本稿は、個人投資家が再現可能な「リスクパリティ(Risk Parity)」の完全実践書です。結論はシンプルです。価格で均等に投資するのではなく、「リスク(変動の大きさ)」が各資産で同程度になるように配分し、目標リスクに合わせて全体をスケーリング(必要ならレバレッジ)する。これだけで、同じリスク水準に対して取得できる期待リターンの効率(リスク当たりリターン)を押し上げ、単一資産や価格均等配分の脆弱性を減らせます。
読者が最短で実装に移れるよう、定義→計算→ポートフォリオ設計→リバランス→リスク管理→運用の落とし穴まで、余計な前置きを排し、具体例・数式・手順で徹底解説します。なお本稿は学術的厳密性よりも実務で回ることを優先し、数理は「使える最小限」にまとめています。
- 1. リスクパリティとは何か
- 2. 4資産の具体例:設計→配分→スケーリング
- 3. 推定の実務:ボラ・相関・共分散行列
- 4. ウェイトの求め方:3つの実装レベル
- 5. レバレッジの扱い:安全域の作り方
- 6. リバランス:帯域・頻度・コストの三点同時最適
- 7. パフォーマンスの直感:60/40と何が違うか
- 8. 実装ステップ:今日から動かすチェックリスト
- 9. 計算例:家計1000万円・目標ボラ10%
- 10. 日本の個人投資家ならではの注意点
- 11. よくある失敗と対策
- 12. 拡張:5本目に「トレンド(Managed Futures)」を足す
- 13. まとめ:価格ではなく「リスク」を配る
- 付録A:逆ボラ比からRC均等への移行メモ
- 付録B:推定の数値パラメータ例
- 付録C:家計と両立させる資金管理
- 付録D:RCの直感を掴む簡易シミュレーション(手計算)
- 付録E:簡易共分散からRCを概算するワークド例
- 付録F:月次リバランス運用ログの書式(実務テンプレート)
- 付録G:Excel/Sheetsでの最小構成
- 付録H:ストレスシナリオと防御策
- 付録I:等金額・等資産とは何が違うのか
- 付録J:パラメータ感度(λ、窓長、帯域)
- 付録K:ファクターの足し算は慎重に
- 付録L:ポートフォリオの説明責任(自分への報告)
- 付録M:チェックリスト(印刷用)
- ケーススタディ:3つの相場局面での挙動(イメージ)
1. リスクパリティとは何か
リスクパリティは「資産ごとのリスク寄与度(Risk Contribution, RC)が等しくなるようにウェイトを決める」資産配分手法です。RCは「どの資産が全体のリスク(ポートフォリオのボラティリティ)にどれだけ寄与しているか」を表し、資産iのRCはおおむね次式で表せます。
RCi = wi × MRCi、ここで MRCi = (Σw)i。wはウェイトベクトル、Σは共分散行列、(Σw)iは資産iの限界リスク寄与(Marginal Risk Contribution)です。リスクパリティでは RC1 ≒ RC2 ≒ … を目指します。
相関を完全に無視する近似として「逆ボラ比(1/σ)で重み付ける」方法もよく使われます。厳密なRC均等には及ばないものの、実装が容易で効果も大きいため、個人投資家の第一歩として合理的です。
2. 4資産の具体例:設計→配分→スケーリング
対象資産を以下の4つにします。(例示であり、特定銘柄の推奨ではありません)
① 世界株式(株式リスク)/② 先進国の中長期国債(債券リスク)/③ 金(インフレ・通貨ヘッジ)/④ コモディティ総合(景気連動・供給ショック対応)
仮定の年率ボラティリティ(σ)と相関を置きます:株式18%、国債8%、金15%、コモ20%。相関の代表値は、株-国債-0.2、株-金0.1、株-コモ0.5、国債-金0.0、国債-コモ-0.2、金-コモ0.2 程度(あくまで例)。
【近似:逆ボラ比】w′i ∝ 1/σi とすると、株=5.56、債=12.5、金=6.67、コモ=5.0。正規化で合計29.73 ⇒ 株18.7%、債42.1%、金22.4%、コモ16.8%。この配分は「低ボラ資産(債券)を厚め、高ボラ資産(株・コモ)を薄め」にする直感どおりの結果です。
【目標リスクへスケーリング】次に、全体の目標ボラ(例:年率10%)に合わせてポートフォリオをスケーリングします。構築したwで推定ポートフォリオ・ボラを計算し、目標10%に合わせて倍率を掛けます。倍率が1を超えるならレバレッジ(信用・先物・CFD等)で調整、1未満なら現金を残す(現金比率=デレバレッジ)という運用も可能です。
重要なのは「価格ではなくリスクを均等配分」する点です。価格均等(25%ずつ)では、株やコモのボラが高く全体リスクの大半を握ってしまいます。逆にリスク均等なら、景気局面やインフレ局面ごとに異なるドライバーを幅広く拾え、単一ショックへの脆弱性を下げられます。
3. 推定の実務:ボラ・相関・共分散行列
実装の肝は「推定」です。ボラ(標準偏差)や相関をどう推すかで結果が変わります。推定は不確実なので、頑健性を上げる工夫を行います。
① 窓の長さ:直近1~3年のデイリー/ウィークリーで推定。直近に重みを置く指数加重移動平均(EWMA)も有効。急変期には窓を短縮、平常期には延長など、レジームに応じた調整も手。
② 外れ値処理:極端値はWinsorize(上下パーセンタイルでクリップ)やロバスト推定を使用。計算の安定化と過剰反応の抑制に効きます。
③ 相関の正定値化:サンプル相関はしばしば数値的に不安定。必要なら正定値への補正(Higham法等)を行い、共分散行列Σを安全に逆行列化できるようにします。
④ 推定リスクの上限:資産ごとに「想定外の急増」に備え、ボラ推定に上限(例:過去p分位)を設定してレバレッジ過多を防ぐ。相関も同様に、上限・下限レンジで切るなどの実務的工夫が安全に寄与します。
4. ウェイトの求め方:3つの実装レベル
レベルA:逆ボラ比法。w ∝ 1/σ。最小限の計算で、相関を無視しても効果は大きい。個人投資家の初期実装に最適。
レベルB:ナイーブRC近似。w ∝ (Σ−1·1) を正規化し、重みが過度に偏らないように下限・上限(例:5%~45%)の箱ひげ制約をかける。相関を粗く取り入れられます。
レベルC:厳密RC均等。非線形最適化で RCi = RCj を満たす w を探索。ペナルティで逸脱を抑制しつつ、取引コスト最小化(トラッキング型)を同時に解くと、実運用の滑らかさが増します。
いずれの方法でも、最終的には「目標ボラ」へスケーリングします。目標ボラは投資家のリスク許容度と資金のスキーム(信用/先物/CFDの金利・証拠金条件)から逆算します。
5. レバレッジの扱い:安全域の作り方
リスクパリティは低ボラ資産(債券など)が厚くなりがちで、目標ボラに届かない場合があります。このときレバレッジで全体リスクを引き上げるのが定石ですが、金利負担・流動性・清算リスクを必ず織り込みます。
資金繰りの原則:① 証拠金は過去最大ドローダウン×安全係数(例1.5倍)を上回る現金を常時プール。② 証拠金率が一定閾値(例:余力40%)を下回ったら自動デレバレッジ。③ ローン金利が期待超過リターンを食う場合はレバレッジを段階的に縮小。
実装の例:債券は現物ETF、株式・コモは先物でエクスポージャーを調整。金利上昇局面ではレバレッジを抑制し、逆にボラ急低下時は少し引き上げて目標ボラを維持するなど、ルールを事前に固定します。
6. リバランス:帯域・頻度・コストの三点同時最適
リスクパリティは「推定変化」によって最適ウェイトが動きます。毎日フルリバランスすれば理論値に近づきますが、個人投資家は取引コスト・税コスト・手間が現実制約です。
推奨プロトコル:
① 時間頻度:月次/隔月。急変時のみ臨時発動(VIXや実現ボラの閾値をトリガー)。
② 帯域:各資産の許容乖離±20%(例:目標20%→16~24%)でバンド外のみ発注。
③ 優先順位:RC逸脱が大きい資産から調整。
④ コスト最小化:同方向の資産はネットでまとめ、板の厚い時間帯に限定。
