洋上風力発電の本格化で狙う:海上土木・風車部材サプライチェーンの「特需」と勝ち筋

日本株

洋上風力は「再生可能エネルギーだから伸びる」という雑な話では儲かりません。儲けるために必要なのは、事業の時間軸(いつ発注が出るか)と、バリューチェーンの収益構造(誰がどこで利益を取るか)を分解して、銘柄ごとに“勝ちパターン”を当てにいくことです。

この記事では、洋上風力の本格化局面で起こりやすい「特需」を、海上土木・風車部材を中心に、初心者でも追える粒度まで落として解説します。読み終わった時点で、ニュースを見た瞬間に「この材料はどの企業の何の数字に効くか」を即座に連想できる状態を目標にします。

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洋上風力は「4つのフェーズ」で株価材料が変わる

洋上風力は、建設が始まってから儲かるのではありません。実際には、入札→最終投資決定(FID)→建設→運転・保守(O&M)のそれぞれで、恩恵を受ける企業が入れ替わります。投資家はこの“席替え”を取りにいきます。

1)入札(開発権の獲得):株価は「落札できるか」「条件が採算に合うか」で動きます。この段階は売上よりも、受注確度採算の見立てが重要です。

2)FID(資金調達と契約の確定):ここで初めて、発注側が“本気の発注”を出します。風車、基礎、海上工事、海底ケーブル、変電設備、港湾整備などの契約が締まり、受注残(バックログ)が積み上がります。

3)建設(EPC・据付):売上計上が見え始める局面。工期遅延やコスト超過が出ると、利益率が崩れます。ここは“強い会社は淡々と稼ぎ、弱い会社は燃える”フェーズです。

4)運転・保守(O&M):20年以上続く長期収益。派手さはない一方で、ストック型の利益として評価されやすい。建設期よりも、利益のブレが小さくなります。

まず押さえるべき「洋上風力サプライチェーン」全体像

“洋上風力関連”と言っても、儲けの源泉はバラバラです。ここを混同すると、同じニュースでも逆に損します。全体像を以下のブロックに分けて覚えてください。

A:風車本体(ナセル・ブレード・タワー):グローバル寡占が強い領域。日本企業は部材・補機で関与しやすい。

B:基礎(モノパイル、ジャケット、浮体式):海上土木・重工・鉄鋼が関わる“重量級”。価格も大きい。

C:海上工事(打設、据付、浚渫、作業船、港湾):工期と稼働率が利益を決める。船と人がボトルネックになりやすい。

D:送電・系統(海底ケーブル、陸上ケーブル、変電所、連系設備):電力インフラの世界。受注単価は大きいが、工事難度も高い

E:運転・保守(点検、補修、部品交換、遠隔監視):ストック型。故障率や稼働率がKPI。

「海上土木」の儲け方:工期ではなく“稼働率”で勝負が決まる

海上土木は、見た目の派手さよりも“地味な運用力”で利益が出ます。理由は単純で、現場の原価の中心が作業船と人員だからです。船が動かない日は、その日の売上がゼロでもコストが消えます。

投資家が見るべきポイントは次の3つです。

①専用船(SEP船、ケーブル敷設船等)の確保力:船は世界的に取り合いになりやすく、確保できないと工期がズレます。工期がズレると、発電開始が遅れて発注側が困るだけでなく、施工側も違約金・追加コストが出ます。

②悪天候・海象の耐性:日本近海は台風、冬季の荒天、うねり、潮流など、作業停止要因が多い。ここで重要なのは「台風が来たら止まる」ではなく、止まる前提での工程設計と、止まった後のリカバリー速度です。

③地盤・海底地形の読解力:モノパイルが刺さらない、想定より岩盤が浅い、海底に障害物がある——こういう“想定外”が利益を食います。事前調査と設計能力がある企業ほど、利益率が安定します。

風車部材の「特需」はどこで起きるのか

風車は巨大な複合体で、部材は膨大です。特需が起きやすいのは、重量が大きく、輸送が難しく、現地調達が求められやすい部材です。ここが“国産化”の文脈とも噛み合います。

