出来高プロファイルとは何か
出来高プロファイルは、縦軸ではなく横軸に出来高を表示し、価格帯ごとの成約量を可視化するツールです。棒が長い帯(HVN: High Volume Node)は市場参加者が多く集まった「滞留価格帯」を示し、短い帯(LVN: Low Volume Node)は流動性が薄い「価格の真空」を表します。最も出来高が集中した価格はPOC(Point of Control)と呼ばれ、相場の重心として機能しやすい特性があります。
なぜ初心者に相性が良いのか
トレンドラインやオシレーターと違い、出来高プロファイルは“見えない相手のポジションコスト”を推定する助けになります。HVNは多くの保有者の平均コスト帯になりやすく、相対的に揉み合い/反発/減速が起きやすい。一方、LVNは通過が早く、ブレイク後の走りが発生しやすいゾーンです。この「性格の違い」を利用して、初動の方向取りや利確/損切りの価格をロジカルに置けます。
使い方の全体像(現物・先物共通)
- 期間を決める:直近20〜60営業日のスイング、直近3〜10日の短期、1〜3時間の超短期など、あなたの保有期間に合うレンジでプロファイルを作成。
- POC/HVN/LVNを抽出:太い帯=HVN、細い帯=LVN、最大帯=POC。メモしておく。
- シナリオ化:「HVN→HVNは揉み」「LVNをまたぐと走りやすい」「POC回帰志向」を前提に、ブレイク/リバ/回帰の3通りで行動計画を書き出す。
- 執行設計:指値・逆指値・OCO・トレーリングを、各ゾーンの性格に合わせて配置。
- 検証・更新:日足と4時間足の上位プロファイルを週次で更新。短期足は毎日更新。
具体例1:BTCUSDT(スイング想定)
想定:直近40日で出来高プロファイルを作る。POCが「72000」、太めのHVNが「70000」「74000」、間の「71000」「73000」は帯が薄くLVN気味とする(数字は例)。
- アイデアA(回帰):価格が74000付近のHVNで失速→POC 72000へ回帰しやすい。エントリー:73900で弱含みを確認してショート。利確1:73000(LVN手前)。利確2:POC 72000。損切り:74550上。
- アイデアB(ブレイク走り):73000のLVNを下抜け→次HVN 70000まで「真空通過」で走りやすい。エントリー:72800でショート(逆指値)。利確:70500近辺。損切り:73450復帰。
- アイデアC(リバ):70000のHVNで一旦着地→反発でPOC回帰。エントリー:70200で反発確認後ロング。利確:POC 72000。損切り:69450割れ。
ポイントは、HVNでは分割利確とタイトなストップ、LVNでは走りを取りに広めのストップという使い分けです。
具体例2:アルトコインの低流動性銘柄(デイトレ)
想定:出来高が少ないが、1本のニュースで急動意しやすい銘柄。前日プロファイルのPOC「1.20」、上側HVN「1.30」、間の「1.24〜1.28」がLVN。
- 寄り直後:1.24を上抜けた瞬間はLVNを通過する走り場。成行を避け、1.242〜1.246にラダー指値で薄めに追随。
- 利確:1.30のHVN直前で分割。伸び代:1.305を勢いで抜けたら残りをトレーリング。
- リスク:LVN内の反転は速い。1.232復帰で即撤退(流動性の薄い銘柄では「即時の損切り」が致命傷回避)。
設計パーツの作り方
1) 期間・バケット幅
スイングは20〜60日、デイは過去3〜10日、スキャルは直近1〜3時間が目安。バケット幅(価格帯の刻み)は、平均的な1日のATR(または1時間足ATR)の1/10〜1/20を基準に設定すると、過剰なノイズを抑えつつ反応が得られやすい。
2) シナリオ三分法
- 回帰:POCへ戻る性質を利用。レンジ戦略と相性良。
- 走り:LVN→次HVNへ一気。トレンドフォローと相性良。
- リバ:HVNでの反発/叩かれを取りに行くスイング。
3) 執行(指値/逆指値/OCO/トレーリング)
HVNでは分割指値+OCOで細かく利食い。LVNでは逆指値で“通過の勢い”に乗る。走り取りは伸びを殺さないよう、直近LVN復帰で撤退のような「価格帯ベースのストップ」を推奨。
出来高プロファイル × リスク管理
ゾーンごとに期待値を設計します。単純化のため、次のように置きます:
- HVNタッチ後の回帰期待:勝率55〜60%、平均RR 1.0〜1.2
- LVN通過の走り:勝率40〜50%、平均RR 1.6〜2.2
ポートフォリオ全体では、HVN回帰で「日々の安定」を、LVN走りで「月次の伸び」を狙う役割分担が機能的。1トレードあたり口座の0.5〜1.0%リスクに抑え、連敗許容を前提にロット設計します。
出来高プロファイルの“勘所”チェックリスト
- POCをまたぐときは一度の往復を想定し、分割で小さく刻む。
- HVN手前ではフロントランが発生。利確は「手前」で良い。
- LVNは速い・薄い・荒い。エントリーは小口分割、ストップは価格帯復帰で潔く。
- 上位足(日足/4H)のプロファイルと方向が合っているか。
- 重要イベント時はPOCの位置が移動しやすいので再計測。
検証方法:初心者の最短ルート
- 取引対象を1つに絞る:まずはBTCUSDTのみ。
- 期間を固定:スイングなら過去40日、デイなら過去5日を固定して、毎日同じ設計で観察。
- 紙に書く:その日のPOC/HVN/LVN、3つのシナリオ、エントリー/利確/損切りを事前に紙で宣言。
- 約定根拠のスクショ保存:根拠→結果の蓄積が最短の上達法。
よくある落とし穴
- プロファイルの期間をコロコロ変える:結果が安定しない最大理由。保有期間に合わせて固定。
- HVNの中で粘りすぎる:揉み場では「待つ」も戦略。無理に抜こうとせず、小刻みに。
- LVNでフルレバ:薄いので意図せぬ振れ幅も大。ロットは小さく、撤退は速く。
ミニ・プレイブック(テンプレ)
【前日準備(スイング)】 1) 40日VPを更新。POC/HVN/LVNをメモ。 2) 3つのシナリオ(回帰/走り/リバ)を1行ずつで宣言。 3) 価格帯ごとの指値・逆指値・OCO・トレーリングを設定。 【当日運用】 4) 上位足の方向と整合を再チェック。 5) 予定通りに執行。想定外は触らない。 6) 終了後、根拠と結果を1枚にまとめる。
他の手法との組み合わせ
- 移動平均線:HVN内の方向判定に。POC近辺でのトレンド方向の確認に使える。
- RSI/MACD:エントリーの微調整。ゾーンはプロファイル、タイミングはオシレーター。
- 出来高(縦棒):ブレイク時の出来高増加が伴っているかを確認。
まとめ
出来高プロファイルは、価格帯ごとの参加者の足跡を示す実務的な道標です。HVNでは慎重に刻み、LVNでは伸びを取り、POCでは回帰を意識する——この三点を守るだけで、エントリー/手仕舞い/損切りの迷いが大幅に減ります。まずは対象を1つに絞り、期間を固定して、毎日同じ手順で観察と記録を繰り返してください。


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