米ドルMMFを米国短期債ETFに乗り換えて野村Webローンの担保にする方法

投資基礎知識

本記事では、SBI証券で保有している米ドルMMFを、そのままでは担保に使えない野村Webローンで活用したいと考えている投資家向けに、「米ドルMMFを米国短期債ETFに乗り換え、野村證券に移管して担保に入れる」というスキームを整理して解説します。

結論からお伝えすると、外貨MMFそのものは野村Webローンの担保対象外ですが、条件を満たす米国短期債ETFであれば、SBI証券で買い付けたあとに野村證券へ移管し、野村Webローンの担保として利用できる可能性があります。ただし、銘柄選定と「本当に担保対象になっているか」の確認、そして価格変動・為替変動リスクの管理が不可欠です。

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結論と全体像:米ドルMMF→米国短期債ETF→野村Webローン担保

まず、全体の流れをシンプルに整理します。

  • SBI証券の米ドルMMFはそのままでは他社へ移管できず、野村Webローンの担保にもできません。
  • 一方で、米国短期国債に投資するETF(米国上場ETFや東証上場の米国債ETF)は、野村證券で「外国ETF」または「国内ETF」として取り扱われ、Webローン担保の対象になっている銘柄があります。
  • したがって、米ドルMMFを解約して米国短期債ETFに乗り換え、そのETFを野村證券へ移管すれば、野村Webローンの担保として活用できるスキームが組めます。

ここで重要なのは、次の2パターンです。

  • パターンA:米国上場ETF(例:SHY US)に乗り換えて、SBI→野村へ外国株式として移管する
  • パターンB:東証上場の米国債ETF(例:2620 東証)に乗り換えて、SBI→野村へ国内株式として移管する

どちらも「米国短期国債に投資するETF」を使う点は同じですが、通貨建てや事務フローが異なります。以下で順番に解説します。

野村Webローンの担保の仕組みを整理する

まずは、野村Webローンの担保評価の基本を押さえておきます。細かい条件は変更される可能性があるため、実際の利用時には必ず最新の資料やシミュレーション画面を確認してください。

担保対象と掛目のイメージ

野村Webローンの担保となる有価証券は、大まかに次のような区分と掛目で扱われます。

  • 国内上場株式・国内ETF・国内REIT・外国株式・外国ETF:時価の50%評価
  • 一定条件を満たす債券や公募投信:時価の60%評価(商品により異なる)

一方で、次のような商品は原則として担保の対象外です。

  • 外国投資信託(ルクセンブルク籍ファンドなど)
  • 外貨MMF、MRFなどの短期運用商品
  • NISA口座内の有価証券

この枠組みの中で見ると、外貨MMFは「外国投資信託・短期金融商品」の側に属するため担保NGですが、米国上場ETFや東証上場の米国債ETFは「株式・ETF」のカテゴリに入り、銘柄ごとに担保対象に指定されていれば時価の50%が担保価値として評価されます。

なぜ米国短期債ETFなのか

米国短期債ETFを使う発想のポイントは次のとおりです。

  • 米ドルMMFと同様、「比較的デュレーションの短い米国国債」に投資しているため、価格変動リスクが中長期債より抑えられる。
  • ETFという形を取るため、株式・ETFとして「担保候補」の箱に入る。
  • 流動性の高い代表的な銘柄を選べば、スプレッドや売買コストも比較的抑えやすい。

もちろん短期債ETFであっても価格は動きますし、為替(USD/JPY)との二重の変動を受けますが、米ドルMMFよりも「担保として評価される」可能性が高い点に意味があります。

パターンA:米国上場ETF(SHY US)を使うスキーム

まずは、米国上場ETFを使うパターンです。代表例として、米国国債1〜3年に投資するETF「SHY US」を想定します。

パターンAの概要

  • SBI証券で米ドルMMFを解約し、米ドル現金を確保する。
  • SBI証券の米国株取引口座で、SHY USを買い付ける。
  • SHY USを、SBI証券から野村證券へ「外国株式移管」で出庫する。
  • 野村側でSHYが入庫されれば、Webローンの担保対象(外国ETF)として時価の50%評価を受ける。

