半導体サイクルの大底:シリコンサイクルを先読みした「底打ち買い」の組み立て方

株式投資
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  1. はじめに:半導体は「成長産業」だが、株価は「循環産業」として動く
  2. 半導体サイクルの基本:なぜ“波”が発生するのか
    1. 需要が増えても、供給がすぐ増えない(しかし増え始めると止まらない)
    2. サイクルが強く出やすい領域:メモリと汎用品
    3. 株価は業績の“現在”ではなく“次の6~12か月”を織り込む
  3. 大底の見取り図:サイクルを4つの局面に分解する
    1. ①過熱(供給不足・価格上昇・増産投資)
    2. ②ピークアウト(需要減速・在庫増・価格の頭打ち)
    3. ③調整(発注停止・在庫圧縮・価格下落)
    4. ④底入れ(在庫が減り、価格が下げ止まり、受注が戻り始める)
  4. 初心者でも追える「底打ちシグナル」:8つの観測ポイント
    1. 1)在庫(Inventory):メーカー在庫ではなく「顧客在庫」の変化を意識
    2. 2)価格(Pricing):メモリならスポットと契約、両方の“下げ止まり”
    3. 3)稼働率(Utilization):減産は“悪材料”ではなく“底入れ準備”になり得る
    4. 4)受注と出荷(Bookings/Shipments):装置・材料・後工程も見る
    5. 5)リードタイム(Lead time):短縮が進みすぎた後の“横ばい化”
    6. 6)ガイダンス(Guidance):数字より「言い回し」の変化を読む
    7. 7)マクロ(PMI・在庫循環):最終需要の追い風があるか
    8. 8)バリュエーション:過去平均ではなく“サイクル底のレンジ”で見る
  5. 「大底を先読みする」具体的な手順:初心者向けワークフロー
    1. ステップ1:対象を3つに分ける(メモリ/装置/用途特化)
    2. ステップ2:3つの“代表データ”を固定する
    3. ステップ3:チェック表を“文章”で残す(数値より観測ログ)
    4. ステップ4:エントリーは“条件付き・分割”にする
    5. ステップ5:撤退ルールを先に決める(良いシナリオより重要)
  6. 具体例:架空ケースで学ぶ「底入れゾーン」の読み方
    1. ケースA:メモリ価格が下げ止まり、しかし決算はまだ最悪
    2. ケースB:AIテーマで株価が先行しすぎ、サイクル底ではない
  7. 半導体サイクルで初心者がやりがちな失敗と、回避策
    1. 失敗1:PERが低い=割安と勘違い(ピーク利益の罠)
    2. 失敗2:底当てを狙って一括投入し、メンタルが折れる
    3. 失敗3:ニュースに反応しすぎて、観測軸が毎回変わる
    4. 失敗4:サプライチェーンを見ずに、1社の決算だけで判断する
  8. “底入れ後”の出口戦略:上がった後こそルールが必要
  9. まとめ:大底は“当てるゲーム”ではなく“条件を揃えるゲーム”

はじめに:半導体は「成長産業」だが、株価は「循環産業」として動く

半導体はAI、スマホ、車載、データセンターなど用途が広く、長期では成長が続きやすい一方、短期の株価は「景気敏感な循環(シリコンサイクル)」として振れます。初心者がよくやる失敗は、ニュースで盛り上がった“好況の後半”に買ってしまい、在庫調整局面の下落で耐えられず投げることです。逆に、サイクルの底(大底)を丁寧に観察できると、同じ銘柄でも“買うタイミング”の勝率が変わります。

この記事では、半導体サイクルが底に近いかどうかを、初心者でも追える「公開データ」と「企業の言葉」から判定し、無理のない買い方(分割・条件付き・撤退ルール)に落とし込む手順を、具体例を交えて解説します。銘柄の推奨はせず、再現可能な考え方と作業手順に絞ります。

半導体サイクルの基本:なぜ“波”が発生するのか

需要が増えても、供給がすぐ増えない(しかし増え始めると止まらない)

半導体は工場(ファブ)を増やすのに時間がかかります。需要が強いとき、供給が追いつかず価格が上がり、企業は設備投資(Capex)を増やします。ところが設備投資は“未来の供給”を増やす行為なので、数四半期~数年遅れて供給が増え、需要が減速すると一気に在庫が積み上がります。すると価格が崩れ、在庫を吐き出すために発注が止まり、業績も株価も落ち込みやすい。これがサイクルの骨格です。

