- 結論:豪州雇用統計は「RBAの次の一手」と「資源国通貨の値動き」を同時に動かすイベント
- まず押さえるべき:豪州雇用統計で見るべき指標は3つ+補助2つ
- なぜAUDは雇用統計で動きやすいのか:3つの伝播経路
- 初心者がやりがちな失敗:ヘッドライン一発勝負
- 実践フレーム:雇用統計を“取引可能なシグナル”に変換する手順
- 具体例:AUD/JPYで“雇用統計を取る”2つの型
- 中長期の運用に活かす:雇用統計は“トレンド継続か転換か”の判定材料
- 資源国通貨としてのAUD:雇用統計と一緒に見るべき外部変数
- リスク管理:雇用統計で勝つより、雇用統計で死なないことが先
- チェックリスト:発表日にこれだけ確認すれば迷わない
- まとめ:雇用統計は“ボラの供給源”。取れるのは二波目以降
結論:豪州雇用統計は「RBAの次の一手」と「資源国通貨の値動き」を同時に動かすイベント
豪州の雇用統計(Employment Change、Unemployment Rate、Participation Rate、Full-time/Part-timeなど)は、豪ドル(AUD)の短期トレンドを作る材料として非常に強力です。理由は単純で、豪州はインフレと賃金、そして景気循環が金融政策(RBA:豪州準備銀行)に直結しやすく、加えてAUDは「金利差」と「リスク選好(リスクオン・オフ)」と「資源価格」の三つの力で動きやすい通貨だからです。
雇用統計は、この三つのうち少なくとも二つ(金融政策=金利差、リスク選好)を一度に揺らします。結果として、発表直後にスプレッドが広がり、短時間で大きく動き、値動きが落ち着いた後に“方向性”が確定するパターンがよく出ます。これを理解しておくと、初心者でも「触ってはいけない局面」と「取れる局面」を切り分けられます。
まず押さえるべき:豪州雇用統計で見るべき指標は3つ+補助2つ
ニュース見出しは「雇用者数が予想より強い/弱い」「失業率が上がった/下がった」だけで終わりがちですが、それだけで取引すると負けやすいです。豪州統計局(ABS)の雇用統計は“罠”が多いので、最低限、次の順序で読みます。
1)失業率(Unemployment Rate):一番わかりやすいが、単独では危険
失業率は市場が反応しやすい数字です。ただし、豪州では「参加率(労働参加)」の変化で失業率が動くことがあるため、失業率だけで強弱を決めるのは危険です。例えば、景気が良いから働きたい人が増え(参加率上昇)、求職者が増えた結果、一時的に失業率が上がることがあります。見た目は悪化でも、内訳はむしろ強い、というケースです。
2)雇用者数変化(Employment Change):合計より“内訳”が重要
雇用者数(前月比)が大きく増えると豪ドル買いになりやすいですが、ポイントはフルタイムとパートタイムの内訳です。フルタイムが増えてパートが減る(あるいは合計が小さくてもフルタイムが強い)なら、賃金や消費への波及が強く、RBAのタカ派材料になりやすいです。逆に、合計が強く見えてもパートの増加が中心なら、景気の強さとしては弱く評価されることがあります。
3)参加率(Participation Rate):豪州雇用統計の“答え合わせ”
参加率は初心者が見落としやすいのですが、ここが豪州雇用統計の読み違いを減らします。失業率が改善していても参加率が大きく低下しているなら、働く意欲が落ちている(景気が弱い)可能性が出ます。逆に、失業率が悪化していても参加率が上がっているなら、景気が持ち直して労働市場に人が戻っている可能性があります。
補助1)労働時間(Hours Worked):賃金・景気の温度感に近い
雇用者数が増えていても、労働時間が減っていると、企業がコストを抑え始めているサインになり得ます。豪州はサービス業比率も高いので、労働時間は景気の温度計として役に立ちます。
補助2)賃金指標(Wage Price Index等)との“接続”
雇用統計単体でなく、賃金の伸びやインフレ関連指標とつなげて「RBAが金利をどう動かすか」に変換します。相場は雇用そのものより、最終的に“金利”に変換されたときに大きく動きます。
なぜAUDは雇用統計で動きやすいのか:3つの伝播経路
経路A:RBAの政策金利期待を動かす(=金利差を動かす)
豪ドルは典型的な金利差通貨です。雇用が強い → 賃金が上がりやすい → 需要が粘りやすい → インフレが下がりにくい → RBAが利下げしにくい(あるいは利上げ余地)という連鎖で、短期金利やOIS(翌日物金利スワップ)で織り込まれる政策金利の期待が変わります。結果として、豪州短期金利が跳ねるとAUDが買われやすい。
