この記事では、チャートパターンの中でもややマイナーながら、相場の転換点を鋭く捉えられる「ダイヤモンドフォーメーション」について詳しく解説します。名前のとおり、価格の高値と安値を結んだラインがダイヤモンド(ひし形)のような形になることからこの名前がついています。
ダイヤモンドフォーメーションは、上昇トレンドの天井圏・下降トレンドの大底圏で現れやすい「トレンド転換シグナル」です。うまく使えば、天井売り・大底買いに近い位置を狙うことも可能ですが、形がやや複雑で、ダマシも多いパターンです。そのため、きちんと定義を理解し、再現性のあるルールに落とし込むことが重要です。
ダイヤモンドフォーメーションとは何か
ダイヤモンドフォーメーションは、相場の「迷い」と「エネルギーの蓄積」が同時に進行している局面で現れます。価格の振れ幅が一度広がったあと、徐々に収束していき、結果的に高値安値を結んだラインがダイヤモンド型になるのが典型です。
もう少し要素分解すると、次のような構造になっています。
- 最初はボラティリティが拡大し、高値更新と安値切り下げが混在して「拡大型」の形になる
- その後、徐々に高値が切り下がり、安値が切り上がる「収束型」に移行する
- 全体として見ると、左側はメガホン(拡大型)、右側は三角持ち合い(収束型)が組み合わさった形になる
- 最終的にどちらかにブレイクした方向に、一定のトレンドが発生しやすい
上昇トレンドの最終局面でダイヤモンドが出現し、下方向にブレイクすれば「天井圏のダイヤモンドトップ」、逆に下降トレンドの終盤で形成され、上方向にブレイクすれば「大底圏のダイヤモンドボトム」となります。
ダイヤモンドフォーメーションが出やすい相場環境
このパターンは、どんなチャートにも頻繁に出るわけではありません。特に次のような条件が揃うと発生しやすくなります。
- すでに中期以上の明確なトレンドが出ており、参加者の含み益・含み損が大きく溜まっている
- ファンダメンタルズやニュース要因で、市場の見方が二極化している(強気派と弱気派の攻防)
- 日足や4時間足など、ある程度の時間軸でボラティリティが高い
具体的には、次のようなケースをイメージすると理解しやすいです。
- 株式市場:好調な決算が続き、長期上昇トレンドを形成してきた銘柄が、ある価格帯で急激に値動きが荒くなり、その後もみ合いながら方向感を失う局面
- FX:大きなトレンドを作った通貨ペアが、重要な経済指標や金融政策会合の前後で乱高下を繰り返したあと、徐々に値幅を縮小していく局面
- 暗号資産:ビットコインや主要アルトコインが、史上最高値近辺で激しい乱高下を見せ、その後上にも下にも決め切れず、値動きが収束していく局面
チャート上での具体的な見つけ方
ダイヤモンドフォーメーションは、教科書的な「完璧なひし形」が現れることはむしろ少なく、実務レベルでは「それっぽい形」をルール化して使うことになります。そのため、裁量のあいまいさを減らすために、段階的なチェック手順を決めておくと良いです。
ステップ1:事前に明確なトレンドがあるかを確認する
まず、ダイヤモンドを探す前提として「それまでに継続したトレンドがあったか」を必ず確認します。トレンドのないレンジ相場の中でダイヤモンドに見える形を探しても、転換シグナルとしての意味は弱くなります。
- 株や暗号資産なら、少なくとも数週間〜数か月の上昇(または下落)トレンド
- FXなら、4時間足〜日足レベルでの明確なトレンド
移動平均線(20日線・50日線)や高値・安値の切り上げ/切り下げで、トレンドの有無を機械的に確認しておくと判断が安定します。
ステップ2:左側の「拡大型」構造を探す
チャートの高値・安値の振れ幅が、次第に大きくなっているゾーンを探します。具体的には、次のような状態です。
- 一度大きな上ヒゲ・下ヒゲを伴うローソク足が出現し、その後も高値更新・安値更新が混在してボラティリティが急拡大している
- 高値同士を結んだ線が、徐々に上向きに広がっている
- 安値同士を結んだ線が、徐々に下向きに広がっている
