VIX(恐怖指数)が40を超えるような局面は、ニュースもSNSも「終わった」「金融危機だ」と悲観一色になりやすく、投げ売りが連鎖します。経験則として、この“総悲観”は中長期の底に近いことが多く、リバウンドが大きくなりやすい。とはいえ、ここで初心者がやりがちなのは「VIXが高い=底だ」と決め打ちして一括で買い、さらに下げてメンタルも資金も持たずに投げることです。
この記事では、VIX40超えを“トリガー”ではなく“警戒アラート”として扱い、相場の終盤局面(セリングクライマックス)を複数の観測点で確認しながら、分割で仕込む具体的な手順に落とし込みます。株式中心ですが、指数先物・ETF・FX・暗号資産にも応用できる考え方です。
- VIXとは何か:40という数字の意味を誤解しない
- 総悲観が“買い場”になりやすい理由:需給が極端に片寄るから
- VIX40超えで見るべきは『底の形』:単発の急騰では足りない
- 初心者でも実行できる『3段階の仕込み』:一括買いを封印する
- 撤退基準を先に決める:『底だと思った』は理由にならない
- 利益確定は“段階的”に:リバウンドは戻り売りも速い
- 具体例:VIX急騰局面で“やってはいけない”3つの行動
- “総悲観の買い”を再現性にする:チェックリスト運用
- 日本株での応用:米国VIXを“外部環境センサー”として使う
- より一歩進んだ視点:ボラティリティの『売り場』にもなる
- まとめ:VIX40超えは“合図”であって“答え”ではない
- ポジションサイズの決め方:『いつもの半分』を数式で固める
- 商品選びの優先順位:初心者は『指数→大型→テーマ』の順にする
- 時間軸の分け方:『初動はデイトレ、芯はスイング』で混乱を防ぐ
- シナリオ例:『最悪の日』の翌週にやること
- メンタルの落とし穴:ニュースを見すぎると勝率が落ちる
VIXとは何か:40という数字の意味を誤解しない
VIXは、S&P500のオプション価格から算出される「今後30日間の予想変動率(年率換算)」の指標です。ざっくり言えば、投資家が保険(プット)を買いまくるほど上がりやすく、相場が荒れているときほど上がります。
重要なのは、VIXは“下落そのもの”ではなく“下落への恐怖(保険料)”を反映する点です。恐怖がピークアウトすると、株価がまだ底を付け切っていなくてもVIXが先に下がることがあります。逆に、株価が横ばいでも不安が増えるとVIXが上がることもあります。
だから『VIXが40を超えたら必ず買い』ではありません。40は目安で、歴史的に“多くの参加者がリスクを投げる水準”として知られているだけ。むしろ、40超えは“いつでも買っていい”ではなく『仕込みの準備に入れ』というサインとして扱うのが安全です。
総悲観が“買い場”になりやすい理由:需給が極端に片寄るから
総悲観局面では、合理的な売り(損切り)に加えて、非合理な売り(追証・解約・恐怖のパニック)が出ます。ここで需給が歪みます。
1つ目は、レバレッジ勢の強制清算です。信用取引、先物、オプション、暗号資産のマージン取引など、レバレッジがかかったポジションは、価格が一定以上逆行すると強制的に投げさせられます。強制清算は“意思を伴わない売り”なので、価格を必要以上に叩きます。
2つ目は、機関投資家のリスクパリティやボラターゲットの機械的なエクスポージャー調整です。ボラが上がると、規定のリスク量を守るために株式比率を落とす(売る)運用があり、VIX急騰と同時に売りが増えます。
3つ目は、現金化ニーズです。投資信託の解約が増えると、運用側は保有株を売って現金を捻出します。これも“価格を選ばない売り”になりがちです。
この3つが重なると、短期間に売りが出尽くしやすく、わずかな買いで反転しやすい。ここが“総悲観は買い”と言われるメカニズムです。
VIX40超えで見るべきは『底の形』:単発の急騰では足りない
ここからが実戦です。VIXが40を超えたら、次の“底の形”を探します。全部完璧に揃う必要はありませんが、揃うほど成功率が上がります。
観測点A:指数の値動きが『急落→急反発→再下落』のように乱高下になる
底付近は、買い戻しと投げ売りがぶつかり、ヒゲの長いローソクが増えます。一直線の下げはまだ“途中”のことが多い。急反発が出て初めて、ショートの買い戻し・投げの一巡が混ざり始めた合図になります。
