FOMCドットチャートの読み方と、金利見通し変更が相場に伝播するメカニズム(実践トレード手順)

市場解説

FOMC(米連邦公開市場委員会)の後に市場が荒れる理由は、声明文そのものよりも「金利の将来像がどれだけ変わったか」にあります。その変化を一枚に圧縮して見せるのが、いわゆるドットチャート(dot plot)です。

ただし、ドットチャートは「当たる予言」ではありません。にもかかわらず、短期の値動きに強い影響を与えます。なぜなら、機関投資家のポジションやリスク管理の多くが、将来の金利パス(rate path)の前提で組まれているからです。

この記事では、投資初心者でも実務的に使えるように、FOMC直後にどの数字を見て、どの順番で解釈し、どの市場にどう波及するかを、具体例と手順で整理します。単なる「利上げなら株安」では終わらせません。ドットの“ズレ”が、米金利→ドル→株→セクター→個別の順に伝播する構造まで落とし込みます。

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  1. 1. ドットチャートとは何か(まず「何を示していないか」を理解する)
  2. 2. 最初に見るべきは「中央値」ではなく、3つのギャップ
    1. (A)市場の織り込み vs ドット(どっちがサプライズか)
    2. (B)ドット vs パウエル会見(言葉で打ち消すケース)
    3. (C)ドットの分布の歪み(少数派が強い意味を持つ)
  3. 3. 反応の伝播ルート:まず米金利、次にドル、最後に株
    1. 2年金利が主役になる理由
    2. 10年金利は「成長×インフレ×需給」の合成
  4. 4. 典型的な4パターンと、初心者が取り組みやすい売買の型
    1. パターン1:ドットがタカ派サプライズ → 2年金利↑ → ドル高 → NASDAQ弱い
    2. パターン2:ドットがハト派サプライズ → 2年金利↓ → ドル安 → グロース優位
    3. パターン3:ドットはタカ派でも、会見がハト派 → 初動は乱高下 → 結局レンジ
    4. パターン4:ドットは変わらないが、経済見通し(SEP)が変わる → 10年が主導
  5. 5. 「ドットより強い」市場データ:Fed Funds先物とOISで織り込みを数字化する
  6. 6. ドル円への波及:日米金利差だけでなく「リスクオフ円高」を分けて考える
    1. (1)金利差主導:2年金利↑ → ドル高円安
    2. (2)リスクオフ主導:株急落 → 円買い → ドル円が下がることもある
  7. 7. 米国株の“勝ち負け”は、指数ではなく「金利感応度」で決まる
  8. 8. 具体的なトレード手順(当日〜翌週までの“型”)
    1. 手順1:イベント前(前日まで)に「市場の期待」をメモしておく
    2. 手順2:直後は“結論を出さない”時間を決める
    3. 手順3:2年金利の方向を確認してから、株のシナリオを決める
    4. 手順4:翌日に“継続”か“反転”かを判定する
  9. 9. 初心者が避けるべき落とし穴(負けパターンを先に潰す)
  10. 10. まとめ:ドットは「市場の前提」を更新するスイッチ

1. ドットチャートとは何か(まず「何を示していないか」を理解する)

ドットチャートは、FOMC参加者(投票権の有無を含む)が想定する「年末時点の政策金利水準」を点(ドット)で並べたものです。重要なのは次の3点です。

  • 個人名が分からない:どの点が誰の予想かは特定できません。
  • 「確率」ではない:ドットが多い=確率が高い、ではありません。あくまで参加者の見立ての分布です。
  • 経路(途中の推移)が省略される:年末水準が同じでも、途中で上げて下げるのか、据え置きなのかは分かりません。

それでも市場がドットに反応するのは、「参加者の中心(中央値)がどこに移動したか」が、将来の利下げ開始時期や利下げ回数の期待を再配分するスイッチになるからです。

2. 最初に見るべきは「中央値」ではなく、3つのギャップ

FOMC後に初心者がやりがちなのは、ドットの中央値が上がった/下がったで即断することです。実際は、次の“ギャップ”を順に埋めると解釈が安定します。

(A)市場の織り込み vs ドット(どっちがサプライズか)

ドットが「タカ派(高金利長期化)」でも、市場がもっとタカ派を織り込んでいたなら「材料出尽くし」で株高になることすらあります。逆も同様です。

(B)ドット vs パウエル会見(言葉で打ち消すケース)

ドットがハト派でも、会見で「インフレ再燃リスク」「データ次第で引き締め継続」などを強調すれば、金利が上がり、株が売られることがあります。ドットは“表”、会見は“補正”です。

