リスク許容度とポートフォリオ設計:長く相場に残るための具体ステップ

投資の基礎知識

「どの銘柄が上がるか」よりも前に、本来は「自分はどこまでリスクを取っても大丈夫なのか」を決めておく必要があります。このリスク許容度と、それに基づいたポートフォリオ設計ができていないと、どんなに優れた銘柄を選んでも、暴落のたびに不安で売ってしまい、結果として資産は増えにくくなってしまいます。

本記事では、投資初心者の方でも理解しやすいように、リスク許容度の考え方から、具体的なポートフォリオの組み方、そして長く相場に残るための運用ステップまでを、実例を交えて詳しく解説します。

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リスク許容度とは何か:単なる「性格」ではない

リスク許容度というと、「自分は性格的に怖がりだからローリスク」など、性格だけの問題だと思われがちです。しかし、実務的にはリスク許容度は次のような要素の組み合わせで決まります。

1. 家計の安全度(収入の安定性・貯蓄額・負債)
2. 投資の目的と期限(老後資金・住宅頭金・教育資金など)
3. 年齢や家族構成
4. 損失に対するメンタルの耐性
5. 投資経験・知識レベル

例えば、独身・正社員・貯金も十分という人と、子どもがいて住宅ローンも抱えている人では、同じ「性格的には強気」でも、取ってよいリスクの大きさは大きく異なります。リスク許容度は「気持ち」だけでなく、「生活への影響度」を含めて考える必要があります。

自分のリスク許容度をざっくり把握するチェックポイント

完璧な診断テストを作る必要はありません。まずは次のような観点から、自分がおおよそどのゾーンにいるかを把握してみてください。

1. 最大でどこまでの評価損なら耐えられるか

「投資資産が一時的に何%下がっても、冷静でいられるか」という視点です。例えば、300万円を投資するとして、次のどれなら許容できるでしょうか。

・30万円(▲10%)の含み損なら一応我慢できる
・60万円(▲20%)までなら想定内だと思える
・90万円(▲30%)でも、長期目線なら落ち着いて見ていられる

この「最大許容ドローダウン(最大評価損)」が、後でポートフォリオリスクを設計するときの重要な基準になります。

2. 投資に回しても生活に支障がない金額か

生活防衛資金(当面の生活費として現金で確保しておくべきお金)が十分にあるかどうかも、リスク許容度に直結します。例えば、会社員であれば「最低でも生活費の6か月〜1年分」は現金やほぼリスクのない資産で持っておく、といった考え方です。

この生活防衛資金を確保したうえで、さらに余裕がある分を投資に回すことで、暴落時にも「生活は大丈夫」という安心感を持てます。これがメンタル面でのリスク許容度を大きく引き上げます。

3. 投資の時間軸と目的

5年後に使う予定のあるお金と、20年後の老後資金では、許容できる値動きの大きさが違って当然です。時間軸が長いほど、一時的な下落を許容しやすくなり、リスク資産の比率を高めやすくなります。

逆に、数年以内に必要になる資金を株や暗号資産などの値動きの激しい資産に全額突っ込むのは、リスク許容度の観点から明らかに不適切です。

リスク許容度を数値に落とし込む簡易フレーム

ここでは、初心者でも使いやすいように、シンプルなフレームでリスク許容度を数値化してみます。あくまで一例ですが、ポートフォリオ設計のたたき台としては十分役立ちます。

ステップ1:最大許容ドローダウンを決める

まず、「投資部分全体が一時的に最大何%までなら下がっても耐えられるか」を決めます。例えば次のようにざっくり決めてしまいます。

・慎重タイプ:▲10〜15%まで
・中庸タイプ:▲20〜25%まで
・積極タイプ:▲30〜40%まで

ここで「積極タイプだから自分は▲40%まで大丈夫」と無理に背伸びする必要はありません。過去に数十万円の含み損で眠れなくなった経験があるなら、数字上は積極型でも、実態は慎重型であることも多いです。

ステップ2:安全資産とリスク資産の配分比率を決める

次に、安全資産(現金・預金・短期国債など)と、リスク資産(株式・投資信託・ETF・REIT・一部の暗号資産など)の割合を決めます。典型的には次のようなイメージになります。

