短期トレードでいちばん難しいのは「上がったところを追いかけて高値掴みし、急落で損切りになる」パターンを減らすことです。分足(三分足・一分足・五分足など)で現れやすい代表的な転換形が三尊天井(ヘッドアンドショルダー)です。教科書的には有名ですが、実戦では「形は似ているのに下がらない」「割れたと思ったら戻る(ダマシ)」が頻発します。
この記事では、分足での三尊天井を“売り抜け”に使うことに絞り、初心者でも再現しやすいように、出来高・板(気配)・歩み値を組み合わせた判断手順を具体例ベースで整理します。結論だけを言うと、三尊天井は「形」ではなく需給が変わった痕跡を見抜く道具であり、ネックライン割れの前後で“誰が苦しくなるか”を考えると成功率が上がります。
- 三尊天井とは何か:分足で起きる“買いの疲れ”を可視化する
- なぜ三尊天井が効きやすいのか:心理ではなくポジション構造で理解する
- 準備:三尊天井を探す前に決める3つの前提
- 実戦手順:分足で三尊天井を“売り抜け”に変えるチェックリスト
- ネックラインの引き方:初心者が迷わない“価格帯”の考え方
- 出来高でダマシを減らす:3つの“ありがちな偽物”
- 板・歩み値を使う:分足三尊天井を“需給の崩れ”として読む方法
- 具体例:寄り付き後の急騰→三尊天井→売り抜けのシナリオ
- 損切りと利確の設計:初心者が破綻しないための現実的ルール
- よくある失敗と改善策:初心者が陥りやすい5つの落とし穴
- 練習方法:過去チャートで“型”を作る最短ルート
- まとめ:三尊天井は“天井当て”ではなく“撤退のルール”にする
- 実行面のコツ:注文方法と“滑り”を織り込む
- テクニカルの併用:初心者でも使える“補助輪”は2つだけ
- 相場環境での使い分け:三尊天井が強く出る日・出にくい日
- 最終チェック:場中で迷わないための10項目
三尊天井とは何か:分足で起きる“買いの疲れ”を可視化する
三尊天井は、左肩→頭→右肩の3つの山を作り、谷同士を結んだライン(ネックライン)を割り込むと下落転換しやすい、という考え方です。分足で重要なのは、形の美しさよりも「高値更新の勢いが鈍る順番」です。
- 左肩:上昇の勢いが強く、押し目買いが素直に入る
- 頭:ニュースや勢いで最後の買いが入りやすいが、利確も増える
- 右肩:高値更新に失敗し、買い手が“もう一段上”を諦め始める
分足では、材料株・低位株・ストップ高絡みの銘柄で特に出やすく、値幅が大きいほど短期資金の回転が速くなります。ここで言う「売り抜け」とは、すでに持っている買いポジションを天井圏で手仕舞いする、またはロングを切り替えて短期の戻り売りに備える行為です。空売りを推奨する話ではなく、まずは“逃げ方”の技術として身につけるのが安全です。
なぜ三尊天井が効きやすいのか:心理ではなくポジション構造で理解する
分足の三尊天井が機能しやすい理由は、参加者の心理というよりポジションの偏りにあります。上昇局面では、遅れて入った買いほど含み益が小さく、少し下がるだけで含み損に転落します。右肩形成はまさに「遅れて入った買い」が溜まりやすい局面です。
ネックライン付近は、短期勢にとっての損益分岐点になりやすく、割れた瞬間に以下が同時発生します。
- 右肩で入った買いの損切り(成行売り)
- 押し目買いを待っていた勢が一旦見送る(買いが消える)
- 上昇トレンド継続を前提にした買いアルゴが減速する
つまり「売りが増える」だけでなく「買いが減る」ことで下落が加速します。分足ではこの変化が数分で起きるため、ネックライン割れを“価格のイベント”ではなく“流動性の事件”として扱うと、ダマシ回避の精度が上がります。
準備:三尊天井を探す前に決める3つの前提
分足パターンは何でも当てはまるように見えるのが最大の罠です。そこで、三尊天井を狙う前に次の前提を固定します。
1)上位足の方向:最低でも15分足か60分足で“上げ過ぎ”か確認
分足だけで天井を決め打ちすると、強いトレンドの押し目を天井と勘違いしがちです。目安は「15分足で直近高値圏」「60分足で急角度の上昇が一段落」など。ここで重要なのは完璧な分析ではなく、“まだ上がる余地が大きい局面”を避けることです。
2)ボラティリティ:1分足で値幅が出ている銘柄に限定