(C)ドットの分布の歪み(少数派が強い意味を持つ)

中央値が動かなくても、上側(タカ派側)に点が増えただけで、市場は「上振れリスク」を嫌います。特に、リスク資産は“悪い方向の不確実性”に弱いからです。

3. 反応の伝播ルート:まず米金利、次にドル、最後に株

FOMC後の“相場の筋”を読むには、見る順番を固定します。おすすめは次の順です。

  1. 米国債利回り(2年→10年)
  2. ドル指数/ドル円
  3. 株価指数(S&P500、NASDAQ)

理由はシンプルで、ドットは政策金利の見通しなので、最も直結するのは短期金利(2年)です。2年が動き、カーブ全体が動き、その後にFX・株が追随します。

2年金利が主役になる理由

2年金利は「ここから1〜2年の政策金利の平均」に近い感応度を持ちます。ドットの変化=利下げ回数の変化は、2年に最も出ます。これが動かないのに株だけが動くなら、ヘッドライン誤読やアルゴの初動の可能性を疑います。

10年金利は「成長×インフレ×需給」の合成

10年はドットだけでなく、景気見通し、財政、入札需給、インフレ期待も混ざります。よって、FOMC直後は「2年>10年」を優先し、時間が経ってから10年の方向感を確認します。

4. 典型的な4パターンと、初心者が取り組みやすい売買の型

ここからが本題です。FOMC後は無限の値動きに見えますが、実際に多いのは次の4パターンです。初心者は、まずこの4つだけを反射的に分類できるようにします。

パターン1:ドットがタカ派サプライズ → 2年金利↑ → ドル高 → NASDAQ弱い

ハイテクは「将来利益」の現在価値で評価されやすく、割引率(=金利)が上がると逆風です。ここで重要なのは、株を見てから判断しないこと。2年金利が上がり続けるなら、戻り売りが優位になりやすいです。

実践例:FOMC直後の急落を追いかけて売るのではなく、初動のボラが落ちた後に、NASDAQ先物やハイテク比率の高い指数で「戻りが鈍い局面」を探します。損切りは「2年金利が反転して下げ始めたら」でルール化すると、感情に引きずられにくくなります。

パターン2:ドットがハト派サプライズ → 2年金利↓ → ドル安 → グロース優位

「利下げ期待の前倒し」は、ハイテクや高PER銘柄に追い風になりやすい一方、ドル安でコモディティや新興国が強く出ることもあります。

実践例:FOMC直後に買うなら、指数全体よりも「金利感応度が高いバスケット」を意識します。たとえば、NASDAQ100や、金利に弱いセクター(住宅、IT、長期成長)です。逆に、銀行株は短期金利低下で利ざや期待が縮むため、指数ほど上がらないことがあります。

パターン3:ドットはタカ派でも、会見がハト派 → 初動は乱高下 → 結局レンジ

このパターンが最も初心者を消耗させます。「点」と「言葉」が矛盾しているため、アルゴのヘッドライン反応と裁量の解釈がぶつかり、往復ビンタになりがちです。

実践例:この局面では「方向当て」を捨てます。FOMC当日は取引しない、あるいはポジションを小さくするのが合理的です。どうしても参加するなら、値幅(ボラ)を売買する発想に切り替えます。たとえば、直後の高ボラで無理に方向を取らず、翌日にトレンドが出た方向に乗る、といったルールが現実的です。

パターン4:ドットは変わらないが、経済見通し(SEP)が変わる → 10年が主導

ドットが据え置きでも、成長率やインフレ見通し(SEP)が変わると、10年が動き、株のセクター間で差が出ます。ここは“金利そのもの”より、“景気観”の変化です。

実践例:景気上振れ&インフレ粘着なら、資本財・エネルギーが相対的に強く、逆に金利に弱いセクターは伸び悩みやすい。指数の上下より、セクターローテーションに注目します。

5. 「ドットより強い」市場データ:Fed Funds先物とOISで織り込みを数字化する

オリジナリティを出すなら、ドットの解釈を「雰囲気」から脱して、織り込みを数字で扱うことです。市場はドットよりも、Fed Funds先物(あるいはOIS)で政策金利の期待を値付けしています。

