ホテルREIT:インバウンド回復で伸びる宿泊単価を投資リターンに変える見方

J-REIT

ホテルREIT(ホテル特化型、またはホテル比率が高いJ-REIT)は、ホテルの「宿泊単価(ADR)」と「稼働率(Occupancy)」が上がる局面で、収益が一気に伸びやすい資産クラスです。近年のインバウンド回復により、都心・観光地の宿泊単価が上がり、ホテル収益のレバレッジが効いています。その一方で、ホテルはオフィスや住宅と違い、景気・為替・感染症・災害などに対して業績が振れやすく、投資家が“何を見て、どこで判断を誤るか”がはっきり出る分野でもあります。

この記事では、ホテルREITで狙えるリターンの源泉を、数字の読み方と実際の投資判断に落とし込みます。一般論ではなく、売買のタイミングや銘柄選定で差が付く「チェック項目」と「落とし穴」を中心に解説します。

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  1. ホテルREITで儲かる局面と、儲からない局面
    1. 1)回復初期:稼働率の戻りで一気に改善
    2. 2)好況期:ADR上昇(値上げ)が主役になる
    3. 3)過熱期:供給増・人件費高・金利上昇で頭打ち
  2. ホテル業績の基本指標:ADR・稼働率・RevPARを“投資用”に読み替える
    1. ADR:値上げの持続性を見る
    2. 稼働率:回復の初動と景気後退のサインに敏感
    3. RevPAR:実質的な“稼ぐ力”の総合点
  3. ホテルREITの“賃料形態”がリターンを決める
    1. 固定賃料型:安定だが上振れが限定的
    2. 変動賃料型(GOP連動など):上振れが大きいが振れも大きい
    3. ミックス型:局面対応のバランスを取れる
  4. “オペレーター(運営会社)リスク”を見落とすと事故る
    1. チェック1:運営会社の財務体質とスポンサー支援
    2. チェック2:運営ブランドと集客チャネル
    3. チェック3:コスト構造(人件費・清掃・光熱費)の吸収力
  5. 金利上昇局面のホテルREIT:分配金が増えても価格が上がらない理由
    1. 見るべきポイント:LTV、金利固定比率、借入満期分散
    2. “分配金利回り”の見方:高い=割安とは限らない
  6. NAVと鑑定評価:ホテルは“評価の遅れ”がアルファになる
    1. どうやってアルファを取るか:鑑定の前提を読む
  7. 供給サイクル:ホテル開業ラッシュは“遅れて効く”
    1. 投資家の実務:開業予定の把握と「エリア分散」
  8. 具体的な銘柄選定フレーム:5つのチェックリスト
    1. チェック1:賃料の上振れ構造(変動比率・算定式)
    2. チェック2:物件のポートフォリオ(都市/リゾート、価格帯、国別需要)
    3. チェック3:財務(LTV、固定金利比率、満期分散)
    4. チェック4:含み益と物件回転(売却益が出せるか)
    5. チェック5:スポンサーと成長パイプライン
  9. 売買タイミングの考え方:月次データとマクロを組み合わせる
    1. エントリーの型:回復初期の「稼働率の底打ち」
    2. 利確の型:RevPAR伸びの鈍化+金利上昇の組み合わせ
  10. リスク要因とヘッジ:ホテル特有の落とし穴
    1. リスク1:需要ショック(感染症、地政学、災害)
    2. リスク2:供給ショック(開業ラッシュ)
    3. リスク3:コストショック(人件費・光熱費)
  11. 個人投資家が“勝ちやすい”運用設計
    1. コア:財務が強く、分散が効いたホテルREITを長期で保有
    2. サテライト:回復局面で変動賃料比率の高いREITを上乗せ
  12. まとめ:ホテルREITは「月次×賃料形態×金利」で勝負が決まる

ホテルREITで儲かる局面と、儲からない局面

ホテルREITの価格は、ざっくり言うと「分配金の増減見込み」と「金利(調達コスト)」で動きます。ホテルは景気循環の影響を強く受けるため、次の3局面を切り分けると判断が速くなります。

1)回復初期:稼働率の戻りで一気に改善

需要が底打ちし、稼働率が戻り始める局面です。固定費比率が高いホテルは、稼働率が上がるほど利益が跳ねやすい(オペレーティングレバレッジ)ため、REITの分配金も“加速度的に”改善しやすいのが特徴です。この局面では、まだ宿泊単価が十分に上がっていなくても、稼働率の改善だけで好転します。

