半導体サイクルの“底”を見極める:在庫・設備投資・メモリ価格で先回りする投資術

株式投資

半導体株は「成長産業」という顔と同時に、「景気循環(シリコンサイクル)」の代表格でもあります。業績が良いときは強烈に上がり、悪いときは想像以上に売られます。重要なのは、好況のピークで熱狂して買うのではなく、悲観が最大化した局面で「底打ちの兆候」を拾い、回復局面を取りにいくことです。

ただし、底は誰にも断定できません。そこで本記事は、断定ではなく確率を上げるための見方を、初心者でも追える公開データで組み立てます。短期の当てものではなく、数か月〜1年程度の回復フェーズを狙う想定で読み進めてください。

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  1. 1. 半導体サイクルは「在庫→稼働→価格→利益」の順で動く
  2. 2. 底打ち判定の中心は「在庫日数」と「出荷>受注(またはその逆)」
    1. 2-1. 在庫を見る場所は3つある
    2. 2-2. 初心者が使える在庫の簡易ルール
  3. 3. メモリ価格は「底打ちが見えやすい」一方、罠も多い
    1. 3-1. メモリ価格の底打ちで見たい3点
    2. 3-2. ありがちな罠:価格反発=需要回復とは限らない
  4. 4. CAPEX(設備投資)は「遅行」ではなく「先行」を作る
    1. 4-1. 底打ちに効くCAPEXの読み方
    2. 4-2. 具体例:装置の受注は「最悪のニュース」で底を打つ
  5. 5. SOX指数だけを見ない:サブセクター別に「先に回復する領域」が違う
  6. 6. 個人投資家向け:底打ち確認の「5点セット」チェックリスト
  7. 7. エントリーの設計:底当てではなく「分割」と「条件付き」を徹底する
    1. 7-1. 分割買いの実務的な型
    2. 7-2. 損切りではなく「前提崩れ」を切る
  8. 8. 銘柄選び:個別株が難しいならETFで「サイクル回復」を取りにいく
    1. 8-1. ETFと個別株の使い分け
  9. 9. よくある失敗パターンと回避策
    1. 9-1. 失敗1:ニュースの見出しで買う
    2. 9-2. 失敗2:一社の決算だけで全体を判断する
    3. 9-3. 失敗3:金利と為替を無視する
  10. 10. 今日からできる「観測ルーティン」:週1で足りる
  11. まとめ:半導体の底は「数字の地味な変化」で拾う
  12. 11. もう一段深く:決算説明会の言葉を「数量化」するコツ
  13. 12. バリュエーションの罠:PERが低いから底とは限らない
  14. 13. ケーススタディ:典型的な「底→回復」シナリオを時間軸で追う
  15. 14. 最低限のリスク管理:半導体は「想定外」が起きる
  16. 15. よくある質問:初心者が迷うポイントを先に潰す
    1. Q1. ニュースで「底打ち」と言われたら買ってよいですか
    2. Q2. AI向けが強いとサイクルはなくなりますか
    3. Q3. 日本株の半導体でも同じ見方が通用しますか

1. 半導体サイクルは「在庫→稼働→価格→利益」の順で動く

半導体の不況は、だいたい次の順番で進行します。

需要が鈍る → 在庫が積み上がる → メーカーが減産する → 工場稼働が落ちる → 価格が下がる → 利益が急減する

そして回復は逆回転します。ポイントは、株価は業績より先に動くため、「業績が最悪=株価の底」ではないことです。株価は「最悪がいつ終わるか」を織り込みにいきます。したがって底探しは、売上や利益よりも、在庫・稼働・価格・受注の変化を見るほうが再現性が出ます。

2. 底打ち判定の中心は「在庫日数」と「出荷>受注(またはその逆)」

最も重要なのは在庫です。半導体不況の本質は、需要が弱いのに供給能力が大きすぎることではなく、サプライチェーンのどこかに在庫が滞留することです。

2-1. 在庫を見る場所は3つある

在庫は「どこに溜まっているか」で意味が変わります。

  • 最終製品メーカー(PC/スマホ/自動車など):需要が弱いと完成品在庫が増え、部品発注を絞る。
  • 半導体メーカー(IDM・ファブレス):販売在庫や仕掛品が増え、値引きや減産が起きる。
  • 流通(ディストリビューター):チャネル在庫が膨らむと、メーカーの出荷が止まりやすい。

