寄り付きで大きくギャップアップ(前日終値より上でスタート)した銘柄は、いったん上方向に飛び出したあと、短時間で「窓(ギャップ)」を埋めに戻る動きが出ることがあります。これを単なる“逆張り”として雑にやると、上昇トレンドの初動を売って踏まれるだけです。
この記事では、窓埋めが起こりやすい条件を絞り込み、寄り付き直後の数分〜数十分で完結するスキャルピングとして設計する方法を、初心者でも再現できる粒度で解説します。個別銘柄の推奨ではなく、観測→条件判定→エントリー→撤退→検証の型を提供します。
- ギャップアップ後の「窓埋め」とは何か:値動きの正体
- まず結論:狙うのは「弱いギャップ」だけ
- 窓埋め逆張りを“トレード戦略”に落とす:4つのフィルター
- エントリーの具体形:『寄り天→戻り→再失速』を待つ
- 損切り設計:逆張りで最優先すべき“撤退ライン”
- 利確設計:窓を全部埋める必要はない
- 板・歩み値の読み方:窓埋めが『成功しやすい』瞬間
- 具体例で理解する:3つのシナリオ分岐
- 初心者が負ける典型:『窓埋め神話』に依存する
- 検証のやり方:自分の市場・時間軸で勝てる形にする
- 実戦の型:寄り付き前→寄り後15分のチェックリスト
- リスクと注意点:窓埋め逆張りが機能しない日
- まとめ:『窓埋め』はチャートではなく需給で取る
- ロット管理の具体例:『損切り幅』から逆算する
- 注文方法:成行・指値・逆指値をどう使い分けるか
- 『窓埋めが始まる前兆』を精度上げする追加フィルター
- 検証を“仕組み化”する:翌日に改善が積み上がる記録テンプレ
- 環境認識:同じ窓でも“地合い”で難易度が変わる
ギャップアップ後の「窓埋め」とは何か:値動きの正体
窓埋めとは、当日寄り付き価格が前日終値を大きく上回ったことで生じた“価格帯の空白”を、後から価格が埋めに戻る現象です。たとえば前日終値が1,000円で、翌朝寄り付きが1,060円なら、1,000〜1,060円が窓になります。
窓埋めの背景はシンプルで、寄り付き前に買いが集中して価格が飛んだものの、寄り後は『利確したい短期勢』『寄りで買えなかった追いかけ勢の躊躇』『上で捕まった売り(戻り売り)』が同時に出て、需給が急に緩む場面があるからです。
ただし、ニュースが強烈で需給が一方向に傾くと、窓は埋まらず“上に走り続ける”ケースもあります。よって、窓埋めは“起きることもある”ではなく、“起きやすい局面だけを選ぶ”のが実務上のポイントになります。
まず結論:狙うのは「弱いギャップ」だけ
寄り付き逆張りで最も重要なのは、ギャップの強弱判定です。強いギャップ(材料が強く、需給が買いに偏る)は逆張り厳禁。狙うのは、寄り前は盛り上がったが、寄り後に買いの追加燃料が乏しい“弱いギャップ”です。
弱いギャップの典型パターン
・材料が軽い:業績サプライズではなく、思惑記事、テーマ連想、SNS拡散など。
・ギャップが過大:前日までの値動きに対して、寄り付きが飛びすぎている(値幅の歪み)。
・寄り前の板が薄い:買い気配は強いが、実需の厚みがない。
・同業や指数が弱い:地合いが悪いのに個別だけ飛んでいる。
強いギャップ(避けるべき)
・決算で大幅上方修正+ガイダンス強気、あるいは大型契約などで“買い手が明確”。
・出来高が過去平均の何倍にも膨らむ見込みがある(その日が“主役”の日)。
・寄り付き後に押しても即座に買いが入り、安値を切り上げる。
窓埋め逆張りを“トレード戦略”に落とす:4つのフィルター
逆張りは条件が曖昧だとギャンブルになります。以下の4フィルターをすべて満たす銘柄だけを候補にし、満たさないものは見送ります。
フィルター1:前日終値からのギャップ率(%)
目安として、ギャップが小さすぎると窓の意味が薄く、逆に大きすぎると“トレンド発生”の可能性が上がります。初心者はまず、株価帯にもよりますが2〜6%程度のギャップを中心に検証すると、再現性のあるデータが集まりやすいです。
フィルター2:寄り付き直後の出来高の「伸び方」
寄り付き直後の出来高は常に大きいので、絶対値より“伸び方”を見ます。1分足や5分足で、寄りの最初の足が突出した後に次の足で出来高が減衰していく銘柄は、初動買いが一巡して窓埋め方向に傾きやすい傾向があります。
