この記事では、ビットコインの「半減期」という供給ショックを、中長期の価格サイクルとシンプルな売買ルールに落とし込み、再現性のある収益化手順として整理します。難しい数式は使わず、誰でも実装できるレベルに落として解説します。
半減期とは何か:価格に効く“供給ショック”の正体
半減期は、およそ4年ごとにマイニング報酬が半分になるイベントです。新規供給のフローが恒常的に絞られるため、同じ需要であれば理論的には価格の上振れ圧力が生じます。ただし、需給は常に動的であり、半減期そのものが“上がる保証”ではありません。重要なのは、市場が半減期をどのタイミングでどの程度織り込むかを読み、戦略を事前に定義しておくことです。
サイクルを4局面で捉える
ビットコイン市場は、半減期を軸に次のような循環をたどる傾向があります。絶対ではありませんが、意思決定の枠組みとして有用です。
- 蓄積(Accumulation):深い下落後、長い横ばい。出来高は細るが、長期投資家の買い集めが進む。
- 拡大(Expansion):価格が長期移動平均を明確に上抜け、トレンドが立ち上がる。ニュース面の勢いも出る。
- 分配(Distribution):新高値圏でのボラ拡大。良いニュースに対して上値が伸びづらくなる。
- 下落(Decline):トレンド割れ。急落でレバレッジが一掃され、再び蓄積局面へ。
以降の戦略は、この4局面を前提に「遅すぎず、早すぎない」判断を狙います。
本稿で扱う3つのシンプル戦略
- 戦略A:DCA+半減期前後の比重調整(中長期・現物中心)
- 戦略B:ブレイクアウト追随(200日EMA+上抜け)(順張り)
- 戦略C:先物の過熱逆張り(資金調達率・ベーシスの極端値)(短期ヘッジ・軽量)
複雑な最適化は避け、説明可能性と運用継続性を最優先に設計します。
戦略A:DCA+半減期イベントの比重調整
考え方
定期積立(DCA)は“当てに行かない”ことが強みです。そこに半減期という供給ショックの時期要因を重ね、事前に定めた期間だけ積立比率を上げます。
ルール(例)
- 通常時は毎週(または毎月)一定額を積立。
- 半減期の-180日から+180日の期間は、積立額を1.5〜2倍に増やす。
- 一度決めた倍率は、その半減期サイクルでは固定。値動きで恣意的に変えない。
- 急落時(例:前日比-10%以上)は、臨時の追加少額(通常枠の25〜50%)を投入。
- 目標配分(例:暗号資産は総資産の10%以内)を守り、逸脱時はリバランス。
ポイント
- 「半減期=全部乗る」ではなく、計画的に比重を傾けるだけ。
- 天井も底も読まない。読まない前提の設計にする。
- 生活資金や緊急資金を侵食しない枠で継続。
戦略B:ブレイクアウト追随(200日EMA)
考え方
長期トレンド復帰をシンプルに捉えるため、200日EMAを基準にします。上抜け+出来高改善で初回エントリー、押し目で追加。下抜けなら機械的に縮小します。
ルール(例)
- 終値が200日EMAを上回った日に30%エントリー。
- その後の押し目(200日EMAからの-5〜-10%の範囲)で20%を最大2回追加。
- 終値が200日EMAを明確に下回る(連続2日など)で全ポジション縮小・撤退。
- 利確はトレーリングストップ(例:最高値から-18%)で追随。
注意点
- ダマシは必ず起きる。損切りは想定内のコストと割り切る。
- 移動平均は万能ではない。機械的に従うほど、メンタルの消耗は小さくなる。
戦略C:先物の過熱逆張り(簡易版)
考え方
過剰レバレッジは清算の連鎖を招きやすく、極端な場面では逆方向に妙味が出ます。初心者でも観察しやすい資金調達率や年率換算ベーシスの極端値にだけ反応する軽量ルールを使います。
ルール(例)
- 資金調達率が+0.15%/8h以上または先物ベーシスが年率+20%超のとき、現物の一部を短期でヘッジ(先物ショート)してエクスポージャーを中和。
- 逆に、資金調達率が-0.05%/8h以下やベーシス年率-5%以下なら、短期で現物を若干上乗せ(DCA枠の範囲)。
- 執行は小ロット、期間は短期(数日〜数週間)。長期の裸ショートは避ける。