個人投資家が追いやすいのは、上場企業の決算資料にある在庫推移と、業界統計です。決算では「棚卸資産」「在庫回転期間(在庫日数)」がヒントになります。

2-2. 初心者が使える在庫の簡易ルール

在庫日数の絶対値は会社によって違うため、前年差の増減2四半期連続の改善に注目するとブレが減ります。

例えば、在庫日数が「80→95→110」と悪化していた企業が「110→105→98」と2回連続で改善したら、業績がまだ悪くても「調整が終盤に入った可能性」が出てきます。株価はこのタイミングで反応しやすいです。

3. メモリ価格は「底打ちが見えやすい」一方、罠も多い

メモリ(DRAM/NAND)はコモディティ性が強く、価格の上下がはっきり出ます。だからこそ、底打ちサインも見えやすい反面、早とちりもしやすいです。

3-1. メモリ価格の底打ちで見たい3点

  • 下落率が鈍化する:下げ幅が小さくなるのは、投げ売りが一巡し始めた合図です。
  • スポットと契約の方向が揃う:スポットだけ上がるのは短命なことがあります。契約価格も追随するかを確認します。
  • メーカーが減産を明言し、実際に供給が締まる:口先だけでなく、出荷量・稼働率に反映されるかが重要です。

3-2. ありがちな罠:価格反発=需要回復とは限らない

メモリ価格は、需要が回復していなくても、減産や在庫の投げ売り終了で反発します。ここで「もう景気は回復だ」と決めつけると、二番底で痛い目を見ます。したがって、価格だけでなく最終需要(PC出荷、スマホ出荷、データセンター投資)の底打ちもセットで確認します。

4. CAPEX(設備投資)は「遅行」ではなく「先行」を作る

半導体サイクルを読むときに見落とされがちなのが、設備投資(CAPEX)です。一般にCAPEXは景気に遅れて動く印象がありますが、半導体では違います。なぜなら、設備の増減が将来の供給量を決め、価格と利益率を左右するからです。

4-1. 底打ちに効くCAPEXの読み方

底打ち局面で大事なのは「CAPEXが増える」よりも、まずCAPEXの増加が止まることです。増産計画の見直し、装置発注の延期、稼働率の低下が表面化すると、供給過剰が解消に向かいます。

投資家が見るべきは次の2つです。

  • メーカーのCAPEXガイダンスの下方修正:来期の計画が削られるか。
  • 半導体製造装置企業の受注の減速から反転:受注が底を打つと、数か月後に稼働・出荷が戻りやすい。

4-2. 具体例:装置の受注は「最悪のニュース」で底を打つ

サイクルの底は、ニュースが最悪のときに訪れがちです。例えば「装置メーカーが大幅減益」「受注が前年比マイナス何十%」の見出しが並ぶ局面です。そこで重要なのは数字の大きさではなく、前四半期比で悪化が止まったか、もしくは会社が「下期に向けて改善」といった現場感を示しているかです。

5. SOX指数だけを見ない:サブセクター別に「先に回復する領域」が違う

初心者がやりがちなのは、半導体を一枚岩で見ることです。しかし実際は、回復の順番が違います。

  • データセンター・AI向け:投資サイクルが長く、需要が相対的に強いことが多い。
  • PC・スマホ向け:短サイクルで在庫調整が鋭い。底も早いが、反発後の失速も早い。
  • 自動車・産業向け:景気の影響は受けるが、供給制約の解消とともに需給が改善する場合がある。
  • 製造装置・材料:受注が先に悪化し、先に反転することがある。

同じ「半導体不況」でも、AI関連が堅調なら、指数全体は落ち切らず、PC向けだけが深く沈むこともあります。自分が狙うのはどの需要領域かを決めるだけで、判断がかなりクリアになります。

6. 個人投資家向け:底打ち確認の「5点セット」チェックリスト

ここまでの話を、初心者でも回せる形に落とします。次の5点が揃うほど、底打ち確率が上がります。

  • 在庫日数がピークアウト(2四半期連続で改善、または増加が止まる)
  • メモリ価格の下落率が鈍化(スポットと契約の方向が揃う)
  • CAPEX計画が削られ供給過剰が緩む(装置受注の悪化が止まる)
  • 受注・出荷系データが底打ち(前月比で改善、もしくはマイナス幅縮小)
  • 株価が「悪材料に反応しなくなる」(悪い決算でも下げ渋る)

