本稿では、分散型デリバティブ取引所Aevoをテーマに、構造・手数料・証拠金と清算・資金調達率(Funding)・ADL(自動デレバレッジ)・入出金フローまでを、初めての方でも迷わないよう丁寧に解説します。読了後には、最小限のリスクで最初のトレードを開始できるレベルを目指します。なお、本記事は情報提供であり、特定の投資勧誘を目的とするものではありません。
なぜAevoか:CEX級の操作感×DeFiの自己管理
Aevoは、OP Stackを用いた独自のL2(ロールアップ)上に構築され、オフチェーンのマッチングエンジンとオンチェーン清算を組み合わせています。これにより、板取引の高速性・低遅延と、オンチェーンによる検証可能性を両立します。現物を保管する中央集権型取引所(CEX)と異なり、鍵はユーザー自身が保持し、入出金はロールアップを介して行われます。
特徴の要点
- 独自L2(OP Stackベース):高スループットで約定遅延を抑制。清算はL2で完結し、最終的にL1へバッチ投稿。
- 統合商品:パーペチュアル(Perps)とオプションの両方を自己保管で取引可能。
- クロスマージン:原則ポートフォリオ単位で証拠金を評価。建玉やオプションの損益が相互にオフセット。
- ドキュメント整備:資金調達率や清算ロジック、手数料の仕様が公開され、透明性が高い。
Aevoのアーキテクチャ:独自L2とオンチェーン清算
AevoのL2はOP Stackを採用し、Conduit運用のシーケンサーが約1時間ごとにバッチをL1へ投稿、2時間のディスピュート期間を経て確定します。実運用上、出金完了まで概ね2~3時間を想定します。入金はブリッジ経由でL2へ転送され、L2上のガス費に応じた少額の手数料がかかる設計です。
オンチェーン検証とオフチェーン約定
板の注文照合自体は高速性を優先してオフチェーンで行い、最終的な状態遷移はL2で確定・検証可能な形で処理されます。これにより、CEXに近い操作感を維持しつつ、自己保管のメリット(カウンターパーティリスク低減、透明性)を確保します。
商品概要:パーペチュアル(Perps)とオプション
AevoはBTC・ETH・SOLなどメジャー銘柄のパーペチュアルに加え、欧州型オプションを提供します。パーペチュアルは先物と異なり満期がなく、資金調達率(Funding)により現物指数に価格を収斂させる仕組みを採用します。オプションは統合マージン下での売買が可能で、先物とヘッジ連携しやすいのが特徴です。
BTC-PERP仕様(例)
- 最大レバレッジ:20x(例)
- 初回証拠金率:5%、維持証拠金率:3%(例)
- 清算手数料・資金調達:銘柄ごとに仕様あり(後述)
- 最小発注金額:10 USDC(例)
※上記はBTC-PERPの代表仕様例です。銘柄により異なるため、実際の注文前に公式スペックを確認してください。
手数料体系:メイカー/テイカー、入出金、清算関連
板取引のため、テイカー(即時約定)とメイカー(板提供)で手数料が異なります。一般にテイカーの方が高く、パーペチュアル・オプションで料率が別に規定されています。入金はネットワークに応じて小額のL2負担があり、出金はバッチ確定(2~3時間)を経て完了します。清算やADL時には別途のフィーが発生する点にも注意が必要です。
入金・出金の目安
- 入金:ブリッジ経由。Arbitrum/Optimismからの入金には0.0001~0.0002 ETH程度のネットワーク手数料がかかるケースあり。
- 出金:L2→L1最終化に約2~3時間。
資金調達率(Funding)の基礎と実務
資金調達率は、パーペチュアル価格を現物指数に近づけるための時間当たりの支払いです。Aevoでは1時間ごとにファンディングが発生し、ロングとショートのどちらかが支払い側になります。金利・板のインパクト価格・指数価格などで算出され、銘柄ごとに詳細なパラメータが定義されています。
計算例(概算)
たとえば、ある時点のBTC-PERPの時間当たり資金調達率が+0.02%(ロング支払い)で、建玉名目10,000 USDCのロングを持つ場合、1時間あたり2 USDCを支払うイメージです(10,000 × 0.0002)。日次では約48 USDCに相当します。資金調達率は変動するため、実際の支払いは時点ごとの値に依存します。
