エリオット波動で相場のリズムを読む：株・FX・仮想通貨に共通する波のパターン活用法

チャートを見ていて、「なぜか同じような動きが繰り返されている」と感じたことはないでしょうか。エリオット波動は、この「相場のリズム」をパターンとして整理しようとする考え方です。株でもFXでも暗号資産でも、人間の心理が価格を動かしている以上、一定のリズムが生まれやすいという前提に立ちます。

本記事では、エリオット波動の基本から、初心者でも実際のトレードに落とし込める具体的な使い方までを丁寧に解説します。難しい理論の細部を追うよりも、「どのようにチャートを見て、どこで売買判断のヒントにするか」に焦点を当てて説明していきます。

スポンサーリンク

エリオット波動とは何か：相場は「5波上昇＋3波調整」で動くという発想

エリオット波動理論の出発点は、「トレンド相場は5つの波で進行し、その後3つの調整波が入る」というシンプルなパターンです。よく図解で示される「1〜5波の上昇」と「A・B・Cの調整」がそれに当たります。

典型的な上昇相場のイメージは次のようになります。

• 第1波：まだ誰も注目していない静かな上昇
• 第2波：初期の買いが利確されて一旦下落
• 第3波：本格的な上昇トレンド。ニュースでも話題になり出来高も増える
• 第4波：中休みの調整。持ち合いや浅い下落になりやすい
• 第5波：最後の上昇。個人投資家が飛びつきやすい終盤の盛り上がり

そのあとに続くA・B・Cの3波は、「上げ相場の後片付け」のようなイメージです。利益確定や失望売りが続き、高値掴みをした投資家が投げさせられる局面がA・C波に現れます。

株・FX・暗号資産で共通して使える理由

エリオット波動は、特定の市場だけに通用する特殊な指標ではありません。人間の心理が作り出す「期待」「不安」「熱狂」「失望」といった感情の波を前提にしているため、株式市場、FX市場、暗号資産市場のいずれでも似たようなパターンが生まれやすいと考えられています。

例えば、ビットコインの長期チャートを見ると、強い上昇トレンドのあとに必ず深い調整局面が訪れることが多いです。株式でも、人気テーマ株が数ヶ月単位で大きく上昇し、その後時間をかけて調整する動きが繰り返されています。FXでも、トレンド相場の中で押し目や戻りを挟みながら進行するのは同じです。

エリオット波動を学ぶメリットは、「今の値動きがトレンドのどのあたりに位置していそうか」を大まかに把握しやすくなる点です。完璧に当てることはできなくても、「すでに第5波終盤っぽいので、新規で飛びつくよりも押し目まで待とう」といったリスク管理の判断に役立ちます。

エリオット波動の基本ルール：最低限ここだけ押さえる

理論書では非常に多くのルールが紹介されますが、トレードに活かすうえで最低限押さえておきたいポイントは次の3つです。

• ルール1：第2波は第1波の起点より下回らない
• ルール2：第3波は通常、最も短い推進波にはならない
• ルール3：第4波は第1波の価格帯と重なりにくい（例外もあります）

例えば、上昇トレンドを想定しているのに、第2波の下落が第1波の起点を明確に割り込んでしまった場合、そのカウントは誤りである可能性が高いと判断します。このように、ルールは「自分の見立てが間違っているサイン」を見抜くフィルターとして使うのが実践的です。

実際のチャートでのイメージ：株の上昇トレンドを例に

具体例として、ある成長株が好決算をきっかけに上昇し始めた場面をイメージしてみましょう。

最初の決算サプライズを受けて、機関投資家や一部の個人投資家が買いを入れ、株価は静かに上昇を始めます。これが第1波です。まだ多くの投資家は半信半疑で、出来高もそれほど膨らみません。

その後、短期筋の利確やニュース一巡感から、一度下押しする局面が訪れます。ここが第2波にあたります。ただし、第1波の起点（ニュース前の安値）を大きく割り込むことはなく、「押し目買い」が入って下落が止まるのが典型的です。

次に本格的な上昇である第3波が訪れます。業績の継続的な成長が確認される材料や、他のアナリストのレポート、SNSやメディアでの話題化が重なることで、株価は急角度で伸びていきます。この局面では出来高も明らかに増え、チャート上では長い陽線が続きやすくなります。

その後、中期の投資家による利益確定や、「さすがに上がりすぎた」という心理から、一時的な調整である第4波が現れます。株価は横ばい〜緩やかな下落に転じますが、第3波の値幅に比べると小さめの調整にとどまることが多いです。

最後に第5波としてもう一段の上昇が起こります。この時期には、普段あまり投資をしていない層まで話題が広がりやすく、「今からでも間に合うのでは」と考えた遅れてきた資金が流入します。ニュース番組で取り上げられたり、SNSで急に話題になるのもこの頃です。この第5波の終盤で新規に飛びつくと、高値掴みになるリスクが高まります。

FXチャートでのエリオット波動の活用イメージ

FXでは、トレンド相場とレンジ相場が交互に現れます。エリオット波動は特にトレンド局面で役に立ちやすいです。

例えば、USD/JPYが強い上昇トレンドに入った場面を考えます。日銀と他国の中央銀行の金利差が意識され、市場がドル買い・円売りに傾いている局面です。

最初の上昇第1波では、政策の変化や金利差拡大の見通しが材料となり、徐々にドル高が進みます。まだ市場コンセンサスにはなっていないため、値動きは比較的穏やかです。

第2波では、要人発言や指標発表をきっかけに一時調整が入りますが、「結局はまだドル高トレンドが続きそうだ」という見方が根強く、押し目買いが入って下落が止まります。

第3波では、複数の指標や金利差の拡大がはっきりと確認され、市場参加者の多くがトレンドを認識し始めます。テクニカル指標のゴールデンクロスや、過去高値のブレイクなども重なり、「トレンドフォロー」の買いが集中的に入ってきます。この時期に、押し目を狙ってエントリーしていくのがエリオット波動の典型的な活用法です。

第4波では、短期筋による利確やイベント前のポジション調整で一時的な戻り売り・下押しが発生しますが、第3波全体の値幅に比べれば軽めの調整にとどまるケースが多くなります。

最後の第5波では、テクニカル的な過熱感が強まり、RSIなどのオシレーターが「買われすぎ」を示す水準に到達しやすくなります。この局面でさらに買い増しをするよりは、ポジションを軽くする、ストップを引き上げるなど、リスク管理を優先するほうが合理的な判断になりやすいです。

暗号資産ならではの注意点：過熱した第5波の後に深い調整が来やすい

ビットコインやアルトコインのような暗号資産は、株やFXに比べてボラティリティが高く、エリオット波動のパターンが極端に現れることがあります。特に、第5波の終盤で個人投資家が殺到し、価格が短期間で急伸したあとに、大きなA・B・C調整が発生するケースは繰り返し見られます。

例えば、SNSやニュースで「史上最高値更新」「過去最大の盛り上がり」といった表現が増えてきたタイミングは、エリオット波動で言えば第5波終盤に近づいているサインの一つと考えることができます。この段階で短期的な値上がりを期待して新規に飛び乗ると、その後の急落に巻き込まれるリスクが高まります。

暗号資産でエリオット波動を活用する際は、「今が第何波か」を正確に数えようとするより、「急激な第5波っぽい動きの後は、大きな調整が来やすい」という発想でリスクを意識することが重要です。特にレバレッジ取引やマージン取引を行う場合は、清算価格がどのあたりにあるかを把握し、過度なポジションサイズを避けることが大切です。

フィボナッチ比率との組み合わせ：押し目と戻りの目安を数値化する

エリオット波動とセットで語られることが多いのがフィボナッチ比率です。特にトレンド中の押し目買い・戻り売りの目安として、38.2％、50％、61.8％といった水準がよく使われます。

例えば、株価が1,000円から1,500円まで第1波〜第3波で上昇したとします。その後の第4波の調整局面では、1,500円から下方向にフィボナッチリトレースメントを引き、38.2％〜61.8％のゾーン（おおよそ1,310〜1,400円付近）を押し目候補として注目する、といった使い方ができます。

もちろん、必ずその水準できれいに反発するわけではありませんが、「どこで押し目を待つか」を感覚ではなく一定のルールに基づいて決められる点がメリットです。感情的な飛び乗りや、早すぎるナンピンを避ける助けになります。

実践的な売買戦略の組み立て方：トレンドフォロー＋リスク管理

エリオット波動を使った実践的な戦略は、「トレンドの第3波と第5波を狙うが、第5波終盤ではポジションを軽くする」というシンプルな方針に落とし込めます。

具体的なステップの一例は次のとおりです。

• ステップ1：移動平均線やMACDなどで、明確なトレンドが出ている銘柄・通貨をピックアップする
• ステップ2：直近の安値・高値の流れから、ざっくりと5波構成をイメージし、「今が1〜5のどこに近そうか」を考える
• ステップ3：第2波や第4波の調整局面で、フィボナッチ水準やサポートライン付近まで引きつけてエントリーする
• ステップ4：ストップロス（損切りライン）は、第1波や第3波の起点を大きく割り込んだ場合など、波のカウントが崩れたと判断できる位置に置く
• ステップ5：第5波後半では一部利確を進め、トレーリングストップで残りポジションを管理する

重要なのは、「完璧に波を数えようとしないこと」です。実際の相場は教科書の図のようにきれいな5波＋3波で動くとは限りません。「大まかに波の位置をイメージし、トレンドの流れに沿って押し目・戻りを待つ」という発想で使うほうが実践的です。

初心者が陥りやすい失敗と回避法

エリオット波動は奥が深い理論のため、初心者が最初にハマりやすい落とし穴もあります。代表的なものとその回避法を整理しておきます。

失敗1：どのチャートも無理やり5波＋3波に当てはめてしまう
チャートを見れば見るほど、「ここが第1波で、こっちが第3波かもしれない」と解釈の幅が広がり、最終的に何が正しいのか分からなくなるケースがよくあります。相場がレンジで方向感に乏しいときまで、無理に5波構成を探そうとすると、エントリー根拠が曖昧になりがちです。

回避法としては、「明確なトレンドが出ているチャートだけを対象にする」ことが有効です。移動平均線がきれいに右肩上がり・右肩下がりになっている銘柄や通貨ペアだけを選び、その中で波のカウントを試みるようにすると、迷いが減ります。

失敗2：第5波終盤で感情的に飛び乗る
SNSやニュースで話題になっている銘柄・通貨は、多くの場合すでに第5波の終盤に近い可能性があります。「皆が買っているから自分も乗り遅れたくない」という感情でエントリーすると、その直後のA・B・C調整の下落に巻き込まれやすくなります。

回避法として、「話題になってからではなく、まだ静かな第1波・第2波の段階で候補を探しておく」ことが重要です。スクリーニングツールやテクニカル指標を活用し、ニュースになる前の段階でトレンド候補をリストアップしておくと、より有利な位置でのエントリーがしやすくなります。

失敗3：ロスカットルールを決めていない
エリオット波動のカウントは、あくまで「仮説」です。相場の状況によっては、その仮説があっさり否定されることもあります。にもかかわらず、損切りラインを決めずにポジションを持ち続けると、予想外の値動きが起きたときに大きな損失につながります。

回避法として、「この価格を割り込んだら波の想定が崩れたと判断する」という水準をあらかじめ決めておき、そのラインに到達したら機械的にロスカットするルールを持っておくことが大切です。

他のテクニカル指標との組み合わせで精度を高める

エリオット波動単体で売買判断を完結させるのではなく、他のテクニカル指標と組み合わせて使うことで、エントリーとエグジットの精度を高めることができます。

例えば、次のような組み合わせが考えられます。

• 移動平均線：トレンド方向と強さの確認。第3波で移動平均線がしっかりと右肩上がりになっているかをチェック
• MACD：トレンド転換や勢いの変化を把握。第3波開始時のゴールデンクロス、第5波終盤のダイバージェンスなどを確認
• RSI：買われすぎ・売られすぎの目安。第5波終盤でRSIが高水準に張り付いていないかをチェック
• 出来高：波ごとの参加者の熱量を把握。第3波で出来高が増え、第5波でさらに過熱していないかを観察

このように、エリオット波動を「大まかな地図」とし、個別のテクニカル指標を「道しるべ」として組み合わせることで、過度な主観を避けながらトレード判断の一貫性を保ちやすくなります。

ポートフォリオ全体の視点での活用：一つの銘柄だけに依存しない

エリオット波動は個別の銘柄・通貨ペアの分析に使われることが多いですが、ポートフォリオ全体のバランスを考える上でも役立ちます。

例えば、ポートフォリオの中で、第3波の中盤に位置していると判断できる銘柄群と、第5波終盤と思われる銘柄群が混在している場合、後者の比率を下げて前者を増やす、という調整を検討できます。こうすることで、「すでにかなり上がった銘柄にポートフォリオが偏りすぎている状態」を避けることができます。

また、全体相場（株価指数やビットコインなどの代表的な指標）に対しても、おおまかにエリオット波動の位置を意識しておくことで、「今は攻めるべき局面か、守りを重視すべき局面か」の判断材料になります。個別トレードの戦略だけでなく、リスク管理や資産配分の観点でも活用できるのがエリオット波動の強みです。

まとめ：完璧を目指さず、「相場のリズム」を掴むための道具として使う

エリオット波動は、初めて触れると複雑に見えるかもしれません。しかし、実際のトレードで重要なのは、細かな理論を暗記することではなく、「相場のリズムを大まかにイメージし、トレンドに素直についていくための道具」として使うことです。

ポイントを整理すると、次のようになります。

• トレンドは5波で進行し、その後3波で調整するという基本パターンを押さえる
• 第3波の押し目、第5波終盤の過熱感など、各波の特徴から売買のヒントを得る
• フィボナッチ比率や移動平均線、MACD、RSI、出来高などと組み合わせて精度を高める
• 完璧なカウントを目指すのではなく、明確なトレンドが出ているチャートに絞って活用する
• ポートフォリオ全体のリスクバランスを考える視点も忘れない

エリオット波動は、最初からすべてを理解しようとすると難しく感じますが、「強いトレンドを見つけ、その中の押し目・戻りを狙う」というシンプルな目的に絞れば、初心者でも十分に活用できます。少しずつチャートに当てはめながら、自分なりの感覚を磨いていくことで、相場の波にうまく乗るヒントが見えてくるはずです。