サイクルが強く出やすい領域:メモリと汎用品

初心者がまず理解すべきは、半導体でもサイクルの強さが違う点です。DRAMやNANDなどメモリは同質化しやすく、需給で価格が動くためサイクルが出やすい。一方、特定用途に最適化されたアナログ、車載の一部、先端ロジックなどは相対的に粘りやすいことがあります。ただし“粘りやすい=無敵”ではありません。最終需要(スマホ販売、PC更新、車の生産、クラウド投資)が弱れば、どこかで調整が入ります。

株価は業績の“現在”ではなく“次の6~12か月”を織り込む

サイクルの大底を狙う発想の核心は、「業績が悪い時期に株価が底を打ち、業績が回復し始める前に株価が先に上がる」ことが多い点です。だから“良い決算が出てから買う”だと遅れやすい。一方で“ただ下がったから買う”は危険です。そこで必要なのが、底打ちの兆候(需給・在庫・価格・企業ガイダンス)が揃っているかの確認です。

大底の見取り図:サイクルを4つの局面に分解する

サイクルをざっくり4局面に分けると、判断が整理できます。

①過熱(供給不足・価格上昇・増産投資)

受給が締まり、リードタイム(納期)が伸び、メーカーや装置メーカーが強気。ここはニュースが明るく、個人が入りやすい一方、次の悪化が“予約”されやすい局面です。

②ピークアウト(需要減速・在庫増・価格の頭打ち)

最終需要が鈍る、顧客が在庫を抱える、値下げの気配が出る。決算はまだ良いのに株価が弱いことが増えます。

③調整(発注停止・在庫圧縮・価格下落)

顧客は在庫消化に専念し、発注が急減。メーカーは稼働率を落とす。決算は悪く、ガイダンスも保守的。株価は投げが出やすい。

④底入れ(在庫が減り、価格が下げ止まり、受注が戻り始める)

ニュースはまだ暗いままでも、データは改善し始めます。ここを拾うのが“サイクル大底”の狙いです。重要なのは「一発で底を当てる」ことではなく、「底に近い領域を見極め、分割で平均を整え、改善が崩れたら撤退できる形」にすることです。

初心者でも追える「底打ちシグナル」:8つの観測ポイント

以下の8項目は、無料または低コストで追える情報が多く、サイクル判断に使えます。ポイントは“単発の材料”ではなく“複数が同じ方向を向く”ことです。

1)在庫(Inventory):メーカー在庫ではなく「顧客在庫」の変化を意識

半導体の調整は、メーカーより先に“顧客側”で在庫が積み上がります。たとえばスマホメーカーやPCメーカーが売れ行き鈍化で在庫を抱えると、半導体の発注が止まります。投資家は「在庫日数(Days of Inventory)」や企業決算の“チャネル在庫”のコメントを読み、在庫がピークアウトしているかを確認します。底入れ局面では「在庫は改善している」「通常水準に近づいた」という表現が増えます。

具体的な作業としては、半導体メーカーの決算資料で“inventory”や“days”を検索し、前四半期比で増加が鈍っているか、また顧客側(OEM)の在庫の言及がどう変化したかをメモします。初心者は1社に絞らず、同じサプライチェーン上の複数社で同方向かを見るだけでも精度が上がります。

2)価格(Pricing):メモリならスポットと契約、両方の“下げ止まり”

メモリは価格がサイクルの温度計です。スポット価格は短期の需給、契約価格は企業間の交渉が反映されます。底入れでは、まず“下落率の鈍化”が出て、その後“横ばい期間”が続き、最後に“わずかな反発”が見えます。ここで重要なのは、反発の初動は小さくても、企業が「価格の下落が止まった」と言い出した時点で株価が先に反応しやすい点です。

初心者の注意点は、価格の一回の上げ下げに反応しないことです。2~3か月のトレンドで見て、下げの角度が緩くなっているかを観察します。

3)稼働率(Utilization):減産は“悪材料”ではなく“底入れ準備”になり得る

調整局面では減産や稼働率低下がニュースになりますが、これは在庫圧縮を加速させる行動です。底入れを狙う側から見ると、「減産をやり切って、在庫が減る道筋が立つ」ことが大事です。企業が“積極的な減産”“在庫正常化を優先”と表現する場合、短期の利益は犠牲でも、次局面に進む準備として評価されることがあります。

4)受注と出荷(Bookings/Shipments):装置・材料・後工程も見る

半導体は川上(材料・装置)から川下(完成品)まで長いサプライチェーンです。底入れは川下から始まり、順番に波及します。たとえば完成品の販売が持ち直し、在庫が減り、部品発注が戻り、やがて装置投資が復活します。したがって、装置メーカーの受注(bookings)や、半導体製造装置の統計(業界団体の発表など)も参考になります。

