カギ足チャートで流れを読むシンプルトレード戦略

テクニカル分析

カギ足(カギ足チャート)は、日本生まれの値動きに特化したチャートです。時間軸を完全に無視し、「どれだけ価格が動いたか」だけに注目するため、ノイズを大きく減らし、トレンドの流れを非常に直感的に把握できるという特徴があります。

ローソク足チャートしか見たことがない初心者の方にとっては少し馴染みが薄いかもしれませんが、一度ルールを理解すると「今は買い優勢なのか、売り優勢なのか」が視覚的に分かりやすくなり、無駄なトレードを減らすうえで強力な武器になります。

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カギ足チャートとは何か

カギ足チャートは、一定以上の値幅が出たときだけ線が更新される「非時系列チャート」です。一般的なローソク足は、1本=1分、1本=1時間、1本=1日といった時間で区切られますが、カギ足は価格がどれだけ動いたかだけで足が更新されます。

カギ足には次のような特徴があります。

  • 時間経過だけでは新しい足が描かれない(価格が動かない限り、チャートはそのまま)
  • 上昇トレンドでは上向きの線が連続し、下向きの線に切り替わったポイントが「トレンドの転換候補」になる
  • 小さな押し目・戻りはノイズとして無視されるため、全体の流れがすっきり見える

言い換えると、「どうでもいい小さな値動きは全部捨てて、意味のある値動きだけをつなぎ合わせたチャート」がカギ足です。トレンドフォロー型のトレード戦略と相性が良く、FX・株・暗号資産など、値動きさえあればあらゆる市場で利用できます。

カギ足の基本ルール(転換値幅の考え方)

カギ足を描くうえで最も重要なのが、転換値幅(リバーサル幅)です。これは「上昇中にこれだけ下落したら売りに転じたとみなす」「下降中にこれだけ上昇したら買いに転じたとみなす」という基準値です。

例として、株価1,000円の銘柄で転換値幅を20円に設定したとします。

  • 上昇中に20円以上の下落が起きる → カギ足は下向きに方向転換
  • 下降中に20円以上の上昇が起きる → カギ足は上向きに方向転換

このように、一定以上の逆方向の値動きが出たときにだけ方向が変わる仕組みになっているため、ダマシをある程度フィルタリングできます。一方で、転換値幅をどう決めるかによってチャートの表情が大きく変わるため、ここがカギ足運用のポイントになります。

転換値幅の実務的な設定方法

転換値幅の設定では、「通貨ペア・銘柄のボラティリティ」と「自分のトレードスタイル」を必ず考慮します。ここでは、FXと株の具体例を挙げます。

FXの例(ドル円)

ドル円の1日の平均値幅を80〜100pipsと仮定します。デイトレードで「日中の中〜大きめのトレンドだけを取りにいきたい」場合、次のような考え方が現実的です。

  • 短期・スキャル寄り:転換値幅 5〜10pips
  • 標準的なデイトレ:転換値幅 15〜25pips
  • スイング寄り:転換値幅 30〜50pips

例えば転換値幅20pipsでドル円を見た場合、東京時間の細かいノイズはほぼ無視され、大きめの流れが変わったポイントだけがチャートに反映されます。細かい値動きで振り回されがちな初心者ほど、あえてやや大きめの転換値幅にして、方向が変わる頻度を減らす方が心理的にも安定しやすいです。

日本株の例

例えば株価1,000円前後の銘柄で、1日の平均値幅が30〜50円程度の銘柄を想定します。

  • 短期売買(数日の値動きを狙う):転換値幅 10〜20円
  • 中期トレンド(数週間〜数ヶ月):転換値幅 30〜50円

中期トレンドを狙うなら、平均的な日中の値動きと同じくらいか、やや大きめの値幅を転換値幅に設定すると、1つのトレンドが数週間単位で続くようなカギ足チャートになります。「騒がしい日中の値動き」をほとんど無視し、「流れが本当に変わったときだけ」方向転換のシグナルが出るイメージです。

カギ足で何を見るべきか:買い優勢と売り優勢

カギ足チャートを見るときの基本発想はとてもシンプルです。

  • 上向きの線が連続 → 買いが優勢、上昇トレンド
  • 下向きの線が連続 → 売りが優勢、下降トレンド
  • 方向転換が頻発 → トレンドレス、レンジ相場

重要なのは、「いつ方向が変わったか」「どの価格帯で何度も方向が変わっているか」です。後者は、レジスタンスやサポートとして意識されやすい価格帯となり、ブレイクアウトの起点や反転の目安になります。

具体的なトレード戦略1:シンプルなトレンドフォロー

最も分かりやすいのは、カギ足の方向に素直についていくトレンドフォロー戦略です。ドル円の例で、転換値幅を20pipsとしたシナリオを考えます。

ルール例:

  • カギ足が下向きから上向きに転じたとき → 買いエントリー
  • カギ足が上向きから下向きに転じたとき → 売り(決済)
  • 損切りは、エントリー後に再度方向転換が起きたポイントか、その少し外側に置く

例えば、ドル円が145.00円付近で上向きカギ足に転換したとします。その後、カギ足が上向きのまま20pips刻みで上昇し、146.20円で初めて下向きに転換したとすれば、145.00円→146.20円の間のトレンドをおおよそ取れたことになります。

この戦略のポイントは、「細かい押し目を気にしない」ことです。カギ足は転換値幅を超えない限り上下に折れませんから、利が乗ったあと多少逆行しても、転換値幅を超えない限りは保有を続けます。これにより、初心者がやりがちな「少しの含み損でビビって即逃げる」「早すぎる利確」で大きなトレンドを逃すミスを減らすことができます。

具体的なトレード戦略2:カギ足×水平ラインのブレイク

もう一段踏み込んだ戦略として、カギ足で見える「方向転換が多発している価格帯」を水平ラインとして引き、そこをブレイクした方向に仕掛ける方法があります。

手順は次の通りです。

  1. カギ足チャートで、上向き・下向きの転換が何度も起きている価格帯を探す(例:145.50円周辺)
  2. その価格帯に水平ラインを引き、「マーケットが迷っているゾーン」と認識する
  3. ラインを大きく上抜けし、かつカギ足が上向きで確定したら買いエントリー
  4. ラインを大きく下抜けし、かつカギ足が下向きで確定したら売りエントリー

この戦略では、マーケットが何度も攻防を繰り返した価格帯を「エネルギーの溜まり場」とみなし、そのゾーンを抜けた方向に大きなトレンドが発生しやすいという考え方を使います。カギ足は値動きの本質だけを抽出しているため、こうした攻防ゾーンが非常に視認しやすいのが利点です。

リスク管理とポジションサイズの考え方

カギ足を使うとトレンドの全体像が見やすくなる一方で、エントリー/エグジットのポイントはどうしても「値幅ベース」になります。そのため、転換値幅を前提にしたポジションサイズ設計が重要です。

ドル円の例で、転換値幅20pips、1回のトレードで許容する損失を口座残高の2%にするとします。

  • 口座残高:100万円
  • 1トレードの最大許容損失:2万円(2%)
  • 転換値幅:20pips → 損切り幅もおおよそ20pips程度と想定

このとき、1pipsあたりの損益が1,000円になるロット数(=0.2ロット=2万通貨)を上限とすれば、20pips逆行して損切りしても2万円の損失に収まります。実際にはスプレッドやスリッページもあるため少し余裕を見てロットを下げる方が安全ですが、基本発想は「転換値幅 × ロット = 許容損失以内」にすることです。

カギ足は「価格の転換点」が明確に定義されている指標なので、逆に言えば損切り位置も非常に明確です。感情ではなく、あらかじめ決めたルールに従ってロットと損切りを設定することで、長期的に安定したトレード成績を目指しやすくなります。

カギ足と他のテクニカル指標の組み合わせ

カギ足は単体でも強力ですが、他のテクニカル指標と組み合わせることで精度を高めることができます。初心者でも扱いやすい組み合わせをいくつか紹介します。

カギ足 × 移動平均線

カギ足チャートの上に、例えば50期間の単純移動平均線(SMA)を重ねると、「中期トレンド」と「短期の流れ」が同時に把握しやすくなります。

  • 価格がSMAより上にあり、カギ足も上向き → 強い上昇トレンドの可能性
  • 価格がSMAより下にあり、カギ足も下向き → 強い下降トレンドの可能性
  • 価格がSMA付近を行き来し、カギ足も頻繁に方向転換 → レンジ相場の可能性が高い

このように、「カギ足の方向」と「価格と移動平均線の位置関係」が揃ったときだけエントリーし、どちらかが崩れたらポジションを手仕舞う、というシンプルなフィルターを入れるだけでも、無駄な取引を減らす効果が期待できます。

カギ足 × ボラティリティ指標(ATRなど)

転換値幅を固定値ではなく、ATR(Average True Range)などのボラティリティ指標と連動させる方法もあります。

  • 転換値幅 = ATRの○倍(例:ATR×1.5)

相場が静かなときは転換値幅が自然と小さくなり、相場が荒れているときは転換値幅が自動的に大きくなります。これにより、相場環境に応じてトレンド転換の感度を自動調整することができ、極端なノイズやダマシを避けつつ、意味のある値動きだけを抽出することが可能になります。

初心者がハマりやすい落とし穴

カギ足は一見シンプルですが、使い方を誤ると「便利なはずなのに全然勝てない」という状況に陥りがちです。代表的な落とし穴をいくつか挙げます。

  • 転換値幅をやたらと細かくしすぎる:ローソク足と大差ないほど方向転換が頻発し、ノイズだらけになります。
  • トレンドがない時間帯にも無理にエントリーする:カギ足でも方向転換が行ったり来たりするレンジ相場では、売買シグナルが連続し、手数料とスプレッド負けになりやすいです。
  • 損切りルールを曖昧にする:カギ足の方向転換を無視して「そのうち戻るだろう」と保有し続けると、気づけば大きな含み損を抱えがちです。

解決策は単純で、「転換値幅を自分のトレードスタイルに合わせて最初に決める」「レンジ相場では基本的に休む」「方向転換=損切りの基本ラインとする」という3点を徹底することです。特に初心者のうちは、カギ足の方向転換シグナルを「損切りのトリガー」として機械的に扱うトレーニングをすると、感情的なホールドを避けやすくなります。

実際のチャートで練習する際のステップ

最後に、カギ足チャートをこれから使い始める初心者向けに、練習のステップを整理します。

  1. 自分が主にトレードしたい銘柄・通貨ペアを1つ決める
  2. その銘柄の平均的な1日の値幅を調べる(FXならpips、株なら円)
  3. 平均値幅の20〜40%程度を目安に転換値幅を設定する
  4. 実際のチャート上で、過去数ヶ月〜1年分のカギ足チャートを表示し、「どこで方向転換が起きているか」「どの価格帯で何度も転換しているか」を目視で確認する
  5. もし過去に自分がトレードしたポイントの記録があれば、「カギ足だけ見ていたらどう判断できたか」を振り返る
  6. デモ口座や小さなロットで、「カギ足の方向転換にだけ従う」シンプルトレードを一定期間試す

このステップを踏むことで、カギ足が自分のトレード判断に合うのか、どの程度の転換値幅がしっくりくるのかが徐々に見えてきます。いきなり大きな資金で試すのではなく、まずは視覚的に「値動きの骨格」を掴むためのツールとして使ってみるのがおすすめです。

まとめ:カギ足は「流れを視覚化するフィルター」

カギ足チャートは、時間情報を捨て、一定以上の値動きだけをつなぎ合わせることで、相場の流れを視覚的に分かりやすくするツールです。ローソク足の細かな上下動に振り回されてしまう初心者にとって、カギ足は「ノイズを取り除いた教科書的な値動き」を見せてくれます。

重要なのは、

  • 自分のトレードスタイルに合った転換値幅を決めること
  • カギ足の方向に素直についていくトレンドフォローを基本とすること
  • 方向転換ポイントを損切り基準として明確に決めておくこと

この3点を守るだけでも、感情的なトレードを減らし、統一されたルールベースの売買に近づけます。カギ足は一見マニアックなチャートに見えますが、本質は非常にシンプルで、「大きな流れに逆らわない」という相場の基本を視覚的に教えてくれるツールです。まずは自分が普段見ている銘柄のチャートにカギ足を重ねてみて、「もしこのチャートだけを見ていたらどこで売買していたか」を紙に書き出してみてください。そこから、自分なりのシンプルで再現性のあるトレードルールが見えてきます。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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