オルカン徹底解説:全世界株インデックスで世界経済に丸ごと投資する方法

投資信託

「オルカン」は、正式名称をeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)とする、全世界株インデックスファンドの代表的な銘柄です。日本の個人投資家の間では、つみたて投資の“定番商品”として強い人気を集めています。

本記事では、オルカンの仕組みから、どんな人に向いているのか、実際にどう積み立てていくか、暴落時にどう対応するかまで、できるだけ具体的に解説します。

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  1. オルカンとは何か:1本で世界中の株式に投資するファンド
    1. 連動対象のインデックス
  2. オルカンの主なメリット
    1. ① 地域分散が極めて広い
    2. ② 個別国の「将来予想」をしなくてよい
    3. ③ リバランスや銘柄入れ替えを自動で行ってくれる
    4. ④ コストが低く、長期投資に向く
  3. オルカンのデメリット・注意点
    1. ① 短期的な値動きは普通に激しい
    2. ② 地域ごとの比率は「時価総額ベース」で偏る
    3. ③ 為替リスクは避けられない
  4. オルカンを使った具体的な積立戦略
    1. ステップ① 毎月の積立額を“無理のない範囲”で決める
    2. ステップ② クレカ積立や自動積立をフル活用する
    3. ステップ③ ボーナス時に“年2回の増額投資”を検討する
  5. 暴落時にオルカンをどう扱うか:具体的なメンタルと行動
    1. ケース① 評価額が▲20%になったとき
    2. ケース② 評価額が▲40%になったとき
  6. オルカンと他のインデックス商品の使い分け
    1. パターン① 「オルカン100%」のシンプル戦略
    2. パターン② 「オルカン+債券」でボラティリティを抑える
    3. パターン③ 「オルカン+米国株インデックス」で少し米国寄りにする
  7. オルカン投資で失敗しやすいパターン
    1. 失敗例① 短期の値動きだけを見て売買を繰り返す
    2. 失敗例② 暴落時に一括売却してしまう
    3. 失敗例③ 生活防衛資金を確保せずにオルカンに突っ込む
  8. 自分なりのルールを決めて、オルカンを長期の“土台”にする

オルカンとは何か:1本で世界中の株式に投資するファンド

オルカンは、全世界の株式市場の値動きに連動することを目指すインデックスファンドです。先進国株、新興国株、日本株を含め、数千銘柄規模の株式に分散投資します。

イメージとしては、「世界中の上場企業を、時価総額に応じて丸ごと少しずつ買っているバスケット」のようなものです。個別株を一つひとつ選ぶ必要はなく、ファンドを1本保有するだけで、世界株ポートフォリオをほぼ完成させることができます。

連動対象のインデックス

オルカンは、MSCI ACWI(All Country World Index)をベンチマークとした全世界株インデックスを対象としています。これは、先進国+新興国の大型・中型株を幅広く含む指数で、世界株式市場全体の代表指標と考えられています。

個人投資家が自分でMSCI ACWI構成銘柄をすべて買うのは現実的ではありませんが、オルカンを1本保有することで、その指数にほぼ丸乗りする形になります。

オルカンの主なメリット

オルカンが個人投資家から高い支持を集めるのは、理由があります。ここでは主なメリットを整理します。

① 地域分散が極めて広い

オルカンの最大の特徴は、投資対象が世界中に分散されていることです。米国株だけ、日本株だけといった偏りがなく、先進国・新興国・日本を含めて広く投資します。

例えば、ある時期に特定の国の株式市場が不調でも、他の地域が好調であれば全体のダメージはやわらぎます。逆に、米国株だけに集中していた場合、米国市場が大きく崩れるとポートフォリオ全体が直撃を受けてしまいます。

② 個別国の「将来予想」をしなくてよい

「これから伸びるのは米国か、新興国か、日本か」といった議論は尽きません。しかし、将来どの国が勝ち組になるかを正確に当て続けるのはプロでも困難です。

オルカンであれば、「どの国が伸びても、その成長の恩恵を自動的に取り込める」というスタンスを取ることができます。将来予想を細かくする必要はなく、「世界全体の経済成長に乗る」というシンプルな考え方で済むため、長期投資との相性が非常に良いです。

③ リバランスや銘柄入れ替えを自動で行ってくれる

世界経済の構図は時間とともに変化します。ある国の比重が下がり、別の国の比重が上がることは珍しくありません。インデックスファンドは、指数に合わせて自動的に構成銘柄や比率を調整してくれます。

個人投資家が自力で世界株ポートフォリオを組んだ場合、リバランスや銘柄入れ替えの手間やコストが非常に大きくなりますが、オルカンに任せることでその作業を丸ごとアウトソースできます。

④ コストが低く、長期投資に向く

オルカンは、インデックスファンドの中でも信託報酬が低水準に設定されています。投資信託のコストは、長期になればなるほどパフォーマンスに効いてきます。

たとえば、年率1%のコスト差が30年続くと、最終的な資産額には大きな差が生まれます。低コストで世界中に分散投資できるオルカンは、長期積立の“土台”として非常に使いやすい選択肢です。

オルカンのデメリット・注意点

一方で、オルカンにも当然デメリットや注意点があります。ここを理解せずに購入すると、「思っていたのと違う」と感じてしまう可能性があります。

① 短期的な値動きは普通に激しい

オルカンは「世界中に分散」しているとはいえ、中身はあくまで株式です。株式市場が崩れたときには、オルカンも大きく下落します。

たとえば、世界的な金融危機やパンデミックなどが起きた場合、数カ月〜1年程度で評価額が30%以上下がるような局面も現実的にあり得ます。元本保証ではなく、短期的な値動きの激しさは覚悟しておく必要があります。

② 地域ごとの比率は「時価総額ベース」で偏る

全世界株インデックスは、各国の時価総額に応じて比重を決めるのが基本です。そのため、世界の株式時価総額の多くを占める米国株の比率が非常に高くなりやすいという特徴があります。

「世界に分散しているから、米国の影響は小さい」と誤解されがちですが、実際にはオルカンの中身も米国株ウェイトがかなり大きくなります。この点を理解したうえで、「世界+米国集中」というイメージで捉えると実態に近くなります。

③ 為替リスクは避けられない

オルカンは円建てで購入できますが、投資先はドルやユーロなど外貨建ての資産が中心です。そのため、円高になると基準価額が押し下げられる要因になります。

たとえば、世界の株価が横ばいでも、急激な円高が進むと円ベースの評価額は下がることがあります。一方で、円安が進めば逆に追い風になります。長期視点では「為替も含めて世界に投資している」と考えることが大切です。

オルカンを使った具体的な積立戦略

ここからは、オルカンを使った具体的な積立戦略の例を紹介します。大事なのは、シンプルで続けやすい仕組みを作ることです。

ステップ① 毎月の積立額を“無理のない範囲”で決める

最初に決めるべきは、「毎月いくら積み立てるか」です。ここでありがちな失敗が、気合を入れすぎて生活を圧迫する額を設定してしまうことです。

たとえば、手取り25万円の人が毎月10万円を積み立てると、何かあったときにすぐに積立を止めざるを得なくなる可能性があります。生活費・予備資金・短期の目標資金を確保したうえで、長期投資に回せる金額を冷静に計算することが重要です。

ステップ② クレカ積立や自動積立をフル活用する

証券会社によっては、クレジットカード決済で投信積立を行うことでポイントが付与される仕組みがあります。オルカンをクレカ積立の対象に設定すれば、長期投資をしながらポイントも貯められるという二重のメリットが得られます。

また、銀行口座からの自動引き落としによる積立設定を行えば、「買うかどうか悩む時間」をそもそも発生させず、機械的に積立を続けやすくなります。

ステップ③ ボーナス時に“年2回の増額投資”を検討する

毎月の積立に加えて、ボーナス月に追加で買い増す方法も有効です。たとえば、

  • 毎月:3万円積立
  • 夏ボーナス:10万円追加投資
  • 冬ボーナス:10万円追加投資

という形にすれば、年間の投資額を大きくしつつ、普段の生活を圧迫しすぎないバランスを取りやすくなります。ボーナスを全額投資に回す必要はなく、「決まった割合だけ投資に回す」というルールを自分で決めておくと継続しやすいです。

暴落時にオルカンをどう扱うか:具体的なメンタルと行動

長期投資では、相場の暴落とどう付き合うかが非常に重要です。オルカンも例外ではなく、大きな調整局面では基準価額が急落することがあります。

ケース① 評価額が▲20%になったとき

たとえば、100万円投資していたオルカンが80万円に下がったとします。このとき、多くの人は「やっぱりやめておけばよかった」と感じて売却を検討しがちです。

しかし、長期の世界株投資において、▲20%程度の下落は決して珍しい現象ではありません。過去の世界株の歴史を振り返ると、数年に一度はそれくらいの調整が起きています。

