Aevoパーペチュアル徹底攻略:ロールアップ構造、資金調達率の数式、実践エッジと運用手順

暗号資産

本稿は、Aevo のパーペチュアル先物(以下「パーペチュアル」)を徹底的に分解し、構造の理解から、資金調達率(Funding)の最新仕様、マーク価格の算出、クロスマージンと清算の実際、そして収益機会(エッジ)までを一気通貫で解説します。単なる用語集ではなく、実際の運用に直結する手順と意思決定フレームを提示します。

スポンサーリンク
【DMM FX】入金

Aevoとは:何が他と違うのか

Aevoは、取引の注文板とリスク管理をオフチェーンで処理し、約定の決済をオンチェーンで行うハイブリッド型のPerp DEXです。基盤はEthereumのEVM系オプティミスティック・ロールアップ(Aevo Rollup)で、Conduitがシーケンサーを運用し、トランザクションは約1時間ごとにメインネットへバッチ投稿される設計です。入金はOptimism Standard Bridgeを用い、出金は係争(dispute)期間を含め原則2〜3時間で確定します。ガス負担は、入出金はユーザー負担、約定の確定は取引所負担で、指値の作成・キャンセル自体にガスはかかりません。これにより、板の厚みと低レイテンシを維持しつつ、清算や資産保全はスマートコントラクトで自動化されます(出典:Aevo公式ドキュメント)。

アーキテクチャ概観:注文板/リスクエンジン/オンチェーン決済

注文板(Orderbook)とリスクエンジンはオフチェーンで動作し、約定の最終決済はロールアップ上のコントラクトで実行されます。取引不成立時も板更新にコストがかからず、荒い相場でも板の回転と約定スループットを確保できます。一方で、インデックス価格やマーク価格清算判定など重要な安全装置は仕様が固定・公開され、裁量ではなくアルゴリズムで処理されます。

インデックス価格:集約とクリーニング

Aevoの各銘柄は、複数の中央集権型取引所(CEX)現物価格を取り込み、通信断や無効データなどを排除したうえで中央値から±0.5%外れたペアを除外し、残差の平均を取る方式でインデックスを算出します。これにより、単一取引所のフラッシュムーブや一時的乖離に対するロバスト性を確保します。USDT建・USD建のデータはUSDC建てに変換して整合させます。

マーク価格:清算の基準となる「公正中間値」

清算や未実現損益(UPnL)の評価は、トレードの公平性を担保するためマーク価格で行われます。Aevoではマーク価格をおおまかに次の中央値として定義します:Mark = Median(Fair, Price1, Price2)。ここで

  • Fair は「影響ノッチョナル(例:10,000 USD)で売り・買いを入れた場合の平均影響価格」の中間値(≒板の厚みを織り込んだ公正価格)。
  • Price1 は「Index × (1 + 直近Funding × 次のFundingまでの残時間)」で、直近の資金調達率と時刻を反映。
  • Price2 は「Index + 5分移動平均ベーシス」で、フェア値とインデックスの短期乖離を平滑化。

この設計により、板の薄い瞬間のスパイクでも清算やPnL評価が過度に歪まないようにしています。

Funding(資金調達率):2024年8月導入の新式

AevoのFundingは1時間ごとに精算され、基本式は次の通り(8時間相当のレートを算出してから1時間に按分):

8H Funding = Avg(Premium) + Clamp(Interest - Avg(Premium), +0.05%, -0.05%)
Capped 8H = Clamp(8H Funding, Ceiling, Floor)
1H Funding = Capped 8H / Funding Interval

要点は三つです。第一に、プレミアム指数は「影響ノッチョナルで計ったImpact Bid/Askとインデックスの差分」から導くため、板の浅さ・厚さを反映します。第二に、クランプにより、金利差とプレミアムの乖離が±0.05%の範囲なら金利(多くの銘柄で0.01%)に収束します。第三に、銘柄ごとに上下限(Ceiling/Floor)が設定され、極端な過熱時にFundingがキャップされます。標準のFunding Intervalは8時間ですが、市況に応じて4時間などへ変更される場合があります。

クロスマージンと清算ロジック:式で理解する

Aevoはクロスマージンで、口座内の全ポジションと未約定注文を束ねてヘルスチェックします。新規建玉時は

AB + UP - OO - IM - MM > 0

継続保有の判定は

AB + UP - OO - MM > 0

を満たす必要があります(AB:口座残高、UP:未実現損益、OO:未約定注文の証拠金拘束、IM:初期証拠金、MM:維持証拠金)。閾値を割り込むと清算エンジンが発火し、①新規注文の禁止と未約定の取消、②板での段階的な強制クローズ(2秒間隔で最大30秒)、③保険基金との相対、④なお残ればADL(自動デレバレッジ)という順で執行されます。主要銘柄(BTC/ETH/SOL)のオプションとペップは通常ADL対象外です。

