トレンドフォローは、相場の「流れ」に素直に乗ることで利益を狙うシンプルな手法です。上昇しているものは買い、下落しているものは売る(もしくは買わない)という考え方に基づいています。裁量判断だけに頼らず、あらかじめ決めたルールに沿って機械的に行動しやすいことから、初心者にも取り組みやすい手法です。
トレンドフォローとは何か
トレンドフォローは、「過去しばらく上昇してきたものは、しばらく上昇が続きやすい」「過去しばらく下落してきたものは、しばらく下落が続きやすい」という傾向を前提にした戦略です。統計的にも、株式・FX・コモディティ・暗号資産など、多くの市場で「モメンタム」や「トレンドの持続」が確認されています。
重要なのは、「安く買って高く売る」のではなく、「高くなってきたから買い、さらに高くなったところで売る」という発想に切り替えることです。底値で買おうとして何度も逆行を食らうよりも、ある程度トレンドが見えてから参加することで、メンタル的にも安定しやすくなります。
どんな市場で使えるのか
トレンドフォローは、以下のようなさまざまな市場で活用できます。
- 株式:個別株、株価指数、ETF
- FX:ドル円、ユーロドルなどの主要通貨ペア
- コモディティ:金、原油など
- 暗号資産:ビットコイン、イーサリアムなど
基本的な考え方はどの市場でも同じです。違いがあるとすれば、値動きの大きさ(ボラティリティ)や、取引時間帯、レバレッジの上限などです。最初は、自分がニュースを追いやすく、取引時間も生活リズムに合う市場をひとつ選び、そこでトレンドフォローの型を身につけることをおすすめします。
トレンドの定義:移動平均線と高値・安値
トレンドフォローでまず決めるべきなのが、「上昇トレンド」「下降トレンド」をどう定義するかです。典型的には、次のようなシンプルな指標を使います。
1. 移動平均線(Moving Average)
一定期間の終値の平均を線でつないだものです。例えば、終値20本分の平均を20日移動平均線、終値50本分の平均を50日移動平均線と呼びます。
- ローソク足が上位の移動平均線より上にあり、移動平均線も右肩上がり → 上昇トレンドとみなす
- ローソク足が移動平均線より下にあり、移動平均線も右肩下がり → 下降トレンドとみなす
2. 高値・安値の切り上げ・切り下げ
チャート上で、直近の高値と安値がどのように推移しているかを見ます。
- 高値と安値がともに切り上がっている → 上昇トレンド
- 高値と安値がともに切り下がっている → 下降トレンド
移動平均線だけ、高値安値だけで判断するのではなく、双方を組み合わせることで、ダマシを減らすことができます。
時間軸を決める:デイトレかスイングか
トレンドフォローは、どの時間軸でも応用できますが、初心者はまず「日足か4時間足でのスイングトレード」から始めるのが無難です。
- デイトレード(1分足・5分足など):チャンスは多いが、ノイズも多く、メンタル負荷が大きい
- スイングトレード(日足・4時間足など):チャンスは少ないが、トレンドがはっきりしやすく、落ち着いて判断しやすい
最初は、日足チャートを1日1回確認するだけでも十分です。仕事をしながらでも継続しやすく、睡眠時間を削らずに取り組めるため、長続きしやすいスタイルです。
シンプルなトレンドフォロー戦略の設計例
ここでは、株やFXでも応用しやすいシンプルなルールの例を示します。あくまで一例ですが、最初の「型」として役立ちます。
【前提条件】
- 時間軸:日足
- 使用する指標:20日移動平均線、50日移動平均線
- エントリー方向:上昇トレンドのみ(ショートは行わない)
【エントリー条件】
- 20日移動平均線が50日移動平均線の上にある(ゴールデンクロス後)
- 終値が20日移動平均線より上にある
- 直近の高値を終値が上抜けした
この3つを満たした翌日の寄り付き、または終値で成行買いする、というイメージです。
【イグジット(手仕舞い)条件】
- 終値が20日移動平均線を明確に下回った
- もしくは、エントリー後の高値から一定割合(例:5〜8%)下落した
このように、エントリーとイグジットをあらかじめ決めておくことで、「どこで買い、どこで売るか」に悩みにくくなります。
具体的なエントリーまでの流れ
実際の行動ステップとして、日足ベースのトレンドフォローを下記のような手順に落とし込みます。
1. 監視銘柄リストを作る
株であれば、自分が理解しやすい業種の数十銘柄をピックアップし、チャートを毎日確認します。FXであれば、ドル円・ユーロドル・ポンド円など3〜5通貨ペアに絞るとよいでしょう。
2. トレンド条件をスクリーニングする
「20日移動平均線が50日移動平均線の上」「終値が移動平均線より上」といった条件を、スクリーニングツールやチャートソフトの条件付き検索機能で抽出します。これにより、毎日全銘柄を目視でチェックする負担を減らせます。
3. ブレイクアウト候補を見つける
スクリーニングで絞り込んだ中から、直近の高値を試している銘柄がないかを確認します。高値のすぐ下で価格がもみ合っている状態は、ブレイクアウト前の「エネルギーを溜めている」状態であることが多く、トレンドフォローにとって狙い目となります。
4. エントリー水準と損切りラインを事前に決める
例えば、直近高値を終値で上抜けしたら翌日エントリー、損切りは20日移動平均線割れ、というように、価格水準をあらかじめノートやエクセルに記録しておきます。これにより、リアルタイムで慌てて判断する必要がなくなります。