値幅が小さい銘柄は、ネックライン割れが小さく、手数料・スリッページ負けになりやすいです。例えば1分足で数ティックしか動かない大型株より、材料で動いている中小型の方がパターンが機能しやすいことが多いです(ただし急変リスクも上がるのでロットは落とします)。
3)出来高の質:頭で出来高がピーク、右肩で減るかを見る
三尊天井の“本物”は、頭で出来高が膨らみ、右肩で同じ水準まで買いが続かないことが多いです。逆に右肩で出来高が再加速するなら、単なる揉み合いからの上抜けの可能性が上がります。出来高は絶対値より、山ごとの相対比較で判断します。
実戦手順:分足で三尊天井を“売り抜け”に変えるチェックリスト
ここからは「買いポジションを持っていて、天井っぽいので逃げたい」ケースで、具体的な手順を説明します。結論から言うと、売り抜けは2段階で行うのが安定します。
ステップ1:右肩の失速を確認したら“半分だけ”利確して心理的余裕を作る
右肩が形成される直前は、まだ上抜ける可能性があります。ここで全て売ると、その後の上抜けで悔しくなり、別の場面で追いかけ買いをしやすくなります。そこで、次の条件が揃ったらまず半分だけ手仕舞いします。
- 頭の高値に近づいたが、更新できずに反落した
- 反落の1〜3本で出来高が増え、売りの圧が見える
- 歩み値で大きめの売りが連続し、板の買いが薄くなる
この「半分利確」は、利益を最大化するためというより、残り半分を冷静に扱うための保険です。初心者ほど“全部当てたい”気持ちが強く、結果として判断が遅れます。
ステップ2:ネックライン割れで残りを手仕舞い(または逆指値で逃げる)
残り半分は、ネックライン(谷と谷を結んだ価格帯)を割ったら手仕舞いするのが基本です。ただし、分足では一瞬割れて戻るダマシが多いので、次のように「割れ方」を条件にします。
- ネックラインを割った足が、実体でしっかり下に抜ける
- 割れ足の出来高が、直前の平均より明確に増える
- 割れた直後の戻りが、ネックライン手前で止まりやすい
この3つが揃えば、買いの撤退が始まった可能性が高いです。揃わない場合は、ネックラインを少し割っても即撤退せず、ネックライン付近に逆指値を置いて“割れたら逃げる”に切り替えます。これだけでダマシに付き合う回数が減ります。
ネックラインの引き方:初心者が迷わない“価格帯”の考え方
三尊天井で最も揉めるのがネックラインです。分足では、谷がピンポイントにならず、数ティック〜数円の幅を持つことが多いので、線ではなく帯(ゾーン)として扱います。
具体的には、2つの谷の安値を見て、より多くの足が反応した価格を中心に「±数ティック(または0.1〜0.3%)」の範囲をネックライン帯とします。例えば、谷が1000円と1002円なら、1000〜1002円を帯として見ます。帯として扱うと、瞬間的なヒゲで揺さぶられてもブレにくくなります。
出来高でダマシを減らす:3つの“ありがちな偽物”
分足の三尊天井で損をしやすいのは、形だけで売り抜けを決めるからです。出来高の癖を覚えると、偽物を早めに弾けます。
偽物1:右肩で出来高が増える(本尊がまだ買っている)
右肩で出来高が頭より増える、または買いが板を食い上げる動きが出るなら、三尊ではなく“押し目からの再上昇”の可能性が高いです。特に材料が継続している場合、右肩に見える部分は単なる小休止です。この場合は、売り抜けを急がず、直近安値(右肩の押し安値)を割るまでは持つ、などの方が合理的です。
偽物2:ネックライン割れの出来高が細い(売りが本気じゃない)
ネックラインを割ったのに出来高が増えない場合、売りは“少数の試し売り”かもしれません。分足ではこういう場面でスパッと戻されます。ここは「割れた足の次の足」で戻りが強いなら、撤退を一旦見送り、ネックライン帯の上に戻ったら即撤退というルールに切り替えると被害が小さいです。
偽物3:頭が“出来高ピーク”じゃない(まだ上昇の燃料が残っている)
頭の局面で出来高が伸びず、むしろその後の高値圏で出来高が積み上がっているなら、天井ではなく高値持ち合い(レジスタンスを吸収している)かもしれません。この場合の三尊は機能しにくいので、売り抜けは上値ブレイク失敗の回数(例:高値を2回試して抜けない)で判断した方が良いです。
板・歩み値を使う:分足三尊天井を“需給の崩れ”として読む方法
