200日移動平均線(以下、200日線)は、日足で「長期トレンドの境界線」として意識されやすい水準です。とくに下落トレンドからの回復局面では、株価が上から200日線に“初めて”触れに行く瞬間、あるいは上抜け後に“初めて”押し戻される瞬間に、機関・アルゴ・短期勢の注文が重なり、短期的な値幅が出やすい傾向があります。
本記事は「200日線に初回タッチしたときの攻防」を、短期(数分〜数日)で収益機会に変換するための設計図です。一般論では終わらせず、前提条件・板と歩み値の見方・エントリーの型・撤退基準・損益比の作り方まで、実務レベルで落とし込みます。
- 200日線「初回タッチ」が効きやすい理由(注文が集まる構造)
- まず押さえる前提:この戦略が有効な「相場環境」
- 200日線「初回タッチ」短期戦略の全体像:2つの型
- 型1:200日線で反落を取る(戻り売り)
- 型2:200日線突破後の「初押し」を取る(ブレイク→押し目)
- 「初回タッチ」を“初回”にするためのデータの見方(見落としがちな罠)
- 具体例:日本株の“あるある”パターンで組み立てる
- 損益比を崩さない「ポジションサイズ」の決め方
- 板・歩み値で勝率を上げる観察ポイント(実戦チェック)
- よくある失敗と回避策
- 検証のやり方:再現性を作る最短ルート
- 実装用チェックリスト(エントリー前に必ず確認)
- まとめ:200日線は“節目”ではなく、短期の「注文の戦場」
200日線「初回タッチ」が効きやすい理由(注文が集まる構造)
200日線は、ファンドや裁量勢が「長期の地合い」を判断するために参照しやすい指標です。ここで重要なのは、200日線の“値”そのものより、その周辺で発生する注文の偏りです。
初回タッチで起きやすい現象は、だいたい次の3つに集約されます。
- 利確売りの集中:底打ち〜反発の過程で握っていた勢が、200日線手前で利確しやすい。
- 新規ショートの試し売り:200日線を「戻り売りの基準」として見ている短期勢が、初回接触で試し玉を入れやすい。
- ブレイク勢の逆指値:200日線を上抜ける想定の買い手が、直前で指値・成行を置き、上抜け後は押し目で再び買いが出やすい。
要するに、200日線近辺は売りも買いも集まり、短期の“攻防”が発生しやすい場所です。攻防があるなら、ルール化しやすい。これが短期戦略に落とし込める理由です。
まず押さえる前提:この戦略が有効な「相場環境」
200日線初回タッチは万能ではありません。むしろ、相場環境が悪いと「ただの抵抗線に叩かれて終わる」か「ダマシに振り回される」だけになります。以下の条件を満たすと、統計的に“攻防が生じやすい”側に寄ります。
前提A:日足の文脈(トレンドの位置)
次のいずれかに当てはまる局面が狙い目です。
- 下落基調→底打ち後の回復局面:75日線や25日線を回復し、次の関門が200日線になっている。
- 長期レンジ:200日線が横ばいで、株価が何度も跨いでいるのではなく、しばらく離れていた後の再接近。
逆に、200日線が急角度で下向きのまま、出来高も細っているなら、初回タッチは「戻り売り優勢」になりがちです。その場合は売り型を優先し、買いで無理をしません。
前提B:需給イベントの有無(材料・指数)
日本株では、指数(先物)主導の日は、200日線のような節目が機能しやすい一方、材料株の急騰日は節目が“溶ける”ことがあります。ここは割り切りです。
- 指数主導(TOPIX/日経先物が方向を作る):200日線の反応が比較的きれい。
- 材料主導(IR/決算/テーマ再燃):200日線を無視して飛ぶことがある。板・歩み値の強さが優先。
200日線「初回タッチ」短期戦略の全体像:2つの型
実運用では、型を2つに分けるとブレません。
- 型1:200日線で反落を取る(戻り売り・短期ショート)
- 型2:200日線を突破して押し目を取る(ブレイク後の短期ロング)
同じ“200日線”でも、やることは真逆です。ここを混ぜると、トレードが破綻します。どちらの型で戦うかは、200日線近辺の注文の強弱(板・歩み値・出来高)で決めます。
型1:200日線で反落を取る(戻り売り)
狙う局面
「上から200日線に近づいてきたが、勢いが落ちている」局面です。典型は、日足で陽線が続いた後、直近2〜3日で上値が重くなり、出来高が減っているケースです。
エントリー条件(具体)
以下を同時に満たすと、反落確率が上がります。
- 接触条件:株価が200日線の±0.3%以内に到達(例:200日線が1,000円なら、997〜1,003円)