観測点B:出来高が膨らむ(株)/清算量が増える(暗号資産)
「売りが出尽くす」には、売り手が実際に吐き出している必要があります。株なら指数ETF(例:SPY)や市場全体の出来高、暗号資産なら清算データ(ロングの強制清算)を見る。出来高が細いままの下げは、投げが本格化していない可能性があります。
観測点C:市場の幅(ブレッドス)悪化が極端
“何でも売られる”状態は底に近づきやすい。具体的には、値上がり銘柄数が極端に少ない、52週安値銘柄が急増、指数の下落以上に個別が崩れる、といった状態です。日本株なら、東証の値上がり・値下がり数、騰落レシオ、業種別の全面安などが参考になります。
観測点D:クレジット(社債)やドル資金調達のストレスが落ち着く兆し
本当の危機相場では、株だけでなく信用市場が壊れます。初心者でも見やすい代替としては『ハイイールド債ETFの下げが鈍る』『ドル高が一服する』など。株が戻る前に、ストレス指標が先に落ち着くことがあります。
観測点E:VIXの“形”が変わる(スパイク後の失速)
典型は『VIXが40〜60へスパイク → 翌日以降に高値更新できず、日足で上ヒゲを作る』パターン。恐怖のピークアウトです。株価がまだ弱くても、恐怖が減ると売り圧力が弱まりやすい。
初心者でも実行できる『3段階の仕込み』:一括買いを封印する
総悲観局面は期待値が高い反面、ボラが極端に大きく“底割れ”も普通に起きます。勝ちやすくするコツは、予測ではなく手順で入ることです。おすすめは資金を3分割(または4分割)して、条件を満たすごとに投入する方法です。
第1段:アラート買い(小さく試す)
条件:VIXが40を超えた/指数が短期間で急落した。
行動:買うのは投入予定資金の25%だけ。対象は分散の効いた指数ETF(日本ならTOPIX連動ETF、米国ならS&P500連動ETFなど)。個別株はここでは触らない。
狙い:『底かもしれない』という可能性に小さく賭け、反発した場合の取りこぼしを減らす。
第2段:形の確認買い(反発の初動を拾う)
条件:急落後に“強い反発日”が出る(大陽線、出来高増、ヒゲの反転など)。さらに翌日以降、安値更新をしにくくなる。
行動:追加で25%投入。ここでも指数ETF中心。個別を混ぜるなら、指数より弱い銘柄ではなく、相対的に強い銘柄(下げが浅い/戻りが早い)に限定。
狙い:『投げが一巡した』サインに乗る。
第3段:恐怖のピークアウト買い(VIXの失速を利用)
条件:VIXが高値更新できず、下向きになり始める。株価が横ばいでもよい。
行動:残り50%を2回に分けて投入(25%+25%)。もし再下落で安値更新したら、最後の25%は温存して“底割れ後の投げ”に備える。
狙い:恐怖が剥がれていく局面は、戻りがトレンド化しやすい。
この分割ルールのメリットは、外したときのダメージが小さい点です。一括買いは当たれば派手に勝てますが、初心者が耐えられない含み損になりやすい。分割は“生き残り”に強い。
撤退基準を先に決める:『底だと思った』は理由にならない
逆張りで最も重要なのは、利確より損切りです。なぜなら、総悲観局面では“もう一段の崩れ”が必ず起きうるから。撤退基準がないと、下げのたびに『そのうち戻る』と自分に言い聞かせて資金を溶かします。
撤退基準の作り方(指数ETFの例)
・エントリー日から見て直近安値を明確に割ったら、一部を切る(例:保有の半分を整理)。
・さらに下げて“危機の形”(信用市場の悪化、連日の窓開け下落)が出たら、残りも整理。
ポイントは、損切りを『全部ゼロか100か』にしないこと。部分撤退にすると、心理的にも実行しやすい。
暗号資産での撤退基準
暗号資産は値幅が大きく、テクニカルのノイズも多い。だから“価格だけ”で切るより、『清算データが再び加速』『出来高が増えずに反発が弱い』『ステーブルコイン流入が止まる』など、需給データも併用した方が安全です。
利益確定は“段階的”に:リバウンドは戻り売りも速い
総悲観後の上げは、最初はショートカバー中心で急騰し、その後に長期資金が入ってトレンド化する、という2段構えになりやすい。初心者は急騰に興奮して利確できず、戻り売りで利益を吐き出しがちです。ここも手順化します。
利確ルール例
