要点:本稿は、Arbitrum上の注文板型DEX「Vertex Protocol」の全体像と、パーペチュアル(無期限先物)で収益を狙うための具体的アプローチを、初心者がつまずきやすいポイントまで踏み込んで整理します。宣伝ではありません。実際に使う際の手順・数値例・チェックリストを提供し、「何をどこまでやればいいか」を明確にします。
1. Vertex Protocol 概要
Vertex Protocolは、スポット(現物)・パーペチュアル・マネーマーケット(貸借)を一体化した垂直統合型DEXです。基盤はEthereum L2のArbitrumで、中央 limit order book(CLOB)× AMMを組み合わせたハイブリッド設計を採用します。特徴は以下の通りです。
- 統合クロスマージン:口座内の資産・ポジションを横断担保化し、資本効率を高めます(例:ETHロングの含み益が他ポジションの証拠金を補完)。
- 低レイテンシ実行:オフチェーンのマッチングエンジン(Sequencer/Edge)で高速約定し、オンチェーンで最終清算・カストディを担保。
- 一体型プロダクト:現物・パーペチュアル・貸借が一つのポートフォリオに統合され、手数料や資金効率の面で合理化。
2. アーキテクチャ(CLOB + AMM × Sequencer/Edge)
Vertexは注文板(CLOB)を中心に、AMM流動性を板に統合するハイブリッド流動性を実現します。約定経路は以下イメージです:
- ユーザーはウォレットから注文(Post-Only/Reduce-Only等の条件指定が可能)。
- オフチェーンSequencerが5–15ms程度でマッチング(目安)。
- オンチェーンに最終状態をコミットし、資産カストディはスマートコントラクトが担保。
この構造により、板の厚み+低スリッページ、高速執行、自己保管を両立します。
3. 口座設計:統合クロスマージンの実務
統合クロスマージンでは、口座全体(現物・パーペチュアル・貸借)の純資産(Equity)が証拠金基盤になります。初期証拠金(IM)・維持証拠金(MM)は銘柄やボラティリティで異なります。
- メリット:余剰担保を横断活用し、レバレッジ耐性・注文余力が向上。
- デメリット:相関の高いポジションを積むと、同時に含み損が拡大し、清算が連鎖しやすい。
マルチポジション派は、相関係数(例:BTCとETH)・ベータ中立・名目合計レバレッジを必ず可視化。
4. 手数料と資金調達率(Funding)
手数料は市場環境やティアで変動しますが、目安としてメイカー0%、テイカー0.02–0.04%程度のレンジが提示されてきました(変更され得ます)。資金調達率(Funding)は、建玉バランスに応じて一定間隔で支払/受取が発生します。
- メイカー優遇:Post-Onlyで板供給に回ると、実効コスト低減が可能。
- Fundingの基本:ロング過多ならロングが支払い、ショートが受け取り(逆も然り)。
5. 価格参照・清算のからくり
パーペチュアルの清算価格は、インデックス価格(オラクル)と口座の証拠金状況から決まります。維持証拠金率を下回ると部分/全清算が進行します。
清算回避の基本式:有効証拠金 ≧ 維持証拠金 + 変動損失 + 手数料 + Funding見込み
クロスマージンでは口座全体の有効証拠金が効くため、過度な同方向レバレッジに注意。
6. リスク管理(必読)
- 相関崩壊リスク:ヘッジのつもりのペアが急に同方向へ動く(例:ETHロング×SOLショート)。
- オラクル/流動性ギャップ:フラッシュムーブ時の乖離・滑り。
- Funding反転:プラス想定が一転マイナス化でコスト急増。
- スマートコントラクト・ブリッジ:自己保管ゆえの自助努力が必須(権限・署名・詐欺承認の管理)。
7. はじめ方(ウォレット〜初回トレード)
- ウォレット準備:MetaMask等。
Arbitrum Oneを追加。 - 資金移動:取引所→Arbitrumへブリッジ。初回は少額の
