Hyperliquid徹底解剖:オンチェーンCLOB型Perp DEXの実践ガイド(資金調達率ハーベスト/順張りブレイクアウト/イベント・スキャルプ)

暗号資産

本稿は、Perp DEXの中でも独自L1とオンチェーンCLOB(Central Limit Order Book)を採用するHyperliquidを、トレードの現場目線で徹底解説します。単なる用語集ではなく、実際に利益に直結しやすい運用手順と、初心者でも再現しやすい戦略設計に焦点を当てます。口座準備・入出金・手数料・マージン設計・清算価格の読み方までを一気通貫で整理し、最後に「資金調達率ハーベスト」「ATR順張りブレイクアウト」「イベント・スキャルプ」の3戦略をステップバイステップで提示します。

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1. Hyperliquidとは—独自L1+オンチェーンCLOBのPerp DEX

Hyperliquidは、一般的なAMM型DEXと異なり、独自のL1チェーン上で完結するCLOB方式を採用しています。板情報(気配)に基づく指値・逆指値・成行などの注文体系はCEXと同様ですが、約定・会計・清算がチェーン上で検証可能という点が特徴です。加えて、EVM互換層であるHyperEVMを備え、ウォレット接続やブリッジ、周辺アプリの開発も比較的スムーズです。

主な特徴

  • オンチェーンCLOB:価格優先・時間優先の板寄せモデルで、透明性と決定論的な約定を担保。
  • Perp(無期限先物)に特化:時間価値がなく資金調達率(Funding)でペア価格とスポットの乖離を調整。Fundingは1時間ごとに清算される設計(8時間レートを1/8ずつ反映)。
  • マージン方式:クロス(既定)アイソレーテッドを選択可能。銘柄ごとの最大レバレッジは変動。
  • 手数料:14日出来高ベースのティア制。メイカー優遇の体系で、板提供によるコスト最適化余地が大きい。

2. 準備—ウォレット・ネットワーク・入金

2.1 ウォレット接続とネットワーク設定

  1. ブラウザ拡張(例:MetaMask)を用意。
  2. ネットワークにHyperEVM(Chain ID 999)を追加(ChainList等を利用)。
  3. 公式アプリに接続し、署名でログイン。

HyperliquidはUSDC建てでの証拠金取引が基本です。ガスや注文送信は極力ユーザー体験が最適化されており、入金後のトレードはほぼガスレスで進みます。

2.2 USDCの入金(ブリッジ)

  1. 出発チェーンでUSDCを用意(例:ETH L2やCEXからの出庫)。
  2. Hyperliquidの入金導線、またはdeBridge/Across等のブリッジ経路を利用。
  3. ブリッジ先をHyperliquidに設定し、金額を入力して送信。通常、1分程度の着金を想定。

注意点:最小入金額対応トークン(基本はUSDC)などの仕様は変わることがあるため、入金前に最新のドキュメントを確認してください。

3. 取引画面の読み方—板・指標・資金調達率

  • 板(Order Book):最良気配を挟んでBid/Askが階段状に表示。板厚ギャップはスリッページの主因。メイカー重視の設計上、指値の約定順序がプライス・タイムで明確。
  • マーク価格:清算やFunding計算の基準。出来高加重・外部オラクル等のハイブリッドで算出される。
  • 資金調達率(Funding):スポットとの乖離に応じてロング/ショート間で支払いが発生。1時間ごとに精算されるため、デイトレでも影響が可視化されやすい。

4. マージン設計—クロス/アイソレーテッドの使い分け

クロスは口座全体の余力を共有して資本効率を最大化。一方で、単一ポジションの逆行が口座全体に波及しやすい。アイソレーテッドはポジション毎に証拠金を独立させ、最悪損失を割り当て額に限定できるのが利点です。

実務の指針:

  • 学習初期:アイソレーテッド+低レバ(1〜3x)で建玉単位の損失上限を明確化。
  • 慣れてきたら:相関の薄い銘柄間ヘッジを前提にクロスで余力を効かせ、回転効率を上げる。

5. 清算価格の読み方と例

Hyperliquidでは、維持証拠金は最大レバ時の初回証拠金の半分が基準。クロスの場合、清算は口座価値が維持証拠金を割り込むと発動します。概念を掴むため、簡易例を示します(数値は仮定)。

例:口座USDC残高1,000、BTC-PERPをアイソレーテッド2xでロング、参入価格=100,000、サイズ=0.02(名目2,000)。初回証拠金=名目/レバ=1,000。維持証拠金=初回の半分=500。