数値例:前掲の目標(株18.7/債42.1/金22.4/コモ16.8)に対し、相場変動で(株23/債38/金20/コモ19)へ逸脱。株と債のRCが膨らみ・縮み。帯域ルールに従い、株を小さく、債を増やす方向で最小金額だけ調整し、全体のRCを再度近づけます。
7. パフォーマンスの直感:60/40と何が違うか
典型的な60/40(株/債)は、価格比で配るため「実は株が全体リスクの大半を握る」構造です。株が不調だとポート全体が揺さぶられます。リスクパリティは「リスク比で配る」ため、景気後退・インフレショック・供給ショックなど異なる局面に分散しやすく、同一リスク水準でシャープレシオが改善しやすいのが経験則です。
一方で弱点もあります。長期金利の急騰局面や債券と株が同時に売られるレジームでは、債券に厚い配分が逆風になります。そのため「金」「コモディティ」「(余裕があれば)マネージド・フューチャーズ(トレンド追随)」を組み入れて、インフレ・成長・政策・供給という異なるドライバーを広く捕まえる設計が有効です。
8. 実装ステップ:今日から動かすチェックリスト
① 対象資産の決定:株・債・金・コモの4本柱から開始。国内上場ETF・投信・先物・CFDなど、取引環境に合わせて選定(特定銘柄の勧誘ではありません)。
② データ取得:終値ベースの過去価格(少なくとも2~3年)。週次でも可。分配・ロールの調整方針を固定。
③ 推定:EWMAでボラと相関を算出。外れ値クリップと相関の正定値化を行う。
④ ウェイト計算:逆ボラ比 →(慣れたら)Σ−11 を正規化 →(必要なら)RC厳密化の順で段階導入。
⑤ スケーリング:目標年率ボラ(例10%)に合わせ倍率を決定。必要ならレバレッジ方法と金利・証拠金ルールを文書化。
⑥ リスク管理:余力40%ルール、ドローダウン警戒値、臨時リバランストリガー(例:VIX>30、実現ボラ急騰)を設定。
⑦ リバランス運用:月次+帯域。税・コスト最小になる発注順序を事前に決め、運用ログを残す。
⑧ レビュー:半期ごとに推定窓・帯域・目標ボラを見直し。極端な相関レジーム変化に対応する。
9. 計算例:家計1000万円・目標ボラ10%
前掲の逆ボラ比ウェイト(株18.7/債42.1/金22.4/コモ16.8)で、推定ポートボラが年率7%だったとします。目標が10%なら倍率1.43倍が妥当範囲。現物比率を保ちつつ先物/CFDで株とコモのエクスポージャーを少量追加する方法が現実的です。
例:現物比率1000万円に対し、先物で合計430万円相当のエクスポージャーを追加。証拠金は時価20%として86万円。余力が40%未満に近づけばデレバレッジ。金利負担は年率X%として、期待超過リターンと比較し、優位性がなくなれば倍率を1.1倍→1.0倍へ段階的に縮小します。
この枠組みなら、「相場観がなくても」ルールベースに運用できます。相場観を入れるなら、倍率(ターゲットボラ)を±20%の範囲で可変にする(ボラが極端に低い時だけやや引き上げ、極端に高い時はやや下げる)と過剰介入になりにくいです。
10. 日本の個人投資家ならではの注意点
為替:海外資産は為替感応度が大きい。為替ヘッジ付/なしのミックスでボラと相関が変わるため、推定段階で別系列として扱うと設計精度が上がります。
金利環境:金利上昇局面では債券が逆風。債券のボラ推定に上限を置く、帯域を広げる、金・コモの下限ウェイトを設ける等の工夫で、レジーム変化への頑健性を確保します。
税とコスト:配当・分配・ロールコスト・為替コストを合算で把握。頻繁な売買を避け、帯域ルールで約定回数を抑える方が手取り効率は上がります。
11. よくある失敗と対策
① 過度なレバレッジ:推定が外れると清算リスクが急増。倍率は段階導入し、余力ルールとデレバレッジトリガーを厳守。
② 推定の機械化しすぎ:レジーム変化(株・債の相関転換など)に盲目にならない。臨時レビュー会(半期/四半期)を運用プロセスに埋め込む。