代表例を挙げると、タワー(鋼構造)、基礎構造物、港湾での大型製缶、海底ケーブル周り、変電設備などです。逆に、ブレードやナセルの中核部は、既存のグローバルサプライヤーの比率が高くなりがちです。

投資家の視点では「国内調達比率が上がる=儲かる」ではなく、国内調達で誰が価格決定力を持つかに注目してください。価格決定力が弱いと、受注が増えても利益が残りません。

案件が増えるほど重要になる「港湾」と「物流」というボトルネック

洋上風力は、発電そのものよりも“物流事業”に近い側面があります。風車部材は超大型で、港での仮置き・組立・積出が必要です。ここが詰まると、建設全体が詰まります。

投資判断の実務では、港湾関連のニュースが出たときに「どの工事が増えるか」を分解します。例えば、岸壁の補強、クレーン導入、ヤード整備、浚渫、道路改良など。これらは建設会社やプラント、物流、設備投資の領域に波及します。

そして重要なのは、港湾整備が進むと“案件の同時並行数”が増える点です。同時並行数が増えると、海上工事会社や作業船保有企業の稼働率が上がり、利益が伸びやすくなります。

系統接続(送電)が遅れると「建設が進んでも稼げない」

洋上風力でありがちな落とし穴が、発電所はできたが送電が間に合わないケースです。系統接続は、海底ケーブル・陸上ケーブル・変電所・連系設備などの集合体で、許認可や用地、工事が絡みます。

投資家はここで2つの観点を持つべきです。ひとつは、送電・変電の設備投資が増えること自体が、電力インフラ企業の受注増につながるという点。もうひとつは、送電遅延が起きると、発電事業者のキャッシュフローが遅れ、結果として次の案件のFIDが遅れるという“連鎖”が起きる点です。

つまり、送電問題は「誰の追い風か」と同時に「市場全体のテンポを遅くする逆風」でもあります。ここを一面的に見ないことが重要です。

採算を決める3変数:金利・為替・建設コスト

洋上風力は、初期投資が巨大で、回収が長いビジネスです。だから採算は「売電価格」だけではなく、資本コスト建設コストで決まります。ここを理解すると、ニュースの見え方が変わります。

金利:金利が上がると、プロジェクトファイナンスのコストが増え、入札で提示できる売電単価が上がります。しかし制度上の上限や競争の圧力があると、金利上昇分を転嫁できず、採算が悪化します。結果として、案件の延期や入札不調が起きやすい。

為替:風車や主要部材を外貨で買う比率が高い場合、円安はコスト増。逆に国内で調達できる領域は相対的に有利になります。ここが“国産化”が話題になる実利です。

建設コスト:資材(鋼材、銅、レジンなど)と工事費(人件費、船舶費)が主因。特に海上工事は“船が高い”ので、世界的な案件増で船賃が上がると、日本の案件も影響を受けます。

初心者が混乱しやすい用語:FID、EPC、O&M、LCOE

ここから先のニュースを読み解くために、最低限の用語を整理します。

FID(Final Investment Decision):最終投資決定。これが出た案件は「資金が付いた」状態で、発注が本格化します。株価材料としては、受注の確度が一段上がるシグナルです。

EPC:設計(Engineering)・調達(Procurement)・建設(Construction)の一括。EPCを取れる企業は売上規模が大きい一方、原価管理が甘いと損失も大きい。

O&M:運転・保守。点検や修繕で長期収益を得る。建設の一発花火ではなく、安定利益が評価されやすい。

LCOE:均等化発電原価。ざっくり言うと「生涯コスト÷生涯発電量」。風車が大型化して発電量が増えるほど、同じコストでもLCOEは下がり、入札が強くなります。

“特需”はいつ株価に織り込まれるのか:イベントカレンダーで先回りする

洋上風力の材料は、発注が出てから買うと遅いことが多いです。なぜなら市場は「受注が出る前」から期待で動くからです。初心者がやりがちな失敗は、ニュースで“建設開始”を見て買い、すでに織り込み済みで伸びないことです。

狙うべきは次のタイミングです。

①公募・入札のルール発表:制度の変更は、勝ち組の顔ぶれを変えます。特に、評価項目(価格以外の要件)が変わると、サプライチェーンの国内化や港湾整備が効きやすくなります。