経路B:リスクオン・オフを動かす(=円と相性が悪い)
AUD/JPYが動く理由は、豪ドルがリスク資産寄り、円がディフェンシブ寄りの性格を持つからです。雇用が強いと「豪州景気は底堅い」「世界景気にも安心感」→ リスクオンで円売り・豪ドル買いが入りやすい。逆に雇用が弱いとリスクオフで円買い・豪ドル売りが入りやすい。つまり、雇用統計はAUD単体だけでなく、AUD/JPYにとって二重の材料になりやすい。
経路C:資源価格・中国要因への感応度を上げる(=“物語”が強化される)
豪州は鉄鉱石、石炭、LNGなど資源輸出の比重が高く、最大貿易相手国として中国の影響も受けやすいです。雇用が強い局面では「資源需要も底堅い」というストーリーに市場が乗りやすく、資源価格の上昇や中国景気の良材料と共鳴してAUDがトレンドになりやすい。逆に雇用が弱いと、資源・中国の悪材料と同調して下げが加速しやすい。
初心者がやりがちな失敗:ヘッドライン一発勝負
雇用統計は瞬間的な値動きが大きく、発表直後に成行で飛びつくと、スプレッド拡大と滑り(スリッページ)で不利になります。典型的な負けパターンは次の通りです。
(失敗1)「雇用者数が強い→買い」だけで入り、数分後に失業率や参加率の読み直しで反転して損切り。
(失敗2)発表直後の“最初の一方向”を本流と思い込み、ボラの往復で刈られる。
(失敗3)ロットを上げ、ストップを狭く置きすぎてノイズで退場する。
対策はシンプルで、「発表直後は見送る」「内訳と市場の解釈が固まってから、次の波に乗る」。これだけで勝率が大きく改善します。
実践フレーム:雇用統計を“取引可能なシグナル”に変換する手順
ここからは、ニュースを見て終わりではなく、実際にトレードや運用の判断に落とし込む手順です。初心者は、この順番を固定すると迷いが減ります。
手順1:事前に「市場の期待」を把握する
雇用統計は“良い・悪い”ではなく、“予想とのズレ”で動きます。予想が強気に寄っていると、良い数字でも失望になることがあります。最低限、マーケットのコンセンサス(雇用者数、失業率、参加率)と、直近のRBAスタンス(議事要旨・声明のトーン)を確認します。さらに、直前にCPIや小売売上高が強かったか弱かったかで、雇用統計の影響力が変わります。
手順2:発表直後は“数値の組み合わせ”で分類する
発表の組み合わせは多いですが、実務上は4象限に落とせます。
A:強い(タカ派) 失業率低下+雇用者数増+参加率横ばい~上昇(フルタイムも強い)
B:見かけ強いが微妙 雇用者数は増えたが参加率低下、またはパート偏重
C:見かけ弱いが実は底堅い 失業率上昇だが参加率上昇、フルタイムは堅調
D:弱い(ハト派) 失業率上昇+雇用者数減+参加率低下(フルタイムも弱い)
AやDは方向が出やすい。BやCは“初動と逆に動く”ことが多く、初心者がやられやすいゾーンです。
手順3:金利市場(短期金利)に変換できたら勝ち
AUDのトレンドは「RBAの次」を織り込む短期金利の反応で強化されます。雇用統計の数字がAでも、短期金利が上がらない(=市場が信じていない)なら上昇は続きにくい。逆に、数字が微妙でも金利が動けば相場が走ることがあります。初心者は難しく感じるかもしれませんが、結局、FXは“金利差の物語”に戻りやすいので、ここを意識するだけで判断が安定します。
手順4:エントリーは「初動の後」に限定する
具体的には、発表直後の1~5分は触らず、最初の乱高下が落ち着いてから、次の押し目/戻りを狙うほうが期待値が高いです。短期なら、5分足・15分足で高値更新(または安値更新)を確認してからの順張りが合理的です。
具体例:AUD/JPYで“雇用統計を取る”2つの型
型1:イベント後の順張り(最も再現性が高い)
前提:結果がA(強い)またはD(弱い)で、金利市場も同方向に反応している。
やり方はシンプルです。発表直後の急騰・急落は見送り、15分~1時間の範囲で「初動の方向に戻る押し目/戻り」を待ちます。例えば強い結果で上がったなら、最初の上昇波の38.2%~61.8%程度の押し目を意識し、直近高値を再度超える動きが出たら入る。損切りは、押し目の安値割れなど“構造が崩れる地点”に置き、利確は直近の日足レジスタンスや、前回高値など“市場が意識する場所”に置きます。
ポイントは、指標で動いた“最初の波”を丸ごと取ろうとしないこと。二波目・三波目を狙う発想のほうが、初心者に向きます。
