移動平均線の乖離率で読む“行き過ぎ”――修正安・修正高を狙う逆張りの設計図

テクニカル分析

逆張りは「安いから買う」「高いから売る」では負けやすい取引です。負けの典型は、下落が続くのに買い下がって資金が尽きる、上昇が続くのに売り上がって踏まれる、というパターンです。逆張りを“戦略”にするには、感覚ではなく、相場の行き過ぎを数値で定義し、エントリー条件と撤退条件を先に決める必要があります。

そこで役に立つのが「移動平均線(MA)からの乖離率」です。価格が平均からどれだけ離れているかを定量化できるので、平均回帰(mean reversion)を狙う取引を設計しやすくなります。本記事では、乖離率の計算から、銘柄・市場ごとの癖、やってはいけない逆張り、勝ち筋が残りやすい“修正安・修正高”の狙い方まで、手順としてまとめます。

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乖離率とは何か:まず「平均」を誤解しない

移動平均線は「直近N本の価格の平均」です。多くの初心者が勘違いする点は、平均=必ず戻る“中心線”だと思い込むことです。実際は、トレンドが強い局面ほど、価格は平均から長く離れ続けます。つまり、乖離率は“逆張りのサイン”ではなく、「行き過ぎの候補を抽出するフィルター」として扱うのが正解です。

平均回帰が起きやすいのは、上昇・下落の勢いが一時的に過熱し、短期参加者の利益確定・損切りが集中して、需給が短期間で逆向きに傾く場面です。乖離率は、その候補を機械的に拾う道具です。

乖離率の計算:シンプルで良いが、時間軸は重要

乖離率(%)は以下で計算します。

乖離率(%)=(現在価格 − 移動平均)÷ 移動平均 × 100

例えば、25日移動平均が1,000円、現在価格が1,080円なら、乖離率は(1,080−1,000)/1,000×100=8%です。価格が移動平均より上ならプラス、下ならマイナスになります。

移動平均の期間Nは、あなたの取引時間軸に合わせます。

・デイトレ寄り:5分足の20MA/50MA、1時間足の20MAなど
・スイング寄り:日足の25MA/75MA、週足の13MAなど

初心者が最初に作るなら、日足25MAの乖離率から始めるのが無難です。理由は、データのノイズが少なく、検証もしやすいからです。

「何%で行き過ぎか」は市場ごとに違う:固定閾値は危険

乖離率の落とし穴は、閾値を固定すると破綻しやすいことです。ボラティリティが高い市場ほど乖離が大きくなります。例えば、値動きが穏やかな大型株と、値幅が荒い新興株では、同じ8%でも意味が違います。FXや暗号資産はさらに違います。

目安として、まずは「その銘柄(または市場指数)の乖離率の分布」を見る発想が重要です。過去1〜2年で日足25MA乖離率を計算し、上位5%・下位5%がどの水準かを調べます。これが、その銘柄における“過熱域”の仮説になります。

具体例:TOPIXのような指数は乖離が大きくなりにくい一方、グロース株や材料株は乖離が極端になりやすい。暗号資産は、ボラが平時でも大きいので、指数株と同じ感覚で閾値を置くと、常に「行き過ぎ」判定になってしまいます。

勝ち筋が残りやすい逆張り:狙うのは「修正」だけ

逆張りには2種類あります。

(A)トレンド転換を当てにいく逆張り:天井・底を狙う。難易度が高く、損切りが遅れると大損になりやすい。
(B)トレンド継続中の“修正”を取る逆張り:上昇トレンド中の押し目、下落トレンド中の戻りを取る。再現性が高い。

初心者が狙うべきは(B)です。乖離率は(B)と相性が良い。例えば上昇トレンド中にプラス乖離が膨らんだら、いったん利益確定が出て移動平均へ戻る(あるいは戻りに近い調整)確率が上がる、という狙いです。

トレンド判定を先に入れる:逆張りの事故を減らす最重要工程

乖離率で逆張りする前に、必ず「今はトレンド相場か、レンジ相場か」を粗く判定します。ここを省くと、下落トレンドの初動で買ってしまい、“ナイフを掴む”事故が増えます。

初心者でも扱いやすい判定法は次の2つです。

・移動平均の向き:日足25MAが上向きなら上昇基調、下向きなら下落基調。
・上位足フィルター:日足でやるなら週足の13MAの向きも見る。週足が下向きのときは日足の逆張り買いを減らす。

これだけで、逆張りの“地雷”を相当避けられます。

エントリー設計:乖離率「到達」ではなく「反転確認」

よくある失敗は、乖離率が閾値に到達した瞬間に飛びつくことです。到達=過熱の可能性が出ただけで、実際に反転するとは限りません。ここで使うべきは「反転確認」です。

反転確認の具体例(買いの場合:マイナス乖離からの修正安狙い)

