ATR拡大初動を捉える“ボラ収縮→拡張”ブレイク戦略:株・FX・暗号資産で再現する監視手順と執行ルール

相場で一番おいしい瞬間は「静かだったのに、急に動き始めた最初の一撃」です。
ATR(Average True Range:平均的な値幅)が縮んだ後、再び拡大し始める“初動”は、株・FX・暗号資産のどれでも再現性が高い局面です。理由は単純で、参加者の多くが様子見になり、ポジションが軽くなり、板・流動性が薄くなることで、ある閾値を越えた瞬間にストップやアルゴ注文が連鎖しやすいからです。

一方で、この手法は「ブレイクしたように見えて、すぐ戻る(だまし)」が最大の敵です。
そこで本記事では、初心者でも実行できるレベルまで手順を落とし込み、“ボラ収縮の定義→仕掛け条件→執行方法→損切り設計→利確の取り方→だまし回避”を、具体例(株・FX・暗号資産)で徹底的に説明します。

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この戦略の核:ボラの「収縮」と「拡張」を数値で定義する

「ボラが低い」「値幅が小さい」は感覚で言いがちですが、手法として再現するには定義が必要です。ここでは最も汎用性が高いATRを使います。ATRは、ローソク足の高値・安値・前日終値とのギャップを含めた“実質的な値幅”を平均した指標で、時間足を問わず使えます。

まず、時間足を決めます。
デイトレ(株):5分足または15分足。
FX(短期):5分足または15分足(ロンドン・NYで動きが出やすい)。
暗号資産(24時間):15分足または1時間足(ノイズが多い銘柄は時間足を上げる)。

次に、ボラ収縮(Volatility Contraction)の定義を作ります。実務的には次の2つで十分です。
(1)ATRが直近の平均との差で低い:例)ATR(14)が過去50本のATR(14)平均の80%以下。
(2)レンジ幅が圧縮:例)直近20本の高値−安値が、過去60本の同指標の下位20%に入る。

どちらか一方でも良いですが、だましを減らすために(1)+(2)の同時点灯を推奨します。
要するに「値幅が小さい状態が統計的に“十分”続いた」ことを機械的に確認するのが狙いです。

なぜATR拡大の初動が取りやすいのか:注文フローの観点

ボラ収縮局面では、次のような状態が同時に起きやすいです。
第一に、短期勢は利幅が取れず撤退し、板が薄くなります。
第二に、レンジの上下に逆指値(ブレイク用の買い・売りストップ)が溜まります。
第三に、企業IR・指標・ニュースなど、トリガーとなる情報が出た瞬間に、アルゴが一斉に反応します。

この結果、レンジ上抜け/下抜けの瞬間に、“指値→成行”への切り替えが連鎖し、ATRが急拡大します。
あなたが狙うのは、拡大し切った後ではなく、拡大が始まった1~3本目です。ここはまだ参加者のポジションが軽く、押し戻しが弱くなりやすい(=伸びやすい)というメリットがあります。

エントリーの基本設計:レンジブレイク+ATR上向きの“同時発火”

この戦略は、ただのブレイクアウトではありません。
「レンジを抜けた」だけだと、出来高や参加者の増加が伴わず、すぐ戻るだましが頻発します。そこで、価格条件(レンジブレイク)ボラ条件(ATRの上向き転換)を同時に要求します。

具体的には次の3段階で判断します。
事前状態:ボラ収縮条件が成立(ATRが低い+レンジ圧縮)。
トリガー:レンジ上限(または下限)をローソク足の実体で抜く。
確証:ATR(14)が前の足より増加し、かつ増加率が一定以上(例:前足比+5%)になった。

“確証”を入れる理由は明確で、価格だけで抜けたように見えても、値幅が伴っていないなら、参加者が増えていない可能性が高いからです。
逆に、ATRが増えた瞬間は、板・約定が動き出した証拠になり、だましを減らせます。

執行の型:成行で叩かない。初動は「指値→成行の条件付き」で取る

初心者がやりがちなのが、ブレイクを見た瞬間に成行で飛びつくことです。
しかし初動はスプレッドが一時的に広がることが多く、特に暗号資産や小型株では、飛びつきがそのまま高値掴みになります。

実務的におすすめの執行は2パターンです。
(A)ブレイク足の押し目(リテスト)待ち:レンジ上限を抜けた後、上限付近まで押して止まったら買う。
(B)条件付き即時エントリー:抜けた瞬間ではなく、次の足で「高値更新+ATR増加」が同時に出たら成行。