クロスマージンと清算:口座全体での健全性管理
Aevoは原則クロスマージン(ポートフォリオマージン)で、口座全体の資産・建玉・オプション損益・未約定注文などを加味して口座健全性を評価します。代表的には、口座残高 − 未約定注文の必要証拠金 − 維持証拠金の関係が一定条件を下回ると清算手続きが開始されます。
清算の段階
- 未約定注文のキャンセル
- 必要に応じてポジションの縮小・解消
- 市場状況により通常の清算が困難な場合、ADL(自動デレバレッジ)が発動することがある
ADLはシステム安定性を守るための最終手段で、高レバレッジかつ含み益の大きいポジションから順に反対売買でクローズされ得ます。
初心者が最初にやるべき6ステップ
- ウォレット準備:MetaMask等を用意し、ETH(ガス代)とUSDCを保有。
- ブリッジ:公式ブリッジ経由でAevo L2へ入金。少額で動作確認。
- 板の読み方:スプレッド・板厚・出来高・建玉上限を確認。最初はテイカー発注を避け、指値で練習。
- サイズ設計:初回は名目1,000~2,000 USDC相当を上限目安に。維持証拠金を常に2~3倍超で維持。
- 損切りの固定化:価格レベルか口座ドローダウン(例:‐1.5%)のどちらか早い方で必ず損切り。
- 資金調達率を学ぶ:支払い側に偏る時間帯の長期保有を避け、意図して払う時だけに限定。
具体例:BTC-PERPでのサイズ決めとストップ
口座残高が2,000 USDCの初心者が、最大レバレッジを使わず安全運用したいとします。初回は名目1,000 USDCまでに抑え、初回証拠金=50 USDC(5%)・維持=30 USDC(3%)を下回らないよう、‐40 USDCになったら手動クローズのルールを決めます。これにより、清算手前での強制執行を避け、学習コストを限定できます。
簡易ヘッジ:ファンディング・ニュートラルの発想
パーペチュアルのファンディング負担を抑える簡易策として、短時間だけデルタニュートラル(価格方向のリスクを相殺)に近づける考え方があります。例として、ロングのファンディング支払いが想定される場合、短時間のショートを別銘柄や別市場で用意して、価格方向リスクの一部を打ち消すアプローチです。手数料・スリッページ・建玉制限のコストを常に上回れるケースだけに限定しましょう。
よくある失敗と回避策
- テイカー連打:急いで成行約定を多用すると手数料が嵩む。板厚とスプレッドを見て指値中心に。
- 過剰レバレッジ:20xなどの高レバは変動に耐えられない。初回は実効2~3x目安で。
- Funding軽視:時間課金の意識が薄いと損益がジリジリ削られる。支払い側の長時間保有を避ける。
- 損切りの先送り:清算ラインに近づくほど不利。事前に損切り条件を固定し機械的に実行。
- L2出金時間の誤解:即時ではない。2~3時間を見込み、資金繰りを逆算。
コンプライアンスとリスク管理の視点
自己保管・オンチェーン清算は透明性の利点がある一方、秘密鍵の管理やブリッジ・L2固有のリスクへの理解が不可欠です。個人情報やKYCに依存しない設計は一長一短であり、国・地域の規制や税務上の取扱いも必ず自ら確認してください。
最短で成果を出すためのチェックリスト
- 最初の10回は固定ルール(サイズ・損切り・利確幅)で練習し、資金曲線が右肩上がりかを検証。
- 板密度が薄い時間は無理に触らない。約定の安定性>チャンスの多さを重視。
- Fundingの支払い側に偏る保有は避け、短期勝負に切り替える。
- 清算とADLの条件は定期的に復習。仕様変更もドキュメントで確認。
まとめ
Aevoは、CEX級の操作感とDeFiの自己保管を両立した実用的なPerp/オプションDEXです。L2の最終化タイム・Funding・証拠金と清算の仕組みを理解し、小さく始めてルールで守る運用を徹底すれば、初心者でも十分に学びながら前進できます。


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