カギ足チャート入門:ノイズを消してトレンドだけを見る売買戦略

テクニカル分析

ローソク足や移動平均線でチャート分析をしていると、「だましが多くて振り回される」「ノイズが多くてトレンドがどこなのか分からない」と感じることが少なくありません。そこで有効なのが、時間の概念を一度捨てて、価格の動きだけにフォーカスする「カギ足チャート」です。

カギ足は、日本発祥の価格チャートでありながら、国内個人投資家の間では意外と知られていません。しかし、トレンドフォロー戦略やスイングトレードとの相性が非常に良く、「無駄な売買を減らし、値幅の大きなトレンドだけを狙う」という発想に直結します。本記事では、株式、FX、暗号資産など、どの市場でも応用できるカギ足チャートの基本と具体的な売買戦略を、初心者にも分かりやすく丁寧に解説します。

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カギ足チャートとは何か:時間ではなく「値幅」で描くチャート

通常のローソク足チャートは、「1本=1本の時間(1分、1時間、1日など)」で構成されます。これに対してカギ足チャートは、時間を完全に無視して「一定の値幅以上、価格が動いたときだけ」線が描き足されていくという特徴があります。

例えば、為替のドル円で「値幅10pips」を設定したカギ足チャートでは、価格が上方向に10pips動いたら上向きの線が伸び、そこから下方向に10pips以上逆行したら、向きが切り替わって下向きの線が描かれます。この「向きの切り替わるポイント」が重要で、トレンド転換のシグナルとして使われます。

つまりカギ足は、細かい上下動(ノイズ)を無視して、大きな価格の転換点だけを抽出するフィルターのような役割を果たします。そのため、トレンドの方向を視覚的に把握しやすく、トレンドフォロー型の売買戦略と非常にマッチします。

カギ足チャートの基本構造と読み方

カギ足は、名前の通り「鍵(カギ)」のように折れ曲がる形状をしています。上昇方向に伸びる線と下降方向に伸びる線が交互に描かれ、その折れ曲がり部分がトレンド転換の候補になります。

カギ足のポイントは次の3つです。

  • 一定の値幅(ボックスサイズ)以上、価格が動いたときだけ描き足される
  • 上昇と下降の向きがはっきりしており、トレンドの方向性を視覚的に捉えやすい
  • 時間軸が無いため、横軸は「何本目か」を示すだけで、時間の経過は分からない

ローソク足が数十本並んで「レンジ相場なのかトレンドなのかよく分からない」という局面でも、カギ足チャートに切り替えると、「ほとんど向きが切り替わっていない=トレンド」「細かく何度も切り替わっている=レンジ」といった判別が視覚的に容易になります。

カギ足の値幅設定(ボックスサイズ)の考え方

カギ足で最も重要なパラメータが値幅(ボックスサイズ)です。この値幅を小さく設定すればチャートは細かく折れ曲がり、感度は高いもののノイズも増えます。逆に、大きく設定すればノイズは減る代わりに、シグナルは遅くなります。

代表的な設定方法は次の通りです。

  • 株式(日足):株価の1〜2%程度を目安に値幅を設定
  • FX(ドル円・1時間足ベース):10〜20pips程度を目安に設定
  • 暗号資産(BTC/USDTなど):ボラティリティが高いため、全体レンジの1〜2%程度を目安に設定

例えば、ドル円が1日で30〜50pips程度動く相場環境であれば、「10pipsのカギ足」は、1日の中で数回向きが変わるイメージです。一方、「25pipsのカギ足」にすれば、1日の中で向きが変わらないこともあり、その分トレンドの抽出に特化します。

実務的には、同じ銘柄で2〜3種類の値幅を試し、自分の時間軸と相性の良い設定を探るのが王道です。スキャルピング寄りなら小さめ、スイング寄りなら大きめ、というイメージで調整していくとよいでしょう。

カギ足チャートを使った基本的な売買シグナル

カギ足は単独でも売買シグナルとして利用できますが、シンプルなルールほど長期的に運用しやすいです。ここでは、初心者でも取り組みやすい基本パターンを紹介します。

1. 直近の高値/安値の更新をシグナルにする

最もシンプルなのが、カギ足の直近の山・谷を更新した方向にポジションを取るという方法です。

具体例として、FXのドル円を考えてみます。値幅を20pipsに設定したカギ足チャートで、上昇カギ足が続いた後、一度下向きに転じて「谷」を作り、その後再び上方向に切り返して直近の山を更新した場合、上昇トレンド再開と見なして買いエントリーする、といったシナリオです。

この方法のメリットは、「レンジの中での細かい逆張り」を排除し、明確なブレイクアウトだけを狙える点にあります。ローソク足チャートでは、「ブレイクアウトしたと思ったらすぐに戻される」という経験を多くの投資家がしていますが、カギ足は「一定の値幅以上、実際に価格が進んだ後にしかシグナルが出ない」ため、だましをある程度フィルタリングできます。

2. 移動平均線との組み合わせでトレンド方向をフィルタリング

カギ足チャート単体では「価格の向き」は分かっても、「そのトレンドの中で、どちら側だけを狙うべきか」は判断しづらい場面があります。そこで有効なのが、移動平均線(SMAやEMA)との組み合わせです。

例えば、次のようなルールが考えられます。

  • 終値ベースの日足チャートに20日EMAを表示
  • 20日EMAより上に価格があるときは「買い方向のみ」カギ足シグナルを採用
  • 20日EMAより下に価格があるときは「売り方向のみ」カギ足シグナルを採用

こうすることで、トレンドに逆らったシグナル(例えば強い上昇トレンド中の売りシグナル)を意識的に捨てることができます。結果として、トレンドフォローに徹した売買ルールになり、連敗を減らしやすくなります

3. カギ足とサポート・レジスタンスの組み合わせ

カギ足は、サポートラインやレジスタンスラインとの相性も良好です。水平方向の抵抗線と組み合わせることで、「重要な水平ラインを実際に一定値幅以上抜けたかどうか」をチェックできます。

具体例として、日本株の日足チャートで過去何度も意識されているレジスタンスライン(例えば株価3,000円)を引き、その上でカギ足チャートを重ねてみます。株価が3,000円近辺で何度も反落している状況で、カギ足が「3,000円ラインを明確に上抜けてからさらに一定値幅上抜けした」と確認できたタイミングは、ブレイクアウト後の押し目買い候補として注目できます。

ローソク足だけでは「ヒゲで一瞬抜けて終わり」のケースと、「実際に値幅を伴って抜けた」ケースの区別が難しいですが、カギ足なら「一定の値幅を伴って抜けたかどうか」を明確に判定できます。

実践例:ドル円1時間足 × 20pipsカギ足でのトレンドフォロー

ここからは、もう少し具体的なシナリオをイメージしてみます。想定するのは、ドル円の1時間足レベルのスイング〜デイトレードです。

設定は以下の通りです。

  • カギ足の値幅:20pips
  • フィルター用移動平均線:日足終値の20日EMA
  • 売買方向:20日EMAより上なら「買いのみ」、下なら「売りのみ」
  • エントリー:直近のカギ足高値(または安値)更新時
  • 手仕舞い:直近のカギ足安値(または高値)を反対方向に抜いたとき、または一定pipsのトレイリングストップ

例えば、20日EMAより上にある上昇相場で、20pipsカギ足が上向きに伸び、途中で小さな押し目を作ってから再度上方向に切り返し、直近高値を更新したとします。このタイミングで買いエントリーを行い、その後カギ足が下方向に反転して、押し目の谷を下抜けたところで手仕舞いする、というルールです。

この戦略の意味は、「日足レベルでは上昇トレンドに乗りながら、その中の1時間足レベルの押し目だけをカギ足で抽出して狙う」ということです。ローソク足チャートだと押し目かトレンド転換か判断に迷う場面でも、カギ足で値幅ベースの転換点を見ていくことで、一定の一貫性を保ちやすくなります。

カギ足チャートのメリット:ノイズ除去とメンタル負担の軽減

カギ足を実際に使ってみると、多くのトレーダーがまず感じるのが「チャートが静かになる」という感覚です。1分足や5分足のローソクだと、上下に激しく揺さぶられ、「今すぐ何かしないと損をする」といった焦りが生まれやすくなります。

一方でカギ足チャートは、「値幅が一定以上動いたときしか形が変わらない」ため、意味のある動きだけを見せてくれます。これにより、以下のような効果が期待できます。

  • 無駄な売買(ポジポジ病)の抑制
  • 含み益・含み損に対する一喜一憂の軽減
  • トレンドの方向性に集中しやすくなる

特に、初心者ほど「値動きを見過ぎてしまい、逆にうまくいかない」という状態に陥りがちです。カギ足は、そうした情報過多とメンタル面の負担を和らげる道具としても機能します。

カギ足のデメリットと注意点:完璧な指標ではない

もちろん、カギ足にも弱点があります。代表的なポイントは次の通りです。

  • 値幅設定が合わないと、トレンドをうまく捉えられない
  • 横軸に時間の概念がないため、「何日間保有しているか」がチャートからは分からない
  • 急激なボラティリティ変化が起きたとき、過去の値幅設定が適切でなくなる場合がある

特に、ボラティリティが急上昇した相場(例:重要指標発表やニュースで急騰・急落した局面)では、それまで使っていた値幅設定ではシグナルが多すぎたり少なすぎたりする可能性があります。そのため、ボラティリティに応じて値幅を見直す、あるいはATR(平均真のレンジ)などの指標を用いて、値幅を自動的に調整するようなアイデアも考えられます。

他のテクニカル指標との組み合わせアイデア

カギ足は単純な価格チャートであり、オシレーター系やトレンド系指標と組み合わせることで、より精度の高い戦略を構築できます。例えば次のような組み合わせが考えられます。

  • カギ足 × RSI:カギ足が上昇方向で、RSIが40〜60の中立圏から上抜けるタイミングを押し目買い候補とする
  • カギ足 × ボリンジャーバンド:カギ足ベースでトレンド方向を決め、ボリンジャーバンドの−2σ付近を押し目・戻り目として活用する
  • カギ足 × MACD:カギ足でトレンド方向を確認しつつ、MACDのゼロラインクロスやシグナルラインとのクロスでエントリータイミングを補強

重要なのは、役割分担を明確にすることです。「トレンド方向の判定はカギ足」「エントリータイミングはオシレーター」というふうに、ひとつの要素に過度な期待をしないように設計すると、システムとして安定しやすくなります。

カギ足チャートの導入手順と練習方法

最後に、カギ足を実際のトレードに取り入れる際のステップを整理します。

まずは、多くのチャートツールやトレーディングプラットフォームでカギ足を表示できるか確認します。表示できる場合は、以下の手順で練習してみると良いでしょう。

  • 普段見ている銘柄(株、FX、暗号資産など)で、まずは日足ベースのカギ足を表示する
  • 値幅を「1日の平均値動きの1/3〜1/2程度」に設定し、過去チャートをスクロールしてトレンドの切り替わり方を観察
  • ローソク足とカギ足を並べて表示し、「ローソクではノイズに見えた動きを、カギ足がどうフィルタリングしているか」を比較する
  • シンプルなルール(直近高値・安値の更新でエントリー、反対方向への切り替わりで手仕舞い)を過去チャート上で検証する

いきなりリアルトレードに組み込むのではなく、まずは「視覚的なトレンド確認ツール」として使い、どの程度自分の感覚と合うかを確かめる段階を挟むことをおすすめします。そのうえで、自分の得意な時間軸や銘柄に合わせて、値幅設定や他の指標との組み合わせを調整していくと良いでしょう。

まとめ:カギ足は「トレンドだけを抽出するレンズ」

カギ足チャートは、「時間」を捨て、「一定の値幅を伴う価格変動だけ」に注目する、少し変わったチャートです。しかし、そのコンセプトはトレードの本質に非常に近く、「意味のある値動きにだけ反応する」という発想そのものが、無駄な売買を減らし、トレンドを伸ばすことにつながります。

ローソク足やインジケーターが情報過多になっていると感じる場合、カギ足チャートを追加してみることで、相場の見え方が一段クリアになることがあります。まずは、普段の分析画面の一部にカギ足を加え、「どのようなトレンドを抽出しているのか」を観察するところから始めてみてください。

カギ足は、派手さはないものの、長く付き合える「相場の相棒」になり得るチャートです。自分の得意な銘柄・時間軸・リスク許容度に合わせて、じっくりと調整しながら取り入れていくことで、トレンドフォロー戦略の質を一段引き上げることが期待できます。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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