ETH(ガス)とUSDCが便利。 - 接続と入金:Vertexに接続し、口座へ入金(Deposit)。
- 取引設定:レバレッジ上限、Reduce-Only/Post-Only、TP/SLを必ず事前設定。
- 初回注文:練習は指値(Limit)から。成行は滑りやすい。
小さく始め、手数料・Funding・滑り・約定品質を自分の手で観測するのが近道です。
8. 注文タイプと実務Tips
- Post-Only:必ずメイカーで板に出す。手数料を抑えたい時に有効。
- Reduce-Only:既存ポジションの解消専用。誤って逆方向に増やさない保険。
- Good-Til-Cancel / IOC:執行有効期限の使い分けでスリッページ管理。
- サイズ分割:板厚い価格帯に複数枚で置き、約定分散で平均価格を平滑化。
9. 具体的な収益化アプローチ(初心者に優先度高)
9-1. Fundingキャリー最適化
市場がロング過多のときはショートで受け取り、反転期は早めにフラット化。前後のFunding予報(取引所表示)と、板の厚み・建玉偏りを定点観測します。
9-2. メイカー重視の板提供(半裁定)
Post-Only指値でスプレッド内に置き、テイカー0・メイカー±0%に近いコストで小さく刈り取る。ルール:
- 相場急変時は即撤退(スプレッド拡大は罠にもなる)。
- 約定後は速やかに反対売買でデルタを戻す(ネットリスクを持続しない)。
9-3. ベーシス微修正(現物⇄パーペチュアル)
同銘柄で現物とパーペチュアルの価格差(≒Funding期待)が広がった瞬間に、低レバの両建てで差を回収。過度なレバと相関外しに注意。
9-4. 指標イベントのスキャル
重要経済指標の前後15分は、スプレッド・滑り・Funding変化が激化。「やらない」選択を常に持ち、やるならサイズは1/3以下。
10. 口座設計テンプレ(例)
・初期入金:USDC 2,000 ・想定レバ:最大3倍(通常は1.5倍まで) ・同時ポジション:2銘柄まで(相関をずらす) ・損切り:口座有効額の-1.0%/日で強制撤退 ・発注:Post-Only 70%、成行 30%上限 ・週次レビュー:Funding損益、実効手数料、滑り、約定率
11. 失敗パターンと対策
- (失敗)クロスで全銘柄ロング:相関ショックで一気にMM割れ → (対策)異相関2銘柄+現金比率20%確保。
- (失敗)Funding読み違い:受け取り想定が一転支払い → (対策)事前に前後2期間の予想と建玉分布を確認。
- (失敗)成行多用:薄板で滑ってコスト肥大 → (対策)板監視+Post-Only基本、成行はイベント時のみ。
12. セキュリティ運用
- 承認(Approve)上限は最小化。不要承認は定期的にリボーク。
- ハードウェアウォレット推奨。署名内容は必ず確認。
- 公式URLのブックマーク固定。SNSの偽リンクに反応しない。
13. よくある質問
Q. KYCは必要?
自己保管型DEXのため通常は不要です。ただし国・地域の規制や接続プロバイダによって利用に制限がかかる場合があります。
Q. レンディングは使うべき?
金利とFunding・手数料を総合で見て、スプレッドがプラスのときのみ最小サイズで試行するのが無難です。
14. まとめ:最初の30日ロードマップ
- Day 1–3:100–300 USDCで板観察と小口指値練習(Post-Only)。
- Day 4–10:Fundingキャリーの検証。1銘柄低レバで日次集計。
- Day 11–20:ベーシス微修正とメイカー提供の併用を少額で。
- Day 21–30:勝っている型を強化、負け型は停止。週次で口座規約・手数料の改定がないか確認。
Vertexは「CEXの使い勝手×DEXの自己保管」を目指す設計です。サイズを抑えて検証→勝ちパターンだけを少しずつ増やす、これが最短ルートです。


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