・最初の急反発で、含み益が出たら25%利確(建玉の一部を現金化)。
・次の戻りで直近の大きなレジスタンス(例:25日移動平均、直近高値)に近づいたらさらに25%利確。
・残りはトレーリング(移動平均割れ、日足の安値割れ等)で伸ばす。
こうすると、最初の反発で“利益の種”を確保しつつ、トレンド化した場合の上振れも取りにいけます。
具体例:VIX急騰局面で“やってはいけない”3つの行動
やってはいけない①:個別の落ちている銘柄を理由なく拾う
総悲観では、普段強い銘柄も弱い銘柄も一緒に叩かれます。しかし、弱い銘柄(業績悪化・希薄化懸念・財務不安など)は戻りが鈍い。初心者は「安いから」だけで拾って指数に負けます。最初は指数ETFで十分です。個別をやるなら、相対強度で選ぶ。
やってはいけない②:ナンピン前提で買い続ける
分割エントリーと無限ナンピンは別物です。分割は“投入上限が決まっている”。無限ナンピンは“上限がない”。上限がないと、最悪の局面(底割れ)で弾が残らず破綻します。
やってはいけない③:ボラの大きい商品で最大ロットを張る
総悲観のボラは平常時の2〜3倍以上になることが多い。いつものロットは、実質的に2〜3倍のリスクを取っているのと同じです。初心者は『ロットを半分以下に落とす』を基本にしてください。
“総悲観の買い”を再現性にする:チェックリスト運用
感情が揺さぶられる局面ほど、判断をチェックリストに落とします。以下は実務でそのまま使える形にしました。
チェックリスト(○が多いほど仕込みを進める)
・VIXが40超え(○/×)
・指数が短期間で急落(○/×)
・出来高が増え、ヒゲの長い日足が出た(○/×)
・値上がり銘柄が極端に少ない/全面安(○/×)
・クレジットやドル高などストレス指標が落ち着き始めた(○/×)
・VIXが高値更新できず失速した(○/×)
・自分の資金管理(分割・撤退基準・ロット調整)が決まっている(○/×)
チェックリストの最後が一番重要です。相場がどうであれ、自分のルールが未整備なら見送る。見送ってもチャンスはまた来ます。
日本株での応用:米国VIXを“外部環境センサー”として使う
日本株の個人投資家は『米国のVIXは自分には関係ない』と思いがちですが、実際にはグローバルのリスク許容度の変化が、先物主導で日本株に波及します。
応用のポイントは2つです。1つ目は、VIX40超えの日に日本株を“即買い”しないこと。米国のパニックは日本時間の寄り付きにギャップで反映されやすく、最初の30分は投げが出やすい。寄りで買うより、寄ってからの板と出来高を見て、落ち着き始めたところで分割する方が成功率が上がります。
2つ目は、対象を“指数寄り”にすること。総悲観後の初動は、個別の材料ではなくリスクオン/オフのベータで動きやすい。TOPIX先物、日経平均先物、またはそれに連動するETFが扱いやすいです。個別は、リバウンド局面で相対強度が見えてからでも遅くありません。
より一歩進んだ視点:ボラティリティの『売り場』にもなる
初心者向けに無理はしませんが、考え方として知っておくと武器になります。総悲観でVIXが跳ねた直後は、オプションのインプライド・ボラ(IV)が極端に高くなります。恐怖が剥がれるとIVが下がり、オプション価格は“ボラの収縮”で下がります。
つまり、総悲観は『現物やETFの買い場』であると同時に、経験者にとっては『ボラを売る場(プレミアムを受け取る場)』にもなり得る。ただしオプション売りはリスクが大きく、初心者がいきなり手を出すと危険です。まずは、VIXが高いほど“保険が高い状態”である、と理解するだけで十分です。
まとめ:VIX40超えは“合図”であって“答え”ではない
VIXが40を超える局面は、投げ売りと強制清算で需給が歪みやすく、リバウンドの期待値が上がることがあります。しかし、数字だけで底を断定すると負けます。
勝ちやすくするコアは3つです。①底の形(乱高下・出来高・ブレッドス・ストレス指標・VIX失速)を複数で確認する、②一括買いをやめて3段階で仕込む、③撤退基準と利確基準を先に決めて機械的に動く。
総悲観局面は、うまく扱えば資金を増やすチャンスですが、同時に“相場が最も荒い時間帯”でもあります。勝ちに行く前に、まず生き残る。そのための手順として、今日のチェックリストをそのまま使ってください。