2)好況期:ADR上昇(値上げ)が主役になる

稼働率が高水準に達すると、次に効いてくるのが宿泊単価(ADR)の上昇です。インバウンド比率が高いエリア(都心、主要観光地、空港アクセス)では、円安や国際線回復が追い風になりやすく、値上げが通りやすい。ADR上昇はRevPAR(1室あたり売上)を押し上げ、ホテル収益→賃料→REITの分配金へ波及します。

3)過熱期:供給増・人件費高・金利上昇で頭打ち

ホテルの開業ラッシュが続いたり、人件費・清掃費・光熱費が急騰したり、金利上昇でREITの調達コストが上がると、分配金が伸びなくなります。株価が先行して上がった後に「数字が追い付かない」状態になりやすいのがこの局面です。ここでは、楽観を織り込んだ価格で飛びつくのが一番危険です。

ホテル業績の基本指標:ADR・稼働率・RevPARを“投資用”に読み替える

ホテルのKPIは、ADR(Average Daily Rate)、稼働率、RevPAR(Revenue per Available Room)が基本です。ただし投資家が見るべきなのは「数値そのもの」よりも“変化の質”です。

ADR:値上げの持続性を見る

ADRが上がっている時、背景は2つあります。①需要が強く価格が通っている、②供給不足で価格が上がっている。前者は持続性が高いが、後者は新規供給が出てくると崩れます。投資判断では、ADR上昇が「イベント要因(万博・大型スポーツ大会など)」による一時的な波なのか、「航空便回復」「国別需要の定着」「旅行単価の構造変化」なのかを分けて考えます。

稼働率:回復の初動と景気後退のサインに敏感

稼働率は需給の温度計です。回復初期は稼働率の戻りが一番効きますが、景気後退局面では稼働率が先に落ちます。特に法人需要(出張)が弱ると、都市型ホテルの稼働率が落ちやすい。月次でチェックするなら、稼働率は「前年差」より「前月比の変曲点」を重視すると早く気づけます。

RevPAR:実質的な“稼ぐ力”の総合点

RevPARはADR×稼働率で、ホテルがどれだけ稼げているかを一本化した指標です。投資家は、RevPARの上昇が「ADR主導」なのか「稼働率主導」なのかを見るべきです。稼働率主導は回復初期に強いが、上限が近い。ADR主導は上限が読みづらく、伸びが続くと分配金増が長持ちします。

ホテルREITの“賃料形態”がリターンを決める

ホテルREITの最大のポイントは、ホテル運営利益がREITにどう流れ込むかです。ここを理解せずに「インバウンドが増える=ホテルREITが上がる」と考えると、期待外れを引きます。

固定賃料型:安定だが上振れが限定的

ホテル運営会社が固定賃料を支払う形です。景気が悪くても賃料は比較的安定しやすい一方、ADRが伸びてもREIT側の取り分が増えにくい。ディフェンシブなホテルREITを狙うなら有効ですが、上昇局面での爆発力は落ちます。

変動賃料型(GOP連動など):上振れが大きいが振れも大きい

GOP(Gross Operating Profit:営業総利益)に連動して賃料が決まるタイプです。インバウンド回復局面では、ホテルの利益が増えるほどREITの賃料も増え、分配金増に直結しやすい。反面、悪い局面では分配金が落ちます。“上昇相場で取りに行くなら変動比率の高いREIT、守りたいなら固定比率の高いREIT”という整理が基本です。

ミックス型:局面対応のバランスを取れる

固定+変動のミックスは、下振れを抑えつつ上振れも取りやすい。投資家は「変動部分の算定方法(売上連動か利益連動か)」「閾値(どこから変動が乗るか)」「オペレーターの裁量(コスト計上の自由度)」まで確認すると、表面利回りの罠を避けられます。

“オペレーター(運営会社)リスク”を見落とすと事故る

ホテルは運営が命です。立地が良くても運営が弱いと稼げません。ホテルREITは物件の価値だけでなく、運営会社の信用力・運営能力に強く依存します。

チェック1:運営会社の財務体質とスポンサー支援

賃料支払いが苦しくなると、賃料減額や契約見直しの交渉が起きます。運営会社の自己資本、借入構造、親会社の支援可能性を見ます。REITの開示資料で「主要テナント」「賃料構造」「賃料減額の履歴」が分かる場合が多いので、必ず確認します。