②落札者の決定:落札した企業グループの関連企業が動きやすい。ただし、落札単価が低すぎる場合は“勝って負ける”リスクがあるので要注意です。

③FID:受注が具体化し、受注残が増える。建設・機械・電線・重電の「数字」が見え始める。

④主要契約の公表(風車、基礎、工事、ケーブル):ここで銘柄が分岐します。同じ“関連”でも、契約を取れないと置いていかれます。

⑤起工・据付開始:ニュースは派手ですが、株価はすでに上がった後のことが多い。ここで買うなら、遅延やコスト増のリスク管理が必須です。

決算で確認するKPI:売上より「受注」と「利益率」を追う

洋上風力テーマで重要なのは、売上の増加よりも「今後の売上が確定しているか」です。だから、決算では次の順番で見ます。

1)受注高・受注残:建設・プラント・インフラ系は受注産業です。洋上風力が伸びるなら、まず受注残に出ます。四半期の売上が弱くても、受注残が積めていれば“先行指標”として強い。

2)セグメント利益率:売上が増えても利益率が落ちているなら、低採算受注の可能性があります。特にEPCは、赤字化すると損失が大きいので、利益率の変化を最優先で追います。

3)設備投資・船舶投資:海上工事は船がボトルネック。新造・改造の投資が進むと、将来の稼働率が上がる一方、減価償却の負担も増えます。投資の回収期間(どれくらいの稼働率前提か)を読み解くと、過大投資かどうかを判断できます。

具体例:架空プロジェクトで学ぶ「利益が消えるポイント」

理解を深めるため、架空の洋上風力プロジェクトを想定します。例えば、総投資1,500億円、建設期間3年、運転期間20年。ここで重要なのは、発電量が多少増えるより、建設コストが数%ズレる方が採算に効くことです。

仮に建設コストが5%上振れすると、75億円の追加。これを取り戻すには、稼働率の改善や売電単価の上振れが必要ですが、制度の下では簡単ではありません。だから発注側は、施工側に“固定価格でやれ”と言い、施工側は“リスク分を上乗せしたい”と言う。ここで交渉力が弱い企業は、受注しても利益が出ません。

投資家としては、価格交渉力(技術・実績・船・人材)を持つ企業かを見抜くことが本質です。

日本で伸びやすいのは「浮体式」と「更新需要」まで見た企業

日本の海域は水深が深い場所が多く、将来的に浮体式(浮かべるタイプ)が重要になります。浮体式は技術難度が上がる一方で、海上土木・係留・素材・保守に新しい需要が生まれます。

さらに、風車は永遠に回りません。20~25年で更新(リパワリング)が必要になります。つまり、洋上風力は一度建てて終わりではなく、更新需要が“第二の波”として来ます。短期のテーマ投資ではなく、中期で狙うなら、O&Mや更新工事で稼げる企業に目線を置くと、価格変動に強くなります。

銘柄選びの実戦チェックリスト:この7項目でふるいにかける

最後に、初心者が“関連っぽい銘柄”を掴んでしまわないためのチェックリストを置きます。これを満たすほど、テーマが追い風になったときに利益へつながりやすいです。

①どのフェーズで売上が立つかが明確(入札期待だけなのか、FID後の受注があるのか)

②受注残が増える構造(単発ではなく、継続受注が見込めるか)

③利益率が崩れにくい(固定価格契約のリスク管理、原価見積の精度)

④ボトルネック資源を持つ(船、港湾拠点、特殊工法、認証、人材)

⑤為替・金利の感応度が説明されている(外貨コスト比率、ヘッジ方針)

⑥事故・遅延時の損失吸収力(財務、保険、再発防止体制)

⑦O&Mや更新需要までの視野(建設だけで終わらない収益線がある)

まとめ:洋上風力は「需給テーマ」ではなく「分解して当てる」テーマ

洋上風力の本格化は、確かに巨大な投資テーマです。しかし、全員が儲かるわけではありません。儲かるのは、サプライチェーンの中でボトルネックを握り、価格決定力を持ち、工程と原価を制御できる企業です。