初心者でも取り入れやすいのが、板と歩み値の「変化」を見る方法です。難しい読み合いではなく、次のような“変化”だけを拾います。
右肩での典型:買い板が薄くなり、売り板が厚く残る
右肩で上げようとする時、本当に強いなら売り板が次々と食われていきます。逆に天井に近いと、売り板が厚く残り、買い板が薄くなります。特に注目するのは、上に行くほど板が厚くなる「壁」の出現です。壁が出ると、短期勢は「抜けない」と判断しやすく、利確が増えます。
歩み値の典型:大きな成行買いが通っても値が伸びない
頭の局面では、大きな成行買いが入ると一気に上に飛びます。しかし右肩では、同じような買いが入っても値が伸びず、すぐ押し戻されることがあります。これは上にいる売りが吸収している可能性が高いサインです。分足の三尊天井は、まさにこの“吸収”が表面化した形と考えると理解しやすいです。
具体例:寄り付き後の急騰→三尊天井→売り抜けのシナリオ
例として、寄り付き後に材料で急騰した銘柄を想定します。寄り付き直後に上がり、9:15頃にいったん押し、9:25頃に再上昇して高値更新(頭)、その後9:35頃に押して9:45頃に再度高値付近まで戻るが更新できない(右肩)という流れです。
このとき、売り抜けの実務的な動きは次の通りです。
- 頭で一部利確:高値更新直後に伸びが止まり、歩み値が荒れたら30〜50%を利確
- 右肩の失速で追加利確:高値手前で反落し、出来高が増えたらさらに20%利確
- ネックライン帯割れで残り撤退:谷(押し安値)を割れて出来高が増えたら残りを手仕舞い
これにより、「天井を完璧に当てる」必要がなくなります。最初の利確で精神的な余裕を作り、最後はネックライン割れという客観条件で降ります。初心者がやりがちな「まだ上がるはず」と粘る行為を、ルールで抑えられます。
損切りと利確の設計:初心者が破綻しないための現実的ルール
売り抜け戦略でも、実際には一部を残すため“含み益の変動”に耐える必要があります。ここでのポイントは、利益を最大化するよりも大損を避けることです。
残り玉の逆指値:ネックライン帯の少し下、または右肩の押し安値割れ
ネックラインが明確なら帯の下に逆指値を置きます。曖昧なら右肩の押し安値割れを基準にします。どちらでも良いですが、ルールを混ぜると迷いが増えます。迷いを減らすため、最初は「右肩の押し安値割れで撤退」に固定するとシンプルです。
利確目標:頭の高値を超えないなら“時間”で降りる
分足の世界では、価格だけでなく時間が重要です。右肩を作ってから一定時間(例:10〜20分)で高値更新できないなら、上昇の燃料が弱い可能性が高いです。この場合、ネックライン割れを待たずに、“時間切れ”で撤退するのも有効です。時間切れ撤退は、ダマシで振り回される回数を減らします。
よくある失敗と改善策:初心者が陥りやすい5つの落とし穴
失敗1:形が見えた瞬間に全部売ってしまう
右肩に見えたがそのまま上抜け、置いて行かれて追いかけ買い→高値掴み、という悪循環が起きます。対策は前述の通り、半分利確→残りは条件で撤退の分割です。
失敗2:ネックラインを1ティック割れただけで逃げる
分足はノイズが大きいので、瞬間的な割れで反応するとダマシに引っかかります。対策は、線ではなく帯で見て、実体抜け+出来高増をセットにすることです。
失敗3:出来高を見ているつもりで、絶対値に惑わされる
出来高は銘柄や時間帯で差が大きく、単純な多い少ないでは判断しにくいです。山ごとの比較(頭>左肩>右肩、など)に変えると迷いが減ります。
失敗4:板読みを“当てもの”にしてしまう
板は見せ板などで騙されることがあります。板読みは未来予測ではなく、売り抜けのタイミングを早めるトリガーとして使うと安全です。例えば「壁が厚くなったら一部利確」など。
失敗5:ロットが大きすぎて判断が遅れる
分足の天井判断は数分単位です。ロットが大きいと、少しの逆行で怖くなり、逆に「戻るまで待つ」と粘りやすいです。対策は、最初からロットを小さくし、ルール通りに動ける状態を作ることです。
練習方法:過去チャートで“型”を作る最短ルート
初心者が三尊天井を使えるようになるには、リアルタイムで当てようとするより、過去チャートで検証の型を作る方が早いです。おすすめは次の手順です。
