相場で「上がり過ぎたら売る」は正しいようで、現実には一番難しい判断です。上昇トレンドの最中はニュースも強気になり、SNSには勝ち報告が溢れ、押し目が浅くなって「まだ行く」と感じやすい。一方で、天井はいつも“熱狂のピーク”で生まれます。
この“熱狂”を定量化する代表指標が騰落レシオです。特に120超えは「過熱」として語られがちですが、ここで初心者がやりがちな失敗は2つあります。①120を超えた瞬間に全売却してしまう、②120を無視して持ち続けて急落を丸被りする。どちらも極端です。
この記事では、騰落レシオを「当て物の天井予言」ではなく、手仕舞い設計とポジション管理を優位にするためのダッシュボードとして使う方法を、具体例を交えて徹底解説します。
- 騰落レシオとは何か:まず“市場の体温計”として理解する
- 初心者が陥る3つの誤解:騰落レシオは“売買シグナル”ではない
- 実務(=実際の手順)で使える:騰落レシオ120超えの“3段階”モデル
- “具体例”で理解する:天井になりやすい120超え、ならない120超え
- 騰落レシオを“個別銘柄の売買”に落とし込むコツ
- “逆張りスキャル”に使うなら:やっていい逆張り、やってはいけない逆張り
- チェックリスト:騰落レシオ120超えで“手仕舞い判断”を固める10項目
- まとめ:騰落レシオ120超えは“売買のスイッチ”ではなく“利益防衛の開始合図”
- 発展:あなたの銘柄で“再現可能”にするための観測ポイント
- 初心者向け:分割手仕舞いを“注文”として実装する
- “ヘッジ”という選択肢:売らずに守る(特にスイング向き)
- データで腹落ちさせる:自分で簡易検証する手順
- よくある質問:120を超えたら、どれくらいで反転する?
- 最後に:騰落レシオは“相場の熱”を測る道具、あなたのルールは“行動”を固定する道具
騰落レシオとは何か:まず“市場の体温計”として理解する
騰落レシオは、一定期間における値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率で、市場の広がり(ブレッド)を測る指標です。一般的には東証などが公表する「騰落銘柄数」を使い、例えば25日騰落レシオは次の考え方になります。
(過去25日間の値上がり銘柄数の合計)÷(過去25日間の値下がり銘柄数の合計)×100
ここで大事なのは「指数の上げ下げ」とは違う軸だという点です。日経平均が上がっていても、少数の大型株だけが上げているなら騰落レシオは伸びません。逆に、中小型まで広く買われる“お祭り相場”になると、騰落レシオは急上昇します。
なぜ120が注目されるのか
経験則として、騰落レシオが120を超える局面は「買いが買いを呼び、下げてもすぐ戻る」状態になりやすく、新規で飛び乗る人が増え、利益を持っている人が多い環境です。つまり、少しのきっかけで「利益確定の連鎖」が起きる土台ができています。
ただし、120は“天井の確定”ではありません。強い上昇相場では120〜140近くまで滞在し、その間に指数はさらに上がることもあります。だからこそ、騰落レシオ単体ではなく、価格行動・出来高・ボラティリティ・リーダー銘柄の挙動と組み合わせて「手仕舞いの精度」を上げます。
初心者が陥る3つの誤解:騰落レシオは“売買シグナル”ではない
誤解①:120超え=即全売り。これは最悪に近い使い方です。過熱局面でもトレンドは続くことがあり、全売りは「伸びる部分の取り逃し」を生みます。さらに再エントリーで焦って高値掴みしやすい。
誤解②:120超えでも強いから無視。これも危険です。急落は、上昇の“熱”が高いほど速く大きくなります。過熱を無視すると、損切りが遅れやすく「含み益が含み損に変わる」典型パターンになります。
誤解③:指数が強い=市場全体が強い。大型株主導の上げは騰落レシオが伴わないことがあります。逆に、騰落レシオが高いのに指数が伸びない場合、内部では利確が出て“上値が重い”状態かもしれません。指標が教えるのは、まさにこの内部状態です。
実務(=実際の手順)で使える:騰落レシオ120超えの“3段階”モデル
私が推奨するのは、騰落レシオ120超えを「過熱の度合い」で3段階に分けて、行動を事前に決めるやり方です。場中に感情で判断しないためのルール化が目的です。
段階A:120に到達(過熱の入口)
ここでは「売る」よりも、売る準備を始めます。具体的には、保有銘柄を3つの箱に分けます。
①利益が大きいが、ボラが高い銘柄(急落時に戻らない可能性が高い)
②利益が中程度で、需給が良い銘柄(押し目で戻る可能性がある)
③利益が小さい/含み損の銘柄(過熱でも上がらないなら弱い)