ニュースを見たら、「それは入札の話か、FIDの話か、工事の話か、O&Mの話か」をまず分類する。次に「その話はA~Eのどのブロックに効くか」を当てる。最後に「その企業は受注残と利益率にどう反映するか」を決算で確認する。この手順を徹底すると、洋上風力は“雰囲気投資”から“再現性のある投資判断”に変わります。

リスクマップ:勝ち筋とセットで「負け筋」を先に潰す

テーマ株で負けるパターンはだいたい決まっています。洋上風力で多いのは、(1)受注は取ったが赤字、(2)遅延で利益が飛ぶ、(3)資金調達環境が悪化して案件が止まるの3つです。材料が出たときに盛り上がるほど、リスクの芽を軽視しがちなので、先にチェック項目として固定します。

(1)低採算受注:入札競争が激しくなるほど、発注側は価格を叩きます。施工側が価格に合わせると、利益率が薄いまま大型案件を抱えます。決算の注記で「一部案件で採算悪化」「工事損失引当金」を見たら、テーマ追い風でも評価が反転しやすいので警戒が必要です。

(2)遅延・事故:海上工事は遅延が起きやすい。特に、作業船の故障、悪天候、地盤想定外、資材遅配は典型です。ここで重要なのは「遅延が起きたか」ではなく、遅延リスクを契約上どちらが負担するかです。固定価格で施工側が負担する契約だと、遅延=利益が消える構造になります。

(3)金利・為替でFIDが止まる:FIDが出ない限り発注は本格化しません。入札結果だけで株価が上がっているときは、“FIDが出るまでがリスク区間”です。市場金利が上がる局面では、入札は進んでもFIDが遅れることがあり、期待先行の銘柄ほど調整が深くなります。

情報の取り方:ニュースより「発注の一次情報」を追う

洋上風力は、一般ニュースよりも一次情報に価値があります。投資判断に効くのは、次のような情報です。

発注・契約:企業の適時開示、決算説明資料、受注リリース。ここで“契約金額”“工期”“対象範囲(基礎のみ/据付含む/ケーブル含む)”を読み、売上計上のタイミングを想定します。

許認可・港湾:自治体や港湾管理者の計画、整備事業の公表。港湾の整備が進むと案件の同時並行が可能になり、施工・物流の稼働率が上がります。

作業船の動き:造船・改造のリリース、船舶の稼働計画。船が足りない局面では、船を持つ企業が価格決定力を持ちやすい。

資材価格:鋼材、銅、樹脂など。コスト高が続く局面では、価格転嫁できる企業とできない企業で利益が割れます。

短期トレードのコツ:材料の“強さ”を3段階で判定する

洋上風力はテーマが大きいぶん、思惑も多い。短期で取りにいくなら、材料の強さを3段階に分けるとミスが減ります。

レベル1(期待):制度見直し、方針表明、検討開始。ここは“雰囲気”が乗りやすい反面、反転も早い。ポジションは軽めが基本です。

レベル2(確度上昇):落札、基本合意、FID示唆。ここから受注の現実味が増えますが、まだ契約が固まっていないことも多い。決算で受注残に出てくるかをチェックします。

レベル3(数字):具体的な受注金額、工期、対象範囲の開示。ここが最も強い。ただし“良いニュース”は株価が先に動いている場合があるので、織り込み具合(直近の上昇率と出来高)を見てから入る方が合理的です。

中期のポートフォリオ設計:1銘柄集中より「チェーン分散」が効く

初心者がやりがちなのは、洋上風力=1銘柄に集中することです。洋上風力は、工程・天候・契約で利益がブレるので、バリューチェーンを分散して持つ方が再現性が上がります。

例えば、海上工事(稼働率勝負)+電力インフラ(送電投資)+O&M(ストック収益)というように、収益ドライバーが違うものを組み合わせる。こうすると、建設期に遅延が出ても、送電投資や保守需要で下支えが入りやすくなります。

また、同じ“建設”でも、EPC一括でリスクを取りやすい企業と、部材供給で比較的リスクが限定される企業では、リスク・リターンの形が違います。自分のリスク許容度に合わせて、受注額の大きさよりも利益のブレの小ささを優先するのが、長く勝ちやすい設計です。

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