寄り付きで「窓(ギャップ)」が開いた瞬間、相場は最も情報密度が高くなります。材料・需給・裁定・アルゴの反応が一気に重なり、数分で勝負が決まることも少なくありません。本記事では、前日終値からのギャップ率を中心に、初心者でも再現できる「窓埋め(ギャップフィル)」の初動判断を、具体例と手順で徹底的に解説します。
ギャップ率とは何か:最初に数式で定義する
ギャップ率は、寄り付き価格が前日終値からどれだけ乖離して始まったかを示す指標です。株でも指数先物でもFXでも概念は同じです。
ギャップ率(%)=(当日寄り付き-前日終値)÷前日終値×100
例:前日終値 1,000円の銘柄が 1,040円で寄り付いた場合、ギャップ率は(1,040-1,000)/1,000×100=+4.0%です。1,000円が 970円で寄り付けば-3.0%です。
窓埋めが起きる本質:誰がどんな理由で戻すのか
窓埋めは「不思議な経験則」ではなく、買い手と売り手の行動が噛み合って起きます。代表的なドライバーは次の4つです。
1) 需給のゆがみの修正(寄り付きは最も歪みやすい)
寄り付き直前は板が薄くなり、成行・寄り指値の偏りで価格が飛びやすいです。飛んだ分だけ、その後に流動性が戻ると「適正水準」へ引き戻されます。これは特に、出来高が普段から少ない銘柄や、指数採用・外れ等で注文が偏る日に起こりやすいです。
2) 裁定・先物主導のギャップ(指数系は戻りやすい)
日経平均先物やTOPIX先物の夜間の動きが、現物の寄りを押し上げ(または押し下げ)ると、現物寄り付き後に裁定が働きやすく、ギャップが部分的に埋まりやすくなります。
3) ニュースの「過剰反応」→「再評価」
決算・提携・不祥事・地政学など、ニュースで飛んだ寄り付きは、最初は感情で価格が付くことが多いです。その後、冷静な資金(機関・アルゴ)が「材料の実質」を再評価し、過剰部分を戻します。
4) 損益分岐の売買(前日終値は心理的節目)
前日終値は、前日までの参加者の平均的な損益分岐ラインです。ここに戻れば「助かったので手仕舞い」や「やれやれ売り」が出たり、逆に「押し目買い」が入ったりして、価格が反応しやすいのです。
ギャップ率で“戦っていい窓”と“触るべきでない窓”を分ける
窓埋めは常に起きるわけではありません。むしろ、窓埋めを狙ってはいけない窓が存在します。ここを最初に仕分けできると、初心者は大きく事故を減らせます。
ステップ1:ギャップ率を「絶対値」で3レンジに分ける
初心者向けに、まずは単純な3分類を作ります(株のデイトレ想定)。
- 小ギャップ:0.5%〜1.5%…「寄りの歪み」要因が多く、窓埋め(または半分戻し)が比較的起きやすい。
- 中ギャップ:1.5%〜3.5%…ニュースか需給かの見極めが必要。出来高と板の圧を見て判断。
- 大ギャップ:3.5%以上…材料の可能性が高い。窓埋めよりトレンド継続が優勢になりやすい。初心者は原則「見送る」から入る。
重要なのは「数字で最初に冷却する」ことです。感情で“戻りそう”と感じても、3.5%超の窓は戻らずに走るケースが多く、逆張りは損切りを連発しやすい領域です。
ステップ2:その銘柄の「日々の変動幅」に対して大きいかを見る(ATRという発想)
同じ3%ギャップでも、普段1%しか動かない大型株にとっては異常事態ですが、普段5%動くグロースには普通です。そこで、次の簡易ルールを使います。
- 過去20日の日中値幅(高値−安値)の平均をざっくり「普段の動き」とみなす
- ギャップ幅(寄り−前日終値)が、その平均日中値幅の30%以下なら“歪み寄り”、50%超なら“材料寄り”として警戒
例:普段の日中値幅が平均40円の銘柄で、前日終値1,000円→寄り1,020円(+20円)。ギャップ幅20円は40円の50%なので、材料寄りの可能性が上がります。反対に+10円なら25%で歪み寄りです。
初動判断の「観察項目」:寄ってから5分で見るべきもの
窓埋めの成否は、寄り付き後の最初の数分でほぼ決まります。初心者が迷わないために、観察項目を固定します。
観察1:寄り付き直後のローソク足の形(5分足で十分)