この整理だけで、過熱局面での「何を守るべきか」が明確になります。段階Aでは、③を優先的に軽くします。理由は単純で、相場が強いのに伸びない銘柄は、地合い悪化で最初に崩れます。
段階B:120超えが継続(過熱の定着)
ここでやるべきは分割手仕舞いです。「天井を当てる」ではなく「利益の確保を進める」。例えば、スイングの現物ポジションなら以下のような設計が実用的です。
例:100万円で3銘柄を保有している場合
・騰落レシオが120を超えたら:全体の10〜20%を利確(まず“現金クッション”を作る)
・125〜130で推移し、陰線が増える/出来高が鈍るなら:さらに10〜20%利確
・130超え+リーダー銘柄が崩れる兆候が出たら:残りも“逆指値付き”で管理
こうしておくと、もしその後さらに上がっても、ポジションは残っているので取り逃しになりません。逆に急落しても、現金クッションがあるので心理的に耐えやすく、次の押し目に動けます。
段階C:120超え+“反転の兆候”が出る(過熱の終盤)
ここが最重要です。騰落レシオが高いだけでは売りません。過熱が終わりに向かう兆候を見ます。初心者が確認しやすい兆候は次の4つです。
(1)指数は高値更新なのに、値上がり銘柄数が減る(ブレッドの悪化)
(2)上昇していた主役セクターが急に弱くなる(物色のバトンタッチ失敗)
(3)出来高が増えないまま上がる(“買い疲れ”)または急増して長い上ヒゲが出る(分配)
(4)日中の押し目が浅かったのに、押し目が深くなり戻りが鈍る(値動きの質が変わる)
段階Cでは、残りポジションの扱いを「放置」から「管理」へ切り替えます。具体的には、直近安値の少し下に逆指値、もしくは5日移動平均線割れで縮小など、価格に紐づくルールにします。
“具体例”で理解する:天井になりやすい120超え、ならない120超え
ケース1:天井になりやすいパターン(分配型)
たとえば、日経平均が連日上昇し、ニュースは強気、騰落レシオは125。ところが、個別を見ると「寄り天」が増え、後場にかけて売りが出る。出来高は増えるが、ローソク足は上ヒゲが長い。これは上で買って下で投げる人が増え、強い手が売り抜けている可能性があります。
この局面での手順は明快です。“売る理由”が揃った銘柄から切る。具体的には、①当日高値からの下落率が大きい、②出来高が突出、③板が薄く下げが速い—こういう銘柄は、急落時に逃げ遅れやすいので優先的に縮小します。
ケース2:天井になりにくいパターン(上昇持続型)
一方で、騰落レシオが130近いのに、押し目が浅く、下げてもすぐ買い戻される。主役セクターが明確で、決算や業績修正など“材料”が連続している。こういう局面は過熱でも上がり続けることがあります。
この場合、全売却は機会損失になりやすい。だから、段階Bの分割利確に留め、残りはトレーリングストップ(上昇に合わせて逆指値を切り上げる)で対応します。過熱局面は「利益を伸ばす」より「利益を守る」が主目的なので、上昇を追うより、守りの仕組みを優先します。
騰落レシオを“個別銘柄の売買”に落とし込むコツ
騰落レシオは市場全体の指標なので、「個別の売買にどう使うの?」が一番の疑問になるはずです。結論は、個別のエントリーではなく、ポジションサイズと決済の設計に使うのが強いです。
ルール1:新規エントリーは“条件を上げる”
騰落レシオ120超えの環境では、飛び乗りは負けやすい。理由は、同じ材料でも「すでに買われた後」になりやすいからです。だから新規買いをするなら、条件を上げます。例えば次のように。
・押し目買いに限定(前日比の高値追いは禁止)
・支持線(前回高値、5日線、VWAPなど)まで引き付ける
・引き付けた後に“反発確認”してから入る(即成行で突っ込まない)
過熱局面で重要なのは、エントリーの上手さより、損切りが浅く済む場所で入ることです。これができれば、もし相場全体が反転しても損失を限定できます。
ルール2:リーダー銘柄を“監視銘柄”にする
相場の天井は、まず主役銘柄から崩れます。あなたが触っている銘柄が何セクターでも、その局面の“主役”を1〜3銘柄決めて監視してください。例えば半導体が主役なら大型の代表銘柄、銀行が主役ならメガバンク、AIなら代表的な人気銘柄、という具合です。
騰落レシオが高いときに、主役銘柄が「高値更新できない」「寄り付きから売られる」「戻りで売られる」になったら、それは段階Cのシグナルです。自分の銘柄が強く見えても、全体が崩れると個別は逃げ場を失うので、早めに縮小判断ができます。
“逆張りスキャル”に使うなら:やっていい逆張り、やってはいけない逆張り