損切り・利確ルールの具体例
トレンドフォローは、「勝率はそれほど高くないが、大きなトレンドに乗れたときに一気に利益を伸ばす」タイプの戦略です。そのため、損切りと利確のルールが極めて重要です。
1. 損切りルール
- 終値が20日移動平均線を2日連続で下回ったら手仕舞い
- あるいは、エントリー価格から5%以上下落したら成行で損切り
どちらか一方、もしくは両方を組み合わせても構いません。重要なのは、「どんなに自分の予想に自信があっても、ルールに従って損切りする」ことです。
2. 利確ルール
- トレailing stop(トレーリングストップ)を使う:直近安値や移動平均線を基準に、価格が一定幅戻ったら利確する
- 目標リスクリワード比を決める:リスク1に対してリターン2〜3を目指し、到達したら一部利確する
トレンドフォローでは、利益が伸びているポジションをすぐに手放してしまうことが最大の敵です。含み益が出てもすぐに利確せず、「トレンドが終わるまで持つ」という発想を持つと、トータルの成績が安定しやすくなります。
ポジションサイズとレバレッジ管理
トレンドフォローで破綻する人の多くは、「トレンドの判断」ではなく「資金管理」に問題を抱えています。特にFXや暗号資産ではレバレッジをかけられるため、ポジションサイズを間違えると、少数の負けトレードで口座が大きく傷んでしまいます。
1トレードあたりの許容損失を決める
例えば、「1回のトレードで口座残高の2%以上は失わない」といったルールを決めます。口座残高が100万円なら、1トレードで許容する損失額は2万円です。
この2万円を、チャート上で決めた損切り幅(円やpips)で割ることで、ポジションサイズが決まります。
例:損切り幅が500円の株で、許容損失額が2万円なら、取れる株数は「2万円 ÷ 500円 = 40株」となります。レバレッジを使う場合も同様に、「許容損失額 ÷ 損切り幅」でロット数を決めます。
レンジ相場でのダマシを減らす工夫
トレンドフォローの弱点は、トレンドが出ていないレンジ相場でダマシが多くなり、損切りが続きやすいことです。完全に避けることはできませんが、いくつかの工夫でダメージを抑えることは可能です。
- 移動平均線の傾きを重視する:ほぼ横ばいならエントリーしない
- ボラティリティ指標(ATRなど)を見て、値動きが極端に小さい時期は手を出さない
- ブレイク後すぐではなく、「ブレイク後に一度押してからの再上昇」を待ってエントリーする
特に「明らかに横ばいで方向感のないチャート」「長期間同じレンジを行ったり来たりしているチャート」は、トレンドフォローの得意な相場ではありません。そのような時期は、無理にポジションを取らず、「休むも相場」という考え方を徹底することが大切です。
トレード記録と検証の仕方
トレンドフォローを継続的に改善していくためには、トレード記録と検証が不可欠です。難しい統計処理をしなくても、エクセルやスプレッドシートで次の項目を残すだけで、大きな改善につながります。
- エントリー日・銘柄・時間軸
- エントリー価格・損切り価格・利確価格
- 結果の損益(円・%)
- エントリーしたときのチャートのスクリーンショット
- エントリー理由(ルール通りだったか、感情的な判断が混じっていないか)
ある程度トレード数が溜まってきたら、「勝ちトレードの共通点」「負けトレードの共通点」を振り返ります。例えば、「ルールを守ったトレードだけを抽出すると、期待値がプラスになっている」「ルールを破ったトレードが成績を大きく悪化させている」といった事実が見えてきます。
よくある失敗パターンと改善ポイント
トレンドフォローを始めた初心者がはまりがちなパターンと、その改善策をいくつか挙げます。
1. 損切りができず、トレンド転換後も持ち続けてしまう
損切りが遅れると、トレンドフォローの強みである「小さく負けて大きく勝つ」という構造が崩れます。「終値ベースで移動平均線を割ったら、翌日の始値で必ず手仕舞いする」など、具体的な行動レベルまで落とし込んだルールを作りましょう。
2. レンジ相場で無理にトレンドフォローをし続ける
チャートを眺めていると、何かしらポジションを持ちたくなりますが、トレンドが出ていない期間は「何もしない」ことが最善の行動になることも多いです。移動平均線が横ばいの期間は、ロットを落とすか、そもそもエントリーしないという基準を設けましょう。
3. 勝ちトレードをすぐに利確してしまう
含み益が出ると、「今のうちに利益を確定しておきたい」という心理が働きますが、これを繰り返すと、大きなトレンドの恩恵を受けられません。トレーリングストップを採用し、「一定の戻りが出るまではポジションを持ち続ける」ルールを徹底することが大切です。
まとめ:トレンドフォローを自分の型に落とし込む
トレンドフォローは、ルールがシンプルで再現性が高く、初心者でも学びやすい手法です。一方で、レンジ相場での連敗や、損切りの徹底など、感情と向き合う場面も多く、「ルールを守り続ける力」が試される戦略でもあります。
大切なのは、誰かの手法を丸ごと真似するのではなく、自分の生活リズムやメンタル特性に合わせて「時間軸」「トレンドの定義」「エントリー・イグジット条件」「ポジションサイズ」を調整し、少しずつ自分の型にしていくことです。少量の資金・小さなロットから始め、記録と検証を重ねながら、自分なりのトレンドフォロー戦略を育てていきましょう。


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