- ギャップアップ→上ヒゲが長い:上で買った人がすぐ損になり、売りが出たサイン。窓埋め方向(下)に傾きやすい。
- ギャップダウン→下ヒゲが長い:投げが吸収され、買いが入ったサイン。窓埋め方向(上)に傾きやすい。
- 実体が大きく、ヒゲが短い:寄りの方向にそのまま走る“継続”が優勢。窓埋めは後回しになりやすい。
観察2:出来高が「普段の寄り」と比べて異常か
同じ銘柄でも、寄り付きは普段出来高が多い時間帯です。だから「出来高が多い=大口」と短絡しないことが重要です。初心者は次の比較を使うと良いです。
- 直近10営業日の「寄り付き〜5分」の出来高平均をメモしておく
- 当日がその平均の2倍以上なら「材料or本気」の確率が上がる
窓埋め狙いは、出来高が“普通〜やや多い”のときに機能しやすいです。出来高が爆発しているのに逆張りすると、トレンドに轢かれやすくなります。
観察3:前日終値(ギャップの起点)に近づいたときの板の反応
窓埋めの“ゴール”である前日終値に近づくと、板の厚みが急に変わることがあります。ここが「戻りが止まる」ポイントです。初心者は、前日終値の手前でこういう動きが出たら、欲張らない方が安全です。
- 前日終値の1〜2ティック手前から売り板が急に厚くなる(ギャップアップ→下げの窓埋め局面)
- 前日終値の1〜2ティック手前から買い板が急に厚くなる(ギャップダウン→戻しの窓埋め局面)
具体的な売買シナリオ:ギャップアップの窓埋め(下方向)
ここからは、実際にどう入るかをシナリオ化します。初心者は「型」を持つとブレません。
シナリオA:小〜中ギャップアップ(+1.0%〜+3.0%)で上ヒゲ→戻り狙い
状況例:前日終値 2,000円。寄り付き 2,040円(+2.0%)。寄り後の5分足で高値2,050円を付けたが、終値が2,035円で上ヒゲが長い。出来高は普段の寄りの1.2倍程度。
判断:過剰な買いが最初に出て、すぐに売りが入った。材料の強さは薄い可能性。窓埋め方向(2,000円)への“押し”を狙う。
エントリー:5分足の安値(例:2,032円)を割れたら売りで入る。ここで重要なのは、寄りの勢いが落ちたことを確認してから入る点です。
損切り:直近高値(2,050円)を上抜けたら撤退。損切り幅が広すぎるなら、最初から見送る。初心者は「損切り幅が大きいトレードはやらない」と決める方が結果が安定します。
利確:前日終値 2,000円の手前(例:2,005〜2,010円)で段階的に利確。窓を完全に埋めるまで粘ると、反発で利益を吐き出しやすいです。
シナリオB:大ギャップアップ(+4%超)で“材料っぽい”日は「窓埋め狙いを封印」
状況例:前日終値 1,500円。寄り付き 1,590円(+6.0%)。寄り後の5分足が陽線で、ヒゲが短い。出来高は普段の寄りの3倍。
判断:これは「戻る窓」ではなく「走る窓」である可能性が高いです。窓埋めを狙うなら、戻り待ちで反発を取るのではなく、むしろ押し目の順張りが合理的です。初心者は逆張りを封印し、観察に徹する方が資金が守れます。
具体的な売買シナリオ:ギャップダウンの窓埋め(上方向)
シナリオC:ギャップダウン(-1%〜-3%)で下ヒゲ→戻し狙い
状況例:前日終値 3,000円。寄り付き 2,910円(-3.0%)。寄り後の1〜5分で2,880円まで売られるが、すぐに2,905円まで戻し下ヒゲが長い。出来高は普段の寄りの1.5倍。
判断:投げが出たが、吸収されて戻した。窓埋め方向(3,000円)への戻りが見込める。
エントリー:戻しの途中で高値を更新(例:2,910円を超える)したら買いで入る。「底で買う」より「反転を確認して買う」方が、初心者の再現性は高いです。
損切り:下ヒゲの先端(2,880円)を再び割るなら撤退。損切りまでが遠い場合はポジション量を落とす。
利確:前日終値の手前(2,980〜2,995円)で部分利確し、残りは3,000円タッチで手仕舞い。前日終値は反発されやすいので、完全に抜ける前提で欲張りすぎない。
勝率を上げるフィルター:初心者が“やる日”を絞る
窓埋めは「毎日やる手法」ではなく、「条件が揃った日だけやる手法」にすると成績が安定します。以下は初心者向けの絞り込みです。