(A)は勝率寄り、(B)は取り逃しを減らすバランス型です。
株の寄り直後などスピードが速い局面は(B)が機能しやすく、FXの欧州時間や暗号資産の深夜帯の急変動は(A)が有利になりやすい、というイメージです。

損切り設計:固定幅ではなく「ATR基準」で“だまし”を許容しない

この戦略の損切りは、固定の円幅・pips幅にすると崩れます。なぜなら、狙っているのが「値幅が変化する局面」だからです。
ここはATRで統一するのが合理的です。

基本形は次の通りです。
ロングの場合:レンジ上限−k×ATR(kは0.5~1.0を目安)。
ショートの場合:レンジ下限+k×ATR

重要なのは“レンジに戻ったら撤退”という思想です。
ブレイク戦略でレンジ回帰が起きた時点で、そのブレイクは失敗です。ここを引っ張ると、だましに付き合わされて資金が削れます。
だから損切りは、ブレイクの前提(レンジ脱出)が崩れた瞬間に置きます。

利確設計:伸びる時は伸びる。だから「分割利確+トレーリング」を標準にする

ATR拡大初動は、伸びる日は想像以上に伸びます。逆に、伸びない日はすぐ息切れします。
この非対称性を活かすため、利確は一括よりも分割が向きます。

実装しやすい型は次です。
第一利確:エントリーから+1.0×ATRで半分を利確。
残り:直近の押し安値(または移動平均)を割ったら手仕舞い、またはトレーリングストップで追随。

第一利確の狙いは、だましや小さな伸びでも損益を安定させることです。
残りの狙いは、トレンドが出た日の“ホームラン”を取り切ることです。
この組み合わせは、初心者でもメンタルが崩れにくく、結果的にルールを守りやすくなります。

だましを減らす3つのフィルター:出来高・時間帯・上位足

だましの多くは「参加者が少ない」「上位足の抵抗にぶつかる」「出来高が伴っていない」時に起きます。
そこで、次の3つをフィルターとして使います。

1)出来高(またはティック回数)の増加
株なら出来高、FXならティック数やボリューム指標、暗号資産なら取引量です。ブレイク足で“明確に増えている”ことを条件にします。
目安としては、直近5本平均の1.5倍以上を推奨します。増えていないブレイクは、単に板が薄くて抜けただけの可能性が高いです。

2)時間帯
株:寄り付き直後~10時台、または後場寄り、または大引け前に動きが出やすいです。
FX:ロンドン開始、NY開始、重要指標の直後。
暗号資産:米国時間の流動性が増える時間帯、あるいは材料発表直後。
“参加者が増える時間帯”に限定すると、だましが減ります。

3)上位足の節目(抵抗・支持)
5分足でブレイクしても、1時間足の戻り高値や日足の節目にぶつかると止まりやすいです。
上位足の抵抗までの距離が小さい(例:0.5×ATR未満)なら、期待値が落ちるので見送ります。

具体例(株):寄り付き後の“静→動”をATRで取る

例えば、前日まで材料がなく、朝の寄り付きも小動きで始まった銘柄を想像してください。最初の30分は狭いレンジで揉み合い、ATR(14)が低下し続けます。
この時点で、あなたは「今日は動かない」と決めつけません。むしろ、動き出す準備が整っていると考えます。

手順はこうです。
まず5分足で、直近20本の高値・安値でレンジ上限と下限を引きます。次にATR(14)が過去50本平均との差で十分低いかを確認します。ここまでが“収縮”の確認です。
その後、ニュースやセクター物色の流れで買いが入った瞬間、レンジ上限を実体で抜け、同時に出来高が増え、ATRが前足より増え始めます。ここが“拡張の初動”です。

エントリーは、抜けた瞬間の成行ではなく、次の足で高値更新が出たところ(条件付き即時)か、レンジ上限付近まで押して止まったところ(リテスト)に置きます。
損切りはレンジ上限の少し下(−0.7×ATR)に置き、第一利確を+1.0×ATRに置きます。
もし本当にトレンドが出る日なら、第一利確後も押し安値を割るまで伸び続けます。これが“分割利確+追随”の強みです。

具体例(FX):レンジ収縮後の欧州時間ブレイクを取りに行く

FXは、東京時間がレンジになり、ロンドン開始で一気に動くことが多いです。ここはATR拡大初動の教科書です。
例えば、東京時間でドル円が20~30pipsの狭いレンジで推移し、ATR(14)が低下している状況を想定します。