特に5つ目は現場感の指標です。株価は情報の集合体なので、悪いニュースに売られなくなったら、参加者が「もう織り込んだ」と考え始めています。

7. エントリーの設計:底当てではなく「分割」と「条件付き」を徹底する

初心者に最も向いているのは、底を一点で当てにいく投資ではなく、条件を満たすたびに分割で買う方法です。

7-1. 分割買いの実務的な型

例として、投資予算を100とした場合の考え方です。

  • 第1段(25):在庫の悪化が止まり、株価が悪材料に反応しなくなる
  • 第2段(25):メモリ価格の下落率が鈍化し、メーカーが減産を継続
  • 第3段(25):装置受注や出荷データが前月比で改善
  • 第4段(25):業績ガイダンスが「下期改善」へ変化、もしくは実際の増益転換が見える

このやり方だと、もし二番底が来ても全力で捕まらず、反対に回復が早くても「乗り遅れ」が減ります。

7-2. 損切りではなく「前提崩れ」を切る

半導体はボラが大きいので、価格だけで機械的に損切りすると、底付近で振り落とされがちです。代わりに、自分の買い前提が崩れたかで判断します。

例えば「在庫が改善し始めた」が前提なのに、次の決算で在庫が再び急増した、あるいは減産が取り消された、というのは前提崩れです。ここは潔く撤退します。価格は後からついてきます。

8. 銘柄選び:個別株が難しいならETFで「サイクル回復」を取りにいく

個別株は、製品ミックスや顧客構成、為替、競争環境で結果が大きく分かれます。初心者がサイクル回復を狙うなら、まずはETFで「業界ベータ」を取るのが合理的です。

8-1. ETFと個別株の使い分け

  • ETF:底打ち局面で分散しながら反発を取りやすい。個別要因の事故が小さい。
  • 個別株:当たれば大きいが、製品世代交代や失注などで外すと痛い。

ETFでサイクル回復を取りつつ、慣れてきたら「装置」「材料」「ファブレス」「メモリ」など、自分が理解できる領域の個別株に絞って深掘りするのが安全です。

9. よくある失敗パターンと回避策

9-1. 失敗1:ニュースの見出しで買う

「AIが熱い」「新工場」などの見出しは、株価が既に織り込んでいることが多いです。底打ち局面で必要なのは、華やかな材料ではなく、地味な数字の変化です。在庫、受注、価格、CAPEX。この4つに戻ってください。

9-2. 失敗2:一社の決算だけで全体を判断する

大手一社の弱いガイダンスで総悲観になったり、強い決算で楽観になったりしがちですが、サイクルはサプライチェーン全体の現象です。複数社を横断して「同じ方向に変化しているか」を確認すると誤判定が減ります。

9-3. 失敗3:金利と為替を無視する

半導体は成長株として評価されやすく、金利上昇局面ではバリュエーション調整が起きやすいです。また輸出比率が高い企業は為替の影響が大きいです。サイクルが良くても、金利上昇や急激な円高で上値が抑えられることがあります。サイクルの改善に加えて、マクロの逆風が強すぎないかも点検してください。

10. 今日からできる「観測ルーティン」:週1で足りる

最後に、初心者でも継続できる観測ルーティンを提示します。毎日張り付く必要はありません。週1で十分です。

  • 在庫:保有候補企業の決算と、直近の在庫コメント(増減、調整の進捗)
  • 価格:メモリ価格の方向性(下落率の鈍化、反転の持続)
  • CAPEX:メーカーの設備投資計画の変更、装置企業の受注トレンド
  • 株価:悪材料への反応(下げ渋り・上げ渋り)
  • マクロ:金利と為替の急変(特に長期金利の上振れ)

この5点を定点観測し、チェックリストが揃ってきたら分割で入る。これだけで「雰囲気で買う」状態から抜け出せます。

まとめ:半導体の底は「数字の地味な変化」で拾う

半導体サイクルの底は、派手な好材料ではなく、在庫・受注・価格・CAPEXという地味なデータの変化で近づいてきます。業績が最悪に見えるころは、株価が先に反転を試すこともあります。だからこそ、断定ではなく、チェックリストで確率を上げ、分割で入るのが個人投資家の最適解になりやすいです。

次にあなたがやることはシンプルです。気になる半導体ETFまたは数社をウォッチリストに入れ、週1で5点を観測してください。底当てゲームではなく、再現性のある手順に変えた瞬間から、半導体は「怖い銘柄」ではなく「取りやすいサイクル」になります。