フィルター3:VWAP(出来高加重平均価格)との位置関係
デイトレ勢の平均建値に近いVWAPは、短期の攻防線になります。寄り後に価格がVWAPを割り込み、VWAPが上から抵抗として機能し始めると、窓埋め方向(下)へのバイアスが出やすいです。逆に、VWAPの上に保ち続けるなら、逆張りはやめます。
フィルター4:窓の“中身”の質(前日の引け方)
前日に大引けで強く買われて終わった銘柄は、翌朝のギャップが“継続買い”の延長であることが多く、窓埋めが起きにくいです。前日が上ヒゲで終わった、引けにかけて失速した、あるいは終値が弱いのに翌朝だけ飛んだ、といった銘柄の方が窓埋めに向きます。
エントリーの具体形:『寄り天→戻り→再失速』を待つ
初心者がやりがちなのは、寄った瞬間にいきなり売る(空売り)ことです。これは“ただの逆張り”で、最も勝率が低い入り方です。窓埋めスキャルの基本は、最初の値動きで市場の意思を確認してから入ります。
推奨する観測シーケンス(5分以内に判断)
①寄り付き直後に上へ走る(寄り天候補)。
②高値圏で買いが鈍り、歩み値の連続買いが止まる。
③いったん下げて反発するが、その反発がVWAPや直近の戻り高値で止められる。
④再び売りが優勢になり、直近安値を割る。この“再失速”がエントリーの合図です。
この形は『上昇の燃料切れ』を確認してから入るため、根拠が明確で、損切りポイントも近く置けます。
損切り設計:逆張りで最優先すべき“撤退ライン”
逆張りは、当たれば速いが外れると一気に不利になります。だから損切りは“価格”で機械的に決めます。メンタルで耐えるのは禁止です。
損切りの置き方(3パターン)
A:戻り高値の上。再失速で入ったなら、直前の戻り高値を超えた時点でシナリオ崩れです。
B:VWAPの明確回復。VWAP割れ→抵抗を前提にしているなら、VWAPを上抜いて“押し目買い”に転じたら撤退します。
C:時間切れ。窓埋めは短期で起きることが多い反面、起きない日はズルズル粘られます。エントリーから◯分(例:10〜20分)で期待方向に進まないなら撤退、というルールが有効です。
損切り幅(1トレードで許容する損失)は、口座資金の一定割合(例:0.2〜0.5%)に固定し、ロットを逆算します。逆張りでロットを上げて一撃狙いをすると、負けが致命傷になります。
利確設計:窓を全部埋める必要はない
窓埋め狙いといっても、窓を完全に埋める前に反発して終わることは普通にあります。スキャルの目的は“取り切る”ではなく“確率の高い部分を抜く”ことです。
利確ターゲットの現実的な設定
・第一利確:直近安値の更新で含み益が出たら、半分利確してリスクを落とす。
・第二利確:窓の中の節目(前日終値からの25%〜50%戻しの価格帯)で分割利確。
・伸ばす場合:出来高が増えながら下落が加速し、VWAPからの乖離が拡大する局面だけ。
特に初心者は“全部取ろう”とすると利確が遅れ、反転で利益を吐き出します。分割利確は、結果としてトータルの安定性が上がります。
板・歩み値の読み方:窓埋めが『成功しやすい』瞬間
チャートだけで逆張りすると、騙しが多いです。板と歩み値を組み合わせると、窓埋めが動き出す瞬間を捉えやすくなります。
観測ポイント1:買い板が“食われて薄くなる”
下げ始めで買い板が厚いのに下がるときは注意です。厚い買い板が一気に食われて薄くなると、『支えが崩れた』状態になり、窓埋めが進みやすいです。
観測ポイント2:歩み値の連続買いが止まる→連続売りが増える
寄り天を作る局面では、連続買い(成行買い)が目立ちます。これが止まり、同時に連続売り(成行売り)が増えたら、短期勢の利確と新規売りが勝ち始めた合図です。
観測ポイント3:反発が弱い(戻りが浅い)
窓埋め方向に本当に傾いた銘柄は、反発が弱く、戻り高値を更新できません。戻りが浅い=買い手の厚みがないので、逆張りの“逆”(戻り売り)が機能しやすいです。
具体例で理解する:3つのシナリオ分岐
同じギャップアップでも、寄り後の値動きは大きく3タイプに分かれます。自分がどれを狙っているのかを明確にすると、エントリーがブレません。
シナリオA:寄り天→窓の半分埋め→反発(最も多い)
寄りで上に走って失速し、窓の中ほどまで押してから反発する形です。この場合、利確を窓の中間帯に置くと、取りやすいです。
