BTCをDeFiで担保にしてUSDC/USDTを借り入れたい投資家向けに、主要プロトコルの比較、安全性、金利水準、具体的な推奨ルートまで解説します。
結論
BTCをDeFiで担保にしてUSDC/USDTを借りる場合、現実的かつ安全性を重視すると、最有力の選択肢は次のルートです。
「BTC → wBTCに変換 → Ethereum上のAaveにwBTCを担保として預け入れ → USDCまたはUSDTを借り入れ」
理由は以下の通りです。
・AaveはTVL(預かり資産)が大きく、スマートコントラクトが監査済みで実績も長い
・清算メカニズムとオラクル(Chainlink)が成熟しており、予期せぬ清算リスクが相対的に小さい
・USDC/USDTの流動性が厚く、大きめのポジションでもスリッページが出にくい
・貸出・借入の金利もDeFi全体の中で比較的低水準で安定している
従って、「安全性・流動性・金利のバランス」という観点で見ると、Aave(Ethereum)+wBTC担保+USDC/USDT借入が最も無難で現実的な解となります。
BTCを“そのまま”担保にできるDeFiがほぼ存在しない理由
まず大前提として、ネイティブのBTCはBitcoinチェーン上の資産であり、EthereumやEVMチェーン上には存在しません。そのため、Ethereum上のDeFiでBTCを担保に使うには、次のような「ラップされたBTC(ブリッジ版BTC)」に変換する必要があります。
・wBTC(Wrapped Bitcoin)
・tBTC(Trustless BTC Bridge)
・過去にはrenBTCなど
これらは「1 BTC を裏付けとしたトークン」であり、Ethereumなどのスマートコントラクト上で扱えるようにしたものです。
そのため、次のような点を理解しておく必要があります。
・BTCのまま(ネイティブBTC)を直接担保にとるDeFiプロトコルは、現時点ではほぼ無い
・CeFi(中央集権取引所やレンディング業者)であれば、ネイティブBTCを直接担保に取ることはあるが、その代わり発行主体の信用リスク・倒産リスクを負う
DeFiでBTCを担保として使いたいなら、基本的には「何らかの形でラップされたBTC(wBTCなど)」を利用するのが前提になります。
BTC(wBTC)を担保にしてUSDC/USDTを借りられる主要なDeFiプロトコル
ここでは、実務的に利用価値の高いものを中心に整理します。
Aave(Ethereum / Polygon / Arbitrum)
最も安全性と流動性のバランスが良いのがAaveです。特にEthereumメインネット上のAave v2 / v3は、機関投資家を含めた利用が多く、インフラに近い存在になっています。
・担保として利用:wBTC
・借りられる資産:USDC、USDT、DAIなど
・LTV(Loan To Value:担保評価額に対する借入上限比率):約70%前後(銘柄やバージョンによって多少変動)
・清算閾値:LTV 75%前後を超えると清算トリガーが発動するケースが多い
・金利:変動金利。USDC/USDT借入APYは相場次第だが、おおよそ2〜7%程度のレンジに収まることが多い
メリット
・TVLが非常に大きく、流動性が厚い
・監査済みかつ稼働実績が長い
・Chainlinkオラクルなどを用いて価格フィードが安定
・清算メカニズムが枯れており、大規模なバグや事故のリスクが相対的に小さい
デメリット
・wBTCへの変換が前提になる(ラップ・アンラップ工程を理解する必要)
・清算ラインが比較的タイトなので、LTVを攻めすぎるとボラティリティで即清算されるリスクがある
総合すると、「安全寄りにUSDC/USDTを借りたい」「長期的に安定運用したい」場合の第一候補になります。
Compound v3(Ethereum / Arbitrum / Baseなど)
CompoundもAaveと並ぶ古参のレンディングプロトコルです。v3では設計がシンプルになり、より限定的な担保・借入ペアに絞る構成になっています。
・担保として利用:wBTC
・借りられる資産:USDCが中心(USDTは対象外のことが多い)
・金利:Aaveよりやや低めになる傾向がある(時期や市場状況による)
特徴
・プロトコル設計が非常にシンプルで、バグの入り込み余地が少ない
・USDC借入に特化したマーケット構成が多く、安定した金利になりやすい
・wBTCのLTVなどはAaveと同程度か、やや保守的
Aaveと比べると、USDTを直接借りたい人には向きませんが、「wBTC担保でUSDCだけ借りられればいい」「シンプルな設計が好み」という場合に有力です。
MakerDAO / Spark(DAIを経由するパターン)
MakerDAOはDAIというステーブルコインを発行しているプロトコルで、Sparkはそのエコシステム上のレンディングプロトコルです。