オンボーディング:入金・コスト・レイテンシ

入金はL1⇄L2ブリッジ(Optimism Standard Bridge)で、L1側の確定に数分、出金は係争期間を含め2〜3時間のレンジ。注文の作成・キャンセルは無料で、約定の確定ガスは取引所負担です。したがって、板に厚みがある時間帯やイベント前後で指値を何度も差し替えても手数料面のペナルティが小さいのが特長です。

実践エッジ(10選):「構造」を利用して勝ち筋を作る

  1. Fundingウィンドウ回帰:Funding精算の直前・直後は短期ベーシスが歪みやすい。Price1の項に直近Fundingと残時間が入るため、「直前の買われ過ぎ」→精算→反転のスキャル縛りを作りやすい。
  2. Impactベースのフェア値:マーク価格のFairは「影響ノッチョナル10,000USD」を仮定。板の薄い草コインはFairの変動が大きく、板の厚みが戻る時間帯に逆張りでFair回帰を取りに行く。
  3. Indexの堅牢性を活かす裁定:Indexは外れ値を0.5%ルールで除外。CEX側の一瞬の釣り上げ・釣り下げに過度に引っ張られにくい。Mark−Indexの乖離が平時帯域を超えたら、戻りを前提に小サイズで逆張りエントリー。
  4. キャップ付きFundingの捕捉:Ceiling/Floorが明示的。上限に張り付く相場は板厚が薄く跳ねやすいので、逆方向のオプションやスポットでデルタ中和し、Funding受取を狙う。
  5. 板主導の撤退設計:清算はMark基準。Fairの悪化(=板の後退)で想定より早くMM接近しやすい。板の薄い通貨はサイズを常に分割、2秒刻みの分割清算にも耐える。
  6. ガス無料の指値リプレイス:板が動くイベント窓(雇用統計、FOMC等)では、価格帯ごとに氷山指値を複数用意し、気配に合わせて高速で差し替える。
  7. クロスマージンの相殺効果:相関の低いポジション同士を意図的に抱き合わせ、必要証拠金を抑えつつPnL分布を平滑化。IM/OO/MMの式で自口座のヘルスをシミュレーションする。
  8. インパクト最小の成行クローズ:清算フローは板での段階約定→保険基金→ADL。危険水準では自ら先に薄い側でポジション縮小し、保険基金・ADLまで到達しないよう損失上限を制御。
  9. ミニマムサイズ検証:草銘柄はImpact価格の変動が大きい。最小サイズ×複数回で、Fair回帰のショートスパイクを収集するバケットを構築。
  10. 時間分散のデルタ中和:Funding受取を主目的とする場合、スポットや他市場の逆張りマイクロヘッジを時間分散で入れて、Fundingのボラを低減。

イベント前後の板読み:実務フロー

①過去1か月の同種イベント(CPI、雇用統計、FOMC等)でのMark−IndexFair−Indexの最大乖離帯域をメモ。②当日は気配が薄くなる前に氷山指値を配備。③発表直前は板に近いPrice1の挙動(Funding×残時間)に注目。④初動は成行を避け、⑤戻りを確認してから小サイズ×複数回で逆張り/順張りを選択。

リスク管理チェックリスト

  • MM到達の前に自主撤退ラインを設定(Mark基準)。
  • 未約定拘束(OO)が増えたら速やかに注文整理。
  • 草銘柄はFair変動が大きい=サイズを落とす。
  • Funding上限張り付き時はヘッジ前提で建てる。
  • 出金リードタイム(2〜3時間)を前提に余力管理。
  • イベント窓は指値差し替えでコスト最小化。

ステップ別:最初の30日運用プラン

  1. Day 1–3:L2入金とUI慣熟。板の厚いBTC/ETHのみ観察と最小サイズで試行。
  2. Day 4–10:Fundingウィンドウの回帰性をログ化。Mark/Index/Fairの三者関係を時系列で可視化。
  3. Day 11–20:草銘柄に最小ロットで展開。インパクト由来のFair変動に対して反応速度を調整。
  4. Day 21–30:小さな裁定(Mark−Index)とFunding受取の組み合わせでデルタ中立のミニ戦略を回す。

よくある失敗と回避策

  • Indexのみを注視:清算はMark基準。Fairの劣化で突然MM接近に注意。
  • サイズの一括建て:2秒刻み清算に飲まれやすい。常に分割。
  • Funding目当ての片張り:上限張り付き相場は急変で逆噴射。ヘッジ前提にする。
  • 出金前提の過剰レバ:出金2〜3時間の前提を忘れない。

実装ノート(式・数値の再掲)

・Markの定義:Mark = Median(Fair, Price1, Price2)
・Price1:Index × (1 + Funding_last × t_until_next)
・Price2:Index + MA_5min(Fair - Index)
・8H Funding:Avg(Premium) + Clamp(Interest - Avg(Premium), ±0.05%) を上下限でキャップ→1時間に按分。

参考資料

コメント

タイトルとURLをコピーしました