初心者は、難しいモデル化は不要です。「装置の受注が底割れしていない」「減少率が鈍化している」といった“変化率”だけ追えば十分です。

5)リードタイム(Lead time):短縮が進みすぎた後の“横ばい化”

供給不足の時は納期が延び、調整局面では納期が急速に短くなります。底入れでは、納期短縮が一巡して横ばいになることが多い。ここも“改善の初動”は目立ちにくいので、四半期ごとのコメントの変化を拾うのが実務的です。

6)ガイダンス(Guidance):数字より「言い回し」の変化を読む

半導体の決算で初心者が混乱しやすいのは、EPSや売上が悪いのに株価が上がる、あるいは良いのに下がる現象です。これは市場が“次の局面”を見ているからです。底入れが近いと、企業は慎重さを残しつつも「需要は底を打った可能性」「下期にかけて改善」「在庫調整は終盤」などの表現を使い始めます。

おすすめの読み方は、決算説明会のトランスクリプトを、前回・前々回と並べて、同じ質問への回答の温度差を見ることです。数字より、言葉の“方向転換”がシグナルになります。

7)マクロ(PMI・在庫循環):最終需要の追い風があるか

半導体は最終需要に依存します。製造業PMI、新規受注、在庫指数などが改善方向なら、底入れ後の回復が“実需”に支えられやすい。逆にマクロが悪化し続けるなら、底入れは遅れたり、反発が短命になったりします。ここは完璧な予測よりも、極端な逆風かどうかのチェックで十分です。

8)バリュエーション:過去平均ではなく“サイクル底のレンジ”で見る

循環株は、ピーク利益を前提にPERが低く見えたり、底利益でPERが高く見えたりします。初心者がよくやるのは、ピーク局面で「PERが低いから割安」と判断してしまうことです。底を狙う場合は、利益が落ちている前提で、過去のサイクル底で市場がどの程度のEV/EBITDAやPBRを許容したかをざっくり確認し、現在が“過去の底レンジ”に近いかを見ます。

「大底を先読みする」具体的な手順:初心者向けワークフロー

ここからは、実際の作業手順を“週1回・30分”で回せる形に落とします。重要なのは、難しい指標を増やすより、同じ作業を継続して“変化”を捉えることです。

ステップ1:対象を3つに分ける(メモリ/装置/用途特化)

まず半導体関連を、値動きの性格が違う3群に分けます。メモリ(価格主導)、装置(設備投資主導)、用途特化(AIや車載などテーマ主導)です。同じニュースでも反応が違うため、混ぜて考えると判断がぶれます。初心者は、いきなり個別銘柄の深掘りに入らず、「どの群のサイクルを見たいのか」を決めるだけでミスが減ります。

ステップ2:3つの“代表データ”を固定する

毎回データを増やすと継続できません。最初は代表を3つだけ固定します。例としては、(1)メモリ価格の月次トレンド、(2)装置受注の前年比・前月比の変化、(3)主要メーカー決算の在庫コメント、のように“価格・投資・在庫”を1つずつ置くのが扱いやすいです。これだけでもサイクルの大枠は掴めます。

ステップ3:チェック表を“文章”で残す(数値より観測ログ)

初心者が上達する最短ルートは、観測結果を短い文章で残すことです。「価格は下落率が鈍化」「在庫は高いがピークアウト示唆」「装置受注は減少継続だが下げ幅縮小」など、毎週同じフォーマットで記録します。これを続けると、底入れ局面で言葉が自然に変わり、エントリー条件が作れます。

ステップ4:エントリーは“条件付き・分割”にする

大底狙いで最も危険なのは、1回で全力買いすることです。底は“点”ではなく“ゾーン”です。したがって、例えば次のように条件を置いて分割します。

(例)第1弾:価格の下落率が2か月連続で鈍化したら少額で試す。第2弾:企業が「在庫調整は終盤」と言い始めたら追加。第3弾:受注が前年比で改善し始めたら追加。こうすると「外れた時の損失」を抑えつつ、当たった時は平均単価を整えられます。

ステップ5:撤退ルールを先に決める(良いシナリオより重要)

