出来高プロファイルの使い方|価格帯別出来高でエントリーと損切りを設計

出来高プロファイルを確認する架空の成人日本人女性トレーダー。AI生成イメージ。 日本株・短期売買

ローソク足の下にある通常の出来高は「いつ取引が増えたか」を示します。出来高プロファイルは集計軸を変え、「どの価格帯で多く約定したか」を横向きの棒で表示します。同じ1日でも、2,000円で多く売買されたのか、2,100円を一気に通過したのかを分けられるのが特徴です。

短期トレードでは、高出来高帯を機械的な支持線、低出来高帯を必ず抜ける空白地帯として扱うと失敗します。過去の約定量は注文の履歴であり、現在も同じ売買意欲が残っている保証ではありません。実戦では、価格帯を事前に地図として引き、当日の値動きがその価格を受け入れたか、拒否したかを観察してから使います。

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出来高プロファイルの基本用語

POC(Point of Control)は、指定期間内で約定出来高が最も大きかった価格帯です。市場参加者が最も多く取引した中心価格と考えられます。高出来高帯(HVN)は周辺より出来高が膨らんだ価格帯、低出来高帯(LVN)は出来高が薄い谷の部分です。

バリューエリアは、POC付近から一定割合、一般には約70%の出来高を含むように定める範囲です。ただしチャートサービスによって、価格刻み、計算方法、買い・売り出来高の扱い、対象セッションが違います。70%という数字自体に相場を動かす力があるわけではありません。

東京証券取引所の売買は、価格優先・時間優先を基本に、売り呼値と買い呼値が合致した価格で成立します。出来高プロファイルに集計されるのは、表示板の注文量ではなく、実際に約定した数量です。板に厚い注文が見えても取り消されれば出来高にはなりません。取引制度の基本は日本取引所グループ「売買成立の方法」で確認できます。

まず分析期間を固定する

プロファイルは期間を変えると形も変わります。デイトレードなら前日1日、当日寄り付きから現在まで、直近5日などを混ぜず、用途ごとに分けます。決算発表後の値動きを取るなら、決算翌日から現在までの固定レンジを使う方法があります。数週間のスイングなら、直近の上昇波または持ち合い全体を対象にします。

都合のよい支持線が出るまで始点を動かすと、後付けの分析になります。売買記録には「前日プロファイル」「決算翌日から5日間」など対象期間を残します。価格刻みも固定し、同じ銘柄・同じ時間軸で比較できるようにします。

架空銘柄でプロファイルを読む

前日の株価範囲が1,940~2,100円だった架空銘柄を考えます。出来高の中心は1,990~2,020円、POCは2,005円です。2,050~2,070円は出来高が少なく、その上の2,080~2,100円にもう一つの高出来高帯があります。

株価1940円から2100円の価格帯別出来高とPOC、高出来高帯、低出来高帯を示す図解
図1:価格帯別出来高を、中心・薄い通過帯・上側の滞在帯に分ける(架空例)。

この形から「2,005円で必ず反発する」とは判断しません。仮説は二つです。第一は、価格が中心帯へ戻り、2,005円付近で売買が続くレンジ回帰。第二は、2,050円を上抜け、薄い価格帯を速く通って上側の高出来高帯へ移るトレンド継続です。当日の約定と終値位置でどちらが優勢かを判定します。

セットアップ1:高出来高帯への回帰を取る

当日寄り付きが2,035円で、上値を試した後に2,020円まで下落したとします。前日の中心帯上端2,020円で下げ止まり、5分足が2,025円で確定し、次の足でも2,020円を割らなかった場合、中心帯への受け入れを確認したと考えます。

買い候補を2,026円、無効化価格を2,014円、最初の利確候補をPOC近辺の2,005円ではなく、上方向なら寄り付き高値2,045円とします。この例は上端での反発を取るため、2,020円帯を明確に下抜けたら仮説が崩れます。損切り幅は12円、利確候補まで19円で、手数料・スリッページ前の損益比は約1.58倍です。