初心者向けに噛み砕くと、見るべきは次の一点です。

  • 年末までに何回利下げ(利上げ)を織り込んでいるか

この「回数」がFOMC後にどれだけ動いたかを確認すると、ドットのサプライズ度合いが分かります。ドットがハト派でも、市場の利下げ回数が増えていなければ、株の上昇は続きにくい。逆に、ドットがタカ派でも、織り込みがすでにタカ派なら売り材料になりにくい。これが“出尽くし”の正体です。

6. ドル円への波及:日米金利差だけでなく「リスクオフ円高」を分けて考える

ドル円は、FOMC後に大きく動く代表例ですが、初心者が混乱しやすいのは「金利差」と「リスクオフ」が同時に起きることです。

(1)金利差主導:2年金利↑ → ドル高円安

ドットがタカ派サプライズで2年金利が上がると、素直にドル買いが入りやすいです。このときドル円は上がりやすい。

(2)リスクオフ主導:株急落 → 円買い → ドル円が下がることもある

しかし、同じタカ派サプライズでも、株が急落してリスクオフになると、円買いが強く出て、ドル円が下がることがあります。つまり、「金利差は上向きなのにドル円が下がる」という一見矛盾した動きです。

判別方法:2年金利が上がっているのにドル円が上がらない(むしろ下がる)場合、FXだけを見ず、株指数とVIXの動きを合わせて確認します。リスクオフが強い日は、金利差の論理が一時的に負けます。

7. 米国株の“勝ち負け”は、指数ではなく「金利感応度」で決まる

FOMC後に「株が上がった/下がった」だけで終えると、翌日以降の収益機会を逃します。実際は、同じ日に市場内で勝ち負けが分かれます。

  • 金利に弱い:高PERグロース、未利益の成長株、長期テーマ株
  • 金利に中立:生活必需品、ヘルスケア(ただし個別要因が強い)
  • 金利上昇で相対的に強くなりやすい:一部の金融(状況次第)、エネルギー(インフレ期待が絡む)

初心者は、まず「NASDAQ vs ダウ」「グロースETF vs バリューETF」の相対で見ると理解しやすいです。ドットがタカ派なら、指数全体よりもグロースの相対弱さが出やすい。ここを取引の中心に置くと、方向感が曖昧な日でも戦略が立ちます。

8. 具体的なトレード手順(当日〜翌週までの“型”)

ここでは、初心者が再現しやすいように、観測→判断→執行の順で固定手順を提示します。

手順1:イベント前(前日まで)に「市場の期待」をメモしておく

FOMC当日に初めて情報を見始めると、何がサプライズか判断できません。前日までに、次だけメモします。

  • 年末までの利下げ回数(市場織り込みのイメージ)
  • 2年/10年金利の水準(直近レンジ)
  • NASDAQが強いか弱いか(直近の地合い)

手順2:直後は“結論を出さない”時間を決める

FOMC直後はスプレッド拡大とアルゴの誤反応が起きやすいです。「最初の5分は見ない」「最初の15分は方向を決めない」など、ルールで守るのが現実的です。

手順3:2年金利の方向を確認してから、株のシナリオを決める

2年が上ならタカ派方向、下ならハト派方向という“軸”を決めます。軸が決まれば、株・ドル円の解釈がブレにくいです。

手順4:翌日に“継続”か“反転”かを判定する

当日の値動きが本物かどうかは、翌日のアジア〜欧州時間の戻り方で分かることが多いです。FOMC後にトレンドが継続する日は、翌日も2年金利が同方向に動きやすい。逆に、2年が元に戻るなら「行って来い」の可能性が上がります。

9. 初心者が避けるべき落とし穴(負けパターンを先に潰す)

  • ヘッドラインで即エントリー:声明文の一文で飛びつき、会見で逆回転する。
  • 損切りを価格だけで決める:FOMCはボラが上がるため、価格だけの損切りはノイズで刈られやすい。
  • ドル円だけで解釈する:金利差とリスクオフが混ざると誤判定しやすい。

対策はシンプルで、「2年金利が自分の想定と逆へ動いたら撤退」という、原因に紐づくルールを持つことです。価格は結果であり、原因は金利の織り込みです。

10. まとめ:ドットは「市場の前提」を更新するスイッチ

ドットチャートは、将来を当てる魔法ではありません。しかし、市場が共有している「前提」を更新する装置です。前提が変わると、金利→ドル→株→セクター→個別の順に、ポジションの組み替えが起きます。

初心者がやるべきことは、複雑な解釈よりも、見る順番(2年→ドル→株)と、4パターン分類、そして原因ベースの損切りを型として身につけることです。これだけで、FOMCの「よく分からない乱高下」を、再現可能な観測イベントに変えられます。

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