この拡大型の部分は、メガホンパターン(ブロードニングフォーメーション)に近いイメージになります。ここは市場参加者の迷いが増し、ポジションが乱立している状態と考えられます。
ステップ3:右側の「収束型」構造を確認する
拡大型ののちに、今度は高値が切り下がり、安値が切り上がる「三角持ち合い」のような段階が来ます。
- 直近高値を結んだ線が徐々に下向きに傾いている
- 直近安値を結んだ線が徐々に上向きに傾いている
- 結果として、価格の振れ幅がだんだん小さくなっていく
ここではポジションの整理が進み、「どちらにブレイクしてもおかしくない」エネルギーの蓄積状態になります。この拡大型と収束型を合わせて、全体でダイヤモンド型になっているかを確認します。
ダイヤモンドフォーメーションのブレイクアウト戦略
実際のトレードで使う場合、多くのトレーダーは「ダイヤモンドの外側のラインをどちらかに抜けたらエントリー」というブレイクアウト戦略を取ります。ただし、単純にライン抜けで飛びつくとダマシも多いため、ルールを細かく決めておくことが重要です。
エントリールールの一例(下落転換:ダイヤモンドトップ)
- 上昇トレンドの終盤でダイヤモンド型を確認する
- 右肩部分の安値を結んだサポートラインを引く
- 終値ベースでサポートラインを明確に下抜けたらショートエントリーを検討する
- できれば、ブレイク後の最初の戻り(プルバック)でエントリーする
このとき、ストップロスは次のいずれかを基準に置きます。
- ブレイク前の直近高値の少し上
- ダイヤモンド右肩の高値の少し上
エントリールールの一例(上昇転換:ダイヤモンドボトム)
- 下降トレンドの終盤でダイヤモンド型を確認する
- 右肩部分の高値を結んだレジスタンスラインを引く
- 終値ベースでレジスタンスラインを明確に上抜けたらロングエントリーを検討する
- ブレイク後の押し目(プルバック)でエントリーする
ストップロスは、ブレイク前の直近安値またはダイヤモンド右肩の安値の下に置くのが基本です。
目標値(利確ターゲット)の考え方
ダイヤモンドフォーメーションの値幅の考え方は、ヘッドアンドショルダーや三角持ち合いのブレイクと似ています。シンプルな目安としては、次のようなイメージです。
- ダイヤモンド形成部分の「最大の高さ(高値と安値の差)」を測る
- その値幅を、ブレイクポイントから上または下にコピーする
- その水準を、第一目標値として利確を検討する
もちろん、相場環境によっては途中で分割利確したり、トレイリングストップで伸ばしたりする運用も有効です。
株・FX・暗号資産での具体的な活用イメージ
ここからは、銘柄や通貨ペア、暗号資産でのイメージを具体的にしていきます。実際のチャートを見ながら、自分のトレード環境に当てはめて考えてみてください。
株式:個別銘柄の天井圏でのダイヤモンドトップ
たとえば、成長株が決算シーズンに向けて急騰し、出来高も膨らんでいる局面を考えます。決算発表直前には期待買いと警戒売りがぶつかり、値動きが荒くなります。その後、決算発表を通過すると、今度は好材料出尽くしで乱高下し、ボラティリティが一段と拡大します。
ここで左側に拡大型の動きが現れ、その後、市場が情報を消化するにつれて値幅が縮小していきます。チャート上で高値と安値を結ぶと、ダイヤモンドのような形が浮かび上がることがあります。右肩のサポートラインを明確に割り込んだら、売り圧力が勝ったと判断してショート(または保有株の売却)を検討する、という使い方ができます。
FX:主要通貨ペアの日足での転換パターン
FXでは、ドル円やユーロドルなどの主要通貨ペアで、日足レベルのダイヤモンドフォーメーションが出ると、その後数百pips単位のトレンドにつながるケースがあります。特に、長期的なレジスタンスやサポートにぶつかった局面で出現すると、注目度が高まります。