ポジションサイズの決め方:『いつもの半分』を数式で固める
ロット調整を感覚でやると、相場が荒いほどブレます。初心者でもできる簡易式を紹介します。
手順
1) 1回のトレードで許容する損失(リスク)を、資金の1%(慣れないうちは0.5%)に固定する。
2) 損切り幅(ストップまでの距離)を決める。指数ETFなら『直近安値割れ』などで、価格差を円/ドルで把握する。
3) ロット=(許容損失額)÷(損切り幅)で算出する。
例:資金100万円、許容損失0.5%=5,000円。損切り幅が2%で、買値が2,000円のETFなら、1口あたり40円の下落で損切り。5,000÷40=125口が上限。
この式の良いところは、ボラが大きいほど損切り幅が広がり、自然にロットが小さくなる点です。『VIX局面は半分』という定性的ルールを、定量に落とせます。
商品選びの優先順位:初心者は『指数→大型→テーマ』の順にする
総悲観の初動で一番リスクが高いのは、材料が弱い小型株や、流動性が薄い暗号資産アルトコインです。戻りが大きいこともありますが、失敗すると致命傷になります。
おすすめの優先順位は次の通りです。
第1優先:広く分散された指数ETF
相場全体のリバウンドを取りにいくので、銘柄選択ミスが起きにくい。
第2優先:指数の中でも相対的に強い大型株
例えば下げが浅い、決算・財務が強い、需給が良い、など“戻りの主役”になりやすい。
第3優先:テーマ株・高ボラ個別
ここはリバウンド後半で。相場が落ち着き、資金が物色を始めてからでも間に合います。
時間軸の分け方:『初動はデイトレ、芯はスイング』で混乱を防ぐ
総悲観局面では、同じ日に“5%上げて5%下げる”ような乱高下が普通に起きます。ここで時間軸が混ざると事故ります。
やり方は単純で、ポジションを目的別に分けます。
短期枠(デイトレ〜数日)
急反発の初動を取る枠。利確は速く、損切りも速い。売買回数は増えるが、建玉は小さめ。
中期枠(数週間〜数カ月)
“総悲観後の回復トレンド”を狙う枠。こちらが本命。短期の上下に振り回されないよう、分割で仕込み、撤退基準も日足ベースにする。
最初から全部をスイングで持とうとすると、初動の乱高下でメンタルが削れます。逆に全部をデイトレにすると、数日後の大きな戻りを取り逃がす。目的別に分けるのが合理的です。
シナリオ例:『最悪の日』の翌週にやること
イメージが湧くよう、架空のシナリオで手順を当てはめます。数字は例です。
・月曜:米株が急落し、VIXが45へ。日本株も寄りで大きくギャップダウン。寄り付きは見送り、最初の30分は板と出来高を観察。
→後場にかけて下げ渋りが出たので、第1段(25%)だけ指数ETFで試し買い。ストップは当日の安値割れ。
・火曜:一度は反発するが、引けにかけて再び売られる。VIXは高値更新できず。
→第1段は含み損だが想定内。ストップ未到達なので維持。ここでナンピンはしない。
・水曜:朝は安値更新しかけるが、出来高を伴って急反発し、大陽線。
→第2段(25%)を追加。ここで初めて“形”が出たので、買い下がりではなく、反発の確認後に乗る。
・木曜:横ばい〜小幅安。VIXが下向きに。
→第3段のうち25%を追加。残り25%は温存。
・金曜:もう一段の下げが来て安値更新。市場心理は再び悪化。
→温存していた残り25%を、投げが出たところで投入。ただし“底割れが本物”に見えるなら、投入せず撤退を優先する。
このシナリオで大事なのは、最初の買いが外れても致命傷にならないよう設計している点です。相場は予言できません。だから、外れても生き残る設計にします。
メンタルの落とし穴:ニュースを見すぎると勝率が落ちる
総悲観局面は情報が過剰です。悲観的な見出し、煽り動画、極端な予測が大量に流れ、判断が歪みます。初心者が守るべきルールはシンプルです。
・エントリー前後は、ニュースを“時間制限”する(例:朝と引け後だけ)。
・価格と出来高、チェックリストの観測点だけを見る。
・“誰かの断言”ではなく、自分の撤退基準で動く。
市場が荒れているときほど、最終的にあなたの損益を決めるのは『行動の一貫性』です。情報量ではありません。


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