型2:レンジ相場のブレイク監視(トレンドが出ると大きい)
AUD/JPYが数日~数週間レンジで揉んでいるとき、雇用統計がレンジを抜けるトリガーになることがあります。レンジ上限・下限を事前に引いておき、発表後に明確に抜けて定着したら、ブレイク方向に追随します。ここで重要なのは、発表直後に抜けても“戻される”ことがある点です。よって、「抜けた後に再度レンジ端を試して支えられる/抑えられる」確認(リテスト)を待つとダマシを減らせます。
中長期の運用に活かす:雇用統計は“トレンド継続か転換か”の判定材料
雇用統計は短期トレードだけでなく、数週間~数カ月の方向感にも使えます。ポイントは「雇用の勢いが3カ月スパンでどう変化しているか」です。単月のブレは大きいので、3カ月移動平均や、フルタイムの基調で見るほうが判断が安定します。
例えば、雇用が強い状態が続き、失業率も低下基調なら、RBAは簡単にハト派に転じにくい。すると豪州金利は高止まりしやすく、AUDは下がりにくい。逆に、雇用が鈍化し、失業率がじわじわ上がり始めたら、RBA利下げ観測が立ちやすく、AUDは上値が重くなる。こうした“金利の方向”を先に読むための材料として雇用統計を使うと、無理な短期売買を減らせます。
資源国通貨としてのAUD:雇用統計と一緒に見るべき外部変数
1)鉄鉱石・石炭・LNG:豪州の交易条件を通じて効く
豪州は資源輸出の比重が高く、交易条件(輸出価格/輸入価格)の改善は豪ドルに追い風になります。雇用が強い局面で資源価格も上がると、AUDは“二段ロケット”になりやすい。一方で、雇用が強くても資源価格が崩れていると上値が伸びにくい。雇用統計を単独で見るより、資源価格のトレンドを同時に確認するのが合理的です。
2)中国の景気指標:豪州にとっての最大級の外部要因
中国の不動産・インフラ投資の動向は鉄鉱石需要に直結し、豪州景気と企業収益に波及します。雇用統計が強いときでも、中国が明確に弱い局面ではAUDの上昇が抑えられることがあります。逆に、中国が持ち直す兆しがある局面で雇用が強いと、AUDのトレンドが太くなりやすい。
3)米国金利・ドル高:AUD/USD経由でAUD/JPYにも効く
豪ドルは対ドル(AUD/USD)でも取引されるため、米国金利が上がってドル高が進むと、AUDは上がりにくくなることがあります。AUD/JPYを見ているつもりでも、裏側でAUD/USDが押さえられていると上値が伸びません。雇用統計が強くても、ドル高が強烈なら上昇が限定される、という“ねじれ”が起き得ます。
リスク管理:雇用統計で勝つより、雇用統計で死なないことが先
雇用統計はボラティリティ(変動)の供給源です。勝ちに行くより、まず大負けしない設計が重要です。初心者がやるべきルールは次の通りです。
ルール1:発表前後はロットを落とす(または完全に見送る)
短期で狙う場合でも、通常の半分以下のロットが無難です。発表直後はスプレッド拡大が起きやすく、損切りが想定以上に不利になり得ます。
ルール2:ストップは“ボラの外”に置く
狭いストップはノイズで刈られます。発表直後の乱高下が落ち着いてから入る理由はここです。構造(高値更新/安値更新)が崩れたら切る、という置き方が合理的です。
ルール3:勝ち逃げ設計を入れる(分割利確)
雇用統計のトレンドは“伸びるときは伸びる”一方、“戻しも速い”です。半分利確して建値にストップを移すなど、利益を守る仕組みを先に作っておくとメンタルが安定します。
チェックリスト:発表日にこれだけ確認すれば迷わない
最後に、発表日に見る項目をチェックリスト化します。初心者はこの順序で確認してください。
(1)コンセンサス(雇用者数・失業率・参加率)
(2)結果の4象限分類(A/B/C/D)
(3)フルタイム/パートの内訳、労働時間
(4)短期金利の反応(RBA期待が動いたか)
(5)資源価格・中国要因・米国金利の向き(逆風か追い風か)
(6)エントリーは初動後、押し目/戻りで(触るなら)
まとめ:雇用統計は“ボラの供給源”。取れるのは二波目以降
豪州雇用統計は、資源国通貨AUDの短期トレンドとボラティリティを同時に生むイベントです。ヘッドライン一発勝負は危険ですが、失業率・雇用者数・参加率のセット読みと、フルタイム/パート内訳、そして金利市場への変換を押さえれば、初心者でも再現性を上げられます。
最重要のコツは、発表直後の乱高下を取ろうとしないこと。初動が落ち着いた後の“次の波”を狙い、ボラに耐えられるリスク管理を徹底する。これが、雇用統計を味方にする最短ルートです。


コメント