この場合、評価損が500に達すると清算域。手数料・Fundingの影響で実際の閾値は僅かに前後します。クロスなら他ポジの含み益・含み損が連動する点に注意。

6. 手数料とコスト最適化

  • 手数料は14日出来高ベースのティア制。出来高が上がるほどメイカー/テイカーともに低下。
  • Fundingは毎時精算。短期回転でも無視せず、ポジ保有時間を意識。
  • コスト最適化の要点Post-Only指値でメイカー化、Reduce-Onlyで不要な反転約定を防止、分割利確で平均手数料を下げる。

7. 再現性のある3つの戦略(手順付き)

7.1 資金調達率ハーベスト(デルタ中立)

狙い:Fundingの偏りを収益化。Fundingがプラスの取引所(銘柄)でショートマイナスの取引所(銘柄)でロングし、現物または他所のPerpでデルタを相殺します。Hyperliquid単体では完全中立を作りにくいので、他所と組み合わせるのが基本。

  1. 対象銘柄を選定(BTC/ETHは板厚で安定)。
  2. 複数所のFundingをモニタ(1時間清算のため回転が早い)。
  3. HLでショート、他所でロング(またはその逆)を同名目で建てる。
  4. ネットのFunding収支がプラスになるよう構成し、手数料・資金調達の変動・スプレッドを常時計測。
  5. 乖離が縮小・反転したらクローズ。滞在時間は数時間〜数日。

リスク:レートの急変、片側のスリッページ、ブリッジ/入出金タイムラグ、他所の約款変更。在庫(ヘッジ側)の確保自動アラートを徹底。

7.2 ATR順張りブレイクアウト(アイソレーテッド推奨)

狙い:トレンドの初動だけを取りにいく単純系。ルールを明確化し、1トレードあたり口座の0.5%リスクを厳守。

  1. 時間軸:5分〜1時間。
  2. 指標:ATR(14)と直近レンジの高安。
  3. エントリ:高値ブレイクでロング/安値割れでショート。成行は避け、板の上に薄く指値(例:高値+1〜2ティック)。
  4. ストップ:エントリ足の反対側にATR×1.2を加味して配置。
  5. 利確:R=1.5〜2.0で半分利確、残りはトレーリング(ATR×1)。
  6. 同時保有は2銘柄まで。取引ごとのポジション日誌期待Rを記録。

7.3 イベント・スキャルプ(CPI/FOMCなど)

狙い:指標直後の板薄・高速局面で数ティックを抜く。熟練者向けだが、ポジサイズ極小なら学習効果が高い。

  1. 発表2分前までに建玉ゼロ。待機は板監視のみ。
  2. 最初のワンウェイに対してプルバックの指値を置き、約定後は即時STP(ストップ)と短いTPを同時に送る。
  3. 合計滞在は30〜120秒。連続3敗で即日停止

要点:イベント時はFunding影響が軽微でも、スリッページと手数料が収益を大きく左右します。サイズを上げないのが最適化の近道。

8. オーダー運用の実務Tips

  • Post-Only:メイカー確保。板の裏に置き、部分約定を前提に分割。
  • Reduce-Only:反転約定の誤発注を防止。
  • ブラスケット:エントリと同時にSTP/TPを準備。想定外の瞬間風速でのロス拡大を避ける。
  • サブアカウント:戦略ごとに分けるとP/Lの可視化が容易。

9. データと自動化—最短でPDCAを回す

手動でも最低限、1トレード1行で「日時/銘柄/方向/サイズ/エントリ/STP/TP/結果R/ミスの種類」を記録。週次で勝率・PF・期待値を集計し、負けパターンの除外から着手。自動化する場合は公式APIやデータプロバイダを利用し、レイテンシよりも不具合ゼロを最優先に。

10. 典型的な失敗と回避策

  • レバレッジ過多:最初は1〜3x固定。勝ちが続いても上げない。
  • Funding軽視:保有時間×レートで日次コストを見積もる。
  • 板薄ペアの過大サイズ:スリッページで期待Rが崩壊。
  • クロス一辺倒:最初はアイソレーテッドで損失上限を確定させる。

11. セキュリティとオペレーション

  • 公式ドメイン・署名内容の確認(フィッシング対策)。
  • ブリッジは必要額のみ、分割が基本。
  • 戦略検証は最小サイズから。ドローダウン閾値で自動停止を入れる。

12. まとめ—「負けない設計」から始める

Hyperliquidは、オンチェーンCLOBの透明性と、CEX級の操作感を両立したPerp DEXです。最初はアイソレーテッド+低レバ+Post-Onlyで約定品質とコストを整え、資金調達率ハーベスト/ATR順張り/イベント・スキャルプのいずれか一つに絞って習熟しましょう。1日あたりの最大損失を口座の1〜2%に固定し、データに基づく改善を積み上げれば、「負けない」期間を確保しつつ収益曲線を右肩上がりにできます。

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