- ヘッジ比率は最大でも現物の50%まで。
この戦略は「逆張りで大きく取る」より、行き過ぎの調整を狙う設計です。
リスク管理:負け方を先に決める
- ポジションサイズ:1回の想定損失が総資産の0.5〜1.0%を超えないように調整。
- 最大DD(想定):過去の下落率を参考に、資産配分全体で想定ドローダウンを数値化。
- 損切り・撤退:戦略Bはルール通り。戦略Aは配分で管理。戦略Cは時間でクローズ。
- 分散:ビットコイン主体でも、現金・MMF・他資産を一定比率で持ち、流動性リスクを緩和。
実務手順:口座・入出金・保管・執行
口座とKYC
国内取引所で本人確認を完了し、入出金の上限・反映時間・手数料を事前に把握します。法人口座を使う場合は決算・税務の運用フローも先に決めておくと混乱が少ないです。
入金・出金・送金
- 日本円の入金は振込手数料と反映時間を重視。出金は締め時間と着金日を確認。
- 暗号資産の送金は、チェーン種別・タグ・メモを誤らない。テスト送金を活用。
保管
- ハードウェアウォレットで長期保管。シードフレーズは紙と金属で分散し、オフライン保管。
- 短期売買分は取引所・ソフトウェアウォレットに限定。
- 2段階認証(TOTP)・出金許可リスト・デバイス認証を有効化。
執行
- 現物は指値中心、急変時のみ成行。
- 先物はクロスではなく分離証拠金を基本にし、レバレッジは低く抑える。
- OCO(利益確定+損切り同時)でミスを減らす。
売買タイミングの具体例(半減期-180〜+180日)
- 半減期の-180日:DCAの比重を1.5倍にセット(自動化)。
- 200日EMA上抜けで戦略Bの初回30%を展開。押し目を待って20%×2回追加。
- 資金調達率やベーシスが極端に加熱なら、戦略Cで現物の一部を短期ヘッジ。
- 分配局面の兆候(新高値で伸び悩み、出来高の不一致)が見えたら、新規追加を停止。既存はTSで追随。
- 半減期+180日でDCA比重を通常に戻す。以後は相場の強弱に応じ、BとCで微調整。
ミスを減らすチェックリスト
- (資金)生活費と投資資金を分けたか。
- (口座)入出金・手数料・上限・締め時間を把握したか。
- (保管)シードフレーズの保全、2FA、出金許可リストは設定済みか。
- (戦略)A・B・Cのルールを紙1枚に要約し、途中で変えないことを合意したか。
- (記録)取引ログを毎回残しているか。勝ち負けの理由を言語化できるか。
Q&A:よくある疑問
半減期の時期だけ買えば十分ですか?
いいえ。半減期は長期テーマの一つに過ぎません。DCAを中核にし、比重を一時的に上げる設計が安定します。
どの戦略が一番儲かりますか?
相場環境次第です。Aはブレに強い、Bはトレンドに強い、Cは過熱時の防御と理解し、役割分担で組み合わせるのが現実的です。
アルトコインはどう扱うべき?
初期はビットコイン比率を高く保ち、アルトは最大でも暗号資産枠の30〜40%以内に抑えます。テーマ性と流動性を重視し、個別は指数連動的な扱いで十分です。
まとめ:設計図を先に作る
半減期は“物語”ではなく“設計上の変数”として扱うのがコツです。DCAで土台を作り、トレンド確認で上乗せし、過熱時はヘッジで守る。ルールは事前に紙で固定し、運用は淡々と。これが継続と再現性の核心です。
追加:執行とコスト最適化の具体テクニック
- 板厚の確認:指値は板の“空白”に置かず、適度に厚い価格帯に分割。
- 時間分散:1回の約定サイズを小さくし、数分〜数十分で分散実行。
- スリッページ管理:成行は“必要最小限”に限定。ニュース直後は避ける。
- 手数料最適化:メイカー手数料が有利なときは指値中心。VIPティアや割引を活用。
- 送金の安全策:少額テスト送金→本番。チェーン混同は絶対に避ける。
- 記録の標準化:日付・根拠・感情・結果・改善点をテンプレ化して毎回記録。
追加:心理と継続の設計
- 見ない勇気:長期戦略の期間は、価格チェックの頻度を決める。
- 結果より手続き:短期の勝ち負けはランダム性が大きい。手順の遵守率をKPIに。
- 閾値の固定:資金調達率や移動平均の閾値は、サイクル中に変えない。


コメント