・担保として利用:wBTC
・借りられる資産:DAI
・その後の運用:DAIをUSDC/USDTにスワップして使う
メリット
・MakerDAO自体が巨大な担保構造を持ち、「システミックな安定性」が高い
・時期によってはStability Fee(実質金利)が低く設定されることがあり、他プロトコルに比べて有利な期間もある
・DAIの流動性はETH/USDC/USDTペアなどを通して十分に厚く、大口スワップも比較的やりやすい
デメリット
・直接USDC/USDTを借りるのではなく、DAI→USDC/USDTへのスワップ工程が増える
・金利やパラメータがガバナンスで変更されるスピードが速いこともあり、常にチェックが必要
Benqi(Avalanche)
Avalancheチェーン上での主要レンディングプロトコルの一つがBenqiです。
・担保として利用:BTC.b(Avalancheネイティブのブリッジ版BTC)
・借りられる資産:USDC、USDTなど
・特長:Avalancheはトランザクション手数料が安く、チェーン混雑も比較的少ない
注意点
・BTCをAvalancheにブリッジしてBTC.bを取得する過程にブリッジリスクがある
・清算ボットが豊富である一方、急落時には清算が非常に素早く行われるため、LTVを攻めすぎると即座にポジションが吹き飛ぶ可能性がある
Solend(Solana)
Solanaチェーン上の代表的なレンディングプロトコルがSolendです。
・担保として利用:Wrapped BTC(Solana上のBTCトークン)
・借りられる資産:USDCが中心(SolanaではUSDCの方が主流)
・特徴:手数料が極めて安い一方で、L1のEthereumからSolanaへのブリッジがやや複雑
注意点
・ブリッジリスクとチェーン固有リスク(停止・性能問題など)も考慮が必要
・BTC原資がBitcoinチェーンやEthereumにある場合、ソラナへ橋渡しする工程が増え、オペレーションが難しくなる
DeFiの中で「どこが最も安全か?」という相対評価
DeFiプロトコルに絶対安全はありませんが、実績・TVL・監査状況・ガバナンス・清算システムなどを総合して、相対的に次のような序列が考えられます。
1位:Aave(Ethereumメインネット)
・流動性最大、監査・実績とも圧倒的
・Chainlinkオラクル+長年の運用実績で信頼性が高い
2位:MakerDAO / Spark
・DAIを支える巨大な担保構造と長い運用実績
・システミックな安定性が高い
3位:Compound v3
・シンプルな設計で事故リスクが小さい
・USDC特化マーケットとして堅実
4位:Benqi / SolendなどL2・他L1の中規模プロトコル
・便利ではあるが、ブリッジリスクやチェーン固有リスクが上位3つより高い
実務的に「結局どのルートがベストか?」
安全性・金利・流動性のバランスを重視する個人投資家が、BTCを担保にUSDC/USDTを借りたいなら、現状の実務的ベストは次のルートです。
1. 手元のBTCをwBTCに変換する
・CEX(例:Binance, Bybit など)でBTC→wBTCにスワップ
・もしくはEthereum上のラップ手順に従って変換
2. Ethereumメインネット上のAaveにアクセスする
・公式サイトまたは有力フロントエンドを利用
3. wBTCをAaveにサプライ(預け入れ)し、担保として有効化する
・「Use as Collateral」をオンにする
4. 借りたい通貨(USDCまたはUSDT)を選び、希望額をBorrowする
このフローにより、
・wBTCの値動きに対するエクスポージャーを維持したまま
・USDC/USDTを手元に確保することが可能になります。
清算リスクを最小化するためのLTV設定
BTCはボラティリティが非常に大きいため、LTVを攻めすぎると急落で簡単に清算されます。DeFi側の最大LTVや清算閾値に頼ると危険です。
安全側に倒したLTV目安は以下です。
・安全ライン:20〜35%
・ギリギリ許容:40〜50%
・危険水準:60%以上(暴落時にあっという間に清算ライン到達)
例:
・BTC価格が1BTC=100万円
・1BTC分のwBTCを担保に入れていると仮定
LTV30%で運用するなら:
・借入額は30万円相当までに抑える
→ 価格が多少下落しても清算ラインからまだ十分距離がある
LTV50%まで攻めると:
・借入額は50万円相当
→ BTC価格が少し大きめに崩れると、清算ラインが視野に入ってしまう
「レバレッジBTCロング(BTCを担保にUSDT/USDCを借りて、さらにBTCを買い増す)」のようなポジションを取りたい場合は、LTV20〜25%程度に抑えないと、本格的な下落局面で一気に狩られます。
CeFiでBTC担保→USDT/USDC借入は安全か?