FXは24時間市場であり、アジア・欧州・ニューヨークそれぞれのセッションで流動性と方向性が変わります。そのため、左側の拡大型部分では各セッションごとのトレンドがぶつかり合い、右側の収束部分ではポジション整理が進んでいきます。ブレイクアウト後は、どちらかのセッション主導で一方向へのトレンドが発生しやすくなります。
暗号資産:ビットコインの大天井・大底候補
暗号資産市場はボラティリティが高く、ダイヤモンドフォーメーションが形成されやすい環境です。特に、ビットコインの史上最高値近辺や、大暴落後の大底圏では、ニュースとセンチメントの変化が激しく、短期間に拡大型と収束型の両方が現れることがあります。
暗号資産では、出来高やオンチェーン指標なども参考にしながら、ダイヤモンドのブレイク方向を判断します。たとえば、ダイヤモンドボトム形成後に上方向へブレイクし、同時に出来高が急増している場合、短期〜中期の上昇トレンドが始まりやすいパターンです。
ダマシを減らすためのフィルター設定
ダイヤモンドフォーメーションは、形だけを当てはめてしまうとダマシが多く、損切り貧乏になりやすいパターンでもあります。そのため、エントリー前にいくつかのフィルターをかけて精度を高める工夫が重要です。
フィルター1:出来高(ボリューム)の確認
株や暗号資産では、出来高の推移が非常に重要です。次のようなパターンをチェックします。
- 左側の拡大型部分で、出来高が急増しているか
- 右側の収束部分では、出来高が徐々に減少しているか
- 最終的なブレイク時に、出来高が明らかに増加しているか
このような出来高の変化が確認できれば、ブレイクの信頼度が高まり、ダマシをある程度避けることができます。
フィルター2:上位時間足のトレンド
4時間足でダイヤモンドが出ている場合は日足、日足で出ている場合は週足といった具合に、必ず上位時間足のトレンドを確認します。上位足のトレンドと同じ方向にブレイクしたパターンだけを狙う、というルールにすると、勝率が安定しやすくなります。
フィルター3:重要な水平ライン・移動平均線
ダイヤモンドの位置が、長期のレジスタンスやサポート、200日移動平均線などの重要な水準と重なっているかを確認します。
- 長期レジスタンス+ダイヤモンドトップ+下方向ブレイク
- 長期サポート+ダイヤモンドボトム+上方向ブレイク
このように複数の根拠が重なっているポイントだけを狙うことで、単純な「形だけトレード」から一歩抜け出すことができます。
リスクリワードと資金管理の具体例
ダイヤモンドフォーメーションは、パターンの高さが比較的大きくなることが多いため、リスクリワードを取りやすい反面、ストップ幅も広くなりがちです。そのため、ポジションサイズ管理が非常に重要です。
例:株式トレードでのリスクリワード設計
たとえば、ある銘柄の日足でダイヤモンドトップが形成され、最大値幅が1,000円だったとします。ブレイクポイントが10,000円付近で、第一目標値を9,000円と設定するケースを考えます。
- ショートエントリー:9,900円(ブレイク後の戻り売り)
- ストップロス:10,300円(直近高値の少し上)
- 利確目標:9,000円
この場合、リスクは1株あたり400円、リターンは900円となり、リスクリワード比は約1:2.25です。もし口座全体の許容リスクを資金の1%に抑えると決めていれば、「1% ÷ 400円」で上限株数を計算できます。
例:FXトレードでのリスクリワード設計
ドル円4時間足で、ダイヤモンドボトムが形成され、値幅が2円(200pips)だったとします。ブレイクポイントが150.00円、エントリーが150.10円、目標値が152.00円の場合:
- ロングエントリー:150.10円
- ストップロス:149.40円(直近安値の少し下:−70pips)
- 利確目標:152.00円(+190pips)
リスクリワード比は約1:2.7となり、十分魅力的です。ここでも、1トレードあたりの許容損失を口座残高の何%にするか、あらかじめ決めておくことが重要です。
自分で検証するためのステップ
ダイヤモンドフォーメーションは、チャートソフトによっては自動認識インジケーターも存在しますが、最初は自分の目で探し、感覚とルールを整えることをおすすめします。
