信用スプレッドの基礎:個人投資家が抑えるべきリスク限定オプション戦略

オプション
スポンサーリンク
【DMM FX】入金

信用スプレッドとは何か

信用スプレッド(クレジットスプレッド)は、オプションを「同時に売りと買い」で組み合わせることで、利益と損失の幅をあらかじめ限定する戦略です。単純にオプションを売るだけの戦略に比べて、想定外の値動きが起きたときの損失を機械的に制限できるため、個人投資家にとっても比較的取り組みやすいリスク限定型の戦略と言えます。

例えば、株価が「大きくは下がらないだろう」と考える場合、プットオプションを売る戦略があります。しかし、暴落が起きれば理論上の損失は非常に大きくなります。そこで、売ったプットよりもさらに下の権利行使価格でプットオプションを買っておくと、損失はその差額に限定されます。これが代表的な「ブル・プット・クレジットスプレッド」です。

なぜ信用スプレッドが個人投資家向きなのか

信用スプレッドは、一言でいうと「プレミアム(オプション料)を受け取りながら、最悪ケースを保険で抑える」構造になっています。個人投資家がこの戦略から得られるメリットは主に次の3点です。

第一に、最大損失が事前に確定していることです。どこまで相場が動いても、それ以上は損をしない、というラインがポジションの構造上決まっています。これにより、ナンピンや感情的なロスカットに頼らず、ポジションサイズを計画的に決めることができます。

第二に、「方向性」と「ボラティリティ」の両方を同時に利用できる点です。信用スプレッドは、価格が想定レンジ内に収まるだけでなく、時間経過によるタイムディケイ(時間価値の減少)や、ボラティリティ低下によるプレミアムの縮小にも利益が乗る構造です。株価が大きく動かなくてもプラスになるシナリオがあることは、短期トレードにおいて大きな強みになります。

第三に、少額から構築しやすい点です。現物株を大量に保有せずとも、オプションと証拠金だけで戦略を組めるため、資金効率を高めたい個人投資家にとって相性の良い手法と言えます。ただしレバレッジをかけすぎれば当然リスクは増えるため、「最大損失から逆算したポジションサイズ管理」が必須です。

代表的なパターン①:ブル・プット・クレジットスプレッド

信用スプレッドの中でも、相場が「横ばい〜やや上昇」を想定する場面で使われるのが、ブル・プット・クレジットスプレッドです。構造は非常にシンプルです。

・現在価格より少し下のプットオプションを売る(プレミアムを受け取る)
・それよりさらに下のプットオプションを買う(プレミアムを支払う)

受け取ったプレミアムと支払ったプレミアムの差額が「最大利益」です。一方、2つの権利行使価格の差からネットプレミアムを差し引いたものが「最大損失」となります。

具体例を挙げます。ある株価指数ETFが100ドル付近で推移しているとします。投資家は「大暴落は起きないだろうが、短期的に100ドルを大きく上回る強い上昇トレンドでもない」と判断しました。このとき、次のようなスプレッドを組みます。

・権利行使価格95ドルのプットを売る(プレミアム3ドルを受け取る)
・権利行使価格90ドルのプットを買う(プレミアム1ドルを支払う)

この場合、ネットで2ドル(3−1)のプレミアムを受け取ることになります。1枚あたりの最大利益は2ドルです。一方、権利行使価格の差は5ドルなので、最大損失は「5−2=3ドル」となります。したがって、このポジションは「3ドルをリスクにとり、2ドルを取りに行く」構造です。

満期時に95ドル以上であれば、両方のプットは行使されず、受け取った2ドルがそのまま利益になります。価格が95ドルと90ドルの間で終わった場合は損失が徐々に拡大し、90ドル以下で終わった場合に最大損失の3ドルを被る形になります。

代表的なパターン②:ベア・コール・クレジットスプレッド

相場が「横ばい〜やや下落」を想定する場面では、ベア・コール・クレジットスプレッドが選択肢になります。構造はプットのときとほぼ対称です。

・現在価格より少し上のコールオプションを売る(プレミアムを受け取る)
・それよりさらに上のコールオプションを買う(プレミアムを支払う)

こちらも、ネットで受け取ったプレミアムが最大利益であり、権利行使価格の差からネットプレミアムを引いた金額が最大損失です。

例えば、同じく100ドル付近のETFに対し、「急騰の可能性は低く、上値は重い」と判断したとします。このとき、次のようなスプレッドを組みます。

・権利行使価格105ドルのコールを売る(プレミアム2.5ドルを受け取る)
・権利行使価格110ドルのコールを買う(プレミアム1ドルを支払う)

ネットで1.5ドルのプレミアムを受け取るため、最大利益は1.5ドルです。権利行使価格の差は5ドルなので、最大損失は「5−1.5=3.5ドル」です。満期時に105ドル以下であれば、両方のコールは行使されず、1.5ドルがそのまま利益になります。105〜110ドルの間では損失が徐々に増え、110ドル以上では最大損失を被る構造です。

信用スプレッド戦略の損益構造を理解する

信用スプレッドの損益構造は、視覚的に把握すると理解が早まります。共通しているのは、「プロフィットゾーンが広く、損失は限定」という特徴です。相場が自分の想定した方向に一定以上動かなくても、レンジ内で静かに推移してくれるだけで利益になるケースが多くなります。

一方で、「リスク・リワード比」は必ずしも良いとは限りません。先ほどの例では、3ドルのリスクを負って2ドルの利益を狙う構造でした。表面的な勝率は高くても、一度の最大損失で過去の利益が吹き飛ぶ可能性があるため、ポジションサイズと分散が極めて重要になります。

信用スプレッドは「勝率を高くしやすい戦略」ですが、「一度の大きな損失をどう抑え込むか」が実践上の鍵となります。したがって、利益額だけでなく、最大損失額とその頻度を事前に想定し、資金配分を決めることが必須です。

実際の構築プロセス:ステップ・バイ・ステップ

ここからは、個人投資家が信用スプレッドを組むときの思考プロセスを、できるだけ初歩的に分解してみます。

ステップ1:市場環境と方向性の仮説を立てる
まず、「この銘柄(または指数)は、今後どの程度のレンジで動きそうか」という仮説を立てます。トレンドフォロー指標(移動平均線、MACDなど)やボラティリティ指標(過去の値動き幅、VIX等)を参考に、「急騰・急落の可能性」「レンジ相場の継続可能性」を考えます。

ステップ2:想定レンジの外側に権利行使価格を置く
次に、「ここまで来たらさすがに想定外」と思う価格帯を決めます。ブル・プットなら「そこまで下がらないだろう」という価格、ベア・コールなら「そこまで上がらないだろう」という価格です。この価格を売りオプションの権利行使価格として想定します。

ステップ3:保険となる買いオプションの位置を決める
売りオプションのさらに外側に、損失を限定するための買いオプションを置きます。売りと買いの権利行使価格の差が大きいほど、最大損失は増えますが、プレミアムも変わるためバランスを見ながら決定します。

ステップ4:プレミアムと最大損失のバランスを評価する
受け取るプレミアム(最大利益)と、最大損失、および「想定レンジに収まる確率感」を比較し、リスク・リワードが自分の許容範囲にあるかを判断します。このとき、証拠金に対する最大損失の割合も確認し、「1回のトレードで資金の何%を失う可能性があるか」を必ず数字で把握します。

ステップ5:ポジションサイズと分散を決める
最後に、「最大損失が発生した場合でも、トータル資金へのダメージが限定的になるような枚数」に調整します。例えば、1回のトレードで資金の2%までしかリスクを取らない、などのルールを決めておくことで、連敗しても致命傷になりにくくなります。

信用スプレッドが機能しやすい相場環境

信用スプレッドは「プレミアムを受け取る側」に立つ戦略なので、相場が「想定レンジ内に収まる」場面で真価を発揮します。具体的には次のような環境です。

・大きなイベント(決算や重要な政策発表)が通過した後で、ボラティリティが徐々に低下していく局面
・明確なトレンドが出ているが、短期的には一服しているレンジ調整局面
・ボラティリティが高めでプレミアムが厚く、しかしファンダメンタルズ上は極端な急変動の可能性が低いと判断できる場面

逆に、信用スプレッドが機能しにくいのは次のような環境です。

・政策金利発表や雇用統計など、非常に大きなサプライズが起こり得るイベントの直前
・トレンド転換の初動で、ボラティリティが急拡大している場面
・ニュースや不祥事など、個別銘柄に特有のギャップダウン・ギャップアップリスクが高い局面

こうした環境では、どれだけ遠くに権利行使価格を置いても、想定外の動きで一気に最大損失に達する可能性があります。イベント直前にはポジションを小さくするか、いっそノーポジションにするなど、リスクを抑える判断が重要です。

時間とボラティリティを味方につける発想

信用スプレッドの収益源は、「時間経過」と「ボラティリティ低下」です。売りオプション側の時間価値が日々減少していくことにより、満期に近づくほどポジションの評価益が出やすくなります。また、相場参加者の不安心理が落ち着き、インプライド・ボラティリティが下がると、オプション全体のプレミアムが縮小し、ネットでプレミアムを売っている信用スプレッドには追い風となります。

このため、信用スプレッドでは「どのくらい先の期限を選ぶか」も重要な戦略要素です。期限が短いほど時間価値の減少スピードは速くなりますが、急激な値動きに対する耐性は下がります。期限が長いとプレミアムは厚くなりますが、ポジションを長期間抱えることになり、市場環境の変化にさらされる時間も長くなります。

初心者の段階では、「自分がモニターできる時間軸」と「イベントスケジュール」を考慮し、過度に長期のオプションを使いすぎないことが一つの考え方です。例えば、1〜2か月程度の期限に絞り、主要な経済イベントをカレンダーでチェックしながらポジションを構築する、といった運用方法が現実的です。

リスク管理の具体的な考え方

信用スプレッドは最大損失が限定されているとはいえ、その最大損失が口座残高に対して大きすぎれば意味がありません。リスク管理のポイントを具体的に整理します。

第一に、「1トレードあたりのリスク許容額」を金額ベースで決めることです。例えば、総資金100万円であれば、1回のトレードで失ってもよい上限を2万円(2%)などと決め、その範囲内で最大損失が収まる枚数までポジションサイズを調整します。

第二に、「同じ方向に偏ったスプレッドを増やしすぎない」ことです。例えば、複数銘柄で同時にブル・プットを組んでいると、市場全体の急落時に複数のポジションが同時に最大損失を迎えるリスクがあります。指数と個別株、セクターの分散、さらにはベア・コールとブル・プットのバランスなど、ポートフォリオ全体の方向性を常に意識することが重要です。

第三に、「損切りの発想を持つ」ことです。信用スプレッドは満期まで保有してもよい戦略ですが、相場環境が明らかに当初の想定と異なってきた場合、最大損失の手前で一部または全部をクローズするという選択肢もあります。例えば、損失が最大損失の50%に達した時点でポジションを見直すなど、あらかじめ基準を定めておくと、感情に左右されにくくなります。

初心者が最初に意識したいポイント

信用スプレッドは、単純なコール・プットの売買よりも構造が複雑に見えますが、「売りと買いをセットにして、損失を限定する」という発想を押さえれば、理屈自体は決して難しくありません。むしろ、単純な裸売りよりも安全性を高めた形と捉えることができます。

一方で、初心者が陥りやすい落とし穴も存在します。それは、「勝率の高さに安心してロットを上げすぎること」と「イベントリスクを軽視すること」です。信用スプレッドは、多くのケースで小さな利益を積み上げる戦略です。だからこそ、一度の大きな損失でそれまでの利益を失わないよう、ポジションサイズと分散、イベント管理が何よりも重要になります。

最初のうちは、あくまで「学習コストとして許容できる小さなロット」で実践し、自身のメンタル・リズム・モニタリング体制に合ったスタイルを見つけていくのが現実的です。バックテストや紙上トレードなどで損益パターンを確認しながら、自分の許容リスクに見合う戦略構築を心がけるとよいでしょう。

まとめ:信用スプレッドは「リスクを数字で管理する」投資家向けの道具

信用スプレッドは、「方向性の仮説」「レンジの想定」「ボラティリティの見立て」を組み合わせ、最大損失をあらかじめ限定しながらプレミアム収入を狙う戦略です。単に高いペイアウトを狙うのではなく、「どれだけのリスクを取って、どれだけの利益を期待するのか」を数字で組み立てる発想が求められます。

相場の予測に絶対はありませんが、ポジション構造そのものにリスク管理の仕組みを組み込めるのが信用スプレッドの強みです。まずは小さなサイズで仕組みを体感し、自身の資金管理ルールと組み合わせながら、長期的な目線で戦略の有効性を検証していくことが大切です。

p-nuts

お金稼ぎの現場で役立つ「投資の地図」を描くブログを運営しているサラリーマン兼業個人投資家の”p-nuts”と申します。株式・FX・暗号資産からデリバティブやオルタナティブ投資まで、複雑な理論をわかりやすく噛み砕き、再現性のある戦略と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ実践できること、そして迷った投資家が次の一歩を踏み出せることを大切にしています。

p-nutsをフォローする
オプション
スポンサーリンク
【DMM FX】入金
シェアする
p-nutsをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました