投資部門別データで「個人売り・海外買い」を捉える需給トレード戦略

株式

「なぜ上がるのか」をファンダメンタルだけで説明できない局面は多いです。特に日本株は、短期の値動きが需給(誰が買って誰が売っているか)に強く引っ張られます。その“誰”を推定する一つの近道が、投資部門別データ(投資家別売買動向)です。

本記事では、投資部門別データを使って個人投資家が売っているのに、海外投資家が買っている局面を抽出し、短期〜中期(数日〜数週間)でリターンを狙う手順を具体化します。結論から言うと、海外投資家の継続買いはトレンドの燃料になりやすく、個人の売りは押し目として吸収されやすいことが多い。ここを“再現性のある型”に落とし込むのが目的です。

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投資部門別データとは何か(まずここを誤解しない)

投資部門別データは、株式市場の売買を投資家の属性で区分し、売りと買いの差(差引)を示す統計です。代表的な区分は、海外投資家、個人、投信、事業法人(自社株買いを含むことが多い)、信託銀行、証券会社自己などです。通常は市場全体の集計(週次)として公表され、速報性と“群れ”の把握に強みがあります。

重要なのは、これは「特定銘柄」ではなく「市場全体の傾向」を示すのが基本だという点です。では、なぜ銘柄トレードに使えるのか。答えは、海外投資家の買いが強い週は、指数寄与度が高い大型株・流動性の高い銘柄群に資金が集中しやすく、その中で“個人の逆張り売りが吸収される”構図が出やすいからです。つまり、投資部門別は風向き(マクロ需給)で、個別の銘柄は風を受ける帆です。風向きが合っている時に、帆の形(チャート・出来高・材料)で絞るのが現実的な使い方です。

「個人売り・海外買い」が効きやすいメカニズム

個人投資家は短期の値幅取りや含み益の確定、あるいは下落への恐怖で投げやすく、上昇トレンド中でも押し目で売りが出ます。一方、海外投資家は指数・セクター配分、クオンツ、ファンドの資金流入などで一定期間“買いが継続”しやすい。この構造が噛み合うと、次のような現象が起きます。

1つ目は、上昇中の押し目で個人の売りが出るが、海外の買いがそれを吸収し、価格は押し目で止まりやすい。2つ目は、上昇が続くと個人の売りは枯れ、上値が軽くなる。3つ目は、海外の買いが続く限り、戻り売りが出ても再び高値を試す。要するに、押し目が“買い場化”しやすいということです。

逆に言えば、海外買いが止まった瞬間にこの前提は崩れます。したがって、戦略の肝は「海外買いが続いている間に、個人売り由来の押し目を拾い、止まったら撤退する」に尽きます。

この戦略が向いている銘柄・向かない銘柄

向いているのは、海外投資家が入りやすい銘柄です。実務的には、流動性(出来高・売買代金)が十分で、指数連動の資金が入りやすいことが条件になります。具体的には、TOPIX採用の大型株、プライムの主力銘柄、セクターETFの構成比が高い銘柄などが候補になります。

向かないのは、出来高が薄い小型株、値が飛びやすい低位株、材料一発で上下するテーマ株です。これらは海外フローよりも個別材料・板の薄さが支配的になりやすく、「個人売り・海外買い」という構図がトレードの根拠になりにくい。例外は、海外クオンツが小型に入るような指数イベントがある場合ですが、初心者が狙う必要はありません。

データの取り方:初心者が迷わない最短ルート

初心者が最短で再現するなら、次の2階層でデータを持つのが現実的です。

(A)市場全体の投資部門別データ(週次):海外が買い越し、個人が売り越しになっているかを確認し、「今はこの戦略を稼働してよい相場か」を判定します。ここで海外が売り越しなら、無理に逆らわない方が期待値は落ちにくいです。

(B)個別銘柄の需給の代理指標(日次):銘柄レベルでは投資部門別の直接データが入手しづらいケースが多いので、代替として「売買代金の増減」「VWAPと終値の位置」「高値更新の持続」「信用残・貸借(取れる場合)」「ニュースの有無」「セクターの強弱」を組み合わせます。つまり、週次の風向きに対して、日次の足で“風に乗っている帆”を探します。

セットアップ定義:エントリー前に満たすべき条件

ここからが実務です。以下の条件を満たす局面を「セットアップ成立」と定義します。条件は多いですが、チェックは慣れると数分でできます。

条件1:市場の風向き:直近1週または2週で、海外が買い越し、個人が売り越し(少なくとも個人は買い越しになっていない)。さらに、指数(TOPIXや日経平均)が25日移動平均線付近以上、もしくは高値圏で推移している。これは海外買いが“逆風の中の買い”ではなく、“追い風の買い”である確度を上げるためです。

条件2:銘柄の適性:売買代金が一定以上(目安として数十億円/日クラス)で、板が厚く、スプレッドが狭い。さらに、セクターも相対的に強い。海外の買いはセクター配分として入ることが多いので、セクターが弱いと個別だけ強い状況は長続きしにくいです。

条件3:チャートの形:直近で高値を更新した、または高値圏で持ち合っている。大きく下落トレンドの銘柄を“需給で上げる”のは難易度が上がります。押し目買い戦略なので、上昇トレンドの押し目を狙います。

条件4:押し目の質:下落時に出来高が減る、あるいは陰線が連続しても値幅が縮む。これは個人の利確や恐怖の売りが出ているが、下方向への勢いが弱いサインです。逆に、下落で出来高が増え、安値を次々に割るなら撤退候補です。

エントリーの型:押し目を“待ってから”取る

この戦略の失敗の多くは「上がっているから飛び乗る」ことです。海外買い相場は上昇が続くこともありますが、飛び乗りはリスクが高い。型は2つに絞ります。

型1:VWAP(または5日VWAP)回帰で拾う。日中のVWAPは機関の平均コストになりやすく、押し目がそこで止まりやすい。条件は「VWAP付近で下げ止まり、下ヒゲや出来高減少が確認できる」こと。エントリーは、VWAPを明確に回復した後、あるいはVWAP上での反発が確認できた後にします。損切りはVWAP明確割れ、もしくは直近押し安値割れです。

型2:高値圏の持ち合い上放れを買う。海外買いが続いていると、高値圏での売り圧力が吸収され、ある瞬間に上へ抜けます。条件は「持ち合い中に出来高が枯れ、抜ける時に出来高が増える」こと。エントリーはブレイクアウト直後ではなく、抜けた後の押し(いわゆるリテスト)で拾う方が勝率が上がりやすいです。損切りはブレイクライン割れ。

どちらも共通しているのは、“海外買い=追い風”を確認したうえで、リスクの小さい位置(押し目)で入ることです。

手仕舞いの設計:利確よりも撤退ルールが重要

需給トレードは、ド派手な利確よりも「風向きが変わった時に早く降りる」ほうが成績が安定します。以下の撤退ルールを先に固定してください。

撤退ルール1:市場全体の海外フローが反転。週次で海外が売り越しに転じ、個人が買い越しに変わってきたら要注意です。特に「海外が売り、個人が買い」は上昇の終盤や天井圏で起きやすい構図です。これが出たら、保有は軽くするか撤退を基本にします。

撤退ルール2:銘柄が押し安値を割る。押し目買いの前提が崩れています。VWAP割れや25日線割れなど、機械的に決めて良いです。

撤退ルール3:上昇しているのに出来高が急減し、上髭が増える。買いの勢いが落ち、売りが優勢になっているサインです。海外買いが止まっている可能性があります。

利確は「直近高値更新の失敗」「急騰後の乖離(例:5日線からの乖離が急拡大)」「想定リターン到達(R倍)」など、複数の型で構いませんが、撤退を優先してください。

具体例:週次フローから“狙う週”を決め、押し目で入る

ここでは架空の例で、手順をそのまま再現できる形にします。

(1)週末に投資部門別データを確認し、海外が2週連続で買い越し、個人が2週連続で売り越し。指数は直近高値を更新し、25日線の上。ここで「来週はこの戦略を稼働」と決めます。

(2)月曜の寄り前に監視銘柄を10〜20に絞る。条件は「大型・流動性」「セクターが強い」「直近で高値更新か高値圏持ち合い」。ニュースの有無は補助で、材料がなくても需給だけで上がる銘柄はありますが、材料があると押し目が浅くなりがちです。

(3)寄り付き後、勢いよく上がる銘柄に飛び乗らない。むしろ、上げた後に押してVWAPに近づく銘柄を待ちます。押しが入った時に出来高が減り、VWAP付近で下ヒゲが出たら、VWAP回復を確認してエントリー。

(4)損切りは押し安値割れ。利確は直近高値更新後の失速や、想定R倍到達で分割利確。上昇が続くなら一部を伸ばし、海外フロー反転の兆候が出たら全撤退。

この流れで重要なのは、週次の判断(稼働/停止)と、日中の実行(押し目のみ)を分離することです。これで感情の介入が減り、再現性が上がります。

失敗パターンと回避策

失敗1:海外買いの“最後の週”で飛び乗る。海外買いは永遠に続きません。最後の週は上昇が加速して見えることがあり、個人が買いに回りやすい。週次で個人が買い越しに転じたら、むしろ警戒です。回避策は、海外買いが続いていても、押し目が浅すぎる銘柄は見送ること。押し目がない上昇は崩れも速いです。

失敗2:セクターが弱いのに個別だけ買う。海外資金はセクターで入ることが多く、逆風セクターの個別は伸びづらい。回避策は、同セクターの複数銘柄のチャートを並べ、セクター全体が底上げされていることを確認することです。

失敗3:押し目に見えて実は分配(ディストリビューション)。高値圏で出来高を伴う陰線が増え、反発しても高値を更新できないのは分配のサインです。回避策は、押し目の局面で出来高が増える銘柄を避けること。押し目は出来高が減るのが理想です。

リスク管理:初心者が最初に守るべき数値ルール

初心者がまず守るべきは、複雑な指標よりも損失の上限です。

(1)1回のトレード損失上限(例:口座資金の0.5〜1%)を固定します。銘柄の値動きは読めませんが、損失はコントロールできます。

(2)逆指値は“置く”のではなく“前提が崩れた場所”に置きます。押し目買いなら押し安値割れ、VWAP戦術ならVWAP明確割れが分かりやすい。

(3)同じセクターに偏りすぎない。海外が買っているのがセクター配分の可能性が高い場合、同セクターの複数銘柄を同時に持つと、セクター反転で一斉にやられます。銘柄数を増やすより、相関を下げる意識が重要です。

検証のやり方:再現性を高める「週次→日次」ログ

この戦略は、検証の型がはっきりしています。以下のログを残すだけで改善が進みます。

(A)週末ログ:海外差引、個人差引、指数の位置(25日線上か下か)、強いセクター、弱いセクター、来週稼働/停止の判断。

(B)銘柄ログ:監視銘柄リスト、エントリー理由(VWAP回復、リテストなど)、損切り位置、利確ルール、結果、反省点。

(C)振り返り:勝ったトレードでは「押し目の出来高が減っていたか」「セクターは強かったか」「週次の風向きは継続していたか」を確認。負けたトレードでは「風向きが変わっていたのに稼働した」「飛び乗った」「押し目に見えて分配だった」のどれかに分類します。

検証で重要なのは、勝ち負けよりも“分類”です。分類できれば、次にやること(フィルター強化、稼働停止、エントリー改善)が明確になります。

よくある疑問(初心者がつまずくポイント)

Q:投資部門別が週次なら、遅すぎない?
遅い部分はあります。だからこそ「日中の飛び乗り」を避け、週次は“稼働の許可”として使います。日次の判断はチャートと出来高で補う。役割分担が重要です。

Q:個人売り・海外買いが必ず上昇につながる?
必ずではありません。海外買いでも相場が崩れる週はあります。そのために撤退ルールを先に置きます。前提が崩れたら撤退する設計にすることで、期待値を取りに行きます。

Q:スキャルピングにも使える?
使えますが、スキャルは板・歩み値の精度が重要です。本戦略の強みは“数日〜数週間の押し目”なので、まずはスイング寄りで再現する方が安定します。スキャルはその後に拡張してください。

まとめ:この戦略の要点(実行チェック)

最後に、実行の要点だけを短くまとめます。

(1)週次で海外買い・個人売りの局面だけ稼働する。
(2)狙うのは流動性が高く、セクターが強い銘柄。
(3)入るのは押し目(VWAP回復、持ち合い上放れのリテスト)。飛び乗らない。
(4)撤退ルールを固定し、風向きが変わったら降りる。
(5)週次→日次のログで分類し、フィルターを磨く。