具体的なステップ

  1. SBIで米ドルMMFを解約する
    米ドルMMFを売却し、米ドルのキャッシュポジションに戻します。この段階で利息・為替差益が確定し、課税関係が発生します。
  2. SBIでSHY USを買い付ける
    米国株の取引画面からSHY USを発注します。ここで重要なのは、NISAではなく課税口座(特定口座または一般口座)で保有することです。NISA口座の残高は野村Webローンの担保には使えません。
  3. 外国株式の移管出庫を申請する
    SBIの「外国株式 移管出庫」手続きで、移管先に野村證券の支店・口座番号を指定し、銘柄(SHY)と株数を記入して出庫申請を行います。実際の必要書類やオンライン申込の可否は、SBIの最新案内に従ってください。
  4. 野村側でSHYが入庫されるのを待つ
    移管には一定の日数がかかります。入庫が完了すると、野村証券の口座の外国株式残高にSHYが表示されます。
  5. Webローンの担保設定を行う
    野村Webローンの画面や担当者を通じて、SHYが担保対象銘柄になっていることを確認し、担保設定を行います。その時点の時価×50%が担保評価額として計上され、極度額(借入余力)の一部を形成します。

パターンAのメリット・デメリット

メリット:

  • 通貨建て・中身ともに「米ドル短期国債」に近い性質を維持できる。
  • 米ドル建てで運用しながら、日本国内の証券担保ローンの枠を確保できる。

デメリット:

  • 価格は米国債利回りと為替の両方に影響されるため、担保評価が変動しやすい。
  • 外国証券担保としてのルール(追証・担保率見直しなど)に注意が必要。
  • 移管出庫・入庫の事務フローがやや複雑になりやすい。

パターンB:東証上場ETF(2620)を使うスキーム

次に、東証上場の米国債ETFを使うパターンです。代表例として「2620 iシェアーズ 米国債1-3年ETF(東証)」を想定します。

パターンBの概要

  • SBI証券で米ドルMMFを解約し、米ドル現金を確保する。
  • SBI証券で米ドル→日本円に為替振替する。
  • 日本円で2620(東証上場の米国債ETF)を買い付ける。
  • 2620を、SBI証券から野村證券へ「国内株式移管」で出庫する。
  • 野村側で2620が入庫されれば、国内ETFとしてWebローン担保(時価の50%評価)に組み入れられる。

具体的なステップ

  1. SBIで米ドルMMFを解約する
    パターンAと同様に、米ドルMMFを解約して米ドル現金を確保します。
  2. 米ドルを日本円に振り替える
    SBIの為替振替機能を使い、米ドル→日本円に両替します。このとき、為替スプレッドや手数料を確認しておくとよいでしょう。
  3. SBIで2620を買い付ける
    国内株式として、東証上場銘柄2620を日本円で買い付けます。こちらも、担保目的であれば必ず課税口座で保有するようにします。
  4. 国内株式の移管出庫を申請する
    SBIの「国内株式 移管出庫サービス」を利用し、移管先として野村證券の口座を指定します。国内株式の移管は、同一名義間であれば手数料無料のケースが一般的です。
  5. 野村側で2620が入庫され、担保設定を行う
    2620が野村の口座に表示されれば、国内ETFとしてWebローンの担保評価(時価×50%)に組み込むことができます。

パターンBのメリット・デメリット

メリット:

  • 東証上場の国内ETFとして扱われるため、国内株移管の枠組みでシンプルに移管できる。
  • 野村から見た運用も「国内ETF担保」として扱われるため、実務が比較的わかりやすい。

デメリット:

  • いったん米ドルを日本円に戻すため、為替コストが発生する。
  • 最終的な保有は円建てETFであり、「ドル現金を温存する」という目的とは少し性質が変わる。

共通するリスク・注意点

どちらのパターンを選ぶ場合でも、共通して注意しておきたいポイントがあります。

担保評価の変動と追加入金リスク

ETFを担保にして野村Webローンを利用する場合、担保評価は常に「時価×掛目」で計算されます。価格が下がると担保評価額も下がり、ローン残高に対して担保不足になると、追加入金や一部返済を求められる可能性があります。

特に米国債ETFの場合、米金利の変動や為替の変動によって基準価格が動くため、「短期債だから絶対安全」というわけではない点を理解しておく必要があります。

NISA口座は担保に使えない

どれほど優良なETFであっても、NISA口座に入っている残高はWebローンの担保対象になりません。担保に回す前提でポジションを構築するのであれば、必ず課税口座(特定・一般)で保有する必要があります。

銘柄ごとの「担保対象・不適格」判断

野村Webローンでは、担保対象となる銘柄リストが定められており、定期的に見直しが行われます。同じ「米国短期債ETF」であっても、銘柄によっては担保対象外とされているケースや、途中で担保不適格に変更されるケースも考えられます。

したがって、実際にスキームを組む前に、野村證券に対して次の点を確認しておくことが重要です。

  • この銘柄(ティッカー)は現在、Webローンの担保対象銘柄になっているか。
  • 他社からの移管入庫が可能な銘柄か。
  • 担保掛目(評価率)は何%で計算されるか。

移管の手間とコスト

SBI→野村の移管そのものは、制度として用意されていますが、

  • 出庫側の手続き(書類・オンライン申請)
  • 入庫までのタイムラグ(数営業日〜)
  • 出庫手数料・為替コスト

といった実務上の負担が発生します。スキーム全体で見たときに、「どれだけのローン枠が欲しいのか」「そのために払うコストとして許容できるか」を冷静に比較する必要があります。

どちらのパターンを選ぶかの判断軸

最後に、パターンA(SHYなど米国上場ETF)とパターンB(2620など東証上場ETF)のどちらを選ぶかを考える際の判断軸を整理します。

  • ドル建てのまま運用したいか
    米ドル建て資産として維持したい場合は、パターンA(SHY USなど)が自然です。一方で、円ベースの評価で構わないなら、パターンB(2620)がシンプルです。
  • 手続きのシンプルさを優先するか
    事務の単純さを重視するなら、国内株式移管で完結するパターンBの方が扱いやすい傾向があります。
  • 為替コストの許容度
    パターンBでは米ドル→円の為替振替が前提になるため、為替コストが上乗せされます。為替コストに敏感な場合は、パターンAの方が合理的なケースもあります。
  • 担保評価のボラティリティ許容度
    どちらのパターンも価格・為替の影響を受けますが、ポジションサイズや借入額によって許容できるボラティリティは変わります。必要な極度額と担保余力のバッファをあらかじめ設計しておくことが重要です。

まとめ:外貨MMFから「担保に乗る形」への組み替え

本記事で見てきたように、SBI証券の米ドルMMFそのものは野村Webローンの担保には使えませんが、米国短期債ETFに乗り換えたうえで野村に移管することで、「ドル資産を原資としつつ野村Webローンの担保枠を確保する」スキームは現実的に検討可能です。

ただし、どのETFを選ぶか、現在も担保対象銘柄になっているか、どの程度の担保評価変動を許容できるか、といった論点を一つずつ確認しながら進める必要があります。また、税金・為替コスト・移管の手間を含めてトータルで見たときに、自身の資金計画やリスク許容度に合っているかどうかを慎重に判断することが重要です。

米ドルMMFで眠っているドル資産を、どこまで担保として活用するかは、ポートフォリオ全体のリスク管理とも直結します。野村Webローンを活用する場合は、本記事の内容をベースに、具体的な金額・銘柄・スケジュールをシミュレーションしながら設計していくことをおすすめします。

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