初心者ほど、買った後に都合の良い情報だけ集めがちです。先に撤退ルールを決めてください。たとえば「価格が再び急落し、下落率が加速した」「企業が在庫の再増加を認めた」「マクロ指標が急悪化して需要の底打ち仮説が崩れた」など、シグナルが逆回転したら撤退する。これができると、大底狙いが“ギャンブル”から“検証可能な仮説取引”に変わります。

具体例:架空ケースで学ぶ「底入れゾーン」の読み方

以下は架空の例です。特定銘柄を示唆する意図はありません。サイクル判断の“考え方”の練習として読んでください。

ケースA:メモリ価格が下げ止まり、しかし決算はまだ最悪

状況:メモリスポット価格が半年下落した後、2か月連続で下落率が鈍化。契約価格はまだ下がっているが、メーカーが「価格の調整は終盤」とコメント。決算は赤字、株価は安値圏。

解釈:業績は最悪でも、価格という温度計が先に改善している。第1弾の少額試し買いの条件が満たされる。ここで重要なのは、反発が出ても“すぐ全力にしない”こと。底入れ初期は「悪材料の遅れて出るニュース」で再下落しやすいからです。

行動:第1弾を小さく入れ、次の四半期で在庫の減少が確認できたら第2弾、需要の回復(例えばPC出荷の下げ止まり)が見えたら第3弾。撤退は、価格が再び急落して下落率が加速した場合。

ケースB:AIテーマで株価が先行しすぎ、サイクル底ではない

状況:AI関連ニュースで半導体株が急騰。しかし同時に、装置受注は前年比マイナスが拡大、在庫も増加。企業は強気だが「顧客の調整が続く」とも言っている。

解釈:テーマで株価が走っているだけで、サイクルの底シグナルが揃っていない。ここで飛び乗ると、テーマが冷めた瞬間に“サイクル悪化”が表に出て下落しやすい。

行動:買うなら“テーマの勢い”ではなく、在庫と受注の改善が出てから。初心者は、この局面では「買わない」ことが最も合理的な選択になり得ます。

半導体サイクルで初心者がやりがちな失敗と、回避策

失敗1:PERが低い=割安と勘違い(ピーク利益の罠)

ピーク利益でPERが低く見えるのは危険です。回避策は、利益が落ちる前提で、過去の底での評価レンジ(PBRやEV/EBITDAなど)を参照し、価格が“底レンジ”に近いかを確認することです。数値が難しければ、少なくとも「ピークのときに割安に見える」現象を覚えておくと良いです。

失敗2:底当てを狙って一括投入し、メンタルが折れる

底は当てにいくほど外れます。回避策は分割と条件付きエントリーです。底入れの兆候が揃うたびに少しずつ増やし、揃わなければ増やさない。これで“外れた時の痛手”が小さくなります。

失敗3:ニュースに反応しすぎて、観測軸が毎回変わる

回避策は、観測するデータを固定し、同じフォーマットでログを残すことです。サイクルはゆっくり動くので、日々のニュースに振り回されるより、月次・四半期の変化を追う方が有利です。

失敗4:サプライチェーンを見ずに、1社の決算だけで判断する

1社のコメントはポジショントークの可能性があります。回避策は、川上・川中・川下で最低2~3社のコメントを横に並べ、同じ方向性が出ているか確認することです。初心者でも「在庫」「需要」「受注」の言葉の温度差を見るだけで精度が上がります。

“底入れ後”の出口戦略:上がった後こそルールが必要

大底狙いが当たると、株価は短期間で大きく戻ることがあります。ここで「もっと上がるはず」と引っ張りすぎると、次の調整で利益が消えます。初心者向けの出口設計としては、(1)目標レンジを決めて一部利確、(2)トレンドが崩れたら残りを落とす、(3)イベント(決算など)前にポジションを落とす、のように、複数の出口を用意するのが現実的です。

特に半導体は、決算やガイダンスでギャップ(窓)を作りやすいので、イベント前後のリスク管理が重要です。初心者は「勝っている時に守る」発想を持つだけで、成績のブレが小さくなります。

まとめ:大底は“当てるゲーム”ではなく“条件を揃えるゲーム”

半導体サイクルの大底狙いは、派手に見えますが、本質は地味な観測とルール運用です。価格・在庫・受注・企業の言葉が少しずつ改善し、複数のシグナルが同じ方向を向いたときに、分割で入る。逆回転したら撤退する。この一連の手順ができれば、初心者でも「ニュースに踊らされない投資判断」が可能になります。

最初は完璧に当てる必要はありません。毎週のログを3か月続けるだけで、あなたの判断は“感想”から“検証可能な仮説”へ変わります。そこからが本当のスタートです。

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