騰落レシオ120超えは逆張りの誘惑が強いですが、初心者はここで痛い目を見がちです。逆張りは、「過熱」ではなく「反転」を狙うものだからです。
やってはいけない逆張り
・騰落レシオが120を超えた瞬間にショートする
・上がっている銘柄を、理由なく“高いから”売る
・損切り位置を決めず、踏まれてナンピンする
これは「予言ゲーム」です。勝てません。
やっていい逆張り(条件付き)
逆張りをするなら、条件を極端に厳しくします。例えば指数や先物の短期売買なら、次の3点セットが揃ってから。
(1)騰落レシオが高い(背景)
(2)価格が“伸び切った形”になる(例:連続陽線の後に長い上ヒゲ、寄り天、窓開け後の失速)
(3)反転の初動が出る(例:直近安値割れ、VWAP割れから戻れない、出来高を伴う陰線)
この3点が揃って初めて「逆張りの期待値」が出ます。さらに、損切りは必須です。たとえば先物なら“直近高値を超えたら撤退”のように、形に紐づけます。過熱相場は踏み上げが速いので、損切りを迷う時間がありません。
チェックリスト:騰落レシオ120超えで“手仕舞い判断”を固める10項目
最後に、毎回同じ手順で判断できるように、チェックリストを提示します。これを使えば「今日は売るべきか?」を感情ではなく、条件で決められます。
【ブレッド(市場の広がり)】
1. 騰落レシオは120超えか、何日続いているか
2. 値上がり銘柄数は減っていないか(高値更新中でも内部が弱い兆候)
3. 小型株まで買われているか、それとも主役だけか
【価格行動(指数・主役銘柄)】
4. 主役銘柄が高値更新できているか、寄り天が増えていないか
5. 押し目の深さは変わったか(以前より深くなって戻りが鈍いか)
6. ギャップアップ後に失速していないか(窓開けの“買い疲れ”)
【出来高・ボラティリティ】
7. 出来高が鈍る上昇(買い枯れ)か、急増の上ヒゲ(分配)か
8. 急に日中の値幅が広がっていないか(不安定化)
【自分のポジション】
9. 利益が大きい銘柄ほど、逆指値が入っているか(守りが薄いほど危険)
10. 現金クッションはあるか(急落後の押し目に動ける余力)
まとめ:騰落レシオ120超えは“売買のスイッチ”ではなく“利益防衛の開始合図”
騰落レシオ120超えを、天井予言の道具にすると失敗します。正しい使い方は、利益を守る体制を作ることです。段階Aで弱い銘柄を減らし、段階Bで分割利確して現金を増やし、段階Cで反転兆候が出たらストップ管理を強化する。
この流れをルール化すれば、相場がさらに上がっても取り逃しを減らせますし、急落しても利益を残したまま次のチャンスに移れます。勝ち続ける人は、当てる人ではなく、守る仕組みを持っている人です。
発展:あなたの銘柄で“再現可能”にするための観測ポイント
ここからは、同じ「騰落レシオ120超え」でも結果が変わる理由を、もう一段具体的にします。ポイントは(A)相場の主役が誰か、(B)資金の出入りがどこで起きているか、(C)売りが出たときの戻りの速さの3つです。
(A)主役の特定:セクターETFではなく“板が厚い代表銘柄”で見る
ニュースは「半導体が強い」「銀行が強い」のように括りますが、実際に相場を引っ張るのは“象徴”です。日本株なら、セクターの代表的な大型株が主役になりやすく、先物・指数に影響を与えます。ここで見るべきは、決算や材料の良し悪しだけではありません。
観測するのは次の3点です。
・寄り付きで買いが入るか(寄りから売られるなら資金が抜け始め)
・前日高値更新が続くか(更新できないなら需給が変化)
・後場の戻りが強いか(押された後に戻れないなら段階C)
主役銘柄が崩れると、騰落レシオが高い“熱い相場”ほど、利確の連鎖が速くなります。あなたが触っているのが小型株でも、主役の挙動は必ず影響します。
(B)資金の出入り:ランキングの“顔ぶれ”が変わったら注意
過熱局面の終盤では、値上がり率ランキングの上位が入れ替わります。前半は「材料+業績」の銘柄が強いのに、終盤は「テーマ性だけの銘柄」「低位株」「仕手っぽい銘柄」が目立ち始める。これは市場心理が“行き過ぎ”に向かっている典型です。
具体的な見方を示します。
・上位が大型・中型の好材料中心:まだ健全な資金流入の可能性
・上位が低位株の急騰中心:余剰資金が“軽い玉”へ移動し始めているサイン
・上位が連日ストップ高で占められる:需給が極端、反転すると速い
この「顔ぶれの変化」と騰落レシオ120超えが重なると、段階Cが近いと判断しやすくなります。
(C)売りが出たときの戻り:リバウンドの質で“まだ続くか”が分かる
