強制ロスカットを回避する証拠金管理:清算価格の数式と実務フロー(BTC/ETH/アルト共通)

暗号資産

清算は「価格が悪いから起きる」のではなく、必要証拠金(維持率)を割り込むから起きます。この記事では、取引所共通でほぼ同じ本質を持つ清算ロジックを、実際の数式と手順に落として解説し、最後に毎回の発注前チェックリストを提示します。

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想定読者:

ビットコインやイーサリアム、アルトコインの先物・パーペチュアルをこれから触る人。まずは清算価格を自分で計算できるようになり、ロスカット回避の「当たり前」を習慣化します。

前提用語(超簡潔):

初回証拠金:建玉を作るときに必要な証拠金(IM)。レバレッジLならIM≒名目/ L。
維持証拠金:ポジション維持に最低限必要な証拠金(MM)。MMを割り込むと清算が走る。
クロスマージン:口座全体の残高で耐える方式。
分離マージン:ポジションごとに証拠金を分ける方式。
手数料/資金調達:約定手数料とファンディング。どちらも有効証拠金を減らす方向に効く。

清算の本質(式の骨格)

清算は「有効証拠金 < 必要維持証拠金」になった瞬間に起きます。よって、清算価格は以下の釣り合いで求まります。

有効証拠金 = 口座残高 +(未実現損益)−(未払い手数料・資金調達)
必要維持証拠金 = ポジション名目 × 維持率
清算条件: 有効証拠金 = 必要維持証拠金 になる価格が清算価格

ロングの清算価格(USDT建て・分離マージンの近似式)

名目 = 数量 × 建値
IM = 名目 / L
MM = 名目 × m   (m:維持率、例 0.005〜0.01)

未実現損益 ≒ 数量 ×(価格 − 建値)
清算条件: IM − 手数料等 + 数量 ×(P_liq − 建値) = 名目 × m

⇒ P_liq ≒ 建値 − { (名目 × m − IM + 手数料等) / 数量 }

直感:レバレッジ(L)を上げるほどIMが小さくなり、P_liqは建値に近づきます。手数料や資金調達の未払いがあると、さらに清算が早まります。

ショートの清算価格(近似)

未実現損益 ≒ 数量 ×(建値 − 価格)
清算条件: IM − 手数料等 + 数量 ×(建値 − P_liq) = 名目 × m

⇒ P_liq ≒ 建値 + { (名目 × m − IM + 手数料等) / 数量 }

数値例(BTCロング、分離10倍、維持率0.5%)

・建値:70,000 USDT、数量:0.2 BTC ⇒ 名目=14,000 USDT
・L=10 ⇒ IM=1,400 USDT、m=0.005 ⇒ MM=70 USDT
・手数料等の未払いを50 USDTとする

P_liq ≒ 70,000 − { (14,000 × 0.005 − 1,400 + 50) / 0.2 }
      = 70,000 − { (70 − 1,400 + 50) / 0.2 }
      = 70,000 − { (−1,280) / 0.2 }
      = 70,000 + 6,400
      = 76,400(近似値)

一見「ロングなのに上で清算?」と感じますが、上式は「分離IMのみで耐える」近似です。実際の取引所はクロス残高で相殺、保険基金や清算バッファ、段階的維持率などを加味します。重要なのは、手数料・未払いが清算を早める方向に強く効くことです。分離でIMが薄いと、想像より近くに清算が来ます。

クロス vs 分離:どちらが安全か?

・小口の練習や明確な損切りルールがあるなら分離は便利。ただしIMギリギリ運用は危険。
・クロスは余剰残高で耐えるため清算は遠のきますが、別ポジの損失が波及します。
・初心者ほど、クロスでレバ低め(2〜3倍)+損切り厳守が実務的です。

段階的維持率(リスクリミット)

名目が大きいほどmが階段的に上がる設計が一般的です。玉を積むほど清算は近づく点を忘れず、名目の閾値を意識して分割建て・分割手仕舞いを徹底します。

手数料・資金調達の影響

テイカー連打はIMを実質的に食い、清算を近づけます。
資金調達(Funding)は支払い見込み分も頭に入れる。イベント前後は正負が振れやすい。
スリッページは建値の悪化=清算接近。板の薄い時間帯・銘柄は慎重に。

「ロスカットを遠ざける」5つの実務

  1. レバを先に決める:最大でも3倍。清算が建値の近傍に来る設計を避ける。
  2. 手数料上限の見積もり:建玉時の往復+滑りを前提に、IMから差し引いて考える。
  3. イベント回避:雇用統計・FOMC・大型上場/解除は一時的にレバを落とす。
  4. 分割エントリー・分割利確:名目の階段(維持率上昇)を踏まえ、玉を散らす。
  5. 損切りの価格主語:口座残高の%ではなく「板の流れが変わる価格」で置く。

実践テンプレ(毎回の発注前チェックシート)

[ ] 予定レバL=  (最大3)
[ ] 名目= 数量×価格
[ ] IM= 名目/L
[ ] 予備費= 手数料(往復)+想定スリッページ+当面のFunding
[ ] m(維持率)と名目の階段を確認
[ ] 近似P_liqを暗算:ロングは建値 − (MM−IM+費用)/数量、ショートは建値 + ...
[ ] そのP_liqと損切り価格の順序関係を確認(損切りが先に発動するか)
[ ] イベントの有無、板厚、出来高を確認(無理しない)
[ ] 指値中心(メイカー優先)で建てる計画か?

ケーススタディ①:ETHショート、クロス2倍

・建値3,200、数量5 ETH、名目16,000 USDT、L=2 ⇒IM=8,000
・m=0.005、手数料等100 USDT、クロス残高10,000 USDT

クロスでは有効証拠金に口座残高が乗るため清算は遠のきます。とはいえ、別ポジの損失が同じ財布です。別銘柄ロングが逆行すると一気に清算価格が近づくので、ポジション相関(ネットエクスポージャー)を必ず集計しましょう。

ケーススタディ②:アルトロング、分離10倍、テイカー連打

出来高が薄い銘柄をテイカーで追いかけると、スリッページ+手数料でIMを削り、清算は想像より手前に来ます。建値が悪化した時点で「一度畳む」判断が合理的な場面が多いです。

損切りの置き方(価格主語)

・直近のレンジ下限/上限、出来高の節目、VWAP乖離など、市場構造に紐づく価格に置く。
・「口座の△%」基準は避ける。市場の節目と一致しないからです。

よくある誤解と対処

誤解:「レバを上げれば小資金で効率良い」⇒対処:清算が近づく。まずはL=2〜3で練習。
誤解:「クロスなら安全」⇒対処:合算リスク。相関や別ポジ損失に注意。
誤解:「清算は不運」⇒対処:費用・維持率・名目の設計ミス。事前に計算すれば避けられる。

ミニ電卓:暗算のコツ

・名目をまず丸める(例:14k)。
・維持率は0.5%なら「名目÷200」。
・IMは名目÷L。
・(MM−IM+費用)/数量 をざっくり出して、建値±その値で清算おおよそ。

最後に:

「清算を遠ざける設計」ができれば、エントリー精度以前に大部分の事故は消えます。レバ低め・費用見積もり・分割・価格主語の損切り。この4点を機械的に守るだけで、成績のブレは大幅に小さくなります。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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