「需給」は一見すると曖昧ですが、データとルールに落とすと武器になります。投資部門別データはその入口として十分に強力です。まずは、直近数週間のデータを見ながら、あなたの監視銘柄にこの型を当てはめてください。

精度を上げる追加フィルター(慣れてきたらここを足す)

基本形だけでも運用できますが、成績が頭打ちになったらフィルターを追加します。目的は「海外買いの中でも勝ちやすい局面」を選別することです。

フィルター1:海外買いの“質”を見る(連続性と加速度)
海外買いが1週だけ突出しているより、2〜4週連続で買い越している方がトレンドが伸びやすいです。さらに、差引が週ごとに増えている(加速度がある)局面は強い。ただし加速度が極端になると天井が近いこともあるため、指数が急騰している場合は押し目が浅い銘柄を避けます。

フィルター2:事業法人(自社株買い)と同時に強い銘柄を優先
事業法人の買い越しが強い局面は、企業側の需給支援が入っている可能性があり、押し目が硬くなりやすいです。市場全体で事業法人買いが目立つ週は、同戦略の追い風になりやすいと考えられます。

フィルター3:急落耐性(下げても戻る銘柄)を選ぶ
上昇相場でも、場中に指数が崩れる日はあります。その時に相対的に下げが浅く、引けにかけて戻す銘柄は“強者”です。具体的には、指数が陰線の日に、銘柄は下ヒゲを残して陽線気味、または終値がVWAP上に残るような動きです。こういう銘柄は海外の継続買いが入りやすい。

エントリー精度を上げる場中の見方(VWAPだけでは足りない)

押し目買いの成功率を上げるには、「押しが止まったこと」をより早く、より確度高く判断する必要があります。ここで役立つのが、板と歩み値の“粗い”観察です。高度な板読みは不要ですが、次の3点は見てください。

(1)下落中に成行売りが減っているか:押し目の後半で成行売りが減り、約定が落ち着くなら、個人の投げが一巡している可能性があります。逆に、押しているのに成行売りが増えるなら、押し目ではなく崩れです。

(2)VWAP付近で買い板が“厚くなる”のではなく“消えない”か:見せ板で厚く見せるケースはあるので、厚さよりも「当たっても引かない」「当たっても次の板が出る」方が重要です。買い板が薄いのに値が下がらないなら、裏で吸収が入っている可能性があります。

(3)反発の最初の戻りで出来高が少し増えるか:押し目の底は出来高が減り、反発の1本目で少し増えるのが理想です。反発しているのに出来高が増えない場合、単なる自律反発で終わることがあるため、ロットを小さくします。

イベントリスクの扱い(FOMC・日銀・決算期の注意点)

海外フローが強くても、イベント前後はボラティリティが跳ね、押し目が“押し過ぎ”になることがあります。初心者が取るべき対応はシンプルです。

(1)重要イベント前日は新規を減らす。持つならロットを半分にする。
(2)イベント直後は、方向が出てから押し目を待つ。初動に飛び乗らない。
(3)決算は個別要因が強いので、決算発表日を跨ぐなら想定損失(ギャップ)を許容できるロットに落とす。許容できないなら跨がない。

ポジションサイズの決め方(“銘柄の値動き”で調整する)

同じ金額を毎回入れると、ボラが高い銘柄でブレが大きくなります。初心者は、値動きに応じてロットを調整すると安定します。

具体的には、損切りまでの距離(円)×株数=許容損失(円)となるように株数を決めます。例えば、許容損失が2万円で、損切りがエントリーから-100円なら200株です。損切りが-50円なら400株になります。こうすると、どの銘柄でも“1回の失敗”の痛みが同じになり、メンタルが崩れにくい。

この戦略をFX・指数にも応用する考え方

本記事は日本株を想定していますが、考え方はFXや指数にも応用できます。要は「主体別フロー」を把握し、順風の時だけ押し目を取ることです。

FXなら、IMMポジションや投機筋の偏り、金利差、リスクセンチメントなどが“風向き”に相当します。指数なら、先物の建玉、ETFフロー、VIXなどが補助になります。ただし、データの更新頻度と反応速度が違うので、同じルールをコピペせず、役割(稼働/停止の許可、日次の実行)だけを移植してください。

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