レンジ中央から入ると、損切りまで遠く利幅が小さくなります。高出来高帯の中では売買が往復しやすいため、中央で方向を当てようとせず、帯の端で反応を待つ方が建玉を設計しやすくなります。

セットアップ2:低出来高帯の通過を取る

株価が2,050円を上抜け、2,060円付近のLVNへ入ったとします。薄い価格帯では、過去に滞在が短かったため、再び速く動くことがあります。ただし、上抜け直後に飛び乗ると、2,050円下へ戻るダマシに巻き込まれます。

実戦では、2,050円を上抜けた後の押しで、2,050~2,054円が支持帯へ変わるかを確認します。2,053円で入り、2,044円を無効化価格、上側HVNの下端2,080円を第一目標とすれば、損切り9円に対し目標値幅27円です。損益比は3倍ですが、板が薄ければ実際の約定価格は悪化します。

低出来高帯でローソク足が何本も重なり、出来高が増えて動かなくなった場合は、過去の「薄い帯」が現在の受け入れ帯へ変化しています。このとき速い通過という仮説を捨てます。プロファイルは固定された壁ではなく、新しい約定で更新される地図です。

POCの移動で受け入れ価格を確認する

当日プロファイルのPOCが、午前の2,005円から午後に2,055円へ上昇した場合、より高い価格で約定が蓄積しています。価格だけが一瞬上がり、POCが低いままなら、高値はまだ広く受け入れられていません。価格上昇とPOC上昇がそろえば、上側での持ち合いへ移行した可能性があります。

ただしPOCは集計期間に依存し、引けの大口約定や寄り付きの集中約定で大きくなる場合があります。前場、後場、終日を分けて確認し、クロージングオークションなど特定時点の約定が形を支配していないかも見ます。JPXのリアルタイム情報には約定、売買高、売買代金、VWAPなどが含まれ、これらが別々のデータ項目であることも確認できます。JPXリアルタイム情報の概要

損失額から株数を逆算する

2,053円で入り、損切りを2,044円に置く例で、1回の許容損失を9,000円とします。理論株数は9,000円÷9円=1,000株です。しかし成行で逃げる際に平均2円のスリッページを見込むなら、実効損切り幅は11円です。9,000÷11=818株なので、100株単位なら800株までに抑えます。

エントリー2053円、損切り2044円、スリッページ2円、許容損失9000円から800株を計算する図解
図2:チャート上の損切り幅に、想定スリッページを加えて株数を決める。

800株なら想定損失は11円×800株=8,800円です。第一目標2,080円で半分の400株を利確すると、値幅27円×400株=10,800円。残り400株を建値付近まで引き上げる方法もあります。ただし寄り付き直後、決算直後、低流動性銘柄では2円を超える滑りが起こり得るため、過去の自分の約定履歴から想定値を決めます。

機能しにくい5つの状況

材料で価格評価が一変した日

上方修正、増資、不祥事、TOBなどで企業価値の前提が変われば、前日の高出来高帯に戻らないことがあります。過去の中心価格に逆張りせず、新しいセッションでどこに出来高が蓄積するかを待ちます。

出来高が極端に少ない銘柄

数件の約定だけで棒が膨らむ銘柄では、価格帯別出来高の形が安定しません。注文数量に対する通常の約定量、スプレッド、気配更新を確認し、建玉を小さくします。

価格刻みが細かすぎる

1円刻みに分けるとノイズだらけ、50円刻みなら重要な差が消える場合があります。平均的な値幅と呼値を基準に、数本のローソク足が収まる程度の帯として扱います。一本の価格より「2,000~2,010円」の範囲で判断します。

異なる市場・時間帯を混ぜる

時間外取引と立会市場、先物の夜間と日中では参加者や流動性が違います。データにどのセッションが含まれるかを確認します。比較期間で同じ設定を使わなければ、POCの移動も解釈できません。

