも売り」になっている、など。これは定量化が難しいですが、実戦では重要です。

これらは単独では弱いので、2つ以上が重なったら小さく入る、という発想が現実的です。

商品選び:VIXを「どう売るか」で難易度が激変する

VIXに直接投資する商品は複数ありますが、初心者ほど“分かりやすさ”だけで選ぶと痛い目を見ます。ここでは難易度順に整理します。

①最も安全寄り:現物株(広い指数)を小さく拾う

VIX平均回帰を「ボラが落ちる=株価が戻る局面」と解釈し、S&P500連動のETFなどを分割で拾うやり方です。VIXそのものを売らず、現物側でリバウンドを取りに行きます。VIXが高いときは株の期待リターンが上がりやすいという経験則はありますが、当然ながら下落が続けば含み損になります。

ただ、VIX先物やレバレッジVIX商品に比べると構造が単純で、破綻しにくいのがメリットです。まずはここから設計するのが堅いです。

②中級:オプションで「限定損失」の形にする

例えば、S&P500のコールを買う、あるいはプットを売る(ただし証拠金・急落リスクが大きい)など、ボラ沈静化を利用して損失を限定する設計ができます。初心者がいきなりプット売りに行くのは危険なので、まずはコール買い(損失=支払ったプレミアム)などの限定損失型が無難です。

「ボラが高いとオプションが高い」という不利もありますが、代わりに“当たり”を引いたときの伸びも大きく、撤退判断も明確です。

③上級:VIX先物連動ETFの“構造”を理解して使う

VIX連動ETF(短期先物をロールするタイプ)は、VIXそのものではなくVIX先物のバスケットに連動します。ここで重要なのがコンタンゴ/バックワーデーションという期限構造です。

平常時はコンタンゴ(期先が高い)になりやすく、短期先物を持ち続けるとロールで目減りしやすい。一方、パニック時はバックワーデーション(期近が高い)になり、構造的な目減りが止まったり、逆に有利に働く局面もあります。

つまり、VIX連動ETFは「VIXが下がるから儲かる」ではなく、期限構造とロールの影響で勝ち負けが変わる商品です。初心者がここにいきなり突っ込むのは推奨しません。理解した上で“量を絞って”使うべきです。

勝ち筋の核心:分割・時間分散・撤退ルールの三点セット

VIX平均回帰は、タイミングが数日ズレるだけで損益が激変します。だから勝ち筋は「当てる」ではなく「耐える設計」です。以下の三点セットを必須にしてください。

1)分割エントリー:3回に分けるだけで破綻確率が下がる

例として、投入したい資金を100とします。1回目は30、2回目は30、3回目は40のように分けます。1回目は「ピークアウトしそう」段階で小さく、2回目は「VIXが陰線で下げた」などの確認後、3回目は「株価が反転して高値更新を始めた」など、確度が上がった段階で入れると、平均回帰の“時間差”に強くなります。

2)時間分散:最短で当てにいかない

平均回帰は「すぐ戻る」こともあれば「高止まりが数週間続く」こともあります。日足だけでなく、週足で見て“恐怖が長引いているか”を判断します。週足でVIXが高値圏でもみ合いなら、無理に逆張りを厚くしない、という判断が必要です。

3)撤退ルール:損切りは“価格”ではなく“シナリオ崩れ”で決める

VIX戦略の難点は、価格だけで損切りすると、最悪のタイミング(パニックのピーク)で投げやすい点です。そこで撤退は「シナリオが崩れたか」で決めます。

シナリオ崩れの例:
・株価が安値更新を続け、下げ渋りのサインが消えた
・VIXが高止まりのまま、さらに上方ブレイクして定着した(複数日)
・クレジット市場(社債スプレッド等)が悪化し続け、株だけの問題ではなくなった

この場合は、ポジションを縮小するか、損失限定の形(オプション)へ組み替えるなど、設計を変えます。

具体例:あなたが最初にやるべき「簡易VIX平均回帰」プロトコル

ここでは、初心者が実行しやすい“シンプルな手順”を提示します。商品は「広い指数ETF」前提です。

ステップA:条件の確認
・VIXが急騰し、直近3~5日で大きく上がっている
・S&P500が急落し、日中に長い下ヒゲが出るなど、投げが出た形がある

ステップB:1回目(小さく)
・VIXが「高値更新が止まった」日に、予定資金の30%だけETFを買う

ステップC:2回目(確認して)
・VIXが前日比で明確に下がり、株価が陽線になったら、さらに30%

ステップD:3回目(トレンドが戻ったら)
・株価が5日移動平均を回復して押し目を作ったら、残り40%

利確の目安
・VIXが急騰前のレンジに戻り始めたら、部分利確を検討
・株価が急落の起点(ギャップや大陰線の始点)に近づいたら、段階的に利確

これは“勝率を上げる”というより、“破綻しにくくする”設計です。短期で最大値を狙うより、長く生き残る方が結果としてパフォーマンスが安定します。

よくある失敗:VIX平均回帰で焼かれる典型パターン

失敗1:VIXショートをレバレッジでやる
ボラがさらに吹き上がると、損失が雪だるま式に増えます。特にレバレッジ型のVIX商品は値動きが荒く、想定より早く退場します。

失敗2:下落理由を軽視する
暴落の原因が「一過性のショック」なのか「景気後退・信用不安」なのかで、恐怖の滞留時間が変わります。後者なら平均回帰が遅れます。

失敗3:一括で入る
当たれば気持ちいいですが、外れたときに再起不能になります。分割は“保険料”です。

リスク管理:ポジションサイズの現実的な決め方

初心者がVIX系の局面でやりがちなミスは「チャンスに見えて、普段より大きく張る」ことです。パニック局面はボラが大きく、同じ金額でもリスクが跳ね上がります。ルールとして、通常時の半分以下のサイズから始めるのが無難です。

もう一つは、最悪ケースを想定することです。例えば株価がさらに10~15%下がる可能性を前提に、耐えられる額しか入れない。これだけで退場確率が大きく下がります。

VIXを“相場の温度計”として使う:投資判断への落とし込み

VIX平均回帰を狙う場合でも、VIXは売買対象というより、相場の温度計として使う発想が強いほど安定します。具体的には、

・VIXが高い=保険料が高い=市場が脆い
・VIXが下がってきた=恐怖が解けた=リスクオンが戻る余地

この温度計を見ながら、現物の買い増し/ヘッジの強弱を調整する。これが長期的には最も再現性が高い使い方です。

まとめ:VIX平均回帰は「当てるゲーム」ではなく「設計のゲーム」

VIXが跳ねた瞬間の逆張りはギャンブルになりやすい。狙うのは“降り始め”で、分割・時間分散・シナリオ撤退をセットにする。商品は構造が単純なものから始め、VIX先物連動商品は理解してから少量で試す。この順番を守るだけで、VIX平均回帰は「総悲観を味方につける」強力な武器になり得ます。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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