チェック2:運営ブランドと集客チャネル

ホテルは「ブランド」「立地」「価格帯」「販売チャネル(自社直販、OTA、旅行会社)」で収益力が変わります。同じエリアでも、海外客に強いブランド、国内需要に強いブランドで、景気変動の耐性が違います。OTA依存が高すぎると手数料負担で利益率が削られ、RevPARが伸びてもGOPが伸びないことがあります。

チェック3:コスト構造(人件費・清掃・光熱費)の吸収力

インバウンド回復期に起こりやすいのが「売上は増えるのに利益が伸びない」現象です。人手不足で賃金が上がり、清掃コストも上がる。さらに光熱費が上がると、ADRが上がっても利益が残りません。変動賃料型は利益連動なので、ここが直撃します。投資家は“売上指標”だけでなく“利益率”を見ます。

金利上昇局面のホテルREIT:分配金が増えても価格が上がらない理由

REITは借入を使って物件を保有するため、金利が上がると逆風になりがちです。ここが株式と違うところで、ホテル業績が良くても、調達コスト上昇で価格が抑えられることがあります。

見るべきポイント:LTV、金利固定比率、借入満期分散

ホテルREITを金利目線で評価するなら、①LTV(有利子負債比率)が高すぎないか、②固定金利比率が高いか、③借入の満期が短期に集中していないか、が核心です。借入更改が集中していると、ホテルの収益が良くても、利払い増で分配金が増えにくくなります。

“分配金利回り”の見方:高い=割安とは限らない

金利が上がると、REITの要求利回りも上がりやすい。分配金利回りが高く見えても、将来の分配金が落ちる見込み(賃料のピークアウト、利払い増、修繕費増)なら割安ではありません。投資家は、直近利回りより「1年後の分配金の確度」を重視します。

NAVと鑑定評価:ホテルは“評価の遅れ”がアルファになる

REIT評価の基礎はNAV(Net Asset Value)ですが、ホテルは鑑定評価が追随しにくいという特徴があります。オフィスは賃料が決まれば評価に反映されやすい一方、ホテルは運営収益が揺れ、鑑定の前提が保守的になりがちです。

どうやってアルファを取るか:鑑定の前提を読む

投資家がやるべきは、鑑定評価の“裏側”を読むことです。鑑定の収益前提(稼働率、ADR、費用率)が現状よりも保守的なら、将来の鑑定引き上げ余地があります。鑑定が上がれば、含み益が増え、増資の条件が良くなり、外部成長(物件取得)の余地が広がることがあります。

供給サイクル:ホテル開業ラッシュは“遅れて効く”

ホテルは供給が増えると、ADRが下がるか稼働率が下がります。ただし建設から開業まで時間がかかるため、需給悪化は遅れてやってきます。今のRevPARが強いからといって、2年後も強いとは限りません。

投資家の実務:開業予定の把握と「エリア分散」

都心の特定エリアに供給が集中すると、局地的に価格競争が起きます。ホテルREITは物件分散が進んでいるものもあれば、都市集中型もあります。インバウンド期待の局面でも、“供給が増えすぎるエリア”を避けるだけで、下落耐性がかなり上がります。

具体的な銘柄選定フレーム:5つのチェックリスト

ここからは、ホテルREITを実際に選ぶ時のフレームです。銘柄名を挙げなくても、投資判断はこの5つでかなり精度が上がります。

チェック1:賃料の上振れ構造(変動比率・算定式)

インバウンド回復で取りに行くなら、変動賃料の比率が高く、算定式が“売上”ではなく“利益”に連動しすぎていないかを見ます。利益連動はコスト増の影響を受けやすいので、売上連動や段階式の方が上振れが出やすいケースがあります。

チェック2:物件のポートフォリオ(都市/リゾート、価格帯、国別需要)

都市型は法人需要の影響を受け、リゾート型は季節性が強い。価格帯も、ラグジュアリーはADRが上がりやすいが景気後退で落ちやすい。ビジネスは安定しやすいが上昇余地が小さい。投資家は「どの需要を取りに行っているのか」を理解してから買います。

チェック3:財務(LTV、固定金利比率、満期分散)

ホテルは景気敏感なので、財務が弱いと下落局面で増資や資産売却を強いられ、価格が大きく崩れることがあります。回復局面でも、借入コストが上がると分配金が増えにくくなるため、財務は“守り”ではなく“攻めの条件”です。

チェック4:含み益と物件回転(売却益が出せるか)

ホテルREITは物件の入替(売却→取得)で収益を最適化できます。市場が好調な時に高く売れれば、売却益が分配金に乗る場合もあります。含み益があるか、売却しやすい物件か(立地・築年・ブランド)を見ます。

チェック5:スポンサーと成長パイプライン

スポンサーが強いと、良い物件を優先的に取得できる可能性があります。外部成長ができるREITは、分配金成長の持続性が高い。一方、スポンサー依存が強すぎると条件が不利になる場合もあるので、過去の取得価格や取引透明性も確認します。

売買タイミングの考え方:月次データとマクロを組み合わせる

ホテルREITは、四半期決算だけ見ていると遅いです。月次で見える指標(稼働率・ADR・RevPAR)と、マクロ(為替、航空便、金利)を組み合わせると、売買タイミングの精度が上がります。

エントリーの型:回復初期の「稼働率の底打ち」

最も取りやすいのは、稼働率が底打ちして、月次の前月比が改善し始める局面です。市場は悲観を織り込んでいることが多く、分配金予想が保守的なまま価格が上がり始めるため、リスクに対してリターンが取りやすい。

利確の型:RevPAR伸びの鈍化+金利上昇の組み合わせ

ADRが高水準に達すると、伸びが鈍化しやすい。そこに金利上昇が重なると、REIT価格は上がりにくくなります。ホテル指標が強いのに株価が反応しない時は、金利が理由であることが多い。逆に金利が落ち着けば、再評価が起きます。

リスク要因とヘッジ:ホテル特有の落とし穴

ホテルREITには、オフィスREITや住宅REITと違うリスクがあります。あらかじめ“危険なパターン”を知っておくと、被弾率が下がります。

リスク1:需要ショック(感染症、地政学、災害)

ホテルは人の移動が止まると直撃します。対策としては、ポートフォリオが都市とリゾートで分散されているか、国内需要も取れる価格帯があるか、固定賃料比率がどの程度か、を確認します。

リスク2:供給ショック(開業ラッシュ)

供給は遅れて効くため、先読みが必要です。投資家は“今の強さ”に酔わず、2年後の開業計画を意識します。エリア集中のREITは、需給悪化が局地的でも大きく影響します。

リスク3:コストショック(人件費・光熱費)

利益が伸びないタイプの回復(売上だけ伸びる)は危険です。変動賃料型ほど影響が出ます。決算資料のホテル運営利益率、運営会社のコスト施策、リノベによる省人化などもチェックします。

個人投資家が“勝ちやすい”運用設計

ホテルREITは短期で値幅を狙うこともできますが、個人投資家が再現性を出しやすいのは「配当(分配金)を受け取りつつ、局面で比率を動かす」運用です。

コア:財務が強く、分散が効いたホテルREITを長期で保有

コアは、LTVが過度に高くなく、固定金利比率が高い、満期分散ができている、物件分散があるREITが向きます。大崩れしにくく、分配金も読みやすい。

サテライト:回復局面で変動賃料比率の高いREITを上乗せ

稼働率とADRが同時に上がる局面では、変動賃料型の上振れが効きます。月次指標が強い時に比率を上げ、鈍化し始めたら落とす。これだけでもリターン特性は改善します。

まとめ:ホテルREITは「月次×賃料形態×金利」で勝負が決まる

ホテルREITは、インバウンド回復という分かりやすいテーマがある一方で、賃料形態と金利を見誤ると簡単に外します。投資家が押さえるべきは次の3点です。

第一に、ホテル指標(稼働率・ADR・RevPAR)は“変化の質”を読む。第二に、賃料形態(固定・変動・ミックス)が分配金の上振れと下振れを決める。第三に、金利(借入コスト)がREIT価格の天井と床を作る。ここをセットで見れば、ホテルREITは単なるテーマ株ではなく、再現性のある投資対象になります。

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