・慎重タイプ:安全資産 60〜80% / リスク資産 20〜40%
・中庸タイプ:安全資産 40〜60% / リスク資産 40〜60%
・積極タイプ:安全資産 10〜30% / リスク資産 70〜90%

これはあくまで一例ですが、「いきなりリスク資産100%」にしないための目安になります。特に、投資を始めたばかりの段階では、徐々にリスク資産比率を上げていく方が、精神的にも続けやすいです。

具体例:300万円から始める人のポートフォリオ設計

ここからは、よりイメージしやすくするために、具体例を用いて説明します。条件は次の通りとします。

・年齢:35歳、会社員
・世帯:既婚・子ども1人
・金融資産:500万円(うち200万円は当面手を付けない生活防衛資金)
・投資に回せる金額:300万円
・投資目的:老後資金+将来の教育資金の一部

ケース1:慎重タイプの場合

この人が「最大▲15%くらいまでなら一時的な含み損も我慢できる」と考えたとします。300万円の15%は45万円なので、「45万円くらいの評価損までは想定内」というイメージです。

この場合の例としては、次のような配分が考えられます。

・安全資産(円預金・短期債券など):180万円(60%)
・リスク資産(株式・インデックスファンドなど):120万円(40%)

リスク資産は、国内外の株式インデックスファンドやETFなど、分散の効いた商品を中心に組み合わせることで、「個別銘柄が大きく下がって焦る」状況を減らす狙いがあります。

ケース2:中庸タイプの場合

同じ人が、「一時的に▲25%くらいまでなら許容できる」と判断した場合、300万円の25%は75万円です。このレベルの変動まで覚悟できるなら、リスク資産の比率を少し上げることができます。

一例として、

・安全資産:150万円(50%)
・リスク資産:150万円(50%)

といった配分が考えられます。リスク資産の内訳は、株式インデックスを中心にしつつ、一部を高配当株・REIT・海外株などに振り分けることで、分散と成長性のバランスを取ります。

ケース3:積極タイプの場合

「長期で見れば▲30〜40%の下落も想定内」と割り切れる人であれば、リスク資産比率をかなり高くすることも検討できます。ただし、口で言うほど簡単ではなく、実際に▲30%の評価損を目にすると精神的な負担は大きいです。

一つの例としては、

・安全資産:90万円(30%)
・リスク資産:210万円(70%)

といった配分です。リスク資産部分は、株式インデックスを中心にしつつ、少額で成長期待の高いテーマや一部の暗号資産なども組み入れるといった設計も考えられますが、全体としては「ポートフォリオ全体のドローダウン」を常に意識する必要があります。

ポートフォリオ内での分散:資産クラスと通貨の両面で考える

リスク資産を増やす場合でも、一つの資産クラスや一つの通貨に偏らないことが重要です。例えば、すべて日本株だけ、すべて米国株だけ、といった偏りは、特定の国や通貨のリスクを集中して負うことになります。

基本的な分散の軸は次の通りです。

・株式 vs 債券
・国内資産 vs 海外資産
・先進国 vs 新興国
・株式の中での業種・セクター分散
・円建て vs 外貨建て

例えば、リスク資産150万円のうち、

・国内株式・国内株式インデックス:50万円
・海外株式インデックス:70万円
・REITや高配当株などインカム重視:30万円

といった形に分けることで、特定の市場や通貨のショックを受けたときでも、ポートフォリオ全体への影響をいくらか和らげることができます。

リスク許容度に基づく「1回あたりの投資額・ポジションサイズ」の考え方

ポートフォリオ設計では全体の配分を決めるだけでなく、1つの銘柄や1つの取引にどれだけの金額を投入するかも重要です。これをポジションサイズと呼びます。

例えば、リスク資産150万円を株式インデックスと個別株で運用する場合、1銘柄あたりの上限を「リスク資産全体の10%まで」と決めれば、1銘柄の最大額は15万円になります。これにより、特定銘柄の急落がポートフォリオ全体に与えるダメージをコントロールできます。

さらに、短期トレードを行う場合は、「1回の取引で許容する損失額」を口座残高の1〜2%程度に抑えるという考え方もよく使われます。例えば、投資資金300万円なら、1回の取引での許容損失は3〜6万円程度に制限するイメージです。

リスク許容度とリスク「志向」を混同しない

リスク許容度が低いのに、「一発で大きく増やしたい」というリスク志向だけが強くなってしまうと、レバレッジの効いた商品やボラティリティの高い銘柄に過剰に傾き、少しの逆行で精神的に耐えられなくなります。

重要なのは、「自分の生活を壊さない範囲で、長く相場に残り続けること」です。短期間での最大リターンではなく、退場しないことを最優先に置くと、自然とポートフォリオの組み方も変わってきます。

時間とともに変わるリスク許容度をどう扱うか

リスク許容度は一度決めたら終わりではありません。年齢、家族構成、資産額、収入状況などが変化すれば、適切なリスクの取り方も変わります。

例えば、独身で投資資金が少ない若い頃は、リスク資産比率を高めにして成長を狙うのも一つの考え方です。しかし、家族ができたり、子どもの教育費が具体的に見えてきたりすると、安定性の比重を高める必要が出てきます。

そのため、少なくとも年に1回は、自分のリスク許容度とポートフォリオを見直す日を決めておくとよいでしょう。ボーナス時や誕生月など、覚えやすいタイミングに合わせて見直しをルール化しておくと、感情に流されずに調整しやすくなります。

リバランスでリスク許容度をキープする

ポートフォリオを一度組んでも、相場が動くにつれて比率は崩れていきます。株式市場が大きく上昇すれば、いつの間にかリスク資産の比率が当初の想定よりも高くなっているかもしれません。

このときに役立つのがリバランスです。例えば、「年1回、またはリスク資産比率が目標から±5%以上ずれたら、元の比率に戻す」といったルールを決めておきます。

リバランスは、感情に流されて「上がっているものをさらに追いかける」「下がっているからといって慌てて手放す」といった行動を抑え、リスク許容度に沿った状態を維持するための技術です。

よくある失敗パターンとその回避策

リスク許容度とポートフォリオ設計がうまくかみ合っていないと、次のような失敗が起こりやすくなります。

1. 想定外の含み損でパニック売り

下落相場で耐えられず、「もう無理だ」と底付近で手放してしまうパターンです。これは、事前に最大許容ドローダウンを決めていなかったり、それを大きく超えるリスクを取ってしまった結果であることが多いです。

回避策としては、「この水準まで下がったら、それでもホールドを続ける」というラインをあらかじめ決め、その範囲を超えるリスクをそもそも取らないことが重要です。

2. 上昇相場でリスクを上げ過ぎる

好調な相場が続くと、「もっとリスクを取ればよかった」と感じやすく、次第にリスク資産比率を上げ過ぎてしまうことがあります。ところが、相場はいつか調整します。

この場合も、もともと決めたリスク許容度と配分比率を超えないよう、リバランスルールを機械的に運用することが有効です。「調子の良いときこそリスクを増やし過ぎない」ことが、長く残るためのコツです。

3. 目的の違うお金を同じポートフォリオで運用する

老後資金、住宅頭金、数年後の留学資金など、目的と期限が異なるお金を一つの口座・一つのポートフォリオでまとめて運用してしまうと、「どの程度のリスクが適切か」がぼやけてしまいます。

可能であれば、目的ごとに資金を分けて管理し、それぞれに合ったリスク許容度と配分を決めることが望ましいです。老後資金は長期前提でリスクをやや高めに、数年以内に使う資金はリスク低めに、といった整理がしやすくなります。

今日からできる3つの実践ステップ

最後に、この記事の内容をすぐに自分の運用に落とし込むためのステップを整理します。

1. 現在の資産状況と目的を紙に書き出し、「最大どの程度の含み損まで耐えられるか」を言語化する。
2. 安全資産とリスク資産の理想的な比率を決め、現状の比率と比較する。乖離が大きければ、時間をかけて目標配分に近づける。
3. リバランスのルール(タイミングと条件)を決め、年1回以上はポートフォリオを点検する。

リスク許容度とポートフォリオ設計を明確にしておくことで、「ニュースを見るたびに不安になる」「相場の上下に振り回されて売買してしまう」といった状況から一歩抜け出すことができます。極端なリスクを取って一時的に資産を増やすのではなく、長く相場に残り続け、時間を味方に付けることを意識した設計を心がけてください。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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