あなたが見るべきは「レンジ上限・下限」と「ロンドン開始前後のボリューム(ティック増)」です。
ロンドン開始で上限を実体で抜け、ATRが上向きに転じたら、次の足の高値更新でエントリー(条件付き即時)を使います。
損切りはレンジ上限の下に0.5~0.8×ATR、第一利確は+1.0×ATR、残りはトレーリングで追随します。

FXはスプレッドが比較的安定していますが、指標直後は急拡大します。指標の直後に同じことをやると滑りが増え、期待値が落ちることがあります。
その場合は、最初の一撃に飛びつかず、必ずリテスト待ち(押し目)に寄せるのが現実的です。

具体例(暗号資産):24時間市場の“無風→急変”を時間足で吸収する

暗号資産は、ボラが高い銘柄ほどノイズも多く、短期足だけで見るとだましが増えます。ここでは15分足または1時間足で設計します。
例えば、数時間にわたって値幅が縮み、レンジが明確になり、ATRが低下している局面を探します。

暗号資産では、板が薄い時間帯にレンジ上限を抜けてしまうことがあり、これが典型的なだましになります。
だからこそフィルターが重要で、取引量の増加(直近平均の1.5倍以上)と上位足の節目までの距離を必ず確認します。
条件を満たしたブレイクだけを取り、損切りはレンジ回帰で即撤退します。

暗号資産は急伸後の急落も早いので、第一利確は機械的に入れた方が良いです。
「半分利確して、残りを追随」という型は、暗号資産で特に効果的です。

監視リストの作り方:ATRが“低い順”で並べて待つ

この戦略は、チャンスを探して追いかけるより、先に仕込んで待つ方が勝ちやすいです。
具体的には、対象(銘柄・通貨ペア・コイン)をスクリーニングし、ATR比率(ATR/価格、またはATRの前年差)で“静かなもの”から監視します。

株なら、前日出来高が一定以上ある銘柄に絞った上で、寄り付き後のレンジが収縮しているものを抽出します。
FXなら、東京時間でレンジ化したペアを候補にします。
暗号資産なら、出来高が維持されているメジャー銘柄を中心に、レンジ収縮を探します。
そして「レンジライン」と「ATR上向き」の同時発火だけを待ちます。

負け方の設計:連敗を想定して“1回の損失”を小さく固定する

ブレイク戦略は、だましで小さく負けて、当たりで大きく勝つ設計です。
つまり、連敗は普通に起きます。そこで重要なのは、1回の損失を口座に対して小さく固定することです。

目安としては、1回の損失を口座資金の0.5%以下に抑えると、心理的に継続しやすくなります。
損切り幅がATRで決まるなら、ロットは逆算できます。
「損切り幅(円・pips・ドル)×数量=許容損失額」になるように数量を調整してください。ここを曖昧にすると、だまし1回でメンタルが壊れます。

よくある失敗と修正:伸びない相場で無理に回さない

失敗例はほぼパターン化しています。
(1)収縮が不十分なのにブレイクに飛びつく。
(2)出来高が増えていないのにブレイクを信じる。
(3)上位足の抵抗が近いのに仕掛ける。
(4)レンジに戻ったのに「そのうち上がる」と粘る。

修正はシンプルです。
収縮条件を厳しくし、出来高フィルターを必須にし、上位足の距離条件を入れ、レンジ回帰で即撤退する。
これだけで、無駄な負けが減り、当たりを伸ばす余地が増えます。

まとめ:ATR拡大初動は“待つ技術”で勝率が上がる

ATR拡大初動を取る戦略は、派手なテクニックではありません。
むしろ、やることは地味です。収縮を定義し、レンジを引き、出来高と時間帯と上位足でフィルターし、条件が揃った瞬間だけ仕掛ける。
ただし、この地味さがそのまま期待値になります。追いかけず、待って、初動だけを取る。これを徹底できれば、株・FX・暗号資産のどれでも武器になります。

最後に一つだけ。
この手法は「当たるかどうか」ではなく、「負けを小さく、勝ちを伸ばす」設計で成り立っています。
だからこそ、損切りとロット管理を先に固定し、ルールを守れる形に落とし込んでください。ここまでできれば、ブレイクのだましに振り回されず、静→動の最初の一撃を取りに行けます。

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