一部のCeFi(中央集権レンディング業者や取引所)は、ネイティブBTCを直接担保として預かり、USDT/USDCを貸し出しています。代表例として挙げられていたサービスの中には、過去に破綻したものもあります。
・Nexo
・Binance Loan
・OKX Loan
・Matrixport
・CoinLoan(破綻済の事例もある)
CeFiに共通するリスクは次の通りです。
・バランスシートの中身が完全には見えない(不透明な運用)
・カウンターパーティリスク(倒産・差押え・規制当局の介入等)
・FTXやCelsiusのように、ある日突然出金停止になりうる
これに対し、DeFi(Aaveなど)は
・スマートコントラクトはオンチェーンで透明
・清算ルールはコード化されており、任意の判断で変えられない
・ただしスマートコントラクトバグやオラクル失敗のリスクはゼロではない
総合的に見ると、「CeFiよりDeFiの方が安全」とまでは言えませんが、
・信用リスク(倒産リスク)という意味ではDeFiの方が透明性が高い
・規模・実績・監査体制を考えると、AaveやMakerDAOなど大手DeFiは、無名CeFiよりも相対的に信頼がおける
という評価になります。
あなた向けの現実的な選択肢の整理
目的別に最適な選択肢を整理すると、以下のようになります。
A:とにかく安全性を重視してUSDC/USDTを借りたい
・Ethereumメインネット上のAaveで、wBTCを担保にUSDC/USDTを借りる
・LTVは20〜35%に抑える
→ 「これ以上攻めない」という自己ルールを決めておく
B:金利を少しでも抑えたい(USDCだけで十分な場合)
・Compound v3でwBTCを担保にUSDCを借りる
・こちらもLTVは安全側に
C:DAIを経由することに抵抗がない、安い金利を狙いたい
・MakerDAO(Spark)でwBTCを担保にDAIを借りる
・DAIをUSDC/USDTにスワップして利用
・ガバナンス変更(Stability Fee等)には常に注意
D:ガス代を抑えたい、L2を使いたい
・Arbitrum版AaveでwBTCを担保にUSDC/USDTを借りる
・ただし、L1に比べてオラクル障害・ネットワーク障害のリスクはやや高いと認識して運用
レバレッジBTCロングをしたい場合の注意点
もし目的が「BTCの含み益をさらに伸ばすために、BTCを担保にしてUSDT/USDCを借りて、もう一度BTCを買う」というレバレッジロングである場合、清算リスクは倍増します。
・推奨LTV:20〜25%程度(それ以上はかなり攻めている)
・急落時には「含み損+清算」によるダブルパンチを食らう可能性がある
・現物ロング+低倍率レバレッジで組む場合でも、「どこでロスカットするか」を事前に決めておくべき
特に、BTCは数日で30〜50%動くことも珍しくないため、「Aaveの清算閾値が75%だから、LTV70%までOK」といった考え方は非常に危険です。
まとめ:実務的な最適解
BTCをDeFiで担保にしてUSDC/USDTを借りる場合、現時点の実務的な最適解は次の通りです。
・BTCをwBTCに変換し、EthereumメインネットのAaveに預けて担保にする
・USDCまたはUSDTを借りる(用途に応じて選択)
・LTVは20〜35%程度の保守的な水準に抑え、急落時でも清算されにくい構造にする
・レバレッジロング目的であっても、最大でもLTV25%程度に抑えることを検討する
・CeFiでの借入は、倒産・出金停止リスクを十分認識した上で、「どうしても必要な場合」に限定する
このように設計すれば、
・BTCの値上がりを享受しながら
・USDC/USDTを手元に引き出して運用・支出に充てる
という構造を、比較的高い安全マージンを取りつつ実現できます。


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