- 材料で急騰した日の分足を20本集める
- 頭・右肩・ネックラインを自分で引く(後から答え合わせする)
- 「出来高が頭でピークだったか」「割れ足の出来高は増えたか」を記録する
- ダマシだったケースの共通点(右肩出来高増、上位足強い、など)をメモする
この作業をやると、「形」ではなく「条件」を見ている感覚が育ちます。条件が育つと、実戦で迷いが減り、売り抜けが機械的になります。
まとめ:三尊天井は“天井当て”ではなく“撤退のルール”にする
分足の三尊天井は、未来を当てるための魔法ではありません。短期資金が集中した局面で、需給が変わった痕跡を拾い、利益を守る撤退ルールとして使うと効果が出ます。ポイントは、①右肩失速で半分利確、②ネックライン帯割れ+出来高増で撤退、③上位足と出来高で偽物を弾く、の3点です。
まずは「逃げる練習」から始めてください。利益を守れるようになると、次は仕掛け(順張り・逆張り)も安定します。分足のパターンは、勝つためというより、負け方を小さくするために使うのが最短です。
実行面のコツ:注文方法と“滑り”を織り込む
分足の転換はスピード勝負ですが、成行を多用すると想定より不利な価格で約定しやすいです。特に急騰銘柄は板が薄く、数ティックの滑りが当たり前に起きます。売り抜けを安定させるには、次の2点を最初から織り込みます。
- 一部利確は指値中心:右肩での利確は慌てなくてよい場面が多いので、売り板の一段下に指値を置き、約定しなければ次の足で調整します。
- ネックライン割れは逆指値(ストップ):ここは逃げ遅れが致命傷になります。帯の下に逆指値を置き、約定価格のブレ(滑り)を許容したうえでロットを小さくします。
「逆指値=損切り専用」と思われがちですが、利確を守るための逆指値は初心者ほど有効です。含み益を削られてから判断すると、ほぼ確実に遅れます。
テクニカルの併用:初心者でも使える“補助輪”は2つだけ
指標を増やすほど迷いが増えます。三尊天井と相性がよく、かつ初心者でも扱いやすい補助輪は次の2つに絞るのが実務的です。
1)VWAP:右肩でVWAPを回復できないと弱い
デイトレではVWAPが“平均コスト”として意識されやすく、右肩の戻り局面でVWAPを上抜けできない、または抜けても維持できないなら、買いの戻りが弱いサインになります。逆にVWAP上で粘るなら、三尊に見えても単なる高値持ち合いの可能性が残ります。
2)短期移動平均(例:5EMAや10MA):右肩での傾きがフラット化したら警戒
頭の直後は平均線が急角度で上向きですが、右肩で傾きが寝てくると、上昇の勢いが落ちています。平均線を割って戻せないなら、ネックライン割れを待つ前に“時間切れ撤退”を検討する根拠になります。
相場環境での使い分け:三尊天井が強く出る日・出にくい日
同じ形でも、日によって効き方が違います。初心者が無駄打ちを減らすために、相場環境の目安を持っておくと良いです。
- 効きやすい:指数が弱い、寄り天が多い、材料株に資金が集中して回転が速い、上髭が増える
- 効きにくい:指数が強い、押し目が全部拾われる、先物主導でリスクオン、出来高が終日増え続ける
特に指数が強い日は、個別の三尊が“押し目”で終わることが増えます。その場合は、ネックライン割れの条件をより厳格にし、「割れ足の出来高増+戻り失敗」を待ってから撤退する方が事故が減ります。
最終チェック:場中で迷わないための10項目
- 上位足(15分・60分)で上昇が一段落している
- 頭で出来高がピーク、右肩で勢いが鈍っている
- 右肩で高値更新に失敗し、反落の足で出来高が増えた
- 買い板が薄くなり、上に厚い売り板(壁)が出た
- 歩み値で大口買いが通っても値が伸びない
- ネックラインは線ではなく帯で定義している
- ネックライン割れは実体抜け+出来高増を条件にする
- 半分利確→残りは条件撤退の2段階になっている
- 逆指値を先に置き、滑りを許容したロットにしている
- VWAPや短期MAで右肩の弱さを補助確認できている
この10項目のうち、最低でも7つ以上が揃う局面だけを「売り抜け強化ポイント」として扱うと、形だけで振り回されにくくなります。


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