この記事では、分散型デリバティブ取引所 Aevo のパーペチュアル(永続先物)を、アーキテクチャ、手数料体系、資金調達率(Funding)計算、証拠金・担保設計、清算(Liquidation)とADLまで縦串で理解し、儲けにつながる実践的なエッジに落とし込む方法を示します。読了後は、最低限のリスクコントロールを前提に、具体的なエントリー/イグジットと数量決定まで自力で回せる状態を目指します。
概要:Aevoを使う理由(3行)
- 独自EVMロールアップ上に構築、オフチェーン板+オンチェーン清算でスループットと透明性を両立。
- パーペチュアルの資金調達(Funding)は1時間ごとに精算。Premium Indexベースの計算式で市場歪みを抑制。
- クロスマージンとポートフォリオ管理で余力を一元化。USDC中心に複数担保を許容。
Aevoとは:構造を一度で理解する
Aevoは「独自EVMロールアップ」上で稼働し、オフチェーンの注文板とリスクエンジンで約定・リスク管理を行い、清算・決済はスマートコントラクトでオンチェーンに確定させます。板の約定速度を確保しつつ、最終状態はチェーンで検証できるのがコアの思想です。結果として、板系の指値戦術とAMM型では拾いにくいスプレッド戦略が取りやすくなります。
証拠金とクロスマージン:数式で腹落ちさせる
口座はクロスマージン。全ポジションと未約定注文が一体で評価され、以下を常時満たす必要があります。
新規建て時: AB + UP - OO - IM - MM > 0 保有中の監視: AB + UP - OO - MM > 0 引き出し時: AB + UP - OO - MM > 0 # AB=口座残高, UP=含み損益, OO=全オープン注文価値, IM=初期証拠金, MM=維持証拠金
維持要件を割ると清算プロセスが発動します。板寄せのボラが強い銘柄では、注文件数と指値の置き方がMM(維持証拠金)を圧迫しやすいので、OO(未約定注文の拘束)も必ず考慮してください。
担保資産と比率(Collateral Ratio)
決済通貨は基本USDC。担保に使える資産と評価比率の一例は以下です(市場状況で変更され得ます)。
- USDC:100%
- USDT:99%
- aeUSD:100%
- ETH:90%
- WBTC:90%
- weETH:85%
担保評価は概ね 担保残高 × USDC建て価格 × 担保比率。USDT→USDC、ETH→USDCへの自動コンバート(負残高の補填)が起動するケースがあるため、想定外のコンバート手数料を避ける目的でも、ポジションの偏りを抑えることが重要です。
手数料とFunding:コスト構造を先に固定する
取引手数料(Perp)
- Taker手数料:0.08%(名目)
- Maker手数料:0.05%(名目)
板で流動性を提供する戦略(パッシブ指値)は、単純比較でTakerより約3bp有利です。スプレッド取りや逆張りの約定優先度を調整しつつ、実効スリッページと併せて最適化します。
Funding(資金調達)
1時間ごとにFundingが精算されます。計算はPremium Index(Impact Bid/AskとIndex Priceの差分)を用い、以下の趣旨で算定されます(8時間分の率を1時間に按分)。
8時間Funding = 平均Premium + Clamp(金利 - 平均Premium, +0.05%, -0.05%) 上限下限適用後の8H Fundingを、標準では8で割り1H Fundingに。
BTC-PERPなど一部銘柄には天井・床(Funding Cap ±3%など)が設定され、極端な乖離時のレートを抑制します。実務上は、「Premiumが±0.05%の範囲」では金利(概ね+0.01%/8H相当)がそのまま維持されるため、短期の資金調達狙いはこのレンジブレイクの監視が効きます。
板・価格の見方:ImpactとIndexを混同しない
Premium Indexの算出では、Impact Notional(多くの銘柄で1万USDC)の成行約定を仮定したImpact Bid/Askと、外部現物から算出するIndex Priceを比較します。トレードでは、Mark(内部評価価格)とIndex(外部参照)の両方を並べて表示し、乖離が拡大する局面での反転・回帰シグナルを拾います。
実践戦略:再現性重視の4本