- 失速条件:5分足で高値更新に失敗し、上ヒゲが目立つ(同値〜1ティック上で叩かれる)
- 出来高条件:200日線接触前より、接触後の5分足出来高が減る(勢いが鈍る)
- 歩み値条件:成行買いが連続しても値が伸びず、約定が吸収される(買いの“効き”が弱い)
この「買いが入っているのに上がらない」が最重要です。逆に、成行買いが連続し、板が薄いのに上へスルスル抜けるなら、型1はやりません。
エントリー方法(2パターン)
パターンA:200日線タッチ直後の戻り売り
200日線に触れた直後、1〜3分で反転の兆し(上ヒゲ、同値で叩かれる、買い板が薄くなる)が出たら、戻りを待たずに小さく入ります。損切りが明確に置けるからです。
パターンB:1回目の下落→戻しで売る
初回タッチからいったん下落し、5分足で戻したところ(たとえば下落幅の38〜61%戻し)で売ります。こちらは約定が落ち着きやすく、損切り幅が管理しやすい一方、リバが強い日は置いて行かれます。
損切り(撤退)基準
戻り売りは、損切りを曖昧にすると一撃で持っていかれます。基準はシンプルに固定します。
- 価格基準:200日線を0.5%明確に上抜け(例:1,000円の200日線なら1,005円)し、5分足終値で維持したら即撤退
- 板基準:売り板が薄くなり、買い板が厚く積み直され、成行買いが増えて値が伸びる=「ブレイクモード」への切替を確認したら撤退
利確の考え方(短期で確実に回収する)
200日線反落は、常に大きく崩れるとは限りません。欲張りすぎると戻されます。利確は段階化が強いです。
- 第1利確:直近の5分足押し安値(またはVWAP)までで半分回収
- 第2利確:25日線や前日高値など、次の節目で残りを回収
- 伸びたら:出来高が減り、歩み値の成行売りが鈍れば、残りは機械的に手仕舞い
型2:200日線突破後の「初押し」を取る(ブレイク→押し目)
狙う局面
200日線を上抜けると、売り方の買い戻しとブレイク勢の追随が重なり、短期で勢いが出ることがあります。ただし、上抜け直後に飛びつくと、初動の利確に踏まれて負けやすい。そこで、初押し(最初の押し目)だけを狙います。
上抜けの「本物」を判定するチェック
- 5分足終値で200日線を上回って確定(ヒゲで超えただけは無視)
- 上抜け足の出来高が、直前5本平均の2倍以上
- 歩み値に成行買いが連続し、1ティック飛びで売り板が消える局面がある
- 上抜け後、次の5〜15分で急落せず、押しは浅い(買いが下を支える)
エントリー手順(初押しの取り方)
基本は「200日線の上で押して、再上昇に転じた瞬間」です。
- 押しの深さ:上抜け幅の30〜60%の押し(例:上抜けで+2.0%走ったなら、-0.6〜-1.2%程度の押し)
- 反転サイン:5分足で下ヒゲ→次足で高値更新、もしくはVWAP回復を終値で確認
- 板の確認:押しの最中に投げが出ても、買い板が吸収して「下がりにくい」状態
ここでのコツは、押している最中に買わないことです。押しが終わった証拠(5分足終値での回復)を見てから入ると、損切りが小さく、再現性が上がります。
損切り(撤退)基準
- 200日線割れを終値で確定したら撤退(ヒゲは無視。終値で割れたら負けを認める)
- 出来高が急減し、歩み値で成行買いが消え、上値を追わなくなったら撤退(“燃料切れ”)
利確の考え方
初押し買いは、当たりなら短期で伸びやすい一方、伸びなければ“ただの上抜けダマシ”です。利確もルール化します。
- 第1利確:上抜け高値の更新で半分回収(ブレイク継続を確認したら利益を確定)
- 第2利確:直近の日足抵抗帯(前回の急落起点、窓、出来高の多い価格帯)で回収
- 伸び切り:5分足で出来高ピークアウト後に失速したら残りは即手仕舞い
「初回タッチ」を“初回”にするためのデータの見方(見落としがちな罠)
200日線は「初回」かどうかで意味が変わります。初回のつもりでも、直近数か月で何度も接触していたら、優位性が薄れます。チェックは簡単です。
- 日足で過去60営業日を見て、200日線に触れていないこと(ヒゲタッチも含めて未接触が理想)
- 200日線が横ばい〜緩やかであること(急角度だとダマシが増える)
- 出来高が極端に枯れていないこと(流動性がないと板で振られる)
具体例:日本株の“あるある”パターンで組み立てる
ここでは数字を置きます。銘柄は仮定です。
例1:戻り売り(型1)
前提:株価は3週間で800円→960円まで反発。200日線は1,000円。前日終値は980円。寄り付き後、1,002円まで上げたが、その後1,000円近辺で足踏み。