1)乖離率が下位5%水準に到達(例:−7%など。銘柄によって変える)
2)ローソク足で下ヒゲが出る/陰線の実体が縮む(売りの勢い低下)
3)短期足で高値切り上げが出る(例:5分足で直近高値を更新)
4)出来高が急増し、その後の下落が止まる(投げ売りの終盤の匂い)

この「過熱+勢い低下+小さな上昇転換」を揃えると、逆張りの勝率が上がります。売りの場合も同様に、プラス乖離が極端になった後に、上ヒゲや上値の重さ、短期足の安値割れなどで確認します。

利確と損切り:出口を先に決めない逆張りは破綻する

逆張りは、出口の設計が取引の大半です。なぜなら、当たり前ですが「トレンドはあなたが思うより長く続く」からです。出口を曖昧にすると、含み損が膨らんでも“戻るはず”と思い込み、損切りができなくなります。

利確の基本
・第一目標:移動平均まで戻る(乖離率0%付近)
・第二目標:反対側の乖離が出る前まで(例えば+2〜+3%で十分なことも多い)

欲張って“天井まで”や“底まで”を取りにいくと、逆張りの良さ(短期での回収)が消えます。平均回帰狙いは、平均に戻る途中を取り切るゲームです。

損切りの基本
・直近の安値(買い)/高値(売り)を明確に割ったら撤退
・値幅の目安としてATR(平均真の値幅)の1.0〜1.5倍で損切り幅を決める

例えば日足でATRが40円の銘柄なら、買いの損切りはエントリーから40〜60円程度に設定する、という発想です。これにより、銘柄ごとの値動きに合わせた“耐える幅”になります。

ポジションサイズ:逆張りは「小さく試す」が原則

逆張りは、勝率を上げても負けるときの値幅が大きくなりがちです。したがって、ロット管理が生命線になります。初心者に一番おすすめなのは、資金の一定割合で損失上限を固定する方法です。

例:1回の損失上限を資金の1%に設定する。
資金100万円なら、損失上限は1万円。損切り幅が50円なら、1万円÷50円=200株が上限です(手数料・スリッページは別途考慮)。

この計算を毎回やるだけで、「一撃で退場」が激減します。逆張りが怖いのは、方向が外れたときに“損切りが遅れる”ことなので、仕組みで先に縛ってください。

具体例:日本株(指数主導の日)での乖離率逆張り

日本株では、指数先物主導で場中に急落・急騰する日があります。こういう日は個別銘柄も一斉に振られるので、「良い銘柄が一時的に投げられる」状況が起きやすい。平均回帰のチャンスです。

シナリオ例(買い):
・日経平均が前場に急落し、主力株も連れ安。
・あなたが監視している大型株A(値動きが比較的素直)が、日足25MA乖離率−6%に到達。過去2年の分布で下位5%に相当。
・板を見て、寄りの投げが一巡した後、下値で出来高の山が出る。
・5分足で高値更新(小さなトレンド転換)。ここで“試し玉”として1/2ロットだけ入る。
・損切りは直近安値割れ、利確は25MAまでの戻りの途中(乖離率−2%付近)で半分、残りは0%手前まで。

重要なのは、最初からフルサイズで突っ込まないことです。逆張りは「当たれば大きい」ではなく「外れたときの損が小さい」設計にすると、トータルで残りやすい。

具体例:FX(ドル円)での乖離率逆張りの考え方

FXは24時間動き、指標や要人発言で一方向に走りやすいので、乖離率逆張りは“時間帯”を絡めると精度が上がります。例えば、ニューヨーク時間の指標直後はトレンドが伸びやすく、逆張りは危険。一方、東京時間の薄い時間帯で、短期勢の利確で一時的に振れた場面は平均回帰が起きやすいことがあります。

シナリオ例(売り):
・1時間足20MA乖離率が+1.2%まで拡大(ドル円では短期的に過熱域になりやすい)。
・ただし、米指標直後ではなく、流動性が落ちる時間帯に上げが失速。
・5分足でダブルトップ気味、直近安値割れで売り。
・損切りは直近高値更新、利確は20MA付近までの戻り。

FXはスプレッドとスリッページの影響が相対的に大きいので、利幅が小さすぎると期待値が落ちます。逆張りでも、最低でも“スプレッドの10倍”程度の利幅が取れる局面を選ぶと無理が減ります。