この局面で重要なのは、「想定の範囲内かどうか」です。事前に「最大で▲30%程度の下落は普通にあり得る」と理解しておけば、▲20%の状況でも慌てずに済みます。

ケース② 評価額が▲40%になったとき

リーマンショック級の危機が起きると、世界株指数は一時的に▲40〜50%近くまで落ち込むことがあります。このレベルになると、精神的なダメージはかなり大きくなります。

ここで大事なのは、「追加投資をするか、黙って積立を続けるか、あるいは一部売却するか」という選択肢を、事前に自分なりの方針として決めておくことです。

たとえば、「▲40%まで落ちたら、毎月の積立は継続しつつ、余裕資金があればスポットで買い増す」といったルールを持っておくと、感情に流されにくくなります。

オルカンと他のインデックス商品の使い分け

オルカンは非常に万能な商品ですが、他のインデックスファンドと組み合わせることで、自分の価値観やリスク許容度に合わせたポートフォリオを作ることもできます。

パターン① 「オルカン100%」のシンプル戦略

最もシンプルなのは、オルカン1本だけで長期積立を行う方法です。個別株や他のファンドを一切持たず、「世界株の成長=自分の資産の成長」と割り切るスタイルです。

この戦略のメリットは、とにかく管理が楽なことです。銘柄の入れ替えやリバランスを気にする必要はなく、「積立額」と「投資期間」だけを意識すればよいので、忙しい社会人にも向いています。

パターン② 「オルカン+債券」でボラティリティを抑える

値動きの激しさをもう少し抑えたい場合は、オルカンと債券ファンドを組み合わせるという選択肢があります。たとえば、

  • オルカン:70%
  • 国内外債券ファンド:30%

といった構成です。株式100%に比べると期待リターンはやや下がりますが、暴落時のドローダウンが緩やかになり、精神的に耐えやすくなる傾向があります。

パターン③ 「オルカン+米国株インデックス」で少し米国寄りにする

「世界全体に投資しつつ、もう少し米国の成長に賭けたい」という場合は、オルカンに加えて米国株インデックスファンド(S&P500など)を併用する方法もあります。

たとえば、

  • オルカン:50%
  • 米国株インデックス:50%

といった形です。オルカンだけでも米国比率は高めですが、こうした組み合わせにより、米国株の比重をさらに高めることができます。

オルカン投資で失敗しやすいパターン

最後に、オルカン投資でありがちな失敗パターンを整理します。これらを避けるだけでも、長期投資の成功率は大きく変わります。

失敗例① 短期の値動きだけを見て売買を繰り返す

オルカンは長期投資向きの商品ですが、短期の値動きだけを気にして頻繁に売買してしまうと、手数料や税金の負担がかさみ、複利効果を損ないやすくなります

たとえば、数カ月で+5%になったからといってすぐに売却し、また数カ月後に買い戻す、といった行動を繰り返すと、結果として「持ちっぱなしにしていた方が良かった」というケースも起こり得ます。

失敗例② 暴落時に一括売却してしまう

大きな暴落が起きたとき、「これ以上損したくない」と感じてすべて売却してしまう人は少なくありません。しかし、歴史的には、大きな下落の後に大きなリバウンドが来るケースも多くあります。

暴落時にすべて売却してしまうと、その後の反発局面に乗れなくなるリスクがあります。もちろん、生活防衛上どうしても現金が必要な場合は別ですが、感情だけで全売却を決めないことが重要です。

失敗例③ 生活防衛資金を確保せずにオルカンに突っ込む

全財産をオルカンに投じてしまうと、急な出費が発生したときに、評価損が出ているタイミングでやむなく売却しなければならない可能性が高まります。

生活防衛資金として、少なくとも数カ月分の生活費は現金や元本割れリスクの低い資産で確保しておき、そのうえで余裕資金をオルカンに回す、という基本を守ることが大切です。

自分なりのルールを決めて、オルカンを長期の“土台”にする

オルカンは、世界中の株式に低コストで分散投資できる、非常にシンプルかつ強力なツールです。個別株の分析に時間を割く余裕がない人にとっても、「世界経済の成長=自分の資産の成長」という形を作りやすい商品と言えます。

一方で、短期的な値動きは決して穏やかではなく、暴落時の精神的負担も小さくありません。だからこそ、

  • 毎月いくら積み立てるか
  • どんなときに買い増し、どんなときに何もしないか
  • どの程度の下落まで「想定の範囲内」と割り切るか

といった、自分なりのルールをあらかじめ決めておくことが重要です。

オルカンを長期ポートフォリオの“土台”として据え、生活防衛資金と組み合わせながら、自分のペースで淡々と積み立てを続けていくことが、結果として大きな資産形成につながりやすくなります。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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