① トレンドフォロー(1H〜4H)
前提:トレンド・フィルターに200EMA×上位足の高安ブレイク。エントリーは押し目(上昇)/戻り(下落)で、IM不足を招かないロットに限定。ストップは直近スイング±ATR1.5。利確はRR=1.5固定+トレーリングを併用し、Fundingが逆風なら建玉を縮小します。
② Funding裁定(キャッシュ&キャリー)
ロングがプラスFundingなら、現物ロング+Perpショートで受け取りを狙い、ショートがプラスなら逆。Aevoの1時間精算は、イベントボラの直後に一時的に跳ねたFundingを取りこぼしにくい利点があります。実装は取引所跨ぎの在庫移動と手数料・ガスを含めてネット受取がプラスになる水準のみ執行。
③ 乖離リバーサル(Impact vs Index)
Premium Indexが一定閾値(例:±0.20%)を瞬間ブレイクし、出来高が収縮してくる初動で逆張り。板が薄いときは誤約定を避けるため、必ず指値+部分約定許容で入る。マークとインデックスの再収斂で利確、Funding逆風は建玉半減。
④ 指値スプレッド取り(パッシブ・メイク)
Maker 0.05%の優位を活かし、最優先気配±数tickで両面に置くマーケットメイク的手法。条件:広がったスプレッド、Impact価格が偏り過ぎていない、ニュースなし。一定の時間枯れ(30〜90分)でクローズし、建玉の偏りを残さない。
数量決定:口座の「死に方」を前から決める
クロスマージンは利便性の裏で、過剰約定が全ポジションを巻き込むリスクを伴います。1トレードの損失上限を口座残高の0.5〜1.0%に固定し、ATRや出来高から逆算したストップ幅に対し、IM/OO/手数料/想定Fundingまで含めてロットを決めます。未約定の指値が多いとOOが膨らみ、清算距離が縮む点に注意。
ケーススタディ:BTC-PERPの具体手順
- 前日からのトレンドを4Hで判定。上昇トレンド。
- 1Hで押し目待ち、200EMA付近で反発確認。IndexとMarkの乖離が縮小開始。
- ATR1.5分のストップで指値ロング、RR=1.5の指値利確とトレーリングを同時配置。
- 約定後、Takerに回らない範囲で利確の一部をMaker化しコストを最適化。
- Fundingが逆風に転じたら半分利確、イベント前は全クローズ。
この流れは、初心者でも再現できます。重要なのは「事前の数量計算と事後の撤退条件」を先に書いておくことです。
清算・ADL:守りをルール化する
維持証拠金を割り込むと清算エンジンが順次建玉を落とし、必要に応じてADL(自動デレバ)が発動します。清算は想定より不利な価格で成立し得るため、清算を想定するトレードはしない、が原則です。ストップは必ずサーバ側に置き、板薄時間帯の成行は避けます。
オンボーディング手順(抜け漏れチェック)
- ウォレット接続(EVM系)。入金先チェーンとロールアップのブリッジを確認。
- 担保をUSDC中心に準備。USDT/ETH/WBTC/weETHの比率は必要最小に。
- UIでIndex/Mark/Premium/Impact指標を同時表示に設定。
- 注文テンプレ(指値/逆指値/OCO)をプリセット化。
- 1トレード損失上限とロット表をスプレッドシートで固定。
よくある失敗と対策
- OOの過多(未約定注文出し過ぎ)でMMを圧迫 → 指値は段数を絞り、板の厚い時間帯に限定。
- Funding逆風の放置 → 逆風に転じたら建玉半減、もしくはヘッジ。
- イベント直後の成行 → Impact乖離が拡大中は成行を禁止。分割指値+時間分散。
運用ルール最終形(ミニマム)
- 1Hトレンド方向のみ建てる。
- RR=1.5未満になったら見送り。
- 逆風Fundingは建玉半減。イベント前は全クローズ。
- OO合計が証拠金の30%を超えない。
- ドローダウン-5%到達で当日停止。
まとめ
Aevoの強みは、板の実効流動性とオンチェーン確定の両立にあります。クロスマージンとFundingの仕組みを正しく理解すれば、初心者でもコスト優位の指値活用・Funding裁定・乖離リバーサルなど、安定したエッジを積み上げられます。上記のチェックリストをそのまま運用に落として、まずは小さく、速く回してください。


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