具体例:暗号資産(ビットコイン)での乖離率逆張りの注意点

暗号資産はボラが大きく、週末に流動性が落ちやすい一方、急変動が起きやすい。乖離率は使えますが、閾値は株やFXよりかなり広く取る必要があります。また、取引所のメンテ・急な資金移動・清算の連鎖など、値動きが“構造的に跳ねる”点に注意が必要です。

シナリオ例(買い):
・4時間足50MA乖離率が−6%に到達。過去の分布で下位10%程度。
・同時に、先物の強制清算が入り、出来高が急増。下ヒゲが大きいローソク足が出る。
・短期足で高値切り上げを確認して小さく入る。
・損切りは直近安値割れ。利確は50MAまでの戻りの途中で段階的に。

暗号資産は「戻りが速い」一方で「落ちるときはさらに速い」ので、損切りをルール化していない逆張りは危険です。逆張りをやるなら、必ず“機械的な撤退”を先に作ってください。

フィルターを足すと強くなる:乖離率×出来高×市場環境

乖離率単体より、次のフィルターを足すと成績が安定しやすいです。

1)出来高フィルター
過熱域で出来高が急増し、その後に伸びが止まるのは、短期勢の手仕舞いが出た合図になりやすい。逆に、出来高が増え続けているのに価格が伸びるなら、トレンドが強く逆張りは危険。

2)ボラティリティ・フィルター
ATRが急増している局面(荒れている局面)は、乖離率が拡大しやすく、反転も急。損切り幅も広がるので、ロットを落とすか、取引自体を減らす判断が必要です。

3)市場全体の地合い
個別銘柄の乖離がマイナスでも、指数が崩れている(先物主導の下落)なら、平均回帰のタイミングが遅れることがあります。逆に指数が強いのに個別だけ投げられているなら、修正安が狙いやすい。

初心者がやりがちなミス:乖離率逆張りの“地雷”集

・下落トレンド初動で買う
25MAが下向きになり始めた局面は、平均が下へ動き続けます。乖離が縮まらず、さらに下へ乖離が広がることが多い。

・材料で飛んでいる銘柄を逆張りする
決算サプライズやM&A、規制変更などの材料は、価格水準そのものが変わることがあります。こういうときは“平均”が過去の世界に取り残されるので、乖離率が意味を失いやすい。

・損切りを移動する
逆張りは含み損になりやすい。ここで損切りを後ろへずらすと、最終的に「戻るまで持つ」に変質し、資金効率が死にます。

・利確を欲張る
平均回帰狙いは、平均に戻る途中で十分です。天井・底を取りに行くと、逆張りの難易度が跳ね上がります。

簡易バックテストの考え方:検証しやすい形に落とす

初心者がいきなり高度な検証をする必要はありません。次のように条件を固定し、ざっくり検証するだけでも「自分が扱える戦略か」が見えます。

例(日本株・日足):
・対象:流動性の高い銘柄(出来高が安定している)を10銘柄ほど
・指標:日足25MA乖離率
・条件:乖離率が−6%以下になり、翌日終値が前日高値を超えたら買い(反転確認の簡易版)
・利確:乖離率が−1%を超えたら手仕舞い
・損切り:エントリー後に直近安値を割ったら手仕舞い

これを過去チャートで100回分くらい拾うと、勝率と平均損益、最大ドローダウンの感覚が掴めます。あなたの性格に合わないなら、条件や時間軸を変えた方が良い。検証は“才能”ではなく“手順”です。

実運用のチェックリスト:その場で判断がブレないために

最後に、取引前に確認する項目をまとめます。紙に書いてモニター横に貼るくらいで、ブレが減ります。

1)上位足の移動平均は上向きか下向きか(逆張り方向と矛盾していないか)
2)乖離率は、過去分布でどの程度“異常値”か(上位/下位何%か)
3)反転確認は出たか(高値更新/安値割れ、ヒゲ、出来高の山)
4)損切り価格はどこか(先に置けるか、移動させないか)
5)利確の第一目標はどこか(平均まで、あるいは途中まで)
6)損失上限からロットは逆算したか(気分でサイズを上げていないか)

まとめ:乖離率は「逆張りの免罪符」ではなく、判断を型にする道具

乖離率は、逆張りの“理由付け”に使うと危険ですが、行き過ぎの候補を機械的に拾い、反転確認と出口ルールで取引を型にするなら強力です。重要なのは、トレンド判定→過熱抽出→反転確認→損切り固定→平均回帰で利確、という順番を崩さないことです。

逆張りは、当てに行くほど難しくなります。小さく試して、平均に戻る分だけ淡々と取る。これが、初心者が一番再現しやすい“修正安・修正高”の取り方です。

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