暗号資産の税金と計算方法:日本の個人投資家が押さえておきたい基礎知識

暗号資産

暗号資産(仮想通貨)は値動きが大きく、少ない元手から大きな利益を狙える一方で、税金の仕組みが分かりにくく、計算も複雑になりがちです。実際、「利益は出たのに税金が払えずに困った」「どこからどこまでが課税対象なのか分からない」という声は少なくありません。

この記事では、日本の個人投資家が押さえておきたい暗号資産の税金と計算方法について、できるだけシンプルな言葉と具体例を使いながら整理していきます。内容はあくまで一般的な考え方であり、最終的な判断にあたっては最新の法令や専門家の見解を確認することを前提に、自分のトレードを設計するための基礎知識として活用してください。

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暗号資産に税金がかかる理由とは

まず押さえたいのは、「なぜ暗号資産に税金がかかるのか」という根本的な部分です。日本の税制では、個人が経済的な利益を得たとき、その多くが何らかの形で所得として扱われます。給与であれば給与所得、株の配当であれば配当所得、不動産の家賃なら不動産所得というように、所得の種類ごとにルールが決まっています。

暗号資産の売買で得た利益は、2025年時点では一般に「雑所得」として扱われ、給与など他の所得と合算して税額が決まる総合課税の対象になっています。株や投資信託のような「申告分離課税(一律約20%)」とは仕組みが違うため、同じ投資といっても税金の計算方法がまったく異なります。

大きなポイントは「含み益には税金がかからないが、利益が確定した瞬間に課税対象になる」ということです。チャート上で評価額が増えていても、まだ売却や交換をしていない状態であれば税金は発生しません。一方で、日本円に換えたときや他の暗号資産に交換したときなど、利益が確定したとみなされるタイミングで初めて所得が生じる、という考え方になります。

日本の税制上の位置づけ(2025年時点の整理)

日本に居住する個人が暗号資産で利益を得た場合、多くのケースでは「雑所得」として総合課税の対象になります。総合課税では、給与所得や事業所得などと合算したうえで、所得税は5%〜45%の累進税率、住民税は一律10%が適用されます。高所得者ほど税率が高くなる仕組みのため、暗号資産で大きな利益を得ると税負担がかなり重くなる可能性があります。

例えば、給与所得などを含めた課税所得が大きく、すでに高い税率ゾーンに入っている人が、暗号資産でさらに大きな利益を得ると、その利益部分の多くに高い税率が適用されます。その結果、「利益の半分近くが税金で消える」という状況も理論上起こり得ます。株の譲渡益や配当所得が原則として一律約20%で課税されることと比較すると、税負担の重さは無視できません。

一方で、サラリーマンなどの給与所得者については、給与以外の所得(雑所得など)の合計が年20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要とされるケースがあります。ただし、これはあくまで申告不要制度であり、「税金がかからない」という意味ではない点に注意が必要です。また、所得税の申告が不要でも、住民税の申告が必要となる場合があります。

暗号資産の税制については、将来的に株式などと同様の申告分離課税を導入する方向性が議論されていますが、実際の改正内容や開始時期は、その時点の税制改正大綱や法令によって決まります。投資家としては、「現時点のルールを正確に理解しつつ、制度変更の可能性にも備える」というスタンスが現実的です。

課税される具体的なタイミングを整理する

暗号資産で税金が発生するタイミングは、「日本円に換えたときだけ」と誤解されがちですが、実際にはもう少し広い範囲が対象になります。代表的なパターンを例とともに整理しておきます。

① 日本円に売却したとき
最も分かりやすいのが、保有していたビットコインやアルトコインを日本円に売却したケースです。取得時の価格(取得価額)と売却時の価格の差額が、原則として雑所得の金額となります。

例:ビットコインを100万円で購入し、その後150万円で売却した場合
150万円 − 100万円 = 50万円が所得(利益)

② 別の暗号資産に交換したとき
ビットコインでイーサリアムを買うような「暗号資産同士の交換」も、税務上は一度ビットコインを日本円で売却したうえで、イーサリアムを日本円で購入したのと同じように扱われます。日本円に換金していなくても、ビットコインで得た利益はこのタイミングで確定したとみなされます。

例:ビットコインを100万円で取得し、その後の時価が150万円のときに、全額をイーサリアムに交換した場合
100万円 → 150万円になっているため、50万円分の所得が生じたと考えます。

③ 暗号資産で商品やサービスを購入したとき
ビットコイン決済などで商品を購入した場合も、「その時点で暗号資産を時価で売却し、代金として支払った」とみなされます。取得価額との差額が所得となります。

④ マイニング報酬・ステーキング報酬・レンディング利息など
マイニング、ステーキング、レンディングなどで暗号資産を受け取った場合、その受け取った時点の時価が所得の金額になります。日本円に換えたタイミングではなく、「受け取った瞬間」が課税のポイントになる点に注意が必要です。

⑤ エアドロップやキャンペーンで受け取ったトークン
無料配布(エアドロップ)や取引所のキャンペーンなどで暗号資産を受け取った場合も、受け取った時点の時価が所得となるケースが一般的です。

課税されない代表例
・自分のウォレット間の送金(取引所Aから自分のハードウェアウォレットへ移動など)
・単に保有しているだけの状態(含み益のみで、売却や交換をしていない場合)
などは、原則として課税対象になりません。

所得(利益)の計算方法:基本の考え方

暗号資産の所得を計算する際の基本形は、

所得 = 売却(または利用)時の価額 − 取得価額 − その取引に直接かかった手数料

という式になります。ここで重要なのが「取得価額をどうやって決めるか」です。現実の取引では、同じ銘柄を複数回に分けて買ったり、複数の取引所をまたいで売買したりするため、単純に「最初に買ったときの価格」だけを見ていればよいわけではありません。

一般的には、一定期間内に取得した同じ銘柄の平均取得単価を使う「総平均法」が用いられます。例えば、

・1回目:ビットコインを100万円で0.5BTC購入(手数料込み)
・2回目:ビットコインを120万円で0.5BTC購入(手数料込み)

という場合、合計で1BTCを220万円で取得しているので、平均取得価額は1BTCあたり220万円となります。その後、0.4BTCを売却したときは、取得価額は220万円 × 0.4 = 88万円として計算します。

多くの投資家にとって重要なのは、「自分ですべての取引を手計算する必要はないが、計算ロジックのイメージは持っておく」という姿勢です。実際には、取引所からダウンロードした取引履歴をもとに、表計算ソフトや専用の計算サービスを使って集計するのが現実的です。

1年間の利益を集計するステップ

暗号資産の取引が増えてくると、「今年いくら利益が出ているのか」が感覚的には分かっても、正確な数字として把握するのは簡単ではありません。そこで、個人投資家が現実的に取り組める集計ステップを整理しておきます。

ステップ1:すべての取引所・ウォレットを洗い出す
国内取引所、海外取引所、DEX、レンディングサービス、自前ウォレットなど、暗号資産を動かした可能性のある場所をリストにします。「この取引は少額だからいいか」と考えて抜け漏れが生じると、後から整合性を取るのが難しくなります。

ステップ2:取引履歴をダウンロード・保存する
多くの取引所では、CSV形式などで取引履歴をダウンロードできます。入出金履歴、約定履歴、手数料の明細などをできるだけ早めに保存しておくと、後から計算するときに役立ちます。海外取引所やDeFiサービスを利用している場合は、オンチェーンのトランザクション履歴も含めて整理しておくのが理想です。

ステップ3:銘柄ごとに取得と売却を整理する
ビットコイン、イーサリアム、その他のアルトコインといった単位で、取得履歴と売却・交換履歴を並べていきます。同じ銘柄については、平均取得単価を計算できるように、数量と金額を整然と記録しておきます。

ステップ4:日本円ベースで評価し、所得を算出する
海外取引所やステーブルコインを使う場合でも、税金の計算は日本円ベースで行います。約定時点のレートをもとに、その取引の日本円換算額を求め、前述の式にしたがって所得を計算します。

ステップ5:年間の雑所得として合算する
すべての暗号資産取引の所得を合算し、その年の「暗号資産による雑所得」としてまとめます。他の雑所得(副業収入など)があれば、それらとも合わせて集計し、確定申告で申告することになります。

税率とおおまかなシミュレーション

暗号資産の所得は給与などと合算して税率が決まるため、個々人の状況によって税額は大きく変わります。ここではあくまでイメージを掴むために、ごく単純化したシミュレーションを示します。

例として、「給与所得などとは別に、暗号資産の利益として100万円が発生したケース」を考えてみます。すでに給与所得などで一定の税率ゾーンに入っていると仮定すると、その100万円の部分には20%台〜30%台の所得税と10%の住民税がかかることもあり得ます。

仮にその人の限界税率(追加の所得にかかる税率)が、所得税23%・住民税10%だとすると、

・所得税:100万円 × 23% = 23万円
・住民税:100万円 × 10% = 10万円
合計約33万円が税負担の目安になります。

限界税率がさらに高くなれば、暗号資産の利益に対する税率は40%台+住民税10%という水準になる可能性もあります。このように、「自分の限界税率がどの程度なのか」を把握しておくことは、トレード戦略を考えるうえで非常に重要です。

損失が出たときの扱いと注意点

暗号資産の取引では、当然ながら損失が出ることもあります。「株の損失と暗号資産の利益を相殺できるのでは」と考える人もいますが、現行のルールでは多くの場合、そうした損益通算はできません。

個人の暗号資産の所得は雑所得として扱われるため、株式等の譲渡所得や配当所得と損益を通算することはできません。また、同じ雑所得であっても、翌年以降に損失を繰り越すことも原則として認められていません。その年に暗号資産で損失が出た場合、そのマイナスは翌年以降に持ち越せない、という前提で資金管理を行う必要があります。

