本稿は、分散型デリバティブ取引所「Aevo(エイボ)」のパーペチュアル取引(無期限先物)について、基礎から実務まで一気通貫で解説します。中央集権型取引所に近い高速な板寄せと、オンチェーンの決済安全性を両立するAevoの特徴を整理し、実際のエントリーから利益計算、資金調達率(ファンディング)、清算リスク管理、そして初心者でも再現可能な収益化パターンまで、具体的な手順で示します。
1. Aevoの全体像と強み
Aevoは、OP Stackを基盤とする独自のロールアップ(Aevo L2)上で稼働し、オフチェーンの注文板(CLOB)とオンチェーンの約定・精算を組み合わせたハイブリッド構成を採用しています。これにより、CEXに近いレイテンシでの板引きと、Ethereum由来のセキュリティを両立します。単一の証拠金口座で、パーペチュアル・オプション・プリローンチ先物など複数プロダクトを横断して扱える点も実務上の強みです。
要点を簡潔に整理すると次のとおりです。
- 注文はオフチェーン板でマッチング、最終決済はAevo L2のスマートコントラクトで実行。
- 1時間ごとのファンディングで価格乖離を抑制(ユーザー間P2Pで授受、取引所は手数料を課さない)。
- 一部主要銘柄では低い初回証拠金・高い最大レバレッジを設定(例:ETHでIM 5%、MM 3%、最大20x)。
- 清算時は銘柄ティアに応じた清算手数料(例:Tier1は1%、Tier2は3%)。
この構造は、スキャルピングやイベントドリブンの短期戦略、さらには資金調達率キャプチャやキャッシュ&キャリーのような市場中立戦略にも適合します。
2. 仕組みを理解する:OP Stackロールアップ × オフチェーン板
2-1. ロールアップの要点
AevoはOP Stackベースのロールアップ上にスマートコントラクトを配置し、Optimism Standard Bridge経由での入金に対応します。入金はおおむねメインネット同等の確定時間感覚で、出金はロールアップ特性により時間を要する設計です。実務上は、USDC建て残高で建玉を管理する前提で口座設計すると分かりやすくなります。
2-2. マッチングと決済
約定はオフチェーンの中央板(CLOB)で高速にマッチングし、その結果をオンチェーンで確定します。板厚とスプレッドは時間帯と銘柄で変動するため、初心者は初期段階では指値と分割エントリーを基本にするのが安全です。
3. 口座設計と準備
3-1. 必要物
Web3ウォレット(例:MetaMask)、少額のETH(ガス)、およびUSDCを用意します。ウォレット接続後、Aevo L2へのブリッジ入金を行い、口座残高を確認します。
3-2. 初期資金とレバレッジ方針
初心者は最大許容損失=口座残高の1〜2%を目安に、レバレッジは5倍以下、1回の建玉は残高の10〜20%以内から開始することを推奨します。これにより一度の清算で口座を毀損しにくく、学習曲線を維持できます。
4. Aevoの手数料・証拠金・清算の実務
4-1. 売買手数料
売買手数料は銘柄やキャンペーンで変動しますが、メーカー/テイカーの二本立てです。たとえばETHパーペチュアルの一例では、メーカー0.05%、テイカー0.08%が提示された時期があります。最新の料率は取引画面の銘柄仕様を確認してください。
4-2. 証拠金と最大レバレッジ
線形(USDC建て)パーペチュアルでは、初回証拠金率(IM)と維持証拠金率(MM)が銘柄別に設定されます。例としてETHパーペチュアルの過去の仕様ではIM 5%、MM 3%、最大レバレッジ20xが提示されています。IMを割り込む建玉は新規追加不可、MMを割り込むと清算リスクが急上昇します。
4-3. 清算と清算手数料
口座の有効証拠金が維持証拠金を下回ると清算が発動し、銘柄ティアに応じた清算手数料(Tier1: 1%、Tier2: 3%等)が発生します。清算は一撃で口座を毀損し得るため、清算価格の手前で強制的に撤退する仕組み(逆指値・段階的ロスカット)を必ず設置しましょう。
5. 資金調達率(Funding)の使いこなし
ファンディングは建玉同士のP2P決済で、Aevoは徴収手数料を取らない設計です。1時間ごとに支払側⇔受取側が入れ替わり、先物のマーク価格と現物指数の乖離を矯正する役割を担います。
実務では、プラスの資金調達率が継続する局面でショート建玉を持つと受取、マイナスが継続する局面でロング建玉を持つと受取になりやすくなります。ただし価格変動リスクが常に残るため、単独での運用ではなく、後述の市場中立設計(例:現物現先のキャッシュ&キャリー)と組み合わせると安定的です。
6. 価格算定と損益計算の基礎
6-1. 線形パーペチュアル(USDC建て)のPnL
線形契約では、損益は概ね次式で近似できます:
実現PnL ≒ 契約数量 × (決済価格 − 建値)
例:ETHを数量1で3,000 USDCにロング、3,060 USDCで決済すると、+60 USDC。レバレッジは有効証拠金に対する建玉の倍率に過ぎず、価格差×数量がPnLを決める点を押さえてください。
6-2. 手数料・ファンディングの影響
実現損益は、約定手数料・スリッページ・ファンディング授受を考慮した純損益で評価します。短期回転では手数料占有率が高まりやすいため、板の薄い時間帯は無理に回転数を上げないのが定石です。
7. 初心者が今日からできる安全な始め方(手順)
- ウォレット接続と少額入金(まずは100〜300 USDC程度)。
- ETHパーペチュアルの板を開き、分割指値(例:建値を3分割)でロングまたはショートを小口約定。
- 建玉と同時に逆指値(損失許容1〜2%)と、利確の指値(リスクリワード2以上)を発注。
- 板の厚みに応じて数量を微調整。約定し過ぎたらすぐに一部手仕舞いしてリスクを圧縮。
- 評価損益が+1Rになったら建値にストップを切り上げ、損失ゼロ化を優先。
この手順は勝率が低くても資金を守れる設計です。最初の数十トレードは「期待値>0の型」を体に入れる期間と割り切ってください。
8. 収益化パターン3選(再現性重視)
8-1. ファンディング・キャプチャ(片側)
資金調達率が安定してプラスのとき、ショートで受取を狙います。価格トレンドが上向きなら、小さめ数量+タイトなストップで短時間保有に徹し、受取×保有時間で稼ぐ設計にします。
8-2. キャッシュ&キャリー(現物×先物の裁定)
現物を現物チェーンで保有しつつ、Aevoのパーペチュアルで逆方向の建玉を立ててデルタを中立化します。受取ファンディング−借入コスト−手数料がプラスなら時間経過で期待値が積み上がります。現物の保管・ブリッジ・金利まで含めた実効コストを必ず見積ること。
8-3. イベント・ボラティリティ・プレイ
指標発表や上場イベント前後は板が薄くなり、スプレッド拡大と乱高下が起きやすい時間帯です。事前に逆指値と利確指値を置いたOCO的設計にしておけば、ヒットした側だけが残るため、裁量の遅れを最小化できます。
9. リスク管理:清算を「絶対に」踏まない設計
清算は複利を壊す最大の敵です。以下の3点を徹底してください。
- ポジションサイズ規律:1回の損失は口座の1〜2%以内。勝率よりもドローダウン管理が最優先。
- 逆指値の先置き:建玉と同時にセット。後から置く、は事故の温床。
- 分割の原則:エントリーもイグジットも3分割を基本。板の薄さ・スリッページを織り込む。
また、資金調達率の急変やオラクル異常など外乱に備え、建玉を長時間放置しないこと。アラート設定と定時確認を習慣化してください。
10. 執行の技術:板読みと注文管理
初心者がつまずくのは総じて「執行」です。成行の使いすぎ、一括エントリー、逆指値未設置が三大要因。板の厚みを見ながら、価格帯ごとの指値を予め配置し、約定した分だけポジション管理を行う癖を付けると、スリッページ損を顕著に減らせます。
11. よくある失敗と回避法
(A)勝ちを伸ばせない:+1Rで手仕舞いせず、建値ストップに切り上げて放置。残りはトレイリングで伸ばす。
(B)ナンピンで口座崩壊:トレンドに逆らうナンピンは禁止。最初から分割・撤退基準を決める。
(C)ファンディングだけを見て逆張り:トレンドと逆の受取狙いは危険。中立化か短時間保有のどちらかに寄せる。
12. チェックリスト(保存版)
- 入金後の可用証拠金とIM/MMの確認。
- エントリー前に逆指値・利確指値を先置き。
- 建玉は3分割、リスクは1〜2%/回。
- 板の厚みが薄い時間帯は数量を落とす。
- ファンディングは片側キャプチャか中立化のどちらで取りに行くかを事前定義。
13. 参考リンク(仕様確認用)
以下は仕様の一次情報です。料率や証拠金は変更され得るため、必ず最新の原典を確認してください。
- Funding(1時間ごと・P2P・取引所手数料なし)
- ETH Perp仕様(IM 5%、MM 3%、最大20x の例)
- 清算手数料(Tierにより1%/3%/5%)
- L2アーキテクチャ(OP Stack、Standard Bridge)
- DEX(デリバティブ)ランキング(Aevo掲載)
本稿は投資判断の助言を目的とするものではありません。最終的な意思決定はご自身の責任で行ってください。


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