シナリオB:寄り天→窓を全埋め→前日終値割れ(強い売りの日)
地合いが悪い、材料が弱い、需給が荒れていると、窓を埋めてさらに下へ走ることがあります。スキャルとしては“伸ばせる日”ですが、毎日狙うと危険です。『出来高が落ちずに下落が加速』など、伸ばす根拠が揃ったときだけです。
シナリオC:押してもVWAPを割らず、再上昇(逆張り敗北の日)
押し目買いが強い日です。窓埋めは期待できません。この日の特徴は、押した瞬間に板が厚くなり、歩み値の買いがすぐ戻ること。逆張りを続けると連敗します。早めに“今日は違う”と認定して撤退します。
初心者が負ける典型:『窓埋め神話』に依存する
窓は“必ず埋まる”わけではありません。窓埋めは統計的に起こりやすい局面がある、というだけです。負ける人は、ギャップを見た瞬間に『埋まるはず』と信じて売り続けます。
対策は単純で、窓埋めを“目的”にせず、あくまで『寄り後に需給が弱くなるときの値動きの一形態』として扱うことです。需給が強いなら、窓は埋まらない。それだけです。
検証のやり方:自分の市場・時間軸で勝てる形にする
戦略は、検証しないとただのストーリーです。ここでは、個人でも回せる検証方法を示します。
最低限記録する項目(10銘柄で十分)
・ギャップ率(寄り値/前日終値 – 1)
・寄り後5分の高値・安値、出来高推移(1分足)
・VWAPの位置(上か下か、タッチ回数)
・エントリー理由(再失速、戻り売り、VWAP割れ等)
・損切り理由(高値更新、VWAP回復、時間切れ等)
・結果(R倍:利益÷損失)
見るべき指標:勝率より“期待値”
逆張りは勝率が高く見えやすい一方、1回の負けが大きいとトータルが負けます。勝率より、平均利益と平均損失のバランス(期待値)を最優先に見ます。
理想は『小さく負けて、当たるときにやや大きく勝つ』構造です。これを作るには、損切りを近く、利確を分割で、伸ばす日は条件限定、という設計が効きます。
実戦の型:寄り付き前→寄り後15分のチェックリスト
寄り付き前(9:00まで)
・ギャップ率は過大ではないか(2〜6%を中心に観測)。
・材料は強すぎないか(強い決算なら見送る)。
・板の厚みは実需か、薄い“見せ”か。
・指数・先物の方向は逆風ではないか。
寄り後(9:00〜9:15のイメージ)
・寄り天の兆候:上へ走った後、歩み値の買いが鈍る。
・VWAP割れ→戻りでVWAPが抵抗になるか。
・再失速(直近安値割れ)が出たら初回エントリー。
・戻り高値更新 or VWAP明確回復で即撤退。
このチェックリストで“やる日”が減るほど、成績は安定します。トレードは回数ではなく質です。
リスクと注意点:窓埋め逆張りが機能しない日
以下の日は、窓埋め逆張りの難易度が跳ね上がります。初心者は避けた方が合理的です。
・相場全体が急騰/急落している日(指数主導で個別が振り回される)。
・寄り後すぐに大きなニュースが出た日(需給が瞬間で反転する)。
・値がさでスプレッドが広い銘柄、低流動性で板が飛ぶ銘柄(スキャルに不向き)。
・売買規制、増担保、信用規制などで需給が歪んでいる銘柄(想定外が起きやすい)。
まとめ:『窓埋め』はチャートではなく需給で取る
寄り付きギャップアップ後の窓埋めは、見た目は単純でも、実態は“短期勢の利確と追いかけ買いの失速”という需給現象です。
狙うべきは弱いギャップ。寄り天→戻り→再失速を待ち、VWAPと出来高減衰で根拠を固め、損切りは価格で機械的に。窓を全部埋めることに執着せず、分割利確で安定化させる。
この型を、あなたが触る市場・銘柄群・時間軸で検証し、勝てる条件だけを残す。これが“再現性のある窓埋めスキャル”の作り方です。
※本記事は一般的な情報提供であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。実際の取引では、手数料・スプレッド・規制・約定リスク等を含めてご自身で判断してください。
ロット管理の具体例:『損切り幅』から逆算する
ロット管理は“資金管理”の核心です。窓埋め逆張りは勝ちやすく見えても、1回の踏み上げで大きく負けやすいので、ロットを感覚で決めるのは危険です。ここでは数字の例で逆算します。
例:口座100万円、1回の許容損失0.3%で固定する