一方で、同じ年の中で暗号資産同士の利益と損失を相殺することは可能です。たとえば、A銘柄で+80万円、B銘柄で−30万円であれば、差し引き+50万円がその年の暗号資産による所得となります。この意味で、「損失をどのタイミングで確定させるか」も、税金を意識したトレードでは重要な要素になります。

税金を意識したトレード設計のポイント

ここからは、税金の仕組みを踏まえたうえで、個人投資家がトレードを設計する際に意識しておきたいポイントを整理します。いずれも「節税のためだけ」に動くのではなく、「税金も含めてトータルのリターンを考える」という視点です。

ポイント1:利益確定のタイミングを分散する
1年のうちに大きな利益を一気に確定させると、その年の所得が跳ね上がり、高い税率ゾーンに入ってしまうことがあります。自分の資金規模やポジションサイズにもよりますが、複数年に分散して利益を確定していくほうが、税率の観点では安定しやすいケースもあります。ただし、価格変動リスクとのバランスを取ることが前提です。

ポイント2:頻繁な売買が本当に有利かを見直す
値動きの大きさに惹かれて短期売買を繰り返すと、手数料やスプレッドだけでなく、税金の面でも非効率になる場合があります。取引のたびに小さな利益を積み上げていても、年間で見ると税金を払った後の手取りが思ったほど残らないこともあります。「この売買は、税金を払ったあとでも意味があるか」という視点を意識すると、トレードの質が上がりやすくなります。

ポイント3:円に換えないと税金はかからない、は誤解
暗号資産同士の交換や決済利用でも課税されるため、「日本円に戻していないから大丈夫」と考えていると、後から大きな税負担に気づくリスクがあります。特に、アルトコイン同士のスイングトレードやDeFi運用を積極的に行う場合は、どのタイミングで所得が生じているのかを意識しておかないと、年度末に計算が破綻しかねません。

ポイント4:税金を払うためのキャッシュを意識する
暗号資産の評価額が大きく増えていても、日本円のキャッシュが手元になければ税金を納付できません。税額をざっくりシミュレーションしたうえで、「税金用の資金」を別枠で確保しておくことは、リスク管理の一部と考えるべきです。相場が急落したタイミングで慌てて売却して納税資金を作る、という状況は可能な限り避けたいところです。

計算と申告をスムーズにするためのチェックリスト

暗号資産の税金計算は、完璧を目指そうとすると途端にハードルが高くなりますが、最低限押さえておきたいポイントをチェックリストとしてまとめておくと、負担を軽減できます。

・すべての取引所・ウォレットのリストを作成しているか
・取引所からダウンロードした取引履歴を安全な場所に保管しているか
・日本円ベースで評価するためのレート情報を確保しているか
・マイニングやステーキング報酬、エアドロップなどの発生日時と数量を記録しているか
・年間を通じて、ざっくりとした「今年の利益・損失」の見込みを把握しているか

これらを日頃から意識しておくだけでも、確定申告の時期に慌てる可能性は大きく下がります。特に、トレードの回数が多い人や、複数のサービスをまたいで運用している人ほど、早めの準備が重要になります。

暗号資産投資でやってはいけない典型パターン

最後に、税金の観点から見て「避けたい典型パターン」をいくつか挙げておきます。これらはどれも、短期的には問題がなく見えても、後から大きな負担となって返ってくる行動です。

・税額を考えずに大きなポジションをすべて利確する
相場が大きく上昇したときに、一気にすべてのポジションを利確すると、想定以上の税額が発生することがあります。翌年になってから「ここまで税金がかかるとは思わなかった」と気づくケースは珍しくありません。

・取引履歴やウォレットの記録を残していない
暗号資産は取引の自由度が高い一方で、履歴の管理を本人がきちんと行わなければ、正確な計算がほぼ不可能になります。取引所の閉鎖やサービス変更などで過去データが取得できなくなるリスクもあるため、自分でバックアップを取っておくことが重要です。

・海外取引所やDeFi取引を「見なかったこと」にする
海外取引所やDEXでの取引も原則として日本の税制の対象です。「国内取引所しか申告しない」という対応は、税務リスクを高めるだけでメリットはありません。将来にわたり安心して投資を続けるためにも、国内・海外を問わず取引の全体像を把握し、整合性のある形で申告することが大切です。

おわりに:税金をコストとして織り込んだ暗号資産運用を

暗号資産の税金は複雑に見えますが、ポイントを整理すると「どのタイミングで所得が生じるのか」「その所得にどの程度の税率がかかるのか」「納税資金をどう確保するのか」という三つの軸に集約されます。この三点を意識して運用すれば、「利益は出たのに税金で追い込まれる」といった事態は避けやすくなります。

税金は投資家にとって避けられないコストのひとつです。だからこそ、仕組みを理解し、計算方法を押さえたうえで、自分のリスク許容度や投資スタイルに合ったトレードを組み立てていくことが重要です。制度は今後も変化していく可能性がありますが、ルールを正しく理解したうえで、長期的に安定したリターンを目指すという姿勢が、暗号資産投資で生き残るための土台になります。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

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