フィルター1:決算・大型材料日は基本見送り
決算や大きな材料の日は、ギャップが“情報の反映”である可能性が高いです。窓埋めは起きにくく、逆張りは危険です。初心者はまず「材料日を避ける」だけで、損失の大半が消えます。
フィルター2:指数が強トレンドの日は逆方向の窓埋めをしない
例えば日経平均が朝から強い上昇トレンドの日に、ギャップアップ銘柄の“下げ窓埋め”を狙うと、指数買いに押し戻されて負けやすいです。個別の窓埋めは、地合いに逆らうと難易度が上がります。
フィルター3:寄り後15分以内に決着がつかない窓は撤退
窓埋めは初動が命です。寄り後15分たっても前日終値に近づく気配がないなら、その日は「走る日」か「揉む日」です。時間で切るルールは、初心者の最大の味方です。
損切り設計:窓埋めで最も重要なのは“どこで間違いと認めるか”
窓埋めは逆張りになりやすく、損切りが曖昧だと一撃で致命傷になります。ここでは、初心者でも決められる損切りの置き方を提示します。
方法1:寄り後の最初の高値・安値を“否定ライン”にする
ギャップアップの窓埋め売りなら「寄り後の高値更新=窓埋め失敗の可能性上昇」です。ギャップダウンの窓埋め買いなら「寄り後の安値割れ=反転失敗」です。最初の5分で作った極値は、参加者の感情が凝縮したラインなので機能しやすいです。
方法2:前日終値までの距離で利幅が小さいなら“やらない”
例:前日終値までの利幅が20円しかないのに、損切りが30円必要なら、期待値が悪いです。初心者は、利幅:損切り幅=1:1以上(理想は1.5:1以上)を最低条件にすると、無駄なトレードが減ります。
よくある失敗パターンと回避策
失敗1:ギャップ率だけ見て、材料の有無を見落とす
ギャップ率が小さくても、材料のインパクトが大きければ走ります。最低限、ニュース欄(決算・適時開示・主要ニュース)を確認し、「今日は材料日か?」を判断してから窓埋めを考えるべきです。
失敗2:前日終値ピッタリまで取り切ろうとして反転に巻き込まれる
前日終値は強い反発点です。窓が埋まった瞬間に逆方向へ走ることも珍しくありません。初心者は「手前で降りる」ことを徹底した方が、トータル収益が安定します。
失敗3:ロットを上げすぎる(逆張りは想像以上に連敗する)
窓埋めは連敗があり得ます。最初は1回の損失を小さくし、ルールが固まるまでロットを増やさない。これが生き残りの基本です。
検証のやり方:初心者でもできる“自分用ルール”の作り方
窓埋めは銘柄・市場・時間帯で性格が変わります。だからこそ、簡単な検証で自分の得意パターンを見つける価値があります。
1) 過去30日で、毎日ギャップ率と結果をメモする
銘柄を3つに絞り、毎朝「ギャップ率」「寄り後15分で前日終値に近づいたか」「達成したか」をメモします。これだけで、窓埋めが効く日・効かない日が見えてきます。
2) “条件を2つだけ”に絞る
初心者は条件を増やすほど混乱します。たとえば以下の2条件だけで始めると、検証が速いです。
- ギャップ率が1.0%〜3.0%の範囲
- 寄り後5分足でヒゲが出て反転の兆候がある
この2条件で勝てるなら、次に出来高フィルターや地合いフィルターを足して精度を上げます。
まとめ:窓埋めは“初動の歪み”を獲る、条件付きの戦略
窓埋めトレードは、前日終値という強い基準点に対して、寄り付きの歪みがどれだけ起きたかをギャップ率で数値化し、初動の反転を確認して仕掛ける戦略です。初心者がやるべきことはシンプルです。
- ギャップ率で「触っていい窓」と「触らない窓」を分ける
- 寄り後5分のローソク足・出来高・前日終値付近の板で初動を判定する
- 損切りは“否定ライン”を先に決め、利幅が小さい日はそもそもやらない
- 材料日や指数トレンドが強い日は無理に逆張りしない
この型を守るだけで、窓埋めは「当てもの」から「確率の取引」に変わります。まずは小さなロットで、同じ条件だけを繰り返し、検証しながら自分の得意な窓の形を見つけてください。


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