11. もう一段深く:決算説明会の言葉を「数量化」するコツ

公開データの中で、意外に効くのが決算説明会(テキスト化された質疑応答)の読み方です。ここは「雰囲気」で読まず、単語の頻度と文脈で数量化すると再現性が上がります。

  • 危険ワード:在庫が想定以上、値引き圧力、需要の可視性が低い、顧客がキャンセル、チャネルが詰まっている
  • 改善ワード:在庫調整が進捗、リードタイムが正常化、下期に需要が回復、受注が安定、価格が底打ち

例えば、同じ「下期改善」でも、「顧客からの引き合いが増えた」「見積もり案件が戻った」といった具体的な前兆が添えられているかで信頼度が変わります。反対に、根拠が薄いポジティブ表現だけなら、株価対策の可能性もあります。

12. バリュエーションの罠:PERが低いから底とは限らない

半導体の底でよく見るのが「PERが一桁だから割安」という議論です。しかし、サイクル業種のPERは不況時に見かけ上低くなりやすいので注意が必要です。利益がピークの余韻で残っている時期に株価が先に下がると、PERは低く見えます。

初心者が使いやすい代替指標は次の2つです。

  • 売上に対する評価(PSR):利益がブレても売上は相対的に安定しやすい。
  • 過去サイクルの「利益率の底」と株価の関係:同社が過去にどの程度まで利益率が落ちたかを確認する。

特に利益率はサイクルの温度計です。粗利率が急低下している局面は痛みが深い一方、粗利率の低下が止まった瞬間は強いシグナルになり得ます。

13. ケーススタディ:典型的な「底→回復」シナリオを時間軸で追う

ここでは架空のシナリオで、どの順番でデータが変化し、どこで分割エントリーするかを具体化します。

月0(悪化のピーク):主要企業の在庫日数が過去数年で最高。メモリ価格は毎月下落。装置企業の受注は前年比大幅マイナス。株価は連日の安値更新。

月1(悪材料の効きが弱まる):さらに悪い決算が出るが、株価は下げ幅が小さく、引けにかけて戻す日が増える。説明会では「減産を継続」「チャネル在庫の正常化が見え始めた」という発言が出る。→第1段の条件が点灯。

月2(価格の下落率が鈍化):スポット価格の下落が止まり、契約価格も下げ幅が縮小。メーカーはCAPEX削減を追加で発表。→第2段の条件が点灯。

月3(受注・出荷の底打ち):装置企業の受注が前四半期比で改善。半導体メーカーの出荷が増え、在庫日数も明確に改善。→第3段の条件が点灯。

月4〜6(業績はまだ弱いが株価は先行):利益は低いままだが、ガイダンスが「下期改善」から「需要が戻り始めた」に変化。株価は高値を切り上げ、押し目が浅くなる。→第4段を入れて平均取得を整える。

この時間軸のポイントは、株価が回復してから業績が付いてくることです。だからこそ、先行指標に基づく分割が効きます。

14. 最低限のリスク管理:半導体は「想定外」が起きる

半導体は、地政学、規制、サプライチェーン寸断、製品世代交代の失敗など、サイクル以外のショックも多い分野です。初心者は次の3点だけ守れば致命傷を避けやすいです。

  • 1銘柄に寄せない:ETF中心、個別は少数で分散。
  • 買い増しは「条件が改善したときだけ」:下落しているから追加ではなく、前提が強まったときに追加。
  • 下げ相場で信用取引を使わない:サイクル底は時間がかかり、金利負担とロスカットが敵になる。

特に信用取引は、正しい方向性でも時間切れで負けます。半導体の底は「遅い」ことを前提に、現物と分割で設計するのが安全です。

15. よくある質問:初心者が迷うポイントを先に潰す

Q1. ニュースで「底打ち」と言われたら買ってよいですか

ニュースは遅いです。買う前に、在庫・価格・CAPEX・受注のうち、最低2つ以上が改善しているかを確認してください。言葉より数字です。

Q2. AI向けが強いとサイクルはなくなりますか

構造的な成長はサイクルを緩める可能性はありますが、なくなりません。供給能力が増えれば、どこかの需要が鈍ったときに在庫が溜まります。したがって、AIが強い局面でも在庫とCAPEXは追う価値があります。

Q3. 日本株の半導体でも同じ見方が通用しますか

基本は通用します。ただし、日本は製造装置・材料・製造受託関連が多く、米国のファブレスとはサイクルの出方が違います。自分が投資する企業が「どの鎖のどこにいるか」を最初に整理してください。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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