お削り戦略:分割利確×トレーリング×現金管理で『含み益を消さない』売りの実務

投資戦略

価格が大きく伸びたあとに「押し目で全部返す」——この後悔を減らすために、クリプト界隈で俗に呼ばれる「お削り」を体系化します。お削りとは、上昇局面で含み益を少しずつ現金化し、下落転換時にはトレーリングと逆指値で利益を守る、売りの運用メソッドです。感情ではなくルールで実行するのがポイントです。

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1. お削りの目的と前提

目的は3つです。(1) 含み益の消失回避 (2) 現金ポジションの確保 (3) 再エントリー余力の維持。前提として、急騰は頻度が低く下落は早い流動性は相場悪化で薄くなる人間は利確を先延ばしにしがちという非対称性を前提に設計します。

2. 現物版:基本ルール(コア)

現物保有の「お削り」コア・ルールは次です。

  • 初期配分:現金30%・現物70%(相場ヒート時は現金比率を40–50%へ自動引き上げ)
  • 分割利確:価格が+X%進むごとに保有量のy%を売却(例:+8%ごとに3%売却)
  • トレーリング:直近高値から−T%で逆指値(例:−7%)
  • 押し目買い:ピークから−Z%で現金のk%だけ買い戻し(例:−15%で現金の10%)

価格階段ごとに「売り」「逆指値の繰り上げ」「押し目買い」を自動的に進めることで、上昇に追随しつつ、下落では現金化を優先します。

3. 先物・パーペチュアル版:ヘッジ応用

現物を売らずに利益固定を図る場合、ショートヘッジでお削りを模倣できます。

  • デルタ調整:現物評価額×ヘッジ率(例:相場過熱時に30–60%ショート)
  • トリガー:資産総額が新高値更新→ヘッジ率を+10pt、−7%調整→ヘッジ率を−10pt
  • 資金効率:パーペチュアルの証拠金にUSDTを使い、ファンディングレートの収支を週次で確認

ファンディングの受払いやベーシスはコストであり、現物売却の実現課税とトレードオフです。年初来での合算損益で意思決定を一元化します。

4. 数式とExcel実装(雛形)

基準価格を P0、現在価格を P、刻み幅を g(例:8% = 0.08)、各階段での売却比率を y(例:3% = 0.03)とします。

階段番号 n = FLOOR( LN(P/P0) / LN(1+g) )
売却数量 Q_sell(n) = 保有数量 × y × 1{n > 前回実行n}
逆指値価格 S_trail = 直近高値 × (1 - T)
押し目買いトリガー B = 直近高値 × (1 - Z)

Excel例:

  • =FLOOR(LN(P/P0)/LN(1+g),1)
  • 売却数量は「新しい階段に到達したときのみ」計算(トリガー列でIF判定)
  • トレーリングはMAXで直近高値を更新しつつ、* (1-T)で逆指値ラインを算出

5. 実例:BTC 500万円 → 800万円の上昇で何が起きるか

初期:現金300万・BTC700万、g=8%y=3%T=7%Z=15%k=10%

  1. BTCが540万(+8%)→ 3%売却。現金が自動で増える。
  2. さらに583万、629万… と階段到達ごとに3%ずつ利確。直近高値も繰り上げ。
  3. 800万到達。直近高値から−7%の744万で逆指値。一気に落ちた場合でも利益は確定。
  4. その後680万(−15%)まで押すと、現金の10%で押し目買い。再度上がれば再びお削り。

要点:上昇は売りで現金化、下落は逆指値で守り、深押しでは少量買い戻す。結果として、資産総額のドローダウンを浅く保ちやすくなります。

6. 先物ヘッジの数値感

現物を売らずにヘッジする場合、資産総額1,000万・現物800万・USDT 200万、ヘッジ率50%の例:

  • ショート名目:800万 × 0.5 = 400万相当
  • 証拠金:初期20%なら約80万USDT相当
  • 週次見直し:資産新高値→+10pt、−7%→−10pt

ファンディングが大きくプラスならヘッジ厚め、マイナスが続くなら一部現物利確の方が総合利回りが良くなる場合があります。

7. コスト・滑り・板厚の管理

お削りはトレード回数が増えるため、手数料スプレッド板の薄さが効いてきます。

  • 手数料:メイカー優先。VIPティアや手数料トークン割引を活用。
  • 発注:階段に指値をあらかじめ置く。急変時は一部成行に切替。
  • サイズ:1回あたり約定金額を小さく、多段・等間隔で。
  • 時間分散:アジア・欧州・米国時間それぞれに薄板の傾向がある。

8. 税・会計の観点(一般論)

頻繁な利確は実現益が増えやすい一方、年内の損益通算・繰越や、先物ヘッジとの合算管理が重要です。売却履歴と原価証拠金口座の損益送金履歴を月次で整理できる台帳を用意し、翌年の負担を軽くします。

9. パラメータ設計の考え方

  • g(階段幅):ボラが高い銘柄ほど大きく。BTC 6–10%、ETH 7–12%、アルト10–20%が目安。
  • y(売却率):上昇トレンドが強いほど小さく(2–4%)。レンジならやや大きめ(4–6%)。
  • T(トレーリング):日中ボラ×2〜3倍が目安。通常6–10%。
  • Z(押し目):Tの1.5〜2倍を目安に設定。

10. よくある失敗と対策

  • 上げ相場で売りすぎる → yを下げ、Zでの買い戻しを自動化。
  • 暴落で逆指値が滑る → 分散した逆指値・市場成行の併用、板厚のある銘柄を優先。
  • ヘッジ偏重で資産が伸びない → 新高値更新時にヘッジ率を減らさず増やしてしまうミスに注意。

11. 実務チェックリスト

  • 階段・逆指値・押し目の全注文を事前にセット(Good‑Till‑Canceled中心)
  • 週次で実行ログ(価格、数量、手数料、ファンディング、残高、ヘッジ率)を更新
  • 月次でパラメータ再推定(ボラティリティ変化に合わせる)
  • 重要イベント(政策、ETF、アップグレード)前後はサイズを半分に

12. まとめ

お削りは「勝ちを守る仕組み化」です。分割利確で現金を積み、逆指値で守り、深押しを少量拾い、必要に応じて先物ヘッジでデルタ管理。パラメータをルール化し、感情ではなく反復で積み上げましょう。

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