相場が強い間は、下げてもすぐ戻ります。ところが過熱の終盤になると、下げた後の戻りが“同じ日”に起きなくなります。これが一番分かりやすい変化です。
初心者向けに、分足での見分け方を具体化します。
・強い局面:下げてもVWAP付近で止まり、買い戻しで引けが強い
・弱くなった局面:VWAPを割ると、戻してもVWAPで跳ね返され、引けが弱い
騰落レシオが高い時は、下げ始めると「利益がある人」が一斉に降りてくるので、VWAP割れが継続すると動きが加速します。ここで“まだ強い”と思ってしまうと、逃げ遅れの原因になります。
初心者向け:分割手仕舞いを“注文”として実装する
手仕舞いは判断より、実装が難しい。場中に迷うと、結局何もしないか、焦って成行で投げるかの二択になります。なので、注文に落としてしまうのが実用的です。
方法1:利確指値をあらかじめ置く(上がったら自動で減る)
例えば、あなたがある銘柄を100株持っていて、含み益が出ているとします。騰落レシオが120を超えたら、次のように“段階的”に指値を置きます。
・現値より+2%に30株利確指値
・現値より+4%に30株利確指値
・残り40株は保有しつつ、直近安値の少し下に逆指値
こうしておくと、相場がさらに上がった場合に自然にポジションが軽くなり、急落しても残りは逆指値で守れます。利確は「当てる行為」ではなく「仕組み」です。
方法2:トレーリングストップで“伸びるなら付いていく”を自動化
トレーリングストップは、上昇に合わせて逆指値を切り上げる手法です。証券会社の機能として用意されている場合もありますし、無い場合でも手動で更新できます。初心者にありがちな「もう少しで戻るはず」が起きにくく、利益を守りやすい。
具体例:
・高値から-3%で逆指値(ボラが大きい銘柄は-5%など)
・高値更新ごとに逆指値を更新して“利益の最低ライン”を切り上げる
騰落レシオ120超えの局面では、利益確定の波が一気に来るので、逆指値が入っているだけで生存率が上がります。
“ヘッジ”という選択肢:売らずに守る(特にスイング向き)
全売却が苦手なら、ヘッジで守る方法があります。現物を持ったまま、指数の下落に備えるイメージです。ここでは初心者でも理解しやすい概念だけ押さえます。
・現物の一部を利確して現金比率を上げる(最も簡単で強いヘッジ)
・指数が急落しそうなら、少額で逆方向の商品(インバース系)を使い“下げたら相殺”させる
重要なのは、ヘッジは“利益を増やす”ためではなく、“被害を小さくする”ためのコストだということです。騰落レシオ120超えの局面で、含み益が大きいなら、守りにコストを払う価値は十分あります。
データで腹落ちさせる:自分で簡易検証する手順
「本当に120超えは効くの?」という疑問は健全です。相場は環境で効き方が変わります。だから、自分の時間軸(デイトレなのかスイングなのか)で簡易検証すると、納得感が上がります。
手順(難しいコード不要)
1)騰落レシオ(25日)の日次データを用意する(多くはWebで確認可能)
2)「120を超えた日」をチェックし、その後5営業日・10営業日・20営業日の指数リターンを記録する
3)同じように「80を下回った日」も記録し、比較する
この“雑な検証”でも、過熱後は上下どちらにも振れやすい、あるいは上昇が続いても途中で大きめの調整が入りやすい、といった特徴が見えてきます。検証で得た特徴を、あなたの分割手仕舞いルールに反映します。
よくある質問:120を超えたら、どれくらいで反転する?
ここは断言できません。環境次第です。ただ、現実的な答えは「反転までの時間を当てるより、反転したときに被害を小さくする」のが勝ち筋です。
そのために必要なのが、この記事で説明した段階モデル(A〜C)と、分割利確・逆指値・主役監視です。これらは“未来予測”に依存しないので、再現性があります。
最後に:騰落レシオは“相場の熱”を測る道具、あなたのルールは“行動”を固定する道具
騰落レシオ120超えは、相場が「勝ちやすい」局面である一方、「崩れたときの速度が速い」局面でもあります。だからこそ、あなたの売買を救うのは、上手い予言ではなく、事前に決めた手仕舞いルールです。
今日からできる最小ステップはこれだけです。
・騰落レシオが120を超えたら、弱い銘柄を減らす
・10〜20%だけ利確して現金クッションを作る
・主役銘柄を監視し、崩れたら逆指値で守る
この3つができれば、過熱局面での“取り逃し”と“丸被り”の両方が減ります。相場は当てに行くほどブレますが、ルールで守るほど安定します。


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