プロファイルだけで方向を決める

価格帯別出来高は過去の約定分布で、買い手と売り手のどちらが今後勝つかを直接示しません。上位時間軸のトレンド、材料、指数、当日の価格反応を組み合わせます。帯に到達しただけでは注文せず、反発、定着、再テストなど事前に決めた反応を待ちます。

検証記録はセットアップ別に分ける

「出来高プロファイルを使った取引」を一括集計すると、レンジ回帰とLVNブレイクの成績が混ざります。記録項目は、対象期間、POC、HVN/LVN、エントリー位置、無効化価格、目標、指数方向、材料の有無、想定と実際のスリッページです。

20~30件たまったら、帯に触れた瞬間の取引と、5分足確定を待った取引を分けます。勝率だけでなく、平均利益÷平均損失、最大連敗、時間帯別成績を確認します。待つことで勝率が上がっても利幅が減るなら、期待値は必ずしも改善しません。

架空成績で、反応を待たない取引が勝率42%、平均利益1.8R、平均損失1Rなら、1回当たり期待値は0.42×1.8−0.58×1=0.176Rです。確認を待つ取引が勝率52%、平均利益1.3Rなら、期待値は0.52×1.3−0.48=0.196Rです。僅差なので、手数料と滑りを引けば結果が逆転する可能性があります。

寄り付き・前場・後場で判断を変える

寄り付き直後は、夜間の材料を反映する注文が集中し、短時間で大きな出来高が発生します。そのため、開始5分だけでできたPOCを一日の中心価格と決めると早すぎます。寄り付きの高値・安値を記録し、最初の15~30分でプロファイルがどちら側へ広がるかを観察します。

たとえば前日のPOCが2,005円、当日の寄り付きが2,080円なら、前日中心への距離は75円あります。材料が強く、寄り付き後も2,070円以上で出来高が蓄積するなら、新しい高値圏が受け入れられています。前日POCへの回帰だけを期待した空売りは避けます。反対に、寄り付き後すぐ2,070円を割り、当日POCも低下するなら、ギャップ上側の受け入れに失敗した可能性があります。

前場終了時点では、前場のPOCと安値・高値、後場寄り後の反応を分けます。昼休み中の材料や先物の変化で後場の評価が変わることがあるためです。前場POCを後場に一度割っても、すぐ回復し出来高が上側に再蓄積すれば、下抜け失敗として扱えます。逆にPOCの下で複数本が確定し、戻りも弱ければ、高出来高帯が抵抗へ変わった可能性があります。

利確位置は次の高出来高帯の手前に置く

低出来高帯を通過する取引では、次のHVN中心まで必ず到達すると想定せず、下端付近から分割利確を検討します。過去に約定が増えた帯へ入ると、含み損が解消した参加者の売りや逆方向の新規注文が出て、値動きが鈍ることがあるためです。

先の例なら第一目標を2,080円、上側POCが2,095円なら第二目標を2,092~2,095円とします。2,080円到達後に当日POCが上昇し、価格が2,080円を維持するなら残りを保有する余地があります。POCが追随せず長い上ヒゲが続くなら、目標価格への固執をやめます。利確も到達価格だけでなく、到達後の受け入れ方で調整します。

実戦での確認順序

  1. 売買前にプロファイルの期間と価格刻みを固定する。
  2. POC、HVN、LVNを一点ではなく価格帯で引く。
  3. レンジ回帰か、低出来高帯の通過か、仮説を一つ選ぶ。
  4. 当日の足で受け入れ・拒否・再テストを確認する。
  5. 仮説が崩れる価格に損切りを置き、滑りを含めて株数を計算する。
  6. 約定後はPOCの移動と新しい出来高の蓄積を確認する。
  7. セットアップ別に記録し、自分の実績で条件を残す。

出来高プロファイルの価値は、未来を当てることではなく、どこで市場参加者の合意が形成され、どこを速く通過したかを整理できる点にあります。過去の分布を地図にし、現在の反応で売買仮説を選び、損失額から株数を決める。この順序なら、指標を増やしすぎず、撤退条件まで一貫した短期売買を組み立てられます。

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