観察:1,002円の高値更新に失敗。歩み値は成行買いが入るが、1,000〜1,002円で吸収される。5分足出来高も減少。ここで1,000円付近で売り(小ロット)。
損切り:1,005円を5分足終値で超えたら撤退(最大損失0.5%程度)。
利確:まずVWAP(仮に992円)で半分、次に押し安値の985円で残り。損小利小でも、再現性で積み上げる設計です。
例2:ブレイク後の初押し(型2)
前提:200日線は1,000円。寄り付き後の上抜けで1,020円まで上昇(+2.0%)。上抜け足の出来高は直前平均の2.5倍。売り板が数回1ティック飛びで消えた。
押し:その後、利確売りで1,010円まで押す(上抜け幅の約50%押し)。ここで投げが出ても買い板が吸収。次の5分足で1,015円を終値で回復し、高値を更新し始めたタイミングで買い。
損切り:200日線(1,000円)を5分足終値で割れたら撤退。
利確:1,020円更新で半分、日足抵抗帯の1,050円付近で残り。伸びなければ“燃料切れ”で早めに降ります。
損益比を崩さない「ポジションサイズ」の決め方
短期トレードで勝率を上げても、損切りが遅いと全て消えます。ここは機械化します。
1回の損失上限を、口座資金の0.2〜0.5%に固定し、その範囲で株数を調整します。たとえば資金200万円で0.3%なら6,000円。損切り幅が0.5%なら、建てる金額は6,000円÷0.005=120万円相当まで。値嵩株なら株数が小さくなり、低位株なら株数が増える。これで“銘柄の値段”に左右されず、損失を一定化できます。
板・歩み値で勝率を上げる観察ポイント(実戦チェック)
200日線付近は、テクニカルだけでなく板・歩み値の“質”がモノを言います。次の観察は、短期の判断を一段上げます。
- 吸収(absorption):成行買いが出ても価格が上がらない=上に大口売りがいる可能性(型1優位)
- 板の薄化:売り板が薄くなり、買いが来るたびに1ティック飛ぶ=上抜けが走りやすい(型2優位)
- 成行比率の変化:指値優勢→成行優勢に切り替わる瞬間は初動の合図になりやすい
- 出来高のピークアウト:ブレイク直後に出来高が最大化し、その後減ったら失速しやすい(利確優先)
よくある失敗と回避策
失敗1:200日線“手前”で待ちすぎて、抜けた瞬間に慌てて飛びつく
対策:型2は「上抜け確認→初押し」だけ。上抜け初動を取りにいかないルールにします。
失敗2:反落狙いなのに、損切りが“気持ち”になる
対策:0.5%上抜け+5分足終値で固定。板が強くなったら即撤退。例外を作らない。
失敗3:初回タッチだと思ったら、実は何度も触れていた
対策:過去60営業日で未接触を確認。触れていたら“初回プレミアム”は捨て、別の根拠(出来高、材料、需給)で判断する。
検証のやり方:再現性を作る最短ルート
この戦略は、検証の粒度が成果を決めます。おすすめは「20事例だけ深く見る」やり方です。
- 条件:過去1年で、200日線に初回タッチした事例を20件抽出
- 分類:型1(反落)/型2(初押し)/ノートレ(見送り)に分ける
- 記録:タッチ時の出来高、板の薄さ、歩み値の成行連続、5分足の形、損切り幅、最大順行幅(MFE)を残す
「自分がよく負けるパターン」を先に潰すと、勝率は急に上がります。たとえば“出来高が枯れている銘柄でやると振られる”なら、流動性フィルター(出来高、売買代金)を入れるだけで改善します。
実装用チェックリスト(エントリー前に必ず確認)
- 過去60営業日で200日線に未接触か
- 200日線の向きは横ばい〜緩やかか(急角度なら慎重)
- 流動性(売買代金)が薄すぎないか
- 200日線付近で「吸収」か「板の薄化」か、どちらが起きているか
- 型1/型2のどちらで戦うかを決めたか(混ぜない)
- 損切り条件(価格/終値/板)が固定されているか
- 利確を段階化し、欲張りすぎない設計になっているか
まとめ:200日線は“節目”ではなく、短期の「注文の戦場」
200日線初回タッチは、長期勢の判断と短期勢の仕掛けが交差しやすいポイントです。だからこそ、型を分けて、損切りを固定し、板と歩み値で強弱を判定するだけで、短期の優位性に変わります。
最後に一言だけ。200日線は“当たるライン”ではありません。攻防を取れる形だけ取って、ダメなら即撤退する場所です。この一貫性が、短期の損益曲線を安定させます。
免責事項:本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。


コメント