口座資金が100万円なら、1回の最大損失は3,000円です。エントリー根拠が『戻り高値超えで損切り』で、損切りまでの値幅が6円だとします。すると、許容できる株数は 3,000円 ÷ 6円 = 500株 です。これが“上限ロット”になります。
同じ銘柄でも、板が荒れて損切り幅が12円必要なら、ロット上限は 3,000円 ÷ 12円 = 250株 に減ります。つまり、相場が荒いほどロットを落とすのが正解です。
スキャルの落とし穴:利益目標でロットを決めない
「今日は1万円取りたいからロットを上げる」は破綻の典型です。ロットは“損切り幅”と“許容損失”で決める。これだけで、長期的な生存確率が大きく上がります。
注文方法:成行・指値・逆指値をどう使い分けるか
窓埋めスキャルは時間が短いので、注文の出し方で期待値が変わります。特に初心者は『入りは成行、逃げは遅い』になりがちです。
エントリーは『成行』より『指値→ダメなら見送り』が基本
再失速を確認した直後はスプレッドが広がることがあります。勢いで成行をぶつけると、想定より不利な価格で約定し、損切りが近づいてしまいます。指値で“ここなら入る”を明確にし、刺さらないなら見送る方がトータルは安定します。
損切りは迷わない:逆指値(または条件付き)で自動化
逆張りは、損切りの遅れが致命傷になります。可能なら、エントリーと同時に逆指値(あるいは条件付き注文)を入れて“強制終了”を仕組み化します。手動でも構いませんが、ルールを破りやすい人ほど自動化が有効です。
利確は分割:板が薄い銘柄ほど分割が効く
板が薄い銘柄で一括利確すると、約定で滑りやすくなります。半分ずつなどの分割は、平均約定を改善しやすく、心理的にも利益を守りやすくなります。
『窓埋めが始まる前兆』を精度上げする追加フィルター
4フィルターで候補を絞ったうえで、さらに精度を上げたい場合の追加観測です。全部やる必要はありません。自分の得意なものを1つだけ増やすのが現実的です。
追加1:寄り直後の高値更新回数が少ない
強い日は、押しても何度も高値を更新します。弱い日は、1回上に走った後は高値更新が止まります。高値更新の回数は、短期の買い圧力の強さを直感的に示します。
追加2:上ヒゲの連発(1分足)
1分足で上ヒゲが連発するのは、上で売りが出ている証拠です。特に、上ヒゲの後に実体が小さくなり、出来高が減衰していくなら、初動買いの終わりが近い可能性があります。
追加3:同業セクターの“追随が弱い”
テーマ連想で飛んでいる銘柄でも、同業や関連が反応しない場合は短期の思惑で終わることが多いです。セクター全体に波及しているなら、逆張りより押し目買いの方が合理的になりやすいです。
検証を“仕組み化”する:翌日に改善が積み上がる記録テンプレ
トレードの上達は、気合ではなく“改善サイクル”です。窓埋めスキャルは短時間で結果が出るので、1日ごとに改善が回しやすい題材です。
おすすめの振り返り手順(10分で完了)
1)候補に上げた銘柄のスクショ(板+1分足+VWAP)を保存する。
2)エントリーした場合は、エントリー時点の根拠を1文で書く(例:VWAP割れ後の戻り売りで再失速)。
3)損切り/利確の理由がルール通りかチェックする。ルール外なら“なぜ破ったか”を1文で書く。
4)翌日は、破った理由に対して“対策ルール”を1つだけ追加する(例:寄り後10分以内にVWAP上で推移ならその銘柄は触らない)。
これを続けると、あなた専用のフィルターが自然に育ち、無駄なトレードが減ります。
環境認識:同じ窓でも“地合い”で難易度が変わる
窓埋めは個別の需給現象ですが、指数先物の影響を強く受けます。特に寄り付き直後は、先物主導で現物がまとめて買われたり売られたりするため、個別の形が一度崩れます。
実戦では、寄り前に日経平均先物・TOPIX先物の方向と、寄り後の最初の5分の値動きを確認し、指数が急伸しているなら“逆張りの期待値が落ちる日”として見送る判断が有効です。逆に指数がヨコヨコ〜弱含みなら、個別の窓埋めが出やすくなります。
要するに、窓埋めスキャルは『個別の弱さ』だけでなく『市場全体の追い風・向かい風』も含めて判断すると、無駄な負けが減ります。


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