ステップ1:過去チャートでパターンを収集する
株・FX・暗号資産など、自分がよく取引する市場の過去チャートを遡り、ダイヤモンドに見える箇所をできるだけ多くスクリーンショットで保存します。その際、次の情報もメモしておきます。
- パターンが完成した日付・価格帯
- その前のトレンドの方向と期間
- ブレイク方向と、その後の値動き
ステップ2:共通点と失敗パターンを分類する
集めたパターンを、「うまく機能したもの」と「ダマシで終わったもの」に分けて比較します。すると、次のような共通点が見えてきます。
- 機能した例:出来高がブレイクポイントで明確に増えている、上位足のトレンドと同じ方向にブレイクしている、重要ラインに重なっている
- 失敗した例:レンジの中で無理やり形を見つけている、出来高のメリハリがない、ニュースで一時的に乱高下しただけ
この作業を通じて、自分なりの「使えるダイヤモンド」と「無視すべきダイヤモンド」の線引きができるようになります。
ステップ3:シンプルなルールに落とし込む
最後に、自分が実際のトレードで使うためのシンプルなルールを文章化します。たとえば:
- 日足で明確なトレンドがあることを前提条件とする
- 左側の拡大型+右側の収束型が、最低でも合計20本以上のローソク足で形成されていること
- ブレイク方向が上位足のトレンドと一致していること
- ブレイク時に出来高が直近平均の1.5倍以上であること(株・暗号資産)
こうしたルールを明文化し、過去チャートで検証しながら改善していくことで、ダイヤモンドフォーメーションを「再現性のある武器」として使えるようになっていきます。
よくある失敗と注意点
ダイヤモンドフォーメーションを使う際に陥りやすい失敗を、あらかじめ知っておくことも重要です。
- どんな形でもダイヤモンドに見えてしまう: 相場を見すぎると、何でもパターンに当てはめたくなります。あくまで「明確なトレンド終盤」「拡大型+収束型」という条件を満たすかを冷静にチェックします。
- レンジ相場の中で無理に探す: トレンドのない相場で見つけたダイヤモンドは、ただのもみ合いであることが多く、転換シグナルとしての精度は低くなります。
- ストップロスを置かない・狭すぎる: パターンの大きさに見合ったストップ幅を確保しないと、ノイズで簡単に狩られてしまいます。事前に1トレードあたりのリスク許容度を決めておくことが大切です。
- ニュースイベントを無視する: 特に株やFXでは、決算や経済指標、政策発表などのイベントがブレイク方向を大きく左右します。イベントカレンダーを確認し、無理にイベント直前直後でポジションを取らない工夫も必要です。
まとめ:ダイヤモンドフォーメーションを武器にするために
ダイヤモンドフォーメーションは、メジャーなチャートパターンに比べると知名度は低いものの、うまく使えば天井圏・大底圏での大きなトレンド転換を捉える強力なツールになります。一方で、形が複雑でダマシも多いため、「なんとなくそれっぽいから」という理由だけでエントリーすると、損失が膨らみやすいパターンでもあります。
重要なのは、次のポイントを徹底することです。
- 事前に明確なトレンドがあることを前提にする
- 左側の拡大型と右側の収束型が揃っているかを確認する
- 出来高、上位足トレンド、重要水平ラインなどのフィルターを組み合わせる
- リスクリワードと資金管理のルールを事前に決めておく
- 過去チャートで十分な検証を行い、自分なりの「使える条件」を磨き込む
これらを踏まえてダイヤモンドフォーメーションをトレード戦略に組み込めば、単なる形の暗記ではなく、実際の収益につながる武器として活用できるようになります。まずは、日足や4時間足など、ノイズが少ない時間軸から過去検証を始め、自分の目とルールを育てていくことをおすすめします。


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