③ コスト軽視:リバランスで往復コスト・スプレッド・税が嵩む。帯域・ネット決済・厚い板での発注を徹底。
④ 資産の偏り:金やコモを心理的に敬遠して株と債に偏ると、インフレショックに脆弱。下限ウェイトを制度化する。
12. 拡張:5本目に「トレンド(Managed Futures)」を足す
余裕があれば、価格トレンドを取る分散型の先物戦略(マネージド・フューチャーズ)を小さく加えると、構造的に株・債と逆相関になる局面が増え、ドローダウン耐性が上がります。ここでもRC均等の思想は有効で、トレンド戦略のボラを小ぶりに見積もってRCの一角に据える設計が現実的です。
13. まとめ:価格ではなく「リスク」を配る
リスクパリティは、銘柄選択の妙よりも「配分の合理性」に価値が宿る戦略です。ボラと相関が変わる現実を前提に、推定を頑健に、取引は帯域でコスト最小に、レバレッジは安全域で。これらを地道に回せる人が、相場環境を問わず“生き残りながら増やす”確率を着実に高めます。
本稿の手順どおりに「小さく試す→レポートを残す→ルールを磨く」を回してください。相場観が合わない日でも、ルールは働き続けます。
付録A:逆ボラ比からRC均等への移行メモ
手順1:逆ボラ比w(0)を基準に、月次でΣを更新。
手順2:目的関数 J(w) = ∑i(RCi(w) − μ)2 + λ·∥w − w(t−1)∥1 を最小化(μは平均RC、λは売買抑制ペナルティ)。
手順3:箱ひげ制約と総和=1、ショート不可(w≥0)を課す。
手順4:最終wを目標ボラへスケーリングし、取引金額が最小になるよう丸める。
これで「RC均等に近づけつつ、売買回転を抑制」できます。個人投資家の条件に合致します。
付録B:推定の数値パラメータ例
・EWMAの減衰係数:デイリーなら0.94~0.97、週次なら0.85~0.92あたり。
・外れ値クリップ:上下1%~2%パーセンタイルでWinsorize。
・正定値化:相関行列の固有値の負をゼロへ持ち上げる(Higham)。
・ボラ上限:各資産の過去95%点を上限とし、推定がそこを超えたら上限で打切り。
付録C:家計と両立させる資金管理
① 流動性バッファ(6~12か月生活費)は投資と別枠に厳格分離。
② 目標ボラに応じて年初に「最大想定ドローダウン=k×目標ボラ×√年」を基準設定(kは経験則1.6~2.0)。
③ 実測DDが想定DDを超えたら、デレバレッジで倍率を1段落とし、推定窓を短縮して再構築。
付録D:RCの直感を掴む簡易シミュレーション(手計算)
逆ボラ比wで各資産の「標準化寄与=wi·σi」を算出すると、おおむね均等に近づきます。相関が高いペア(例:株とコモ)があると、RCはそのぶん大きくなりがちなので、上限ウェイトや帯域で抑えます。正確なRCは Σ を使う必要がありますが、手計算の直感としては十分に有効です。
付録E:簡易共分散からRCを概算するワークド例
月次リターン系列から各資産の標準偏差(σ)と相関(ρ)を推定できたとします。共分散は cov(i,j)=ρ(i,j)·σ(i)·σ(j) で求まります。4資産のΣを手で書き出し、wを掛け算するだけで MRC=(Σw) を得られます。RCは wi·MRCi です。
たとえば σ=[0.18,0.08,0.15,0.20]、相関は本文の例。逆ボラ比w=[0.187,0.421,0.224,0.168]。このとき MRC株は、0.18×0.187 + (−0.2×0.18×0.08)×0.421 + 0.1×0.18×0.15×0.224 + 0.5×0.18×0.20×0.168 … のように各行の総和で近似できます。厳密な数値はツール任せで構いませんが、「wが大きい×σが大きい×相関が高い」ほどRCが膨らむ直感を掴んでください。
付録F:月次リバランス運用ログの書式(実務テンプレート)
・シート1「推定」:資産価格、リターン、EWMA、σ、ρ、Σ、目標w、倍率、想定ポートボラ。
・シート2「トレード」:前月w、今月推奨w、帯域判定、売買数量、予想コスト、約定実績。
・シート3「リスク」:余力比率、最大DD、VaR、臨時トリガー(VIX、実現ボラ)。
・シート4「レビュー」:推定窓・係数の見直しメモ、相関レジーム、教訓。
毎月30分で更新可能な粒度に絞るのが継続のコツです。
付録G:Excel/Sheetsでの最小構成
・リターン:=LN(価格/前期価格)
・EWMAボラ:=SQRT((1−λ)×R2+λ×前期分散) を累積(λは0.94等)
・相関:=CORREL(系列i,系列j)(ロバスト推定を使わない場合の簡易法)
・逆ボラ比:=1/σ を正規化
・目標ボラ倍率:=目標σp/推定σp
・帯域判定:=IF(現在w<目標w×0.8,「買い増し」,IF(現在w>目標w×1.2,「売却」,「保持」))
この最低限で十分に運用可能です。
付録H:ストレスシナリオと防御策
① 金利ショック:長期金利が急騰し、債券と株が同時下落。対策は金・コモの下限ウェイト、リスク目標の自動引下げ、債券デュレーションの短縮。
② 供給ショック:コモ上昇・株下落・債券まちまち。コモの上限を広げすぎない、ロールコストを織り込む。
③ デフレ不況:債券強・株弱・コモ弱。株とコモの下限を機械的に維持しすぎない。推定窓を長めにし、頻繁な調整を避ける。
付録I:等金額・等資産とは何が違うのか
等金額配分は見た目は公平でも、リスクは高ボラ資産に偏ります。等資産(株/債/金/コモを25%ずつ)も同様。リスクパリティは「結果のリスクが公平」になるよう配るため、同一ポートボラで比較すれば、一般に最大損失の尾が短くなりやすいという経験則があります。
付録J:パラメータ感度(λ、窓長、帯域)
λを上げる(0.97→0.99)と直近に鈍感になり、リバランス頻度が減る反面、レジーム転換の追随が遅れます。窓長を短くすると追随は速いが売買過多。帯域を広げればコストは下がるがRC逸脱が増える。半期レビューで「コスト/乖離/結果」の三者を見比べ、最小の調整で最大の改善が出るポイントを探してください。
付録K:ファクターの足し算は慎重に
リスクパリティにバリューやモメンタム等のファクターを加えると、期待収益は上がり得ますが、同じ資産クラス内での相関が上がりRCが崩れることがあります。追加するなら「ファクターのボラを小さめに見積もり、RCの一角に収める」設計で、小さく検証し、売買コストを必ず考慮します。
付録L:ポートフォリオの説明責任(自分への報告)
毎月の運用レポートに、(1) 目標ボラと実現ボラ、(2) RCの逸脱、(3) 取引回数とコスト、(4) 最大DD、(5) 学び、の5点を定型で残してください。これがブレない継続につながります。
付録M:チェックリスト(印刷用)
□ データ更新 → 推定 → 目標w更新 → 帯域判定 → 発注計画 → 実行 → ログ更新。
□ 余力40%ルール、DD閾値、臨時トリガー確認。
□ 半期レビュー:λ/窓/帯域/下限上限/倍率の見直し。
ケーススタディ:3つの相場局面での挙動(イメージ)
局面1:株強・金利安定。株が月率+2%前後で安定、債券は±0.3%、金は+0.5%、コモは+0.8%とします。等金額配分では株の寄与が過半に。リスクパリティは株のウェイトが相対的に小さく、上昇の取りこぼしはあるが、月次の下振れも緩やか。最大DDは等金額より浅くなる傾向。
局面2:インフレ・供給ショック。株−3%、債−1%、金+2%、コモ+3%。等金額では株の下落で全体が沈み、債も足を引っ張る。リスクパリティは金・コモのRCが効いて下支え。リバランスで金・コモの利益の一部を株・債へ回収して、次局面への準備ができる。
局面3:リセッション(デフレ気味)。株−2%、債+1.5%、金−0.5%、コモ−1%。リスクパリティは債券の厚め配分で緩衝。RCの観点では債の寄与が増えすぎるので、過度な一極化を避けるため帯域で微調整に留めるのが実務的です。
ポイントは、いつもどこかが効く設計